エンゼルランプの腕の中
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ドアを開けた瞬間の陰鬱な空気に驚き、俺は思わずドア口で立ち止まる。そのまま中を見渡し、オーラの発生源が門っち、南方立会人、亜面立会人、そして棟耶立会人だと理解する。よりによって一番気心の知れた門っちがアンタッチャブルなのは困るな、とは思いつつも、どうしても気になるので銅寺立会人の横に座り、耳元に口を寄せる。
「一体何が」
「ああ目蒲立会人…私もよく分かりませんが、どうやら、作戦中会敵した人全員先生に蹂躙されたみたいですよ」
「… 晴乃に」
「はい」
「お屋形様ではなく?」
「ではなく」
四人に気遣い小声で話していたつもりだったが、銅寺立会人の反対隣に座っていた亜面立会人には聞こえていたらしく、彼女の目がうるみ始める。
「 晴乃さんは…自分には立会人の資格は無いと…私は立会人一人ぽっち倒して立会人になったのに!」
「お、落ち着きなさい亜面立会人!」
「しかし…しかし!」
えぐえぐ泣き出した亜面立会人に戸惑うが、それ以上に戸惑ったのは新入りである真鍋立会人と三鷹立会人だったようだ。真鍋立会人が俺の隣に座り、「その… 晴乃とは、伏龍晴乃さんですか?」とこそこそ聞いてきたので、「ええ、‘娘さん’です」と答えておく。目を丸くして三鷹立会人と目を合わせる彼に、亜面立会人へのフォローがてら、「賭郎はちんけな嘘発見器など求めていません。あれが攫われたのはお屋形様を出し抜いた強者だからです」と付け足した。空気を読んだ銅寺立会人が「夜行立会人にも勝ってますしね」と笑顔を作る。
「強いんですか…娘さんは…」
「強いというより、強かです」
「ねえ亜面立会人?」と、俺は開き直って彼女に振る。すると、彼女は長いため息を吐いて、「何をされたか全く分からないのです」と話し出した。
「朝晴乃さんを見つけて…カフェで食事していたところを捕まえたのです。元アイデアル・ヴォジャと二人でした。警戒すべきは晴乃さんよりもむしろそちらと思っていたのですが… 晴乃さんが‘友達なので手を出すな’と牽制して下さり…話し合いが出来る雰囲気だったので、戻って頂けるよう説得していたら…いつの間にか寝ていました」
「飲まされましたなぁ」
「はい…いつ水に入れられたのか…」
どよーんと俯く彼女に「敵前で飲むとは、貴女も甘かったですね」と注意する。すかさず銅寺立会人が足を踏んできた。反撃する。
「しかし…これではっきりしました。あの女、裏切り者です」
番代立会人が言い切るのを、亜面立会人が慌てて否定しようとする。しかし、それは門っちの「そうじゃそうじゃ!あの馬鹿たれ、ワシに催涙スプレーかけよった!」という言葉にかき消された。
「何、門っち。そんな目にあったの?」
「おう!あのアマ両袖に催涙スプレー仕込んどったんじゃ!お陰で不意打ち食らったわ!」
「で、隠れてたヴォジャに私も門倉も昏倒させられて終わりだよ…女史を舐めてた」
「キシャンら…一回負けとろうに…」
「OK、当ててあげましょう。話し合いで平和理に下して貰えると思ってましたね?OK?」
「うるせえわ!」
「貴方がた、前回の事を録に謝ってないと聞いてますよ…容赦されなくて当たり前では?」
亜面立会人は鼻をぐずぐず言わせながら、銅寺立会人に伴いそう追撃した。晴乃が失踪して初めて知ったが、彼女は門っちにあまり好感を持っていないようだ。いや、どちらかというと晴乃が好きなので、その敵が許せないのだろう。思い返せば俺もそこはかとなく嫌われていた時期があった。まともに付き合うと、人間関係とはかくも複雑で面倒臭いものなのか。
「何やワレ…」と門っちが殺気をばら撒き始めたので、俺は「じゃ、晴乃は3タテを成し遂げた訳か」と呟いて殺意の矛先を晴乃に向けさせる。命知らずの能輪陸號が「あれ?判事は?」と口にした。
「私は伏龍に負けた訳ではないよ、紫音君」
判事は怒りに満ちた目と裏腹な、穏やかな声でそう言った。
「おや、ではお屋形様に?」
「その通り」
彼はぐっと握った手に力を込め、「ただね…」と続ける。
「どう見ても伏龍仕込みとしか思えない雑な手品であしらわれたのが承服できなくてね…」
「では、実質伏龍の4タテですね」
さらっと言ってのけた能輪陸號に、銅寺立会人が思わず噴き出す。確かに、全て晴乃のせいになる理不尽さがなんとも面白く、俺も内心笑う。
「…で、どういう手品だったんですか?」
真鍋立会人が好奇心を隠し切れずに問い掛けると、判事は鞄から大きな黒布を出して立ち上がる。
「正にこの布だった訳だが…」
「ばはは!何だ棟耶、拾ってきたのか!」
「喧しいぞヰ近。お屋形様の持ち物だ…まあいい。こう、思わせぶりにこの布を持ち上げて全身を隠して…こうだ」
判事が手を離すと、布がすとんと地面に落ちた。場が水を打ったように静まる。
まさか、布が持ち上がって落ちるだけ…
「…ぷ」
能輪陸號が耐え切れず笑い出す。それに引き摺られるように間紙立会人が、銅寺立会人が笑い出せば、最早誰も自制出来なくなる。
「ふっ…ふふふ!雑…」
「これは…くくっ!…女史ですねぇ…!」
「いや待て…やったのお屋形様やぞ…ぶふ、くくく…」
「いやはやこれは… んふ、伏龍に100SPを差し上げる必要があるな…ふふふ…巳虎のお嫁さんになってくれないかな」
「やめい…それだけは断固反対じゃぞ儂は」
ここまでずっと不機嫌に黙り込んでいた能輪壱號がはっきり意思表示するのがまた面白く、皆の笑い声が尚更大きくなる。
「楽しそうだな」
そこへ夜行掃除人を引き連れて入室してきた泉江外務卿が、声をかけてくる。そして、銅寺立会人が「外務卿はお聞きになりましたか?お屋形様の手品」と答えたのを聞いていつものキリッとした表情を緩める。
「ああ、報告は聞いている」
「不甲斐ねえな、誰も仕留められねえとは」
「夜行、お前は見つけられもしなかっただろう」
「そりゃ運だ。仕方がねえ」
軽く火花を散らす二人を他所目に、泉江外務卿はこちらに寄ってくる。
「ここは今から卍戦の打合せですが、部屋をお間違えでは?」
「弥鱈に呼ばれた。嘘喰い対アイデアルらしいな」
「貘様には参りますねえー」
「それはいいんだ。亜面、分かったぞ。晴乃の奴、自分が入店した時点で、既に店員に自分の席に後から来るものがいれば一服盛るように金を握らせて指示していた」
「えっ… 晴乃さんがですか?」
「ああ…あいつ、本気で逃走してる」
「冗談でお屋形様を連れて逃走する方が怖いわい」
ぼそっと突っ込んできた能輪壱號に、銅寺立会人がまたくすりと笑う。その時扉が開き、やっと弥鱈立会人が資料を抱えて入室してきた。俺達は座り直し、泉江外務卿と夜行掃除人は奥の方で起立する。さて、真面目な大仕事といこうじゃないか。
「一体何が」
「ああ目蒲立会人…私もよく分かりませんが、どうやら、作戦中会敵した人全員先生に蹂躙されたみたいですよ」
「… 晴乃に」
「はい」
「お屋形様ではなく?」
「ではなく」
四人に気遣い小声で話していたつもりだったが、銅寺立会人の反対隣に座っていた亜面立会人には聞こえていたらしく、彼女の目がうるみ始める。
「 晴乃さんは…自分には立会人の資格は無いと…私は立会人一人ぽっち倒して立会人になったのに!」
「お、落ち着きなさい亜面立会人!」
「しかし…しかし!」
えぐえぐ泣き出した亜面立会人に戸惑うが、それ以上に戸惑ったのは新入りである真鍋立会人と三鷹立会人だったようだ。真鍋立会人が俺の隣に座り、「その… 晴乃とは、伏龍晴乃さんですか?」とこそこそ聞いてきたので、「ええ、‘娘さん’です」と答えておく。目を丸くして三鷹立会人と目を合わせる彼に、亜面立会人へのフォローがてら、「賭郎はちんけな嘘発見器など求めていません。あれが攫われたのはお屋形様を出し抜いた強者だからです」と付け足した。空気を読んだ銅寺立会人が「夜行立会人にも勝ってますしね」と笑顔を作る。
「強いんですか…娘さんは…」
「強いというより、強かです」
「ねえ亜面立会人?」と、俺は開き直って彼女に振る。すると、彼女は長いため息を吐いて、「何をされたか全く分からないのです」と話し出した。
「朝晴乃さんを見つけて…カフェで食事していたところを捕まえたのです。元アイデアル・ヴォジャと二人でした。警戒すべきは晴乃さんよりもむしろそちらと思っていたのですが… 晴乃さんが‘友達なので手を出すな’と牽制して下さり…話し合いが出来る雰囲気だったので、戻って頂けるよう説得していたら…いつの間にか寝ていました」
「飲まされましたなぁ」
「はい…いつ水に入れられたのか…」
どよーんと俯く彼女に「敵前で飲むとは、貴女も甘かったですね」と注意する。すかさず銅寺立会人が足を踏んできた。反撃する。
「しかし…これではっきりしました。あの女、裏切り者です」
番代立会人が言い切るのを、亜面立会人が慌てて否定しようとする。しかし、それは門っちの「そうじゃそうじゃ!あの馬鹿たれ、ワシに催涙スプレーかけよった!」という言葉にかき消された。
「何、門っち。そんな目にあったの?」
「おう!あのアマ両袖に催涙スプレー仕込んどったんじゃ!お陰で不意打ち食らったわ!」
「で、隠れてたヴォジャに私も門倉も昏倒させられて終わりだよ…女史を舐めてた」
「キシャンら…一回負けとろうに…」
「OK、当ててあげましょう。話し合いで平和理に下して貰えると思ってましたね?OK?」
「うるせえわ!」
「貴方がた、前回の事を録に謝ってないと聞いてますよ…容赦されなくて当たり前では?」
亜面立会人は鼻をぐずぐず言わせながら、銅寺立会人に伴いそう追撃した。晴乃が失踪して初めて知ったが、彼女は門っちにあまり好感を持っていないようだ。いや、どちらかというと晴乃が好きなので、その敵が許せないのだろう。思い返せば俺もそこはかとなく嫌われていた時期があった。まともに付き合うと、人間関係とはかくも複雑で面倒臭いものなのか。
「何やワレ…」と門っちが殺気をばら撒き始めたので、俺は「じゃ、晴乃は3タテを成し遂げた訳か」と呟いて殺意の矛先を晴乃に向けさせる。命知らずの能輪陸號が「あれ?判事は?」と口にした。
「私は伏龍に負けた訳ではないよ、紫音君」
判事は怒りに満ちた目と裏腹な、穏やかな声でそう言った。
「おや、ではお屋形様に?」
「その通り」
彼はぐっと握った手に力を込め、「ただね…」と続ける。
「どう見ても伏龍仕込みとしか思えない雑な手品であしらわれたのが承服できなくてね…」
「では、実質伏龍の4タテですね」
さらっと言ってのけた能輪陸號に、銅寺立会人が思わず噴き出す。確かに、全て晴乃のせいになる理不尽さがなんとも面白く、俺も内心笑う。
「…で、どういう手品だったんですか?」
真鍋立会人が好奇心を隠し切れずに問い掛けると、判事は鞄から大きな黒布を出して立ち上がる。
「正にこの布だった訳だが…」
「ばはは!何だ棟耶、拾ってきたのか!」
「喧しいぞヰ近。お屋形様の持ち物だ…まあいい。こう、思わせぶりにこの布を持ち上げて全身を隠して…こうだ」
判事が手を離すと、布がすとんと地面に落ちた。場が水を打ったように静まる。
まさか、布が持ち上がって落ちるだけ…
「…ぷ」
能輪陸號が耐え切れず笑い出す。それに引き摺られるように間紙立会人が、銅寺立会人が笑い出せば、最早誰も自制出来なくなる。
「ふっ…ふふふ!雑…」
「これは…くくっ!…女史ですねぇ…!」
「いや待て…やったのお屋形様やぞ…ぶふ、くくく…」
「いやはやこれは… んふ、伏龍に100SPを差し上げる必要があるな…ふふふ…巳虎のお嫁さんになってくれないかな」
「やめい…それだけは断固反対じゃぞ儂は」
ここまでずっと不機嫌に黙り込んでいた能輪壱號がはっきり意思表示するのがまた面白く、皆の笑い声が尚更大きくなる。
「楽しそうだな」
そこへ夜行掃除人を引き連れて入室してきた泉江外務卿が、声をかけてくる。そして、銅寺立会人が「外務卿はお聞きになりましたか?お屋形様の手品」と答えたのを聞いていつものキリッとした表情を緩める。
「ああ、報告は聞いている」
「不甲斐ねえな、誰も仕留められねえとは」
「夜行、お前は見つけられもしなかっただろう」
「そりゃ運だ。仕方がねえ」
軽く火花を散らす二人を他所目に、泉江外務卿はこちらに寄ってくる。
「ここは今から卍戦の打合せですが、部屋をお間違えでは?」
「弥鱈に呼ばれた。嘘喰い対アイデアルらしいな」
「貘様には参りますねえー」
「それはいいんだ。亜面、分かったぞ。晴乃の奴、自分が入店した時点で、既に店員に自分の席に後から来るものがいれば一服盛るように金を握らせて指示していた」
「えっ… 晴乃さんがですか?」
「ああ…あいつ、本気で逃走してる」
「冗談でお屋形様を連れて逃走する方が怖いわい」
ぼそっと突っ込んできた能輪壱號に、銅寺立会人がまたくすりと笑う。その時扉が開き、やっと弥鱈立会人が資料を抱えて入室してきた。俺達は座り直し、泉江外務卿と夜行掃除人は奥の方で起立する。さて、真面目な大仕事といこうじゃないか。