ジニアの初撃
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
彼女の動きに合わせて、ミニ丈のチュチュが揺れる。まるで風に揺られる花のように。一般的なレストランとは違う、扇情的なウェイトレス姿の彼女だが、笑顔で忙しなく働く健気な姿は、不思議なほどに淫卑さを感じさせない。
「あ!いらっしゃいませー!空いてる席にどうぞー!」
ウェスタンドアを押して入店してきた男性ににっこりと笑いかけ、運んでいたピラフを客のテーブルに「お待たせしましたー!」と置いた。少し遠回りして何枚か皿を回収しつつ、厨房へと戻る。こっそり尻を揉もうとした男の手が、彼女の機敏な動きを捉えきれずにすかった。
てきぱき。
くるくる。
にこにこ。
彼女は働く。何も悪い事なんて起きてやしないかのように、麗かに。一瞬だけその笑顔が曇るのは、店員が客の手を引いて二階へ上がって行く時だけ。
からんころんとドアに取り付けられたカウベルが新しい客の来店を告げ、彼女はまた元気に「いらっしゃいませー!」と声を掛ける。客はその明るい声の主の方に顔を向け、「えっ」と声を上げる。ドア近くの席に座っていた数人がその客の異変に気付き、彼に注目する。
「伏龍、さん…?」
呼ばれた本人は、厨房に消えようとしていた筈がくるりと踵を返し、早足で客に歩み寄っていく。
「売春婦を本名で呼ぶ奴がいるか、馬鹿!」
「えっあっごめっ…いや違う何でここに?!」
「ご指名は30分50ビオスでございまーす」
「えーっ…あーっ…」
客は暫く声にならない声を出して悩むと、意を決して「店長!この子とお散歩コース一時間で!」と声を上げた。
ーーーーーーーーーー
「ちょっと!一体何があったんですか伏龍さん!」
「ノヂシャね、今」
「そんなのどうだっていいんですよもー!」
店から出るなり怒り出した客とは対照的に、晴乃は気怠そうに頭を掻いている。
「マジで関わらない方がいいよ。抱くのも他の女の子にした方がいい。木村君、まだ教員でしょ?」
客ーー木村はあっけらかんと発された言葉に一瞬赤面するが、その他の言葉の不穏さに直ぐに正気に戻り、「マジで何があったんですか」と聞いた。しかし、彼女はそれに答えず、ただ「ちょっと歩こうか」と返した。
木村の同意を得て、二人はゆっくり歩き出す。右を見ても左を見ても売春宿かラブホテルという街並みを物珍しそうに眺めながら、晴乃は話し出す。
「今私ね、ヤクザ者なんだ」
「ヤクザ…」
「うん。ざっくり言うと、だけどね」
彼女は笑顔を見せるが、それをどう解釈したか、木村はキッと目つきを険しくさせ、「脅されてるんですね」と低い声で言った。彼女はその剣幕に驚き「いやそんな事ないよ!?」と両手を振る。
「強がらないで下さい…!分かってるんです!浩一君も言っていました、先生は僕を助けてくれたって!」
「待って、職員室でどんなストーリーになってる?」
「伏龍さんは浩一君を助ける為に悪の組織と戦い、浩一君の平和を勝ち取ったが…その身は代わりに拘束され、悪の組織に利用されていると…」
「…あながち間違ってないのがまたムカつくね」
てか、悪の組織と戦うって私何者よ。と一人ごちる彼女だったが、それに全く目を向けず、木村はその目に炎を灯して「伏龍さん、僕が貴女を水揚げします。帰りましょう!」と彼女の両手を取り、胸の前で握りしめる。
「え、ちょっと、落ち着こうよ?!」
目を白黒させる彼女だったが、すぐに後続の少年にドンとぶつかられて正気に返る。晴乃は自分が突然立ち止まったせいだと謝ろうとして、目を丸くした。
「…ねえ君、どうしたの?」
異様さを感じ取ったのは彼女だからだろう。隣ーーこの場合正面と言うのか?ーーにいた木村は彼女の言葉に首を捻るが、信頼と実績があるのだろう。何も聞かず、握っていた手を離した。彼女は自由になった手をそっと少年の肩に乗せると、目の高さを合わせた。しかし、目が合わない。
「お姉さんを見ますよ。お姉さんの目を見ます」
落ち着いた、彼女にしては低い声で晴乃は少年に声を掛ける。しかし、彼は、にへにへと不気味な笑みを浮かべるだけで何も反応しない。
「…自閉ですか?」
「…いや…違うよこれ…」
酔わされた?と、一応本人に聞いてみる彼女だったが、明瞭な答えは得られない。
「お家の人はどこかなあ?どこに住んでるの?何年生かな?」
初めて見る症状に首を傾げつつも、彼女は何かしら反応が無いかと様々な問い掛けを試みる。すると、「僕は天才だから学校は行かないんだよー」と、突然軽薄な口調で言葉が返ってきて、彼女は目を丸くした。しかし、一瞬でプロの目つきに変わる。それは木村も同じだった。
「そっかあ!凄いね!」
「お母さんが褒めてくれたの?」
「うんー。お母さん言ってたー」
「そっかそっか。褒めてくれて素敵なお母さんだね」
「お母さんねー、いい子にしてるとご褒美くれるよー」
「そうなんだー!いいね、何くれるの?」
「あんねー、タバコなんだけどねー、特別なやつなんだよー」
「わあ、素敵!」
「いいね!今持ってる?見てみたいな!」
テンション高くそう返しつつ、二人はアイコンタクトを交わす。晴乃の口が‘麻薬’と動いた。
「あ!いらっしゃいませー!空いてる席にどうぞー!」
ウェスタンドアを押して入店してきた男性ににっこりと笑いかけ、運んでいたピラフを客のテーブルに「お待たせしましたー!」と置いた。少し遠回りして何枚か皿を回収しつつ、厨房へと戻る。こっそり尻を揉もうとした男の手が、彼女の機敏な動きを捉えきれずにすかった。
てきぱき。
くるくる。
にこにこ。
彼女は働く。何も悪い事なんて起きてやしないかのように、麗かに。一瞬だけその笑顔が曇るのは、店員が客の手を引いて二階へ上がって行く時だけ。
からんころんとドアに取り付けられたカウベルが新しい客の来店を告げ、彼女はまた元気に「いらっしゃいませー!」と声を掛ける。客はその明るい声の主の方に顔を向け、「えっ」と声を上げる。ドア近くの席に座っていた数人がその客の異変に気付き、彼に注目する。
「伏龍、さん…?」
呼ばれた本人は、厨房に消えようとしていた筈がくるりと踵を返し、早足で客に歩み寄っていく。
「売春婦を本名で呼ぶ奴がいるか、馬鹿!」
「えっあっごめっ…いや違う何でここに?!」
「ご指名は30分50ビオスでございまーす」
「えーっ…あーっ…」
客は暫く声にならない声を出して悩むと、意を決して「店長!この子とお散歩コース一時間で!」と声を上げた。
ーーーーーーーーーー
「ちょっと!一体何があったんですか伏龍さん!」
「ノヂシャね、今」
「そんなのどうだっていいんですよもー!」
店から出るなり怒り出した客とは対照的に、晴乃は気怠そうに頭を掻いている。
「マジで関わらない方がいいよ。抱くのも他の女の子にした方がいい。木村君、まだ教員でしょ?」
客ーー木村はあっけらかんと発された言葉に一瞬赤面するが、その他の言葉の不穏さに直ぐに正気に戻り、「マジで何があったんですか」と聞いた。しかし、彼女はそれに答えず、ただ「ちょっと歩こうか」と返した。
木村の同意を得て、二人はゆっくり歩き出す。右を見ても左を見ても売春宿かラブホテルという街並みを物珍しそうに眺めながら、晴乃は話し出す。
「今私ね、ヤクザ者なんだ」
「ヤクザ…」
「うん。ざっくり言うと、だけどね」
彼女は笑顔を見せるが、それをどう解釈したか、木村はキッと目つきを険しくさせ、「脅されてるんですね」と低い声で言った。彼女はその剣幕に驚き「いやそんな事ないよ!?」と両手を振る。
「強がらないで下さい…!分かってるんです!浩一君も言っていました、先生は僕を助けてくれたって!」
「待って、職員室でどんなストーリーになってる?」
「伏龍さんは浩一君を助ける為に悪の組織と戦い、浩一君の平和を勝ち取ったが…その身は代わりに拘束され、悪の組織に利用されていると…」
「…あながち間違ってないのがまたムカつくね」
てか、悪の組織と戦うって私何者よ。と一人ごちる彼女だったが、それに全く目を向けず、木村はその目に炎を灯して「伏龍さん、僕が貴女を水揚げします。帰りましょう!」と彼女の両手を取り、胸の前で握りしめる。
「え、ちょっと、落ち着こうよ?!」
目を白黒させる彼女だったが、すぐに後続の少年にドンとぶつかられて正気に返る。晴乃は自分が突然立ち止まったせいだと謝ろうとして、目を丸くした。
「…ねえ君、どうしたの?」
異様さを感じ取ったのは彼女だからだろう。隣ーーこの場合正面と言うのか?ーーにいた木村は彼女の言葉に首を捻るが、信頼と実績があるのだろう。何も聞かず、握っていた手を離した。彼女は自由になった手をそっと少年の肩に乗せると、目の高さを合わせた。しかし、目が合わない。
「お姉さんを見ますよ。お姉さんの目を見ます」
落ち着いた、彼女にしては低い声で晴乃は少年に声を掛ける。しかし、彼は、にへにへと不気味な笑みを浮かべるだけで何も反応しない。
「…自閉ですか?」
「…いや…違うよこれ…」
酔わされた?と、一応本人に聞いてみる彼女だったが、明瞭な答えは得られない。
「お家の人はどこかなあ?どこに住んでるの?何年生かな?」
初めて見る症状に首を傾げつつも、彼女は何かしら反応が無いかと様々な問い掛けを試みる。すると、「僕は天才だから学校は行かないんだよー」と、突然軽薄な口調で言葉が返ってきて、彼女は目を丸くした。しかし、一瞬でプロの目つきに変わる。それは木村も同じだった。
「そっかあ!凄いね!」
「お母さんが褒めてくれたの?」
「うんー。お母さん言ってたー」
「そっかそっか。褒めてくれて素敵なお母さんだね」
「お母さんねー、いい子にしてるとご褒美くれるよー」
「そうなんだー!いいね、何くれるの?」
「あんねー、タバコなんだけどねー、特別なやつなんだよー」
「わあ、素敵!」
「いいね!今持ってる?見てみたいな!」
テンション高くそう返しつつ、二人はアイコンタクトを交わす。晴乃の口が‘麻薬’と動いた。