アセビよ、貴方の手を引いて
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「ヴォジャさん、一緒に寝てよう」と、晴乃が布団に潜り込んでくる。
おかしいな、「お断りよ」と確かに言った筈なのに。
ーー寝れない夜は
「貴女、いい大人でしょう」
「いい大人ですけどぉ、あんな死体見た日に一人で寝れませんて」
「嘘よ」
「何でさ」
「貴女、賭郎でしょう」
「平和主義者なんで」
「人くらい殺してるでしょう」
「人くらいなんて…虫も殺せない乙女に何を仰る」
「アホ言える精神的余裕があるなら一人で寝れる」
「わあ待って待って!」
そう言って彼女は私の布団の中に潜り込んでくる。待って待ってはこちらの台詞である。
「ちょっと、蜂名か大船の所に行きなさいよ」
「そんな破廉恥なことできないわ!」
「貴女なら平気よ。今日知り合ったばかりの女と同衾できるんだもの」
「釣れない事言わないでよう」
彼女はそうぶー垂れながら、早速もぞもぞ自分が寝やすい姿勢を模索している。ふざけんなよコイツ。
「そもそも、殺したのは私よ」
「うんまあ、そうなんだけど」
彼女はごろりと寝返りを打ち、私の方に顔を向ける。美しい墨色の瞳が、闇の中で煌めくようだった。
「それ言い始めたら誰とも仲良くできない」
彼女は口を尖らせる。まあ、そうかもしれないが。
「貴女の事も殺すかもしれないわよ」
「嘘つきー」
「うるさいわね」
彼女を布団から押し出すと、「やめてよ寒いよー!」と手足をばたつかせる。面白いのでそのまま暫く眺める。二、三分暴れた後、彼女はやっと諦めて大人しくなった。
「ひどいよー…いいじゃんかー…」
と、思ったらさめざめと泣き出す演技をする辺りもう、殺されたいんだろうか。
というか、こんなウザ絡みしてくる女、初めてよ。性懲りも無く布団に潜り込もうとする彼女の押さえつけながら大きなため息が出る。
「ヴォジャさんはさぁ…ああいうのもう平気?」
諦め悪く足だけ布団に入れてきた彼女は、不意にそう聞いてきた。
「…ええ」
「そっかぁ。私の友達はね、まだ慣れないって」
「そう」
「立会人なんだけどね…もう中堅かなあ?私が知ってるだけでも結構殺してる筈なんだけど、慣れないんだって」
「それは…何?嫌味?」
「ううん。凄いなぁって思ってさ。私は多分、慣れるタイプだから」
彼女はぎゅっと自分を抱きしめる。
「私も善人じゃないからね。その内‘殺して’って言えるようになる。そして…いつか自力で殺せるようになるよ。だから、覚えておいてね。私はホントは殺したくなかったって」
「もし本当にそうなら、期待外れだわ」
「へ?」
彼女の腕を思い切り引いて、布団の中で組み敷く。
「小鹿に生まれたからといって、小鹿に育つ必要はない。貴女がそう言ったのよ」
「言った…けどぉ」
「私は…もう殺しという日常を終わらせる…その為に貴女の元へ来た。その貴女がこの程度の女だなんて…やめて」
彼女は押し黙り、真っ直ぐな目で私を見上げる。少しの沈黙が、私の背を冷たく撫でる。殺気とはまた違う緊張感が、私の脳を支配している。
程なくして、そんな空気を溶かすかのように彼女は微笑んだ。
「そっか。ヴォジャもか」
ゆっくりと首に回される腕。導かれるがままに、私は彼女に覆い被さる。
「同じなら、頑張れるね。頑張ってみようか」
顔は見えない。喋る時耳に当たる吐息がくすぐったい。
「貴女は…」
大きな冷たい水の流れに必死で抗う、弱々しい人。意外と彼女はそういうものだったらしい。
「何でもないわ」
「そう?じゃあ寝ようか」
彼女はきつく回していた腕を緩める。いつの間にか、彼女は我が物顔で私の布団に入っている。
おかしいな、「お断りよ」と確かに言った筈なのに。
ーー寝れない夜は
「貴女、いい大人でしょう」
「いい大人ですけどぉ、あんな死体見た日に一人で寝れませんて」
「嘘よ」
「何でさ」
「貴女、賭郎でしょう」
「平和主義者なんで」
「人くらい殺してるでしょう」
「人くらいなんて…虫も殺せない乙女に何を仰る」
「アホ言える精神的余裕があるなら一人で寝れる」
「わあ待って待って!」
そう言って彼女は私の布団の中に潜り込んでくる。待って待ってはこちらの台詞である。
「ちょっと、蜂名か大船の所に行きなさいよ」
「そんな破廉恥なことできないわ!」
「貴女なら平気よ。今日知り合ったばかりの女と同衾できるんだもの」
「釣れない事言わないでよう」
彼女はそうぶー垂れながら、早速もぞもぞ自分が寝やすい姿勢を模索している。ふざけんなよコイツ。
「そもそも、殺したのは私よ」
「うんまあ、そうなんだけど」
彼女はごろりと寝返りを打ち、私の方に顔を向ける。美しい墨色の瞳が、闇の中で煌めくようだった。
「それ言い始めたら誰とも仲良くできない」
彼女は口を尖らせる。まあ、そうかもしれないが。
「貴女の事も殺すかもしれないわよ」
「嘘つきー」
「うるさいわね」
彼女を布団から押し出すと、「やめてよ寒いよー!」と手足をばたつかせる。面白いのでそのまま暫く眺める。二、三分暴れた後、彼女はやっと諦めて大人しくなった。
「ひどいよー…いいじゃんかー…」
と、思ったらさめざめと泣き出す演技をする辺りもう、殺されたいんだろうか。
というか、こんなウザ絡みしてくる女、初めてよ。性懲りも無く布団に潜り込もうとする彼女の押さえつけながら大きなため息が出る。
「ヴォジャさんはさぁ…ああいうのもう平気?」
諦め悪く足だけ布団に入れてきた彼女は、不意にそう聞いてきた。
「…ええ」
「そっかぁ。私の友達はね、まだ慣れないって」
「そう」
「立会人なんだけどね…もう中堅かなあ?私が知ってるだけでも結構殺してる筈なんだけど、慣れないんだって」
「それは…何?嫌味?」
「ううん。凄いなぁって思ってさ。私は多分、慣れるタイプだから」
彼女はぎゅっと自分を抱きしめる。
「私も善人じゃないからね。その内‘殺して’って言えるようになる。そして…いつか自力で殺せるようになるよ。だから、覚えておいてね。私はホントは殺したくなかったって」
「もし本当にそうなら、期待外れだわ」
「へ?」
彼女の腕を思い切り引いて、布団の中で組み敷く。
「小鹿に生まれたからといって、小鹿に育つ必要はない。貴女がそう言ったのよ」
「言った…けどぉ」
「私は…もう殺しという日常を終わらせる…その為に貴女の元へ来た。その貴女がこの程度の女だなんて…やめて」
彼女は押し黙り、真っ直ぐな目で私を見上げる。少しの沈黙が、私の背を冷たく撫でる。殺気とはまた違う緊張感が、私の脳を支配している。
程なくして、そんな空気を溶かすかのように彼女は微笑んだ。
「そっか。ヴォジャもか」
ゆっくりと首に回される腕。導かれるがままに、私は彼女に覆い被さる。
「同じなら、頑張れるね。頑張ってみようか」
顔は見えない。喋る時耳に当たる吐息がくすぐったい。
「貴女は…」
大きな冷たい水の流れに必死で抗う、弱々しい人。意外と彼女はそういうものだったらしい。
「何でもないわ」
「そう?じゃあ寝ようか」
彼女はきつく回していた腕を緩める。いつの間にか、彼女は我が物顔で私の布団に入っている。