ベロニカの突撃
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「流石に不憫なんで、普通にお見せしましょうね」
晴乃は笑いまじりにそう言って、一旦ドアの向こうへはける。すると、貘様は「何見せてくれるのー?」と軽薄な声を出しつつも、いつもの読めない笑顔に戻って重厚なソファに腰を下ろした。
だが、それも彼女が戻ってくるまでの話。ソフトモヒカンででっぷりした、あからさまなチンピラを引き連れてきたので。
「ええ……晴乃チャン、それ誰」
口元を引き攣らせ、貘様が問い掛ける。それに彼女はしたり顔になって、「私の奴隷です。羨ましいでしょ?」なんて嘯く。
「いやあ……ううん」
「あら残念、いりませんか?このおっさんが風俗店18店舗のオーナーだとしても?」
「えっ、こいつ誰っすか」
「うるさいよゴラゴラさん。黙って売られなさい」
辛辣な晴乃を他所に、貘様の下がっていた眉尻が上がる。
「あなたの居場所の情報を仕入れてきたのがこのおっさんだとしても?このおっさんがこの島の裏産業である麻薬売買の情報を握っているとしても?ホントにいらないなら野に放ちますが」
「いります!ありがとう晴乃チャン!」
「いえいえ。約束通り梟を卍に招き入れてくださった貘様の為ですもの、これくらいはね」
「晴乃チャン……!」
貘様が感動に打ち震えながら両手を広げる。それをゴラゴラの背後に回ってやり過ごしながら、晴乃は俺に「じゃあ能輪立会人、私のゴラゴラさんに関する権利をそのまま貘様に」と指示した。もちろん「かしこまりました」と頭を下げる。
「いいの?随分と不用心だなーって思うけど?」
貘様が首を傾げるが、晴乃は麗らかに微笑んだまま「いいんですよ」なんて言ってくれるものだからほっこりした顔になると、涙を拭く真似をしながら更に近付いていく。
「優しいなあ……味方になってくれるんだ……遂に俺の事好きになってくれたんだね……」
「いーえーまさか。義理は果たした、ってヤツです」
「へっ?!」
「じゃ、私は梟に接触する旅に出ますので、お元気で」
晴乃は回れ右をして、スタスタドアへと歩いて行く。ふざけながら詰めた距離が一気に開くので、貘様は大慌てだ。
「えええちょっと待って待って!晴乃チャン?!」
「待ちませんよー。どうぞ貘様もラロ様も勝手に潰しあって対消滅してください」
「辛辣すぎない?!」
「はい」
「はいじゃなくてー!」
「そういう立場の女って分かってて招き入れたのは貘様でしょ!」
「ううんそうだけど!」
貘様は咄嗟に晴乃の左手首を掴む。それで彼女は大袈裟なため息と共に立ち止まると「じゃ、貘様も私に価値を示して下さいよ」と冷めた目で振り返った。
「……ふうん?」
「私があなたに尽くしたくなるようなヤツ、下さいよ」
刹那、軽薄な男の目はギャンブラーのものへと切り替わり、全てを見通す墨色を逆に見つめ返す。無言。
目線だけのやり取りをしばらく続けた後、貘様は「何をあげようかなぁ」と顎に指を添えた。
「そ・う・だ・な〜。じゃあ、特別なもの、あげよっかな?」
「ほう?」
「‘はちの王子さま’……どうかな?」
貘様の提案に、晴乃はすっと目を細めた。
「……ええ、それを本当に差し出せるってんなら」
「じゃあ、商談成立ってことね!あーよかった。晴乃チャンが味方になってくれなきゃ、俺手詰まりだったよ」
「またまた」
彼女はけらけら笑いながら、机を挟んで貘様の反対側。重厚な二人掛けソファに腰を下ろす。
ーーーーーーーーーー
だるい。ああだるい。私はさっきまで振り回していた長剣を鞘に収め、さっさと衆目から離れる。8人中3位に入れたのだから、まあ誰からも文句は出ないだろう。私はそのまま客席まで戻ってしまおうと歩みを早めるが、一方的に見知った顔を見つけて立ち止まる。
「伽羅、元立会人」
思わず呼びかけると、彼はギロリと見下ろしてくるので後ずさる。最近捨隈さんからヴォジャからと本職の方から殺気を向けられる事が多かったので気が大きくなっていたが、流石にトップオブトップの殺気は桁が違う。救いを求めて舞台袖にいる人達を目だけで見回すが、遠巻きに見てくる者ばかり。焦って思わず「えと、もう会員同士ぶつかるんですね。展開早くてびっくりしちゃう」なんて口走ってから、自己紹介もまだだった事を思い出す。急いでまた口を開こうとして、先手を取られる。
「いるのか」
「あっあっハイ」
私が咄嗟に目線を送った先。私達が話し出した途端に抑えきれぬ興味の視線を送ってきた男を確認して、伽羅元立会人は「フン」と鼻を鳴らした。
「次に軽率な発言をしてみろ、お前を殺すのは俺になる」
そう言うと、彼は返事も待たずバトルフィールドへと歩き出す。しばらく呆然と見送ってから、私はぶるりと身を震わせた。
「怖ぇ……卍戦やめようかな……」
とかなんとか言いつつも目線がバトルフィールドから離れないのは、伽羅元立会人よりもむしろ、相手の男が気になってしまったから。
晴乃は笑いまじりにそう言って、一旦ドアの向こうへはける。すると、貘様は「何見せてくれるのー?」と軽薄な声を出しつつも、いつもの読めない笑顔に戻って重厚なソファに腰を下ろした。
だが、それも彼女が戻ってくるまでの話。ソフトモヒカンででっぷりした、あからさまなチンピラを引き連れてきたので。
「ええ……晴乃チャン、それ誰」
口元を引き攣らせ、貘様が問い掛ける。それに彼女はしたり顔になって、「私の奴隷です。羨ましいでしょ?」なんて嘯く。
「いやあ……ううん」
「あら残念、いりませんか?このおっさんが風俗店18店舗のオーナーだとしても?」
「えっ、こいつ誰っすか」
「うるさいよゴラゴラさん。黙って売られなさい」
辛辣な晴乃を他所に、貘様の下がっていた眉尻が上がる。
「あなたの居場所の情報を仕入れてきたのがこのおっさんだとしても?このおっさんがこの島の裏産業である麻薬売買の情報を握っているとしても?ホントにいらないなら野に放ちますが」
「いります!ありがとう晴乃チャン!」
「いえいえ。約束通り梟を卍に招き入れてくださった貘様の為ですもの、これくらいはね」
「晴乃チャン……!」
貘様が感動に打ち震えながら両手を広げる。それをゴラゴラの背後に回ってやり過ごしながら、晴乃は俺に「じゃあ能輪立会人、私のゴラゴラさんに関する権利をそのまま貘様に」と指示した。もちろん「かしこまりました」と頭を下げる。
「いいの?随分と不用心だなーって思うけど?」
貘様が首を傾げるが、晴乃は麗らかに微笑んだまま「いいんですよ」なんて言ってくれるものだからほっこりした顔になると、涙を拭く真似をしながら更に近付いていく。
「優しいなあ……味方になってくれるんだ……遂に俺の事好きになってくれたんだね……」
「いーえーまさか。義理は果たした、ってヤツです」
「へっ?!」
「じゃ、私は梟に接触する旅に出ますので、お元気で」
晴乃は回れ右をして、スタスタドアへと歩いて行く。ふざけながら詰めた距離が一気に開くので、貘様は大慌てだ。
「えええちょっと待って待って!晴乃チャン?!」
「待ちませんよー。どうぞ貘様もラロ様も勝手に潰しあって対消滅してください」
「辛辣すぎない?!」
「はい」
「はいじゃなくてー!」
「そういう立場の女って分かってて招き入れたのは貘様でしょ!」
「ううんそうだけど!」
貘様は咄嗟に晴乃の左手首を掴む。それで彼女は大袈裟なため息と共に立ち止まると「じゃ、貘様も私に価値を示して下さいよ」と冷めた目で振り返った。
「……ふうん?」
「私があなたに尽くしたくなるようなヤツ、下さいよ」
刹那、軽薄な男の目はギャンブラーのものへと切り替わり、全てを見通す墨色を逆に見つめ返す。無言。
目線だけのやり取りをしばらく続けた後、貘様は「何をあげようかなぁ」と顎に指を添えた。
「そ・う・だ・な〜。じゃあ、特別なもの、あげよっかな?」
「ほう?」
「‘はちの王子さま’……どうかな?」
貘様の提案に、晴乃はすっと目を細めた。
「……ええ、それを本当に差し出せるってんなら」
「じゃあ、商談成立ってことね!あーよかった。晴乃チャンが味方になってくれなきゃ、俺手詰まりだったよ」
「またまた」
彼女はけらけら笑いながら、机を挟んで貘様の反対側。重厚な二人掛けソファに腰を下ろす。
ーーーーーーーーーー
だるい。ああだるい。私はさっきまで振り回していた長剣を鞘に収め、さっさと衆目から離れる。8人中3位に入れたのだから、まあ誰からも文句は出ないだろう。私はそのまま客席まで戻ってしまおうと歩みを早めるが、一方的に見知った顔を見つけて立ち止まる。
「伽羅、元立会人」
思わず呼びかけると、彼はギロリと見下ろしてくるので後ずさる。最近捨隈さんからヴォジャからと本職の方から殺気を向けられる事が多かったので気が大きくなっていたが、流石にトップオブトップの殺気は桁が違う。救いを求めて舞台袖にいる人達を目だけで見回すが、遠巻きに見てくる者ばかり。焦って思わず「えと、もう会員同士ぶつかるんですね。展開早くてびっくりしちゃう」なんて口走ってから、自己紹介もまだだった事を思い出す。急いでまた口を開こうとして、先手を取られる。
「いるのか」
「あっあっハイ」
私が咄嗟に目線を送った先。私達が話し出した途端に抑えきれぬ興味の視線を送ってきた男を確認して、伽羅元立会人は「フン」と鼻を鳴らした。
「次に軽率な発言をしてみろ、お前を殺すのは俺になる」
そう言うと、彼は返事も待たずバトルフィールドへと歩き出す。しばらく呆然と見送ってから、私はぶるりと身を震わせた。
「怖ぇ……卍戦やめようかな……」
とかなんとか言いつつも目線がバトルフィールドから離れないのは、伽羅元立会人よりもむしろ、相手の男が気になってしまったから。