ジニアの初撃
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「ねえお願い木村君、私のお散歩延長してくれない?」
「いやいや、水揚げしますよ僕」
「いや、延長がいいの」
少年としっかり手を繋ぎながら、晴乃が微笑む。しかし、木村は当然理解できるはずもなく、「どうしてです」と聞いた。
「君に水揚げされちゃうとさ、君が厄介事に巻き込まれる可能性があるんだよね」
「ねえ伏龍さん、マジで何があったんですか?」
「秘密。大丈夫、お金は言い値で返すから」
「そうじゃなくて」
憮然とした様子の木村の肩を空いている左手でポンと叩くと、彼女は「さ、お母さんの所に案内してくれる?ここは危ないから付き添うよ」と少年に笑いかけた。
ーーーーーーーーーー
「観光地としては、滅茶苦茶面白いよね」
「あー、そうですね」
街並みを眺めながら彼女がそう呟くと、木村は気まずげに答える。
「いろんな国のそういう店を模して作ってあるんだね。あれは飾り窓だよね」
「ええーっと…そうっすね。オランダの…」
「オランダ?」
「海の向こうにはここ以外にも国があるのさ」
「へえー」
薬が抜け始めたらしく、少年が話に参加してきたので、晴乃は気さくに答える。
「オランダにはね、チューリップがたくさん咲いてるんだよ。知ってる?チューリップ」
「知らなーい」
「そっかあ。かわいい花だよ。今度見かけたら教えてあげるよ」
「街の方には咲いてるから、春になったら見に行くといいね」
「他にもいろんな国があってね、アメリカとかロシアとか日本とか…」と話を続けながら、晴乃は疑り深げに目を細めた。恐らく、日本に反応を示さなかった事に対してだろう。
「君…えーと、そういえば名前は?」
「僕ねー、アルト」
「そっか、アルト君か。私はノヂシャだよ。よろしくね」
「あ、僕はジミーだよ。よろしくね」
「君のハンネも初耳だよ」
そう彼女は笑い、少年に「アルト君、生まれも育ちもここ?」と聞く。すると彼は頷き、「うんー。ずーっとここー」とヘラヘラ笑った。
「そっかあ。ねえ、ここって何が有名なの?」
「へー?」
「例えば…カボチャとかニンジンとか」
「えー?僕のお母さん!」
「あら、お母さん有名人なの。いいね」
「うんー。ずーっとお店で歌ってるんだよー。忙しいんだってー」
「ああ、だからアルト君一人でいたのかあ」
彼女は頷いて、木村の方に向かって「そうだ、ここの名産ってなんなのさ」と聞いた。彼は胡乱な表情で「いや、無いっすよ、ゲームなんですから」と答える。彼女は肩を竦めて笑った。
「無いはずはないよ。じゃなきゃビオスの価値を保証できない」
木村は一瞬何かを言いかけ、すぐに口をつぐむ。気付いたようだった。全て内需で賄えないのなら、貿易の必要がある事に。
「気付いてるかな?私、‘このゲーム’でしくじって奴隷に落ちたわけじゃないよ。外の世界でのいざこざのせいで、ここの奴隷に落ちるって事は…この国は売春婦を本国から買える経済力があるんだよ。売春婦を買う為に何を売ってるのかなあ?観光?…違うよね。だって私、こんな面白いテーマパークがあるなんて知らなかった」
彼女はじっくりと木村が生唾を飲み込む様を観察すると、「さあ木村君、ここからはヤクザ者同士のバトルだよ。乗る?反る?」と笑顔をつくった。
ーー木村は着いてくる事を選んだ。それは漢を見せる為なのか、はたまた危険を理解出来ていないのか。もしくは、危険に魅入られたか。兎に角晴乃達はアルトの案内に従い、遊郭を模した風俗店に辿り着いた。彼等は二階の格子窓の向こう、三味線を奏でる遊女を見上げる。
「もしかして、お母さんアレ?」
「うんー!真ん中にいる!」
「おおう…凄そう」
晴乃は驚くそぶりこそ見せたが、すぐに気を取り直してアルトの肩に腕を回し、反対の手で大きく手を振った。遊女はすぐにそれに気付いてギョッとした顔をする。それを確認した彼女はニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、地面を指差すと‘降りてこい’と口パクで指示を出した。遊女が慌てて振り返り、後ろに控えているであろう誰かと話し出す。木村が異変を察知して「伏龍さん、逃げましょう」と耳打ちするが、当の本人は「バトルって言ったでしょ」とすげない。
「おいお前達!」
そうこうしてる内に降りてきた黒服が、野太い声で三人を呼んだ。手首を掴んで逃げようとする木村の手を払い、晴乃は麗かに黒服に歩み寄る。
「どうして奴隷の息子にまでヤクが回ってる?」
黒服が恫喝を始める一瞬前に、彼女は低い声で問い掛けた。黒服がフリーズするのに気をよくして、彼女は更に口を開く。
「知らないならいい。上の者を呼びなさい」
何かしら言おうとした黒服が言葉を纏める前に、彼女は「ほら、すぐに」と彼の背を押す。混乱したまま黒服はまた店内に戻っていった。
「いやいや、水揚げしますよ僕」
「いや、延長がいいの」
少年としっかり手を繋ぎながら、晴乃が微笑む。しかし、木村は当然理解できるはずもなく、「どうしてです」と聞いた。
「君に水揚げされちゃうとさ、君が厄介事に巻き込まれる可能性があるんだよね」
「ねえ伏龍さん、マジで何があったんですか?」
「秘密。大丈夫、お金は言い値で返すから」
「そうじゃなくて」
憮然とした様子の木村の肩を空いている左手でポンと叩くと、彼女は「さ、お母さんの所に案内してくれる?ここは危ないから付き添うよ」と少年に笑いかけた。
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「観光地としては、滅茶苦茶面白いよね」
「あー、そうですね」
街並みを眺めながら彼女がそう呟くと、木村は気まずげに答える。
「いろんな国のそういう店を模して作ってあるんだね。あれは飾り窓だよね」
「ええーっと…そうっすね。オランダの…」
「オランダ?」
「海の向こうにはここ以外にも国があるのさ」
「へえー」
薬が抜け始めたらしく、少年が話に参加してきたので、晴乃は気さくに答える。
「オランダにはね、チューリップがたくさん咲いてるんだよ。知ってる?チューリップ」
「知らなーい」
「そっかあ。かわいい花だよ。今度見かけたら教えてあげるよ」
「街の方には咲いてるから、春になったら見に行くといいね」
「他にもいろんな国があってね、アメリカとかロシアとか日本とか…」と話を続けながら、晴乃は疑り深げに目を細めた。恐らく、日本に反応を示さなかった事に対してだろう。
「君…えーと、そういえば名前は?」
「僕ねー、アルト」
「そっか、アルト君か。私はノヂシャだよ。よろしくね」
「あ、僕はジミーだよ。よろしくね」
「君のハンネも初耳だよ」
そう彼女は笑い、少年に「アルト君、生まれも育ちもここ?」と聞く。すると彼は頷き、「うんー。ずーっとここー」とヘラヘラ笑った。
「そっかあ。ねえ、ここって何が有名なの?」
「へー?」
「例えば…カボチャとかニンジンとか」
「えー?僕のお母さん!」
「あら、お母さん有名人なの。いいね」
「うんー。ずーっとお店で歌ってるんだよー。忙しいんだってー」
「ああ、だからアルト君一人でいたのかあ」
彼女は頷いて、木村の方に向かって「そうだ、ここの名産ってなんなのさ」と聞いた。彼は胡乱な表情で「いや、無いっすよ、ゲームなんですから」と答える。彼女は肩を竦めて笑った。
「無いはずはないよ。じゃなきゃビオスの価値を保証できない」
木村は一瞬何かを言いかけ、すぐに口をつぐむ。気付いたようだった。全て内需で賄えないのなら、貿易の必要がある事に。
「気付いてるかな?私、‘このゲーム’でしくじって奴隷に落ちたわけじゃないよ。外の世界でのいざこざのせいで、ここの奴隷に落ちるって事は…この国は売春婦を本国から買える経済力があるんだよ。売春婦を買う為に何を売ってるのかなあ?観光?…違うよね。だって私、こんな面白いテーマパークがあるなんて知らなかった」
彼女はじっくりと木村が生唾を飲み込む様を観察すると、「さあ木村君、ここからはヤクザ者同士のバトルだよ。乗る?反る?」と笑顔をつくった。
ーー木村は着いてくる事を選んだ。それは漢を見せる為なのか、はたまた危険を理解出来ていないのか。もしくは、危険に魅入られたか。兎に角晴乃達はアルトの案内に従い、遊郭を模した風俗店に辿り着いた。彼等は二階の格子窓の向こう、三味線を奏でる遊女を見上げる。
「もしかして、お母さんアレ?」
「うんー!真ん中にいる!」
「おおう…凄そう」
晴乃は驚くそぶりこそ見せたが、すぐに気を取り直してアルトの肩に腕を回し、反対の手で大きく手を振った。遊女はすぐにそれに気付いてギョッとした顔をする。それを確認した彼女はニヤリと人の悪い笑みを浮かべ、地面を指差すと‘降りてこい’と口パクで指示を出した。遊女が慌てて振り返り、後ろに控えているであろう誰かと話し出す。木村が異変を察知して「伏龍さん、逃げましょう」と耳打ちするが、当の本人は「バトルって言ったでしょ」とすげない。
「おいお前達!」
そうこうしてる内に降りてきた黒服が、野太い声で三人を呼んだ。手首を掴んで逃げようとする木村の手を払い、晴乃は麗かに黒服に歩み寄る。
「どうして奴隷の息子にまでヤクが回ってる?」
黒服が恫喝を始める一瞬前に、彼女は低い声で問い掛けた。黒服がフリーズするのに気をよくして、彼女は更に口を開く。
「知らないならいい。上の者を呼びなさい」
何かしら言おうとした黒服が言葉を纏める前に、彼女は「ほら、すぐに」と彼の背を押す。混乱したまま黒服はまた店内に戻っていった。