エンゼルランプの腕の中
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「は?嫌ですよ」
「ばっ….はああ?!」
「えええ晴乃チャン、えええ?!」
死んだ目をした伏龍は、死んだ目のままノータイムで断った。これには俺も貘様も声が出る。むしろしれっとしてるお屋形様が訳わかんねえ。
「なんっ…え?晴乃チャン、さっきの聞いてた?」
「聞いてましたよ?それなりに理解できたつもりです」
「いや絶対分かってないって!いい?晴乃チャンはこの勝負の事知ってるのに勝負と関係無いなんて、許されない訳」
「はい。でも困るのはそっちなのに、こーんな詳細に決まっちゃうまでつまみ出さなかったそちらのミスですよね?帳尻合わせの皺寄せを持ってこないで下さいよ」
「ううんそうかもしれないけど!君のボスが卍に入るんだよ?!」
「じゃあいいじゃないですか。賭郎のボス一本釣りしておいて何が不満ですか」
「いや、君に忠義は無いわけ?!」
ずいずい詰め寄っていく貘様の肩にポンと手を乗せて、伏龍は満面の笑みを作った。
「忠義があったら賭郎裏切ってませんよ」
「なっ」とか「はっ?」とか、二の句がつげなくなる貘様を心のメモリーカードに大事に保存する。俺はこの日の事を一生伏龍に感謝しながら生きていくと思う。
「なんっ…何で…」
「ああ、本人が今はお屋形様じゃなくて蜂名直器って言うから」
「済まないね、斑目貘君。この場では部下のふりをさせた方が良さそうだったからそうしただけだよ。僕は彼女に対して強制力を持たない」
頑張って説得しなよね、と頬杖をついたお屋形様と晴乃を交互に見て、貘様は冷や汗をかいた。そして、俺もひっそりと理解する。そういや銅寺立会人が電話で「もう賭郎裏切った!」って言ってたって報告してたわ。どういう話になっているかは知らないが、対等な関係を結び直している訳か。
「いいじゃないですか。カールさんと伽羅さんで」
「いや…できたら晴乃チャンと伽羅さんがいいなぁ、なんて」
「変わらん変わらん。ね?」
絶対変わるだろうよ、とは言わない。カラカル特効持ちは是が非でも手札に入れたいだろう。心中お察しする。
「あ、じゃあ、こうしましょうか」
新たな策を考える貘様に、伏龍がピンと指を立てる。
「梟さんを卍に入れて下さい」
「はっ?」
「はあ?」
貘様と俺は何度目かの声を上げた。数秒後、呆然とする貘様が「何で梟…」と、聞きたい事を聞いてくれた。
「今の私はお屋形様の為に行動している、とだけ申しておきましょう。梟さんはアイデアルに所属しています。頑張って下さい」
無理難題である。お屋形様の為という事なら記憶喪失に関わっているのだろうが、もう…無理難題である。
「そういう交渉って普通あのロン毛としない…?」
「だって、私は別に、卍に入りたい訳じゃないですもん。貴方の交渉が上手くいかなければ、貴方達が卍に入った後ゆっくり梟さんに会いに行きます」
「ああ、そう…」
落胆を露わにする貘様だが、それでも一縷の望みをかけてラロ様に視線をやる。
「ねーラロちゃんさぁ…」
「お断りします」
ですよねえ、と引き攣った笑みの貘様とは対照的に、伏龍は人の悪い笑みを浮かべた。
「いいじゃないですか、貘様。貴方も私を諦めて戦力ダウン、ラロさんも梟さんを諦めて戦力ダウン。おあいこです」
所詮負け惜しみと判断したラロ様は涼しい顔をしているが、俺達は、特に貘様は違う。彼女は嘘をつかず、彼女は嘘をつかせない。貘様はカリ梅の袋を破り、残念そうに言った。
「そっか…なら仕方がないか…。ちゃんみだ、4人目は伽羅だ。5人目は保留…ギリギリまで晴乃チャンの心変わりを待ちたい」
「分かりました。ではラロ様、協力者をご指名下さい」
「Oh…お嬢さんが卍に入るかは私次第、という事ですね?フム…」
ラロ様は悩む。伏龍がああ言ったという事は、元々梟は頭数に入っていたという事。今彼は伏龍が卍に入るデメリットと、梟が卍に入るメリットを比べているのだろう。しかし、見たところラロ様は伏龍を知らない。目蒲立会人の報告を聞く限り、俺がボスなら二度とカラカルと伏龍を接触させたくないタイプの攻撃を受けている筈だが…カラカルから報告が上がっていないのか、はたまたカラカルは処分されたか。まあ〜…それはカラカルと梟が卍に入るかどうかで分かる事か。立会人たる俺は、沈黙を貫くのみ。
「分かりました。彼女の希望通り、梟を卍へ入れるとしましょう。貴方が熱望する彼女の力、どれほどのものか楽しみです」
背もたれに深く体を預け、ラロ様はそう言った。それを受けて伏龍は麗かに笑った。
ーーーーーーーーーー
滝さんがパソコンと向き合い始める。大方、立会人のスケジュールでも確認しているのだろう。
「ラロ側の協力者は先程述べた梟に加え、…フロイド・リー、ロバートK、キョンホジョンリョ、そしてビリー・クレイグです」
「聞いた事のある名前がちらほらあるな」
「最高の勝負になること請け合いです。勿論嘘喰い側も…と言いたいところですが、目新しいカードはありません。梶様、マルコ様、そして…伽羅」
「伽羅一人でお釣りがくるぜ。いいよなぁ…俺もこの足さえ無事だったらよ…。で、後の二人は?」
「それが…全てが不明です」
「んな事あるか?嘘喰いの手札なんてこっちにゃ筒抜けだろうがよ」
「私もそう思っておりましたが…予想外の駒を持ち出してきまして」
滝さんがメモを書く手を止め、俺を見る。その視線を確認して、印象付けるようにノートを閉じる。
「ハルという男…そしてノヂシャという女です」
俺は暫く沈黙する。滝さんがゆっくりとペンを回している。
「ノヂシャ、か。なあ…年齢は?」
「私と同じです」
「…そうかよ」
ノヂシャ。ヨーロッパ原産の帰化植物で、サラダ用野菜の一つ。ドイツ語では…ラプンツェル。名付けは嘘喰いだが、彼女を表す言葉として中々どうして悪くない。気付くだろうか?…いや、気付いているだろう。全てが不明な協力者の年齢を尋ねてきたのがその証。
そして、それに対して具体的な答えを返した事が、俺からの答え。
「立会人、上から順に付けてやるからな」
「ありがとうございます」
「必ず帰ってこい」
「分かりました」
「ばっ….はああ?!」
「えええ晴乃チャン、えええ?!」
死んだ目をした伏龍は、死んだ目のままノータイムで断った。これには俺も貘様も声が出る。むしろしれっとしてるお屋形様が訳わかんねえ。
「なんっ…え?晴乃チャン、さっきの聞いてた?」
「聞いてましたよ?それなりに理解できたつもりです」
「いや絶対分かってないって!いい?晴乃チャンはこの勝負の事知ってるのに勝負と関係無いなんて、許されない訳」
「はい。でも困るのはそっちなのに、こーんな詳細に決まっちゃうまでつまみ出さなかったそちらのミスですよね?帳尻合わせの皺寄せを持ってこないで下さいよ」
「ううんそうかもしれないけど!君のボスが卍に入るんだよ?!」
「じゃあいいじゃないですか。賭郎のボス一本釣りしておいて何が不満ですか」
「いや、君に忠義は無いわけ?!」
ずいずい詰め寄っていく貘様の肩にポンと手を乗せて、伏龍は満面の笑みを作った。
「忠義があったら賭郎裏切ってませんよ」
「なっ」とか「はっ?」とか、二の句がつげなくなる貘様を心のメモリーカードに大事に保存する。俺はこの日の事を一生伏龍に感謝しながら生きていくと思う。
「なんっ…何で…」
「ああ、本人が今はお屋形様じゃなくて蜂名直器って言うから」
「済まないね、斑目貘君。この場では部下のふりをさせた方が良さそうだったからそうしただけだよ。僕は彼女に対して強制力を持たない」
頑張って説得しなよね、と頬杖をついたお屋形様と晴乃を交互に見て、貘様は冷や汗をかいた。そして、俺もひっそりと理解する。そういや銅寺立会人が電話で「もう賭郎裏切った!」って言ってたって報告してたわ。どういう話になっているかは知らないが、対等な関係を結び直している訳か。
「いいじゃないですか。カールさんと伽羅さんで」
「いや…できたら晴乃チャンと伽羅さんがいいなぁ、なんて」
「変わらん変わらん。ね?」
絶対変わるだろうよ、とは言わない。カラカル特効持ちは是が非でも手札に入れたいだろう。心中お察しする。
「あ、じゃあ、こうしましょうか」
新たな策を考える貘様に、伏龍がピンと指を立てる。
「梟さんを卍に入れて下さい」
「はっ?」
「はあ?」
貘様と俺は何度目かの声を上げた。数秒後、呆然とする貘様が「何で梟…」と、聞きたい事を聞いてくれた。
「今の私はお屋形様の為に行動している、とだけ申しておきましょう。梟さんはアイデアルに所属しています。頑張って下さい」
無理難題である。お屋形様の為という事なら記憶喪失に関わっているのだろうが、もう…無理難題である。
「そういう交渉って普通あのロン毛としない…?」
「だって、私は別に、卍に入りたい訳じゃないですもん。貴方の交渉が上手くいかなければ、貴方達が卍に入った後ゆっくり梟さんに会いに行きます」
「ああ、そう…」
落胆を露わにする貘様だが、それでも一縷の望みをかけてラロ様に視線をやる。
「ねーラロちゃんさぁ…」
「お断りします」
ですよねえ、と引き攣った笑みの貘様とは対照的に、伏龍は人の悪い笑みを浮かべた。
「いいじゃないですか、貘様。貴方も私を諦めて戦力ダウン、ラロさんも梟さんを諦めて戦力ダウン。おあいこです」
所詮負け惜しみと判断したラロ様は涼しい顔をしているが、俺達は、特に貘様は違う。彼女は嘘をつかず、彼女は嘘をつかせない。貘様はカリ梅の袋を破り、残念そうに言った。
「そっか…なら仕方がないか…。ちゃんみだ、4人目は伽羅だ。5人目は保留…ギリギリまで晴乃チャンの心変わりを待ちたい」
「分かりました。ではラロ様、協力者をご指名下さい」
「Oh…お嬢さんが卍に入るかは私次第、という事ですね?フム…」
ラロ様は悩む。伏龍がああ言ったという事は、元々梟は頭数に入っていたという事。今彼は伏龍が卍に入るデメリットと、梟が卍に入るメリットを比べているのだろう。しかし、見たところラロ様は伏龍を知らない。目蒲立会人の報告を聞く限り、俺がボスなら二度とカラカルと伏龍を接触させたくないタイプの攻撃を受けている筈だが…カラカルから報告が上がっていないのか、はたまたカラカルは処分されたか。まあ〜…それはカラカルと梟が卍に入るかどうかで分かる事か。立会人たる俺は、沈黙を貫くのみ。
「分かりました。彼女の希望通り、梟を卍へ入れるとしましょう。貴方が熱望する彼女の力、どれほどのものか楽しみです」
背もたれに深く体を預け、ラロ様はそう言った。それを受けて伏龍は麗かに笑った。
ーーーーーーーーーー
滝さんがパソコンと向き合い始める。大方、立会人のスケジュールでも確認しているのだろう。
「ラロ側の協力者は先程述べた梟に加え、…フロイド・リー、ロバートK、キョンホジョンリョ、そしてビリー・クレイグです」
「聞いた事のある名前がちらほらあるな」
「最高の勝負になること請け合いです。勿論嘘喰い側も…と言いたいところですが、目新しいカードはありません。梶様、マルコ様、そして…伽羅」
「伽羅一人でお釣りがくるぜ。いいよなぁ…俺もこの足さえ無事だったらよ…。で、後の二人は?」
「それが…全てが不明です」
「んな事あるか?嘘喰いの手札なんてこっちにゃ筒抜けだろうがよ」
「私もそう思っておりましたが…予想外の駒を持ち出してきまして」
滝さんがメモを書く手を止め、俺を見る。その視線を確認して、印象付けるようにノートを閉じる。
「ハルという男…そしてノヂシャという女です」
俺は暫く沈黙する。滝さんがゆっくりとペンを回している。
「ノヂシャ、か。なあ…年齢は?」
「私と同じです」
「…そうかよ」
ノヂシャ。ヨーロッパ原産の帰化植物で、サラダ用野菜の一つ。ドイツ語では…ラプンツェル。名付けは嘘喰いだが、彼女を表す言葉として中々どうして悪くない。気付くだろうか?…いや、気付いているだろう。全てが不明な協力者の年齢を尋ねてきたのがその証。
そして、それに対して具体的な答えを返した事が、俺からの答え。
「立会人、上から順に付けてやるからな」
「ありがとうございます」
「必ず帰ってこい」
「分かりました」