梅の遊撃
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「先生、テイバー大祭来る?」
いつも通り畑の片隅を間借りして青空教室をしている最中、子どもの一人がそう問い掛けてきたので「何それ?」と返した。すると、子どもたちは俄かに騒がしくなる。知らないなんてあり得ないというこの反応、どうやらかなり大きいお祭りなのだろう。私は「楽しいの?」と続け、子どもたちが矢継ぎ早に発してくる言葉をあるだけ受け取った。
曰く、テイバー大祭は名の通りテイバー国を挙げてのお祭りで、テイバー城の前の大通りを埋め尽くす屋台と、フィナーレの大きな花火が目玉。当然これを目当てに本土から‘帰国’してくる人も多く、たまにしか会えない友人に会える日でもあるという。つまり、みんなが待ち侘びた日なんだそうだ。
あらかた理解した私は大きく頷くと「先生は行かないかな」と答えた。生憎お出かけというものがそんなに好きではないのだ。
「えー!」と、子ども達から盛大なブーイングを喰らう中、私は気にせず算数の授業に戻る。
が、そう簡単には行かないのが世の常というもので。
「ねえねえ晴乃チャン、お祭りとか興味ない?」
「ないですね」
「うっそぉ」
「ホントです。もう全然全く興味ない」
私はホテルに戻るなり絡んでくる貘様をかわし、部屋に戻ろうと奥のエレベーターを目指す。しかし、この男は中々しつこいので、しっかりと私の手首を掴むと、「まあまあ、デートだと思ってさ」なんて嘯いた。
「なおさら嫌ですよ」
「でも、そうなると晴乃チャンに新国王になってもらわなきゃだけど、いいのかな?」
「はぁ!?全然良くないです!!なんでそうなっちゃったんですか!?」
「だって、俺らの中で一番顔が売れてるの晴乃チャンなんだもん」
「はいぃ?」
「だから、知名度が高い人が旗印になるのが合理的でしょ?それって誰かなー?」
「うっ…誰でしょうねー。伽羅さんとかかなー?」
「ふふ、んな訳ないじゃん」
貘様は鼻で笑ってくるけど、こちらからすれば大問題。化け物達の頂上決戦で、お飾りとはいえそんな目立つ位置に据えられるだなんて真っ平御免だ。
「ねえ、女奴隷の救世主で、運営お墨付きの豪農、ノヂシャチャン?…あ、闘技場にファンを集めつつある女ルーキー、もつけた方が良かったカナー?」
あ、伽羅さんは何した人だっけ?…うーん、ただの闘技場の大型ルーキーかあー。弱いなあー。あ、もちろん大型ルーキーはすごいけどさあー、やっぱりねー。わざとらしく腕を組んで、うんうん唸っている貘様。明らかに独り言を聞かせてきている。嫌味な男である。
「…一応聞きますけど、どうやって私と貘様の知名度を逆転させるおつもりで?」
「もちろん考えてるよー?大丈夫大丈夫」
「怪しいなあ」
「分かってる癖に」
貘様はにやりと口角を上げると、ずっとにぎっていた手首を離した。私はまだ残る感触を、手首を撫でて消そうとする。
「とにかく、テイバー大祭は楽しみにしててよ」
私の嫌味な所作もなんのその、貘様は私の目を真っ直ぐ見て、へらりと笑った。
いつも通り畑の片隅を間借りして青空教室をしている最中、子どもの一人がそう問い掛けてきたので「何それ?」と返した。すると、子どもたちは俄かに騒がしくなる。知らないなんてあり得ないというこの反応、どうやらかなり大きいお祭りなのだろう。私は「楽しいの?」と続け、子どもたちが矢継ぎ早に発してくる言葉をあるだけ受け取った。
曰く、テイバー大祭は名の通りテイバー国を挙げてのお祭りで、テイバー城の前の大通りを埋め尽くす屋台と、フィナーレの大きな花火が目玉。当然これを目当てに本土から‘帰国’してくる人も多く、たまにしか会えない友人に会える日でもあるという。つまり、みんなが待ち侘びた日なんだそうだ。
あらかた理解した私は大きく頷くと「先生は行かないかな」と答えた。生憎お出かけというものがそんなに好きではないのだ。
「えー!」と、子ども達から盛大なブーイングを喰らう中、私は気にせず算数の授業に戻る。
が、そう簡単には行かないのが世の常というもので。
「ねえねえ晴乃チャン、お祭りとか興味ない?」
「ないですね」
「うっそぉ」
「ホントです。もう全然全く興味ない」
私はホテルに戻るなり絡んでくる貘様をかわし、部屋に戻ろうと奥のエレベーターを目指す。しかし、この男は中々しつこいので、しっかりと私の手首を掴むと、「まあまあ、デートだと思ってさ」なんて嘯いた。
「なおさら嫌ですよ」
「でも、そうなると晴乃チャンに新国王になってもらわなきゃだけど、いいのかな?」
「はぁ!?全然良くないです!!なんでそうなっちゃったんですか!?」
「だって、俺らの中で一番顔が売れてるの晴乃チャンなんだもん」
「はいぃ?」
「だから、知名度が高い人が旗印になるのが合理的でしょ?それって誰かなー?」
「うっ…誰でしょうねー。伽羅さんとかかなー?」
「ふふ、んな訳ないじゃん」
貘様は鼻で笑ってくるけど、こちらからすれば大問題。化け物達の頂上決戦で、お飾りとはいえそんな目立つ位置に据えられるだなんて真っ平御免だ。
「ねえ、女奴隷の救世主で、運営お墨付きの豪農、ノヂシャチャン?…あ、闘技場にファンを集めつつある女ルーキー、もつけた方が良かったカナー?」
あ、伽羅さんは何した人だっけ?…うーん、ただの闘技場の大型ルーキーかあー。弱いなあー。あ、もちろん大型ルーキーはすごいけどさあー、やっぱりねー。わざとらしく腕を組んで、うんうん唸っている貘様。明らかに独り言を聞かせてきている。嫌味な男である。
「…一応聞きますけど、どうやって私と貘様の知名度を逆転させるおつもりで?」
「もちろん考えてるよー?大丈夫大丈夫」
「怪しいなあ」
「分かってる癖に」
貘様はにやりと口角を上げると、ずっとにぎっていた手首を離した。私はまだ残る感触を、手首を撫でて消そうとする。
「とにかく、テイバー大祭は楽しみにしててよ」
私の嫌味な所作もなんのその、貘様は私の目を真っ直ぐ見て、へらりと笑った。