ハシバミの小旅行
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家具屋に着けば、彼女はガンガン品物を選んでいく。ベッド、ローテーブル、下足箱、箪笥、カーペット。
「そんなに適当で大丈夫なのか?」
私は思わず問い掛けた。居並ぶクッション達を物色していた彼女が振り返る。
「大丈夫です!」
「凄い自信だな…」
彼女は思案顔で私を見て、もう一度クッションを見て、意を決したように二つを引っ掴む。
「泉江さんはどっちが好きですか?」
「えっ」
彼女の瞳が悪戯っぽく輝く。
「こっち?」
「ええと…こっち、のが、好みだな」
「じゃ、こっちとこっちならどっちですか?」
「え、こっち…かな」
ふむ…と悩みつつも、新たなクッションを手に取ろうとする彼女を制止する。
「さっきから何なんだ?」
「泉江さんの好きな系統はどれなのかな?と思って」
「なんでそんな事をする必要がある」
「知りたかったので」
「バカか!」
彼女はけらけら笑う。そして、クッションの一つを指差して言った。
「私の好きな系統はこれなんですよ。それが分かってればチグハグなもの買わなくて済みますよ」
私は彼女の指差すクッションを眺め、次に居並ぶクッション達に目線を移す。なるほど、同じ系統を選べば自ずと統一感が出る。当たり前か。
とはいえ、その即断力は平均を大きく大きく上回っているとは思うが。
彼女はクッションをぽいぽいカートに入れ、そのままカートを支えにして次の売り場へ向かっていった。
彼女はガンガン品物を選んでいく。収納カゴ、食器、小物入れ。さっきまでと変わったのは、私の好みを聞いて来ること。彼女は藤のカゴ、私は針金細工の花のカゴ。彼女はクリーム色の陶器にオレンジの縁取りの食器、私は真っ白い陶器に黒で花があしらわれた食器。彼女は蓋のない小物入れ、私は蓋のある小物入れ。彼女は私達の違いを楽しむように、私が一つ選ぶたびに笑顔で頷く。
そういえば、あまり友達と買い物にはいかないな。ふとそんな事を思った。
会計の段になれば、彼女は当然自分の財布を取り出す。しかし、私はお屋形様からの伝言を思い出し、彼女を止めた。
「どうしたんですか?」
「お屋形様が、カードは足がつくからやめろとの事だ。代わりにこれを使え」
「これ?泉江さんのカードですか?」
「いや、お前のカードだ。今月分の給料が入っている」
ついでにと印鑑と通帳も手渡すと、彼女はモヤモヤとした表情で私を見つめる。
「…賭郎では印鑑も作ってくれるんだ」
もちろん、真っ赤な嘘である。彼女もそれは分かっているようで、表情は変わらないまま頷いた。
私は彼女を促し、列に並ばせる。まだ釈然としないまま、彼女は列の最後尾についた。私は暫しの自由時間を楽しもうと小物コーナーに寄っていく。
彼女が大荷物を抱えて駆け寄ってきたのは、私が小物の物色に飽きて携帯をいじり始めたのとほぼ同時の事。
「泉江さん大変大変!」
「松葉杖を小脇に抱えるな!走るな!」
「通帳の桁が違うんです!」
ほら!と通帳を見せてくる彼女からそれと大袋三つを取り上げ、松葉杖をつかせる。しぶしぶ松葉杖に体重を預ける彼女を確認して、私は通帳に目をやった。100万。
「事務員ならこんなものだ」
「ええ!?」
慌しい彼女を眺めながら、ため息を一つ。子どもっぽい女だ。庇護欲を掻き立てるというか、男受けが良さそうというか。なんというか、苦手だなぁ。
ピリ、と視線を感じた。その元を辿れば、例の柔らかい墨色で。
「何がおかしい?」
「いえ。考え事ですか?」
「別に、お前には関係無い」
「…そうですか」
緩く笑みを湛えたまま、彼女は言った。そして次に、小首を傾げて言う。
「泉江さん、次デパート連れて行ってもらえませんか?実は今、服も何もないんです」
私は頷いた。さっと終わらせて帰りたかった。
「そんなに適当で大丈夫なのか?」
私は思わず問い掛けた。居並ぶクッション達を物色していた彼女が振り返る。
「大丈夫です!」
「凄い自信だな…」
彼女は思案顔で私を見て、もう一度クッションを見て、意を決したように二つを引っ掴む。
「泉江さんはどっちが好きですか?」
「えっ」
彼女の瞳が悪戯っぽく輝く。
「こっち?」
「ええと…こっち、のが、好みだな」
「じゃ、こっちとこっちならどっちですか?」
「え、こっち…かな」
ふむ…と悩みつつも、新たなクッションを手に取ろうとする彼女を制止する。
「さっきから何なんだ?」
「泉江さんの好きな系統はどれなのかな?と思って」
「なんでそんな事をする必要がある」
「知りたかったので」
「バカか!」
彼女はけらけら笑う。そして、クッションの一つを指差して言った。
「私の好きな系統はこれなんですよ。それが分かってればチグハグなもの買わなくて済みますよ」
私は彼女の指差すクッションを眺め、次に居並ぶクッション達に目線を移す。なるほど、同じ系統を選べば自ずと統一感が出る。当たり前か。
とはいえ、その即断力は平均を大きく大きく上回っているとは思うが。
彼女はクッションをぽいぽいカートに入れ、そのままカートを支えにして次の売り場へ向かっていった。
彼女はガンガン品物を選んでいく。収納カゴ、食器、小物入れ。さっきまでと変わったのは、私の好みを聞いて来ること。彼女は藤のカゴ、私は針金細工の花のカゴ。彼女はクリーム色の陶器にオレンジの縁取りの食器、私は真っ白い陶器に黒で花があしらわれた食器。彼女は蓋のない小物入れ、私は蓋のある小物入れ。彼女は私達の違いを楽しむように、私が一つ選ぶたびに笑顔で頷く。
そういえば、あまり友達と買い物にはいかないな。ふとそんな事を思った。
会計の段になれば、彼女は当然自分の財布を取り出す。しかし、私はお屋形様からの伝言を思い出し、彼女を止めた。
「どうしたんですか?」
「お屋形様が、カードは足がつくからやめろとの事だ。代わりにこれを使え」
「これ?泉江さんのカードですか?」
「いや、お前のカードだ。今月分の給料が入っている」
ついでにと印鑑と通帳も手渡すと、彼女はモヤモヤとした表情で私を見つめる。
「…賭郎では印鑑も作ってくれるんだ」
もちろん、真っ赤な嘘である。彼女もそれは分かっているようで、表情は変わらないまま頷いた。
私は彼女を促し、列に並ばせる。まだ釈然としないまま、彼女は列の最後尾についた。私は暫しの自由時間を楽しもうと小物コーナーに寄っていく。
彼女が大荷物を抱えて駆け寄ってきたのは、私が小物の物色に飽きて携帯をいじり始めたのとほぼ同時の事。
「泉江さん大変大変!」
「松葉杖を小脇に抱えるな!走るな!」
「通帳の桁が違うんです!」
ほら!と通帳を見せてくる彼女からそれと大袋三つを取り上げ、松葉杖をつかせる。しぶしぶ松葉杖に体重を預ける彼女を確認して、私は通帳に目をやった。100万。
「事務員ならこんなものだ」
「ええ!?」
慌しい彼女を眺めながら、ため息を一つ。子どもっぽい女だ。庇護欲を掻き立てるというか、男受けが良さそうというか。なんというか、苦手だなぁ。
ピリ、と視線を感じた。その元を辿れば、例の柔らかい墨色で。
「何がおかしい?」
「いえ。考え事ですか?」
「別に、お前には関係無い」
「…そうですか」
緩く笑みを湛えたまま、彼女は言った。そして次に、小首を傾げて言う。
「泉江さん、次デパート連れて行ってもらえませんか?実は今、服も何もないんです」
私は頷いた。さっと終わらせて帰りたかった。