アマドコロを頼りに
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もう本当に最悪で、何をやっても裏目に出て、分からず屋が妨害する。今だって壱號立会人室の扉をガンガン蹴飛ばしまくってやりたい気分だった。アイデアルとの会敵で李と龍を亡くしてしまったのは申し訳ないけど、こっちだって自分の兵をたくさん失っているし、警察が私達に反抗的な態度を取ってくるだなんて思いもしなかった。私の落ち度じゃない!全部全部こっちに投げてくるな!
私は踵を返す。これ以上この扉を睨んでいたら、本当に何かしでかしてしまいそうだ。何時だと思ってるんだ。場当たり的な説教の為に呼ぶな!
ああ、ホントにむしゃくしゃする。全部投げ出して帰ってしまいたい。なんで、私が、こんな、分からず屋たちの為に、駆けずり回らないと、いけないんだ!
私は階段を降りる。エレベーターに乗って、誰かと会ったらと思うと嫌で仕方がない。腕っ節が少なからずモノを言う賭郎は男社会で、私のような女性管理職に対する風当たりはとても強い。だから、ここの女性はとても歪だ。男の振りをする亜面、女同士でコロニーを作る最上、父の後ろ盾を最大限活用する能輪。その後ろで息を潜める女性職員たち。
私達は尊重されていない。
男達の二倍やってやっと同じ評価を貰える。そんな仕事。それが、仕事がうまくいかなくてボロボロになっている姿を見られたら、被害を受けるのは私だけじゃない。歪な姿でなんとか生き延びる、'私達'みんなが被害を受ける。私が彼女らを巻き添えにしたら、みんなはなんと言うだろう。誰が庇ってくれるだろう。
私がどんなにみんなの為に頑張ったって、誰も寄り添って立ってなんかくれないのだろうな。
階段の中腹で足が止まる。どこにも行きたくない。二進も三進もいかなくなってしまった。座りこまないことで、せめてものプライドを保っていた。
重く重くなってしまって、一向に動く気配のない足をどれだけ持て余しただろう。不意に階段の電気が灯る。廊下と連動して点灯したのだとすぐに気付いた。しかし、下の廊下は定時退社がデフォルトの事務なのだが。
パタパタといかにも素人っぽい足音を聞いて、思い出す。ここ賭郎においてまだ歪まない、可愛い可愛いオンナノコが住み込みで働き始めたのを。
私は咄嗟に上に登ろうとして、動かない足に戸惑う。パタパタと忙しない足音はどんどん近付いてきて。
「ひょえ!?…あ、泉江さん!」
果たして、私を見つける。
「泉江さん?泉江さん?どうしたんですか?何か辛いことがあったんですか?」
慌てて駆け寄ってくる伏龍に何か言おうとして、唇もとても重いのに気付く。途方にくれて、私はぼんやりと目の前のオンナノコを見つめた。彼女は私の手を取って、優しく両手で包んだ。「泉江さん?ねえ何があったんですか?」何故だろうか、彼女の瞳はどんどん潤んでいく。「泉江さん?泉江さん?」囁くような甘い声。ついに彼女の頬を涙が伝うかと思ったら、彼女はそれをぐいと手の甲で拭った。その下から現れるのは勝気な瞳。
「泉江さん、よくわかんないけどそんな気持ちの時にこんな暗いとこでお腹空かせてたらダメです!」
彼女はぐいと私の手を引く。驚いた事に、あんなに石のようだった私の足は彼女の意思に従うように動き出す。パタパタと軽やかな足音と、引きずるような重い足音。歪な二つの音が揃って、縁から明るい光を漏らすドアへと向かっていった。
私は踵を返す。これ以上この扉を睨んでいたら、本当に何かしでかしてしまいそうだ。何時だと思ってるんだ。場当たり的な説教の為に呼ぶな!
ああ、ホントにむしゃくしゃする。全部投げ出して帰ってしまいたい。なんで、私が、こんな、分からず屋たちの為に、駆けずり回らないと、いけないんだ!
私は階段を降りる。エレベーターに乗って、誰かと会ったらと思うと嫌で仕方がない。腕っ節が少なからずモノを言う賭郎は男社会で、私のような女性管理職に対する風当たりはとても強い。だから、ここの女性はとても歪だ。男の振りをする亜面、女同士でコロニーを作る最上、父の後ろ盾を最大限活用する能輪。その後ろで息を潜める女性職員たち。
私達は尊重されていない。
男達の二倍やってやっと同じ評価を貰える。そんな仕事。それが、仕事がうまくいかなくてボロボロになっている姿を見られたら、被害を受けるのは私だけじゃない。歪な姿でなんとか生き延びる、'私達'みんなが被害を受ける。私が彼女らを巻き添えにしたら、みんなはなんと言うだろう。誰が庇ってくれるだろう。
私がどんなにみんなの為に頑張ったって、誰も寄り添って立ってなんかくれないのだろうな。
階段の中腹で足が止まる。どこにも行きたくない。二進も三進もいかなくなってしまった。座りこまないことで、せめてものプライドを保っていた。
重く重くなってしまって、一向に動く気配のない足をどれだけ持て余しただろう。不意に階段の電気が灯る。廊下と連動して点灯したのだとすぐに気付いた。しかし、下の廊下は定時退社がデフォルトの事務なのだが。
パタパタといかにも素人っぽい足音を聞いて、思い出す。ここ賭郎においてまだ歪まない、可愛い可愛いオンナノコが住み込みで働き始めたのを。
私は咄嗟に上に登ろうとして、動かない足に戸惑う。パタパタと忙しない足音はどんどん近付いてきて。
「ひょえ!?…あ、泉江さん!」
果たして、私を見つける。
「泉江さん?泉江さん?どうしたんですか?何か辛いことがあったんですか?」
慌てて駆け寄ってくる伏龍に何か言おうとして、唇もとても重いのに気付く。途方にくれて、私はぼんやりと目の前のオンナノコを見つめた。彼女は私の手を取って、優しく両手で包んだ。「泉江さん?ねえ何があったんですか?」何故だろうか、彼女の瞳はどんどん潤んでいく。「泉江さん?泉江さん?」囁くような甘い声。ついに彼女の頬を涙が伝うかと思ったら、彼女はそれをぐいと手の甲で拭った。その下から現れるのは勝気な瞳。
「泉江さん、よくわかんないけどそんな気持ちの時にこんな暗いとこでお腹空かせてたらダメです!」
彼女はぐいと私の手を引く。驚いた事に、あんなに石のようだった私の足は彼女の意思に従うように動き出す。パタパタと軽やかな足音と、引きずるような重い足音。歪な二つの音が揃って、縁から明るい光を漏らすドアへと向かっていった。