クレオメ的生活
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この女、なかなかどうして動けるな。俺は忙しなく動き回る伏龍の背中を見つめて思う。能輪が賭郎には似つかわしくない華奢な女を連れてきた日は驚いたが、とりあえず勤務3日目、まだ元気に働いている。
空いている時間は過去の立会い資料を読み漁り、人が来れば真っ先に応対する。そして分からないことがあれば…
「滝さーん!」
と、躊躇わず質問しに来ることができる。模範的な社会人だ。
「次はどうした」
俺は車椅子を押して彼女の方へ近寄ろうとするが、彼女に制される。彼女は資料を数枚持って駆け寄って来ると、それを俺の机に広げた。
「この立会人さんって、どんな人ですか?」
ふむ。俺は自分の髭をひとつ撫で、資料を手に取る。彼女は立会人や会員の人柄を良く知りたがる。ベストな組み合わせを探っている。どんなにそれが余計なお世話か、余計な仕事かを諭そうともそのスタンスは変えない気らしい。
立会人はどんな困難な仕事もこなす。否、こなさねばならぬ。それが立会人。本来であれば余計な気遣いなど無礼に当たる。機械的に振り分けていくべきなのだ。それをどんなに言い聞かせても、彼女は困ったようにただ笑う。理由を聞いても、過去に何かあったのかと聞いても、同じ笑顔で笑う。なにか思いがあるのだろう。人に歴史あり、だ。いつか話してくれる時が来るだろうか。とにかく、出会って3日で聞くにはまだ早いということだ。俺はその件については立会人達に悟らせないことを条件に黙認することに決めた。
そんな頑固な彼女だが、人当たりは非常に良く、常に笑顔で応対する姿が来客に好評だ。こっそりと俺に彼氏の有無を尋ねてくる輩がこの3日で5人。全員に本人に聞くように促してはいるが、真実は俺も知らない。ただ、目蒲がいつも彼女を気に掛けているのは知っている。引き入れたのはお屋形様だと能輪から聞いた。怪しいのはこの二人か。とはいえ、娘ほどに年が違う女の恋愛に首を突っ込む気はない。見守ろう。
「滝さん滝さん!紅茶いかがですか?」
「珈琲を頼む」
珈琲かぁ、と不服そうな声を上げながらも給湯室に消えていく彼女の背中を見送る。何にせよ、賑やかになるのは良い事だ。癖があるのは賭郎に勤めるものなら誰しも同じ。それを楽しもうじゃあないか。
淹れてくれた珈琲に口をつければ、爽やかな苦味と酸味が口に広がる。珈琲が美味ければこちらとしては何も言うことはない。
空いている時間は過去の立会い資料を読み漁り、人が来れば真っ先に応対する。そして分からないことがあれば…
「滝さーん!」
と、躊躇わず質問しに来ることができる。模範的な社会人だ。
「次はどうした」
俺は車椅子を押して彼女の方へ近寄ろうとするが、彼女に制される。彼女は資料を数枚持って駆け寄って来ると、それを俺の机に広げた。
「この立会人さんって、どんな人ですか?」
ふむ。俺は自分の髭をひとつ撫で、資料を手に取る。彼女は立会人や会員の人柄を良く知りたがる。ベストな組み合わせを探っている。どんなにそれが余計なお世話か、余計な仕事かを諭そうともそのスタンスは変えない気らしい。
立会人はどんな困難な仕事もこなす。否、こなさねばならぬ。それが立会人。本来であれば余計な気遣いなど無礼に当たる。機械的に振り分けていくべきなのだ。それをどんなに言い聞かせても、彼女は困ったようにただ笑う。理由を聞いても、過去に何かあったのかと聞いても、同じ笑顔で笑う。なにか思いがあるのだろう。人に歴史あり、だ。いつか話してくれる時が来るだろうか。とにかく、出会って3日で聞くにはまだ早いということだ。俺はその件については立会人達に悟らせないことを条件に黙認することに決めた。
そんな頑固な彼女だが、人当たりは非常に良く、常に笑顔で応対する姿が来客に好評だ。こっそりと俺に彼氏の有無を尋ねてくる輩がこの3日で5人。全員に本人に聞くように促してはいるが、真実は俺も知らない。ただ、目蒲がいつも彼女を気に掛けているのは知っている。引き入れたのはお屋形様だと能輪から聞いた。怪しいのはこの二人か。とはいえ、娘ほどに年が違う女の恋愛に首を突っ込む気はない。見守ろう。
「滝さん滝さん!紅茶いかがですか?」
「珈琲を頼む」
珈琲かぁ、と不服そうな声を上げながらも給湯室に消えていく彼女の背中を見送る。何にせよ、賑やかになるのは良い事だ。癖があるのは賭郎に勤めるものなら誰しも同じ。それを楽しもうじゃあないか。
淹れてくれた珈琲に口をつければ、爽やかな苦味と酸味が口に広がる。珈琲が美味ければこちらとしては何も言うことはない。