ジニアの初撃
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「はいはいいらっしゃいませー…って、誰だテメェ」
いかにも風俗店の店長ですといった風体の油ぎった男がにこやかに応対に出てきたが、黒服を脅した女の正体が風俗嬢と知り、明らかに態度を悪くした。
「なーんで風俗嬢が出歩いてんだー?あ?テメェその制服、ソロモンズダイナーのだろ。店長に言ってお仕置きしてもらおうかー?」
「好きにしなよ。私が得た情報は次のエージェントに引き継がれる。尾を踏まれた時点でチェックメイトだよ」
「エージェントぉ?馬鹿馬鹿しい、奴隷がヤクでもやったかあ?」
「おお?!」とガンつけながら、男は晴乃の肩を強く押した。勿論彼女は耐えきれず尻餅をつく。短いスカートが捲れ上がって白い太腿が露わになり、通行人が冷やかしの声を上げた。
「あら、やっぱり奴隷をヤク漬けにするのが常態化してる訳。でもウチの店員にはそんな感じの娘いなかったなぁ。使ってる店と使ってない店があるの?ふぅん…」
しかし、周りの声などどこ吹く風。彼女はそう言いながら事も無げに立ち上がると、スカートに付いた埃を払う。賭郎での生活は、良くも悪くも彼女を強かにさせた。理不尽な暴力など、最早慣れっこなのだ。
「この店は使ってる…麻薬取引をしている系列店がある?…じゃあ、黒幕はこの店のオーナーか」
ニヤニヤ笑いながら、彼女は男に近づく。じり、と砂利を踏みながら、男は後ずさるが…無駄だ。彼女の読心はもう始まっている。
「ああ…そうね。黒幕って事はないか。もっと上がいるよねえ。分かってる。これが島を支える産業なんだから…でも、いいんだ。目下の標的はあんたの店のオーナーだ。さあ、オーナーの名前と居場所を教えてよ。酷い目に遭いたくないのなら、ね」
「テメェさっきからなんなんだよ!奴隷風情が…ここで犯してやろーか!」
「あら、残念。オーナーを売らないだけの理性はあったのね」
微妙に噛み合わない会話。それもその筈、彼女は上辺の言葉と会話している訳ではない。
「なら、あんたに聞くわ。どうする?ここで話してもいいけど、損をするのはあんただよ」
「ごちゃごちゃうるせえなぁ!来いや!」
男は晴乃の髪をぐしゃっとわし掴むと、店内に引き摺り込む。それを弱々しく止めながら、木村も後を追った。
店内は当然ながら遊郭を模して作られている。入ってすぐの所に畳敷きの座敷が誂えられており、そこに座った遊女達とやり手婆がはらはらとこちらを伺っている。木村がまた気まずげに俯いた。しかし、本来引け目など感じている場合ではない。現に衆目から離れるや否や、店長は晴乃を三和土に投げた。手に絡んだ髪が抜けるぶちぶちという音の直後、ズァ、という三和土の砂に肌が擦れる音。木村が慌てて助け起こそうと近付くが、店長の背から放たれる圧に負けて立ち止まる。それを店長が鼻で笑った。
「弱っええ男」
「私らが普通じゃないだけよ」
晴乃はそう言ってむくりと起き上がる。
「悪い事は言わない。帰りなよ、ジョニー君」
「…ジミーです」
「ありゃ?そうだっけ」
彼女はくすくす笑いながら体についた砂を払い、腕にできた大きな擦り傷に気付いて顔を顰める。
「…痛い。ふざけんなよ」
ーーーーーーーーーー
男は部屋に入るなりその空気の異様さを感じ取り、室内を目だけで見回す。異様も異様な筈だ。自分を呼び出した張本人である店長は身を小さく縮こませ、居丈高に踏ん反り返る風俗嬢の前に座っている。そして、その後ろには真面目そうな男が神妙な顔で正座し、壁際では真っ青な顔をした子連れの遊女が三味線を弾いている。しかし、その空気に呑まれてはならない。そう判断した男は、「困るよアンデス君、私も忙しいんだからさあ」と、店長に歩み寄った。
「これどういう事なの?」
「すみません、オーナー…この女が」
「この女?失礼だな、ちゃんと紹介してよね、ホラ」
彼女はしっしっと払い除けるような仕草と共に店長にそう言った。もちろんその生意気な物言いは店長の反感を買い、彼は彼女を睨み付ける。
「じゃあ出てけ、部外者」
彼女が人の悪い笑みを浮かべてそう言うと、店長は慌てて横柄な態度を改め、「スミマセン!」と畳に頭を擦り付けた。そして、その姿勢のまま「この方は政府の…内閣…」と口籠る。彼女はため息をついて、「内閣情報調査室蜂名付き秘書」と言った。男はそれを聞くと焦った様に「そう、内閣情報調査室の、ノヂシャさんです!この島の麻薬取引の調査にいらっしゃいました!」と大きな声を出した。
「…だから何?ウチはそういうのやってないなぁ…お引き取り願ってよ、店長」
「だってよ、オジサン、去れ」
「いやいや、あんたに言ったんだけど?」
「へ?ああごめんなさいね、店長って仰ったもんだから」
くすくす笑いながら立ち上がると、晴乃はオーナーの目と鼻の先まで歩み寄り、ぐんと顔を近づけた。
「ごめんね。麻薬取引の情報も、この店の権利も、ぜーんぶ私が貰っちゃった。だからホラ、一応新店長としてオーナーに挨拶しなきゃと思って。仲良くしましょ?」
「はあ?!」
いかにも風俗店の店長ですといった風体の油ぎった男がにこやかに応対に出てきたが、黒服を脅した女の正体が風俗嬢と知り、明らかに態度を悪くした。
「なーんで風俗嬢が出歩いてんだー?あ?テメェその制服、ソロモンズダイナーのだろ。店長に言ってお仕置きしてもらおうかー?」
「好きにしなよ。私が得た情報は次のエージェントに引き継がれる。尾を踏まれた時点でチェックメイトだよ」
「エージェントぉ?馬鹿馬鹿しい、奴隷がヤクでもやったかあ?」
「おお?!」とガンつけながら、男は晴乃の肩を強く押した。勿論彼女は耐えきれず尻餅をつく。短いスカートが捲れ上がって白い太腿が露わになり、通行人が冷やかしの声を上げた。
「あら、やっぱり奴隷をヤク漬けにするのが常態化してる訳。でもウチの店員にはそんな感じの娘いなかったなぁ。使ってる店と使ってない店があるの?ふぅん…」
しかし、周りの声などどこ吹く風。彼女はそう言いながら事も無げに立ち上がると、スカートに付いた埃を払う。賭郎での生活は、良くも悪くも彼女を強かにさせた。理不尽な暴力など、最早慣れっこなのだ。
「この店は使ってる…麻薬取引をしている系列店がある?…じゃあ、黒幕はこの店のオーナーか」
ニヤニヤ笑いながら、彼女は男に近づく。じり、と砂利を踏みながら、男は後ずさるが…無駄だ。彼女の読心はもう始まっている。
「ああ…そうね。黒幕って事はないか。もっと上がいるよねえ。分かってる。これが島を支える産業なんだから…でも、いいんだ。目下の標的はあんたの店のオーナーだ。さあ、オーナーの名前と居場所を教えてよ。酷い目に遭いたくないのなら、ね」
「テメェさっきからなんなんだよ!奴隷風情が…ここで犯してやろーか!」
「あら、残念。オーナーを売らないだけの理性はあったのね」
微妙に噛み合わない会話。それもその筈、彼女は上辺の言葉と会話している訳ではない。
「なら、あんたに聞くわ。どうする?ここで話してもいいけど、損をするのはあんただよ」
「ごちゃごちゃうるせえなぁ!来いや!」
男は晴乃の髪をぐしゃっとわし掴むと、店内に引き摺り込む。それを弱々しく止めながら、木村も後を追った。
店内は当然ながら遊郭を模して作られている。入ってすぐの所に畳敷きの座敷が誂えられており、そこに座った遊女達とやり手婆がはらはらとこちらを伺っている。木村がまた気まずげに俯いた。しかし、本来引け目など感じている場合ではない。現に衆目から離れるや否や、店長は晴乃を三和土に投げた。手に絡んだ髪が抜けるぶちぶちという音の直後、ズァ、という三和土の砂に肌が擦れる音。木村が慌てて助け起こそうと近付くが、店長の背から放たれる圧に負けて立ち止まる。それを店長が鼻で笑った。
「弱っええ男」
「私らが普通じゃないだけよ」
晴乃はそう言ってむくりと起き上がる。
「悪い事は言わない。帰りなよ、ジョニー君」
「…ジミーです」
「ありゃ?そうだっけ」
彼女はくすくす笑いながら体についた砂を払い、腕にできた大きな擦り傷に気付いて顔を顰める。
「…痛い。ふざけんなよ」
ーーーーーーーーーー
男は部屋に入るなりその空気の異様さを感じ取り、室内を目だけで見回す。異様も異様な筈だ。自分を呼び出した張本人である店長は身を小さく縮こませ、居丈高に踏ん反り返る風俗嬢の前に座っている。そして、その後ろには真面目そうな男が神妙な顔で正座し、壁際では真っ青な顔をした子連れの遊女が三味線を弾いている。しかし、その空気に呑まれてはならない。そう判断した男は、「困るよアンデス君、私も忙しいんだからさあ」と、店長に歩み寄った。
「これどういう事なの?」
「すみません、オーナー…この女が」
「この女?失礼だな、ちゃんと紹介してよね、ホラ」
彼女はしっしっと払い除けるような仕草と共に店長にそう言った。もちろんその生意気な物言いは店長の反感を買い、彼は彼女を睨み付ける。
「じゃあ出てけ、部外者」
彼女が人の悪い笑みを浮かべてそう言うと、店長は慌てて横柄な態度を改め、「スミマセン!」と畳に頭を擦り付けた。そして、その姿勢のまま「この方は政府の…内閣…」と口籠る。彼女はため息をついて、「内閣情報調査室蜂名付き秘書」と言った。男はそれを聞くと焦った様に「そう、内閣情報調査室の、ノヂシャさんです!この島の麻薬取引の調査にいらっしゃいました!」と大きな声を出した。
「…だから何?ウチはそういうのやってないなぁ…お引き取り願ってよ、店長」
「だってよ、オジサン、去れ」
「いやいや、あんたに言ったんだけど?」
「へ?ああごめんなさいね、店長って仰ったもんだから」
くすくす笑いながら立ち上がると、晴乃はオーナーの目と鼻の先まで歩み寄り、ぐんと顔を近づけた。
「ごめんね。麻薬取引の情報も、この店の権利も、ぜーんぶ私が貰っちゃった。だからホラ、一応新店長としてオーナーに挨拶しなきゃと思って。仲良くしましょ?」
「はあ?!」