梅の遊撃
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とか何とか偉そうな感じでいたからどうするのかと思ったが、貘様が私達に命じてきたのは、手押し相撲の練習。怪我で寝たきりの梶様を除く、私、マー君、伽羅さんの三人全員だ。
という訳で、私は今この筋肉ダルマ二人に挟まれた圧倒的な不利の中、必死に手を振り回している。
「全くと言っていい程上達しねえな」
「無理です無理ですだって怖いんですもん!」
「克服しろ」
「無理で…うぎゃっ!」
「晴乃ちゃん!次はマルコとやるのよ!」
「勘弁してくれぇ…」
ホテル内は貘様の部屋、ご丁寧に用意された手押し相撲用の円形の台の上で、私はこんなに漢字の通りな事があるだろうかって位に嬲られている。嬲るという漢字を生み出した人は多分手押し相撲に負けたんだと思う。可哀想に、抱きしめてあげたい。
「何なんですかこれぇ…」
「手押し相撲チャレンジとかやってみようと思ってさ」
「テイバー大祭で?」
「そうそう。そうだよね?」
「いや…そうなんじゃない?」
そう苦笑いするのはカメオ司祭。先のアスラ砦攻めの実行犯に仕立て上げられたーーいや、我々チームが‘した’のかーー男である。砦攻め自体はショウドの功績になってしまったものの、そのせいで貘様に弱みを握られる形になった彼はこうやって貘様の協力者に組み込まれてしまったという訳だ。
「そこで知名度を上げるのが、君達のミッションね」
マー君が「楽しそう!」と飛び跳ねるのをさておき、私は「何で私も?」と首をかしげた。すると、貘様は「女子部門もあった方がいいかなって思ってさ」と肩を竦めた。
「それで私に?無謀では?」
「無謀だな」
「ほら、伽羅さんもこう仰ってますし」
「でも、闘技場で人気を集めつつある三人だよ?話題になるじゃない」
「だからって…今晩ですよ?」
「頑張ってー!」
無責任な煽りに対し大袈裟なため息をつくと、私は「とりあえず、次はお二人で練習どうぞ」と言った。マー君が「えー、やろうよー!」とむくれるが、連戦なんて無理。とにかく休憩せねばと、ソファの貘様の座っている横に腰掛ける。
「何サボってるのよ。女子部門の成功は晴乃チャンに掛かってるんだよ?」
「廃止しましょ。無茶だから」
「…やらせろ。どの道そのままじゃあ使い物にならねえ」
伽羅さんが奥からそう声を掛けてくるのを聞いて、貘様は「だってさ」と笑った。そして、貘様はカメオ司祭に地図を見せ、貿易ルートの相談を始めた。
ーーーーーーーーーー
「まっ…まだらめっまだらめ!」
「うおっ!?」
突然飛び込んできたチャンプさんに、全員動きを止めて注目する。彼はその空気の勢いに任せ、「とうとうきたぞ!」と叫んだ。
「きたっ…本当に!?」
「ああ…っ!」
二人は熱量高く頷き合うと、バタバタ廊下へ出て行く。その後ろを好奇心旺盛なマルコが付いていくのを見て、私とカメオさんは目を合わせて頷きあうと、野次馬に向かう。そうなると一人残ってしまう伽羅さんも、まあ当然付いてきた。
果たしてやってきたチャンプさんの部屋。ドアからは独特の匂いが漂っていたので、私は再度カメオさんと目を合わす。これは…
「紀州産最高級青梅の塩漬け。いわゆるまだらめが欲してた…‘カリ梅’だ」
貘様に激震が走る。もちろん貘様にだけだ。彼は熱に浮かされたかのようなふらふらとした足取りで木箱に近寄ると、慎重に中を覗き込む。
「商売用としてテイバー国に出していた申請がやっと通ったんだ。500個入りで20箱…計一万個もの‘カリ梅’だ。以前サンプルとして与えられた‘カリ梅’を捌けたのがデカかったーー一応弁当に付ける名目だったが仕入れればこっちのもんだ」
チャンプさんが説明している間も、貘様の視線はカリ梅に釘付けになったままだ。何なら、説明が終わっても無言のままなので、沈黙に耐えかねた私が「チャンプさん凄いですね」と代わりに声をかけてしまった程。
「ありがとう…さあまだらめ、食べてみてくれないか?」
「あ…ああ…」
恐る恐るカリ梅を口に入れた彼は、かっと目を見開いて「超ベリーグッド!チョベリグッ!!」と叫んだ。センスが古い。
「コレ…ジンジョウジャナイレベルナンデスケド…」
とはいえ、感動のあまり仕方がなかったのだろう。次はカタコトになってしまった彼に、チャンプさんは「こっちも届いてる。別名義で注文しておいたヤツだ!」とにっこり笑いかけてまた別の箱を開けた。
そこから出てきたのは、大量のカリ梅のパッケージ。
「良いよ!うん…うんっ…クール!」
「つーか、わざわざそんな袋が必要なの?」
「何言ってるの!コレがなきゃ何にも始まらないじゃない!後は袋に詰めて封をするだけ…!」
貘様が熱のこもった目でこちらを見てくる。ふむ、なるほど?
という訳で、私は今この筋肉ダルマ二人に挟まれた圧倒的な不利の中、必死に手を振り回している。
「全くと言っていい程上達しねえな」
「無理です無理ですだって怖いんですもん!」
「克服しろ」
「無理で…うぎゃっ!」
「晴乃ちゃん!次はマルコとやるのよ!」
「勘弁してくれぇ…」
ホテル内は貘様の部屋、ご丁寧に用意された手押し相撲用の円形の台の上で、私はこんなに漢字の通りな事があるだろうかって位に嬲られている。嬲るという漢字を生み出した人は多分手押し相撲に負けたんだと思う。可哀想に、抱きしめてあげたい。
「何なんですかこれぇ…」
「手押し相撲チャレンジとかやってみようと思ってさ」
「テイバー大祭で?」
「そうそう。そうだよね?」
「いや…そうなんじゃない?」
そう苦笑いするのはカメオ司祭。先のアスラ砦攻めの実行犯に仕立て上げられたーーいや、我々チームが‘した’のかーー男である。砦攻め自体はショウドの功績になってしまったものの、そのせいで貘様に弱みを握られる形になった彼はこうやって貘様の協力者に組み込まれてしまったという訳だ。
「そこで知名度を上げるのが、君達のミッションね」
マー君が「楽しそう!」と飛び跳ねるのをさておき、私は「何で私も?」と首をかしげた。すると、貘様は「女子部門もあった方がいいかなって思ってさ」と肩を竦めた。
「それで私に?無謀では?」
「無謀だな」
「ほら、伽羅さんもこう仰ってますし」
「でも、闘技場で人気を集めつつある三人だよ?話題になるじゃない」
「だからって…今晩ですよ?」
「頑張ってー!」
無責任な煽りに対し大袈裟なため息をつくと、私は「とりあえず、次はお二人で練習どうぞ」と言った。マー君が「えー、やろうよー!」とむくれるが、連戦なんて無理。とにかく休憩せねばと、ソファの貘様の座っている横に腰掛ける。
「何サボってるのよ。女子部門の成功は晴乃チャンに掛かってるんだよ?」
「廃止しましょ。無茶だから」
「…やらせろ。どの道そのままじゃあ使い物にならねえ」
伽羅さんが奥からそう声を掛けてくるのを聞いて、貘様は「だってさ」と笑った。そして、貘様はカメオ司祭に地図を見せ、貿易ルートの相談を始めた。
ーーーーーーーーーー
「まっ…まだらめっまだらめ!」
「うおっ!?」
突然飛び込んできたチャンプさんに、全員動きを止めて注目する。彼はその空気の勢いに任せ、「とうとうきたぞ!」と叫んだ。
「きたっ…本当に!?」
「ああ…っ!」
二人は熱量高く頷き合うと、バタバタ廊下へ出て行く。その後ろを好奇心旺盛なマルコが付いていくのを見て、私とカメオさんは目を合わせて頷きあうと、野次馬に向かう。そうなると一人残ってしまう伽羅さんも、まあ当然付いてきた。
果たしてやってきたチャンプさんの部屋。ドアからは独特の匂いが漂っていたので、私は再度カメオさんと目を合わす。これは…
「紀州産最高級青梅の塩漬け。いわゆるまだらめが欲してた…‘カリ梅’だ」
貘様に激震が走る。もちろん貘様にだけだ。彼は熱に浮かされたかのようなふらふらとした足取りで木箱に近寄ると、慎重に中を覗き込む。
「商売用としてテイバー国に出していた申請がやっと通ったんだ。500個入りで20箱…計一万個もの‘カリ梅’だ。以前サンプルとして与えられた‘カリ梅’を捌けたのがデカかったーー一応弁当に付ける名目だったが仕入れればこっちのもんだ」
チャンプさんが説明している間も、貘様の視線はカリ梅に釘付けになったままだ。何なら、説明が終わっても無言のままなので、沈黙に耐えかねた私が「チャンプさん凄いですね」と代わりに声をかけてしまった程。
「ありがとう…さあまだらめ、食べてみてくれないか?」
「あ…ああ…」
恐る恐るカリ梅を口に入れた彼は、かっと目を見開いて「超ベリーグッド!チョベリグッ!!」と叫んだ。センスが古い。
「コレ…ジンジョウジャナイレベルナンデスケド…」
とはいえ、感動のあまり仕方がなかったのだろう。次はカタコトになってしまった彼に、チャンプさんは「こっちも届いてる。別名義で注文しておいたヤツだ!」とにっこり笑いかけてまた別の箱を開けた。
そこから出てきたのは、大量のカリ梅のパッケージ。
「良いよ!うん…うんっ…クール!」
「つーか、わざわざそんな袋が必要なの?」
「何言ってるの!コレがなきゃ何にも始まらないじゃない!後は袋に詰めて封をするだけ…!」
貘様が熱のこもった目でこちらを見てくる。ふむ、なるほど?