ジニアの初撃
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勝負は拮抗した。いや、晴乃が調節しているのは誰の目に見ても明らかだったが。基本的に三回までで終わる勝負。晴乃の負けがこんできた時のみ勝負は長引き、そしてオーナーが負ける。彼が‘遊ばれている’と気付き、苛立ちを露わにするのも無理もない話だった。
「ねえ、アルト君の事なんだけどさ」
オーナーが二度目の物言いを付けようと口を開いた時、晴乃が先に喋り出した。遊女の肩がピクリと揺れ、その息子が「なあにー?」と返事をした。
「どうしてあの子がお薬を飲んでるの?」
「…知らねえよ」
「ふうん…じゃ、勝手に当てさせてもらうね。もし私の予想通りだったら…ただじゃおかない」
彼女が灯す青い焔が、部屋の空気を冷やす。
「本国の価値観で言うなら、麻薬って確か、グラムにつき何千何万円の世界だよね?相場よく知らないけどさ。何故それを奴隷の息子が使っているか?それだけの金銭的余裕があれば、自分が奴隷から抜け出すのが先決だよね。それを思い付かないほど馬鹿には見えない。ということは、抜けられない理由があるって事だ。例えば、あんたか店長に脅されてるとか?」
彼女は店長とオーナーの表情を順番に確認し、「ふうん、店長が脅してた訳か。で、あんたもそれは認識してた」と笑った。そして、ろくに見もせずにお猪口をひっくり返す。勿論その下に菊の花は無い。
「さて、‘脅されていた’。でもそれも変な話なんだ。だって彼女もアルト君ももう奴隷で、これ以上下には落ちられない。何を盾に脅していたのか?よく漫画であるのは…‘殺されたくなければ’だよね。アルト君は日本を知らない…つまり、ここで生まれている。無国籍児である可能性が高い。殺されても捜査の手はここまで及ばない… ああ、これじゃまだ60点って顔だね。そりゃそうだ。殺すってんなら、麻薬を飲ます意味がない。でも、店長が麻薬を融通するメリットと、お姉さんがそれを息子に飲ますメリット。その視点で考えれば見えてくるね。アルト君が健康体じゃダメなんだ。そうでしょ?血液や臓器、満遍なく売るなら、健康体じゃなきゃね。‘成人男性なら200万’。賭郎じゃ常識だ。ねえ?能輪立会人」
「仰る通りです」
くっくっと喉奥で笑いながら、彼女はオーナーにお猪口をひっくり返すよう促す。そして、彼が空のお猪口を引いたのを見て、「よろしい」とまた笑い、自分も空のお猪口を引いた。
「ここまで正解でしょ?ふふ、そもそも役不足なのよ。あんたじゃ私に勝てないし、容赦して貰えるほど良い行いをしてこなかった。さあ続きを話そう…お姉さんが給料で自分を買えるようになった時、店長は迫った。‘奴隷をやめるなら息子の命はない。奴隷を続けるなら息子が生き延びるための麻薬を売ろう’と。有力な売春婦にはみんなこの手で脅してるのかな?お姉さんは…後者を選んだんだね。でもそれは地獄への第一歩だった。息子がヤク中になった今、本国には帰れない。すぐに警察に見つかってしまうし、ヤク中の子持ちでどう生きていくかの見通しも立たないからね。…産ませたのもわざと….だね?」
誰も答えないが、彼女には筒抜け。「許せないなあ」と呟いた彼女の冷たい瞳を見て、反論できる者はこの部屋にいない。
「早くひっくり返しなよ」
彼女が声を掛けると、オーナーは慌ててお猪口を返した。それは菊の花が隠されているものだった。
「‘菊の花’です。八店舗の権利がノヂシャ様に移行されます。また、それによりゴラゴラ様の持ち店舗がゼロとなりました。18対0で、ノヂシャ様の勝利です」
「よし」
彼女はすっと立ち上がり、「人身売買、麻薬取引、臓器売買、か。随分と後ろ暗い事だね。…まあいいや。どうせこの島、一ヶ月も持たないし」と頭を掻く。
「…え、伏龍さん、どういうことですか?」
木村が彼女の独り言に疑問を持ち、彼女に近付いていく。すると彼女は「後でね」と麗かに微笑み、座ったままのオーナーを見下ろした。
「さて、ゴラゴラさん。貴方は一ヶ月間私の奴隷です。という訳ですぐにあの親子と私が奴隷から抜け出して市民としてそれなりの暮らしをする為のお金を持って来てください。後の指示は思い付いたらやります。逃げたり、勝手な行動を取ったりしたりしたらお仕置きですからね」
「ねえ、アルト君の事なんだけどさ」
オーナーが二度目の物言いを付けようと口を開いた時、晴乃が先に喋り出した。遊女の肩がピクリと揺れ、その息子が「なあにー?」と返事をした。
「どうしてあの子がお薬を飲んでるの?」
「…知らねえよ」
「ふうん…じゃ、勝手に当てさせてもらうね。もし私の予想通りだったら…ただじゃおかない」
彼女が灯す青い焔が、部屋の空気を冷やす。
「本国の価値観で言うなら、麻薬って確か、グラムにつき何千何万円の世界だよね?相場よく知らないけどさ。何故それを奴隷の息子が使っているか?それだけの金銭的余裕があれば、自分が奴隷から抜け出すのが先決だよね。それを思い付かないほど馬鹿には見えない。ということは、抜けられない理由があるって事だ。例えば、あんたか店長に脅されてるとか?」
彼女は店長とオーナーの表情を順番に確認し、「ふうん、店長が脅してた訳か。で、あんたもそれは認識してた」と笑った。そして、ろくに見もせずにお猪口をひっくり返す。勿論その下に菊の花は無い。
「さて、‘脅されていた’。でもそれも変な話なんだ。だって彼女もアルト君ももう奴隷で、これ以上下には落ちられない。何を盾に脅していたのか?よく漫画であるのは…‘殺されたくなければ’だよね。アルト君は日本を知らない…つまり、ここで生まれている。無国籍児である可能性が高い。殺されても捜査の手はここまで及ばない… ああ、これじゃまだ60点って顔だね。そりゃそうだ。殺すってんなら、麻薬を飲ます意味がない。でも、店長が麻薬を融通するメリットと、お姉さんがそれを息子に飲ますメリット。その視点で考えれば見えてくるね。アルト君が健康体じゃダメなんだ。そうでしょ?血液や臓器、満遍なく売るなら、健康体じゃなきゃね。‘成人男性なら200万’。賭郎じゃ常識だ。ねえ?能輪立会人」
「仰る通りです」
くっくっと喉奥で笑いながら、彼女はオーナーにお猪口をひっくり返すよう促す。そして、彼が空のお猪口を引いたのを見て、「よろしい」とまた笑い、自分も空のお猪口を引いた。
「ここまで正解でしょ?ふふ、そもそも役不足なのよ。あんたじゃ私に勝てないし、容赦して貰えるほど良い行いをしてこなかった。さあ続きを話そう…お姉さんが給料で自分を買えるようになった時、店長は迫った。‘奴隷をやめるなら息子の命はない。奴隷を続けるなら息子が生き延びるための麻薬を売ろう’と。有力な売春婦にはみんなこの手で脅してるのかな?お姉さんは…後者を選んだんだね。でもそれは地獄への第一歩だった。息子がヤク中になった今、本国には帰れない。すぐに警察に見つかってしまうし、ヤク中の子持ちでどう生きていくかの見通しも立たないからね。…産ませたのもわざと….だね?」
誰も答えないが、彼女には筒抜け。「許せないなあ」と呟いた彼女の冷たい瞳を見て、反論できる者はこの部屋にいない。
「早くひっくり返しなよ」
彼女が声を掛けると、オーナーは慌ててお猪口を返した。それは菊の花が隠されているものだった。
「‘菊の花’です。八店舗の権利がノヂシャ様に移行されます。また、それによりゴラゴラ様の持ち店舗がゼロとなりました。18対0で、ノヂシャ様の勝利です」
「よし」
彼女はすっと立ち上がり、「人身売買、麻薬取引、臓器売買、か。随分と後ろ暗い事だね。…まあいいや。どうせこの島、一ヶ月も持たないし」と頭を掻く。
「…え、伏龍さん、どういうことですか?」
木村が彼女の独り言に疑問を持ち、彼女に近付いていく。すると彼女は「後でね」と麗かに微笑み、座ったままのオーナーを見下ろした。
「さて、ゴラゴラさん。貴方は一ヶ月間私の奴隷です。という訳ですぐにあの親子と私が奴隷から抜け出して市民としてそれなりの暮らしをする為のお金を持って来てください。後の指示は思い付いたらやります。逃げたり、勝手な行動を取ったりしたりしたらお仕置きですからね」