エンゼルランプの腕の中
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「直器君…お屋形様と取引したのよ。どうしても助けたい人がいたから。その人を殺さない代わりに、私が賭郎の人質として賭郎に尽くすって」
「…人質と…ボス…だったの?」
ぷ、と亜面さんが噴き出して、慌てて水を飲む。
「うん。参った?」
「待って…待って。ええ…」
「… 晴乃さんは神がかり的な人誑しですよ。心当たりがあるのでは」
平静を取り戻した亜面さんがヴォジャにそう言うと、彼女は何も返せなくなる。私はその隙にまた一口パンケーキを齧った。
「晴乃さん、戻ってきて下さい。賭郎には貴女とお屋形様が必要です」
「それってさ、他ならぬ貴女への冒涜だと思いません?」
私はじっと亜面さんの目を見つめる。
「…どういうことですか」
「‘危険因子を監視下に置きまーす。発信機仕込めるのは立会人だけでーす。じゃあ立会人でー。’で、貴女達ホントにいいんですか?」
「貴女なら出来ますよ」
「日々を乗り切れってんならやれます。幸いヴォジャも捨隈さんも、お願いすれば私の黒服になってくれるでしょう。でも…立会人ってそうじゃない。完璧の傍らにいるのが立会人なんです。付加パーツをくっつけてくっつけて、やっと完璧の半径10キロ以内みたいなのは違うんです」
「しかし、例えば能輪立会人は…」
「何を仰る。あの人まだバリバリ戦えますよ」
「えっ」
「車椅子の動かし方が滝さんと全然違いますもん。あれは隠してるだけです。…ねえ亜面さん、立会人ってそういう人達の集まりであるべきなんです。ホントは分かってるでしょ?大人の都合でこそっと実力不足を混ぜ込むのは冒涜ですよ。そりゃ、有難い申し出だけどさ、良くないものは良くないって、誰かがちゃんと言わなきゃ。夜行ヒーと同じです」
「じゃあ…じゃあ、どうしたら戻ってきてくれるんですか、晴乃さん」
「亜面さん、そもそも私、賭郎嫌いなの」
「何…何、で…あれ?」
ぐらりと亜面さんの頭が前に傾く。私はそっと水を自分の近くに引き寄せながら、「戻りたくないのよ。死にたくもないけど」と最後に言った。
ゴト。鈍い音と共に、亜面さんは眠りについた。
「ふぅ、私の勝ち」
「…良かったの?」
「何で?」
「戻らなければ、狙われ続けるわ。こんな事は長く続かない…」
「まあ、そうね」
私は残ったパンケーキを口に放り込みながら頷き、ヴォジャにも食べ切るよう薦めた。
「勝ち筋はあるのよ。心配しないで」
「…具体的には?」
「えー?」
「貴女は適当だから」
「否定はしないけどさぁ」
ヴォジャがソーセージを頬張りながら私を睨む。そんな顔せんでも。
「第一、人質だっただなんて…」
「何だと思ってた?」
「側近」
「まあ…人質よりはあり得るかぁ」
「本当よ…その女も、人質に対する態度じゃなかったわ…何なの…賭郎には貴女が必要って…?」
「ううん…まあ、中身が変わっても名目はそのままなんてこと、世の中ザラでしょうよ。私もそれ」
私は最後の一切れで皿に残った生クリームを綺麗に拭き取り、口に運ぶ。それを見たヴォジャもささっと残りを口に運び、私達は紅茶を飲み干した。アールグレイの苦味が生クリームの甘さを流す。
「まあ、詳しい話はまた夜にでも。とりあえず今は立会人さん達から逃げなきゃね」
全て食べ終えた私は、レシートを持って立ち上がった。ヴォジャもため息と共に立ち上がる。私は面白くなって「ヴォジャは意外と顔に出るねえ」と笑った。
「…人質と…ボス…だったの?」
ぷ、と亜面さんが噴き出して、慌てて水を飲む。
「うん。参った?」
「待って…待って。ええ…」
「… 晴乃さんは神がかり的な人誑しですよ。心当たりがあるのでは」
平静を取り戻した亜面さんがヴォジャにそう言うと、彼女は何も返せなくなる。私はその隙にまた一口パンケーキを齧った。
「晴乃さん、戻ってきて下さい。賭郎には貴女とお屋形様が必要です」
「それってさ、他ならぬ貴女への冒涜だと思いません?」
私はじっと亜面さんの目を見つめる。
「…どういうことですか」
「‘危険因子を監視下に置きまーす。発信機仕込めるのは立会人だけでーす。じゃあ立会人でー。’で、貴女達ホントにいいんですか?」
「貴女なら出来ますよ」
「日々を乗り切れってんならやれます。幸いヴォジャも捨隈さんも、お願いすれば私の黒服になってくれるでしょう。でも…立会人ってそうじゃない。完璧の傍らにいるのが立会人なんです。付加パーツをくっつけてくっつけて、やっと完璧の半径10キロ以内みたいなのは違うんです」
「しかし、例えば能輪立会人は…」
「何を仰る。あの人まだバリバリ戦えますよ」
「えっ」
「車椅子の動かし方が滝さんと全然違いますもん。あれは隠してるだけです。…ねえ亜面さん、立会人ってそういう人達の集まりであるべきなんです。ホントは分かってるでしょ?大人の都合でこそっと実力不足を混ぜ込むのは冒涜ですよ。そりゃ、有難い申し出だけどさ、良くないものは良くないって、誰かがちゃんと言わなきゃ。夜行ヒーと同じです」
「じゃあ…じゃあ、どうしたら戻ってきてくれるんですか、晴乃さん」
「亜面さん、そもそも私、賭郎嫌いなの」
「何…何、で…あれ?」
ぐらりと亜面さんの頭が前に傾く。私はそっと水を自分の近くに引き寄せながら、「戻りたくないのよ。死にたくもないけど」と最後に言った。
ゴト。鈍い音と共に、亜面さんは眠りについた。
「ふぅ、私の勝ち」
「…良かったの?」
「何で?」
「戻らなければ、狙われ続けるわ。こんな事は長く続かない…」
「まあ、そうね」
私は残ったパンケーキを口に放り込みながら頷き、ヴォジャにも食べ切るよう薦めた。
「勝ち筋はあるのよ。心配しないで」
「…具体的には?」
「えー?」
「貴女は適当だから」
「否定はしないけどさぁ」
ヴォジャがソーセージを頬張りながら私を睨む。そんな顔せんでも。
「第一、人質だっただなんて…」
「何だと思ってた?」
「側近」
「まあ…人質よりはあり得るかぁ」
「本当よ…その女も、人質に対する態度じゃなかったわ…何なの…賭郎には貴女が必要って…?」
「ううん…まあ、中身が変わっても名目はそのままなんてこと、世の中ザラでしょうよ。私もそれ」
私は最後の一切れで皿に残った生クリームを綺麗に拭き取り、口に運ぶ。それを見たヴォジャもささっと残りを口に運び、私達は紅茶を飲み干した。アールグレイの苦味が生クリームの甘さを流す。
「まあ、詳しい話はまた夜にでも。とりあえず今は立会人さん達から逃げなきゃね」
全て食べ終えた私は、レシートを持って立ち上がった。ヴォジャもため息と共に立ち上がる。私は面白くなって「ヴォジャは意外と顔に出るねえ」と笑った。