アセビよ、貴方の手を引いて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい、嬢ちゃん、大丈夫か?!」
体を激しく揺さぶられた痛みで目が覚めた。何だこれ、滅茶苦茶痛い!
「何…なんじゃこりゃ?!」
「どうした嬢ちゃん?!」
「やっ…体滅茶苦茶痛い!」
「あー…」
私を起こしてくれたのは、さっき私がコンテナから救出した船員さんだった。彼はポリポリ頭をかきながら、「嬢ちゃん、ヴォジャに殴られてたし、連れの兄ちゃんにぶん投げられてたからなあ」と言われて悲しくなる。何でこんな扱いを受けにゃならんのか。
「こんちくしょう…」
「まあ…生きてて良かったじゃねえか、お互いよお」
「まあ…そうですね?結局全員生きてました?」
「ああ。アンタのお陰だ。悪い事は言わねえから逃げちまいな」
「…ヴォジャと、ウチのお兄さんは?」
「それが、海に落ちちまったよ…だから今のうちに」
「海?!」
驚いてコンテナの上から甲板を見下ろせば、確かにここから落ちましたよと言わんばかりに柵が一部ひしゃげている。
「落ちた、とな」
「…ああ」
「浮上は…」
「…してねえ」
「はああ〜」
普通、この寒い中海中戦に持ち込む馬鹿がいますかね?私はあまりの事に思わず頭を抱え込む。何でこう、裏社会の人間というものは、いつもいつも、無鉄砲なのか!
私は大きなため息をついて、立ち上がる。
「…魅力的な提案ですが、あの人を置いては逃げられません」
「は?」
「ほっといたら死ぬでしょう、あいつら」
マフラー、コート、靴に靴下。忘れずに盗聴器。あと…セーターも脱いでおくか。一応二人とも人間、十分も二十分も海中で戦う事はあり得ない。急がねば。私はえっちらおっちらコンテナから降りて、ひしゃげた柵の前まで駆け寄る。
「うわ、高い」
私は予想以上の距離に怯みかけ、慌てて首を振る。四の五の言っている場合ではない。直器君にこれ以上殺させる訳にはいかないのだ!
私は柵の向こうへ乗り出すと、船のへりを蹴り、飛び降りる。三日前に帝国タワーから落ちた事を思えば、大した高さではなかったな、なんて今更思った。
ドボン!
私の体は泡に包まれる。真っ白な視界が徐々に海水の緑に変わっていく。小さな泡のベールの向こうに二人の姿を探せば、案外近くに居たではないか。丁度息が続かなくなったであろう、苦しそうなヴォジャと、その首を搔かんと浮上してくる直器君が。
二人が私に気付き、目を丸くする。何しに来たお前って顔に書いてあるのが笑える。
あんたら止めるためよ、ばーか。
私は直器君のナイフを指差し、牽制する。そしてヴォジャの方に泳いでいき、彼女の首にぐるりと腕を巻き付け、抱き締めた。早々にヴォジャを仕留める事を諦めてくれた直器君が先に海面に上がるのを、ヴォジャが私を引っ付けたまま追いかける。直器君の側に浮上する気なのは分かったが、私はそれを阻止しようとは思わなかった。もう、彼女に敵意がない事を分かっていたからだ。
「ぷは!」
私達は盛大に息継ぎをする。ずっと海中で戦っていた二人と同じくらい息が乱れているというのも恥ずかしい話だが、最早体の造りが違うレベルだから仕方がない。
「晴乃君、何してるの」
ブチギレた直器君が問い掛けるのを、私は逆ギレで受けて立つ。
「こっちの台詞よ…何でこんなことしてるの」
「君は今、ガクトが命懸けで戦ってるのが分からないの」
「それは貴方が人を殺す理由にはならない」
「綺麗事はやめてくれる?」
「綺麗事じゃない!私もガクトさんも貴方が人殺して嬉しいと思うの?!」
「君達はルールを犯してないじゃない。君達と僕では守るべきルールが違う」
「なら帰れ!」
直器君が目を丸くする。自分でも、今のは口が悪かったと思っている。でも、仕方がないじゃないか。そんなこと言われて冷静でいろなんてさ。
「切間創一でいたけりゃ帰れよ。最上さんに口利いてやるから帰れよ!どっちなんだよあんたはさぁ!仲間じゃないのか?!誰が汚れを引き受けろって言ったよ!私も、ガクトさんも!全部終わって!めでたしめでたしの後で!あんたが人殺してたなんて知りたくない!分かれよ!」
「切間創一…お前達、何者?」
「うっさいわねえ!今どんな状況か見て話しなさい!」
「状況…そいつは今、足に風穴が空いている」
「……」
「……」
「…早く言いなさいよ!」
体を激しく揺さぶられた痛みで目が覚めた。何だこれ、滅茶苦茶痛い!
「何…なんじゃこりゃ?!」
「どうした嬢ちゃん?!」
「やっ…体滅茶苦茶痛い!」
「あー…」
私を起こしてくれたのは、さっき私がコンテナから救出した船員さんだった。彼はポリポリ頭をかきながら、「嬢ちゃん、ヴォジャに殴られてたし、連れの兄ちゃんにぶん投げられてたからなあ」と言われて悲しくなる。何でこんな扱いを受けにゃならんのか。
「こんちくしょう…」
「まあ…生きてて良かったじゃねえか、お互いよお」
「まあ…そうですね?結局全員生きてました?」
「ああ。アンタのお陰だ。悪い事は言わねえから逃げちまいな」
「…ヴォジャと、ウチのお兄さんは?」
「それが、海に落ちちまったよ…だから今のうちに」
「海?!」
驚いてコンテナの上から甲板を見下ろせば、確かにここから落ちましたよと言わんばかりに柵が一部ひしゃげている。
「落ちた、とな」
「…ああ」
「浮上は…」
「…してねえ」
「はああ〜」
普通、この寒い中海中戦に持ち込む馬鹿がいますかね?私はあまりの事に思わず頭を抱え込む。何でこう、裏社会の人間というものは、いつもいつも、無鉄砲なのか!
私は大きなため息をついて、立ち上がる。
「…魅力的な提案ですが、あの人を置いては逃げられません」
「は?」
「ほっといたら死ぬでしょう、あいつら」
マフラー、コート、靴に靴下。忘れずに盗聴器。あと…セーターも脱いでおくか。一応二人とも人間、十分も二十分も海中で戦う事はあり得ない。急がねば。私はえっちらおっちらコンテナから降りて、ひしゃげた柵の前まで駆け寄る。
「うわ、高い」
私は予想以上の距離に怯みかけ、慌てて首を振る。四の五の言っている場合ではない。直器君にこれ以上殺させる訳にはいかないのだ!
私は柵の向こうへ乗り出すと、船のへりを蹴り、飛び降りる。三日前に帝国タワーから落ちた事を思えば、大した高さではなかったな、なんて今更思った。
ドボン!
私の体は泡に包まれる。真っ白な視界が徐々に海水の緑に変わっていく。小さな泡のベールの向こうに二人の姿を探せば、案外近くに居たではないか。丁度息が続かなくなったであろう、苦しそうなヴォジャと、その首を搔かんと浮上してくる直器君が。
二人が私に気付き、目を丸くする。何しに来たお前って顔に書いてあるのが笑える。
あんたら止めるためよ、ばーか。
私は直器君のナイフを指差し、牽制する。そしてヴォジャの方に泳いでいき、彼女の首にぐるりと腕を巻き付け、抱き締めた。早々にヴォジャを仕留める事を諦めてくれた直器君が先に海面に上がるのを、ヴォジャが私を引っ付けたまま追いかける。直器君の側に浮上する気なのは分かったが、私はそれを阻止しようとは思わなかった。もう、彼女に敵意がない事を分かっていたからだ。
「ぷは!」
私達は盛大に息継ぎをする。ずっと海中で戦っていた二人と同じくらい息が乱れているというのも恥ずかしい話だが、最早体の造りが違うレベルだから仕方がない。
「晴乃君、何してるの」
ブチギレた直器君が問い掛けるのを、私は逆ギレで受けて立つ。
「こっちの台詞よ…何でこんなことしてるの」
「君は今、ガクトが命懸けで戦ってるのが分からないの」
「それは貴方が人を殺す理由にはならない」
「綺麗事はやめてくれる?」
「綺麗事じゃない!私もガクトさんも貴方が人殺して嬉しいと思うの?!」
「君達はルールを犯してないじゃない。君達と僕では守るべきルールが違う」
「なら帰れ!」
直器君が目を丸くする。自分でも、今のは口が悪かったと思っている。でも、仕方がないじゃないか。そんなこと言われて冷静でいろなんてさ。
「切間創一でいたけりゃ帰れよ。最上さんに口利いてやるから帰れよ!どっちなんだよあんたはさぁ!仲間じゃないのか?!誰が汚れを引き受けろって言ったよ!私も、ガクトさんも!全部終わって!めでたしめでたしの後で!あんたが人殺してたなんて知りたくない!分かれよ!」
「切間創一…お前達、何者?」
「うっさいわねえ!今どんな状況か見て話しなさい!」
「状況…そいつは今、足に風穴が空いている」
「……」
「……」
「…早く言いなさいよ!」