アセビよ、貴方の手を引いて
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ヴォジャが勢いよくツルハシを投げる。ぎゅんぎゅん回転しながら僕の頭を目がけて飛んでくるそれを、タイミングを合わせて掴む。身体を回転させ、その勢いでツルハシを投げ返せば、彼女は張り合う様にそれを掴んだ。
「ああ、ありがとう。晴乃君に当たるところだったよ」
そう言うと彼女は分かりやすく怒りを表に出した。
「なら、大事に持ってたら」
彼女はそう吐き捨てる様に言って、晴乃君の首根っこを掴み、こっちへぶん投げてきた。え、ぶん投げてきた?!
かわせば意識のないまま海に落下してしまう。僕はやむなく常識外れのスピードで吹っ飛んでくる彼女を受け止める。衝撃に耐えきれず、僕は彼女と共に後ろへ倒れた。ずるりと体が滑る。
ーーしまった…!
吹っ飛んできた晴乃君に押され、ジェルのゾーンに入ってしまった。幸い背中から落ちたお陰で足は無事だったが…選択の余地はない。僕は晴乃君を抱き抱え、足の指にナイフを挟んで立ち上がる。
やけに静かだ。僕が目を離した一瞬の隙に姿を眩ましたらしい。僕は耳を澄ます。聞こえるのは晴乃君の呑気な呼吸音と…
「ゴホッ、ゴホッ」
男の咳き込む声。
「ヴォジャ…こいつを脇に入れなきゃいいんだな?お前の言うとおりこいつ大事に女抱えてやがる」
「そのままいろ…恐らくそいつは逃げない…逃げても事態は好転しないのは分かっているからだ。女も置かない…置けば人質に取られると分かっているからだ。だがいよいよ追い詰められれば別…そこらをウロチョロされると鬱陶しい」
「ギャハハ」という大きな笑い声に混じって聞こえるのは、ぎ、ぎ、という金属が擦れる音。何を仕掛けてくる気だ?
答えは間もなく分かった。ヴォジャは馬鹿力でコンテナを押し、袋小路を作り出そうとしているのだ。分かった所でそれを止める術も、必要もない。僕は晴乃君をコンテナの上に放り投げた。
「大事に持ってなくていいの?その女なんて易々と殺せる」
「君はこの子を殺せないよ」
ギャハハ、と彼女は笑う。
「私は貴方に近付かない。近付かなくても楽に殺せるから」
彼女は反対側のコンテナも押し込み、いよいよ僕の逃げ道を塞ぐ。次の手は分かっている。あのヴェルダーをジェルで滑らせ、僕に当てる気だ。
弾は二発。問題はない。
「貴方をころしたら、次はあの女」
ヴォジャがヴェルダーの一台目に足を掛け、思い切り押し出す。それはジェルによりぐんぐん速さを増しながら突き進んでくる。僕はそれを真正面で受け止めて、密かにワイヤーを引っ掛けた。これが僕の命綱になるだろう。ヴォジャは…恐らくヴェルダーをわざわざ受け止める不自然さに気付いている筈だ。それを理解した上で、彼女は二蹴目に入る。巻き込まれて海に落ちては敵わない。ジュルル!というヴェルダーがジェルの上を滑走する音が聞こえると同時に僕は飛び上がる。
しかし、それが誤断だった。
「くっ!」
僕は足に持ったナイフを突き出す。しかし、ヴェルダー発射と同時に飛び掛かってきていたヴォジャは、咥えていたナイフで易々とそれを弾き、ツルハシを僕の右足に深く突き刺した。
ーー貫通。最悪だ。
僕とヴォジャは共に海に落ちていく。だが、負けるわけにはいかない。僕はヴェルダーに繋げたワイヤーのフックを握り直す。
「ああ、ありがとう。晴乃君に当たるところだったよ」
そう言うと彼女は分かりやすく怒りを表に出した。
「なら、大事に持ってたら」
彼女はそう吐き捨てる様に言って、晴乃君の首根っこを掴み、こっちへぶん投げてきた。え、ぶん投げてきた?!
かわせば意識のないまま海に落下してしまう。僕はやむなく常識外れのスピードで吹っ飛んでくる彼女を受け止める。衝撃に耐えきれず、僕は彼女と共に後ろへ倒れた。ずるりと体が滑る。
ーーしまった…!
吹っ飛んできた晴乃君に押され、ジェルのゾーンに入ってしまった。幸い背中から落ちたお陰で足は無事だったが…選択の余地はない。僕は晴乃君を抱き抱え、足の指にナイフを挟んで立ち上がる。
やけに静かだ。僕が目を離した一瞬の隙に姿を眩ましたらしい。僕は耳を澄ます。聞こえるのは晴乃君の呑気な呼吸音と…
「ゴホッ、ゴホッ」
男の咳き込む声。
「ヴォジャ…こいつを脇に入れなきゃいいんだな?お前の言うとおりこいつ大事に女抱えてやがる」
「そのままいろ…恐らくそいつは逃げない…逃げても事態は好転しないのは分かっているからだ。女も置かない…置けば人質に取られると分かっているからだ。だがいよいよ追い詰められれば別…そこらをウロチョロされると鬱陶しい」
「ギャハハ」という大きな笑い声に混じって聞こえるのは、ぎ、ぎ、という金属が擦れる音。何を仕掛けてくる気だ?
答えは間もなく分かった。ヴォジャは馬鹿力でコンテナを押し、袋小路を作り出そうとしているのだ。分かった所でそれを止める術も、必要もない。僕は晴乃君をコンテナの上に放り投げた。
「大事に持ってなくていいの?その女なんて易々と殺せる」
「君はこの子を殺せないよ」
ギャハハ、と彼女は笑う。
「私は貴方に近付かない。近付かなくても楽に殺せるから」
彼女は反対側のコンテナも押し込み、いよいよ僕の逃げ道を塞ぐ。次の手は分かっている。あのヴェルダーをジェルで滑らせ、僕に当てる気だ。
弾は二発。問題はない。
「貴方をころしたら、次はあの女」
ヴォジャがヴェルダーの一台目に足を掛け、思い切り押し出す。それはジェルによりぐんぐん速さを増しながら突き進んでくる。僕はそれを真正面で受け止めて、密かにワイヤーを引っ掛けた。これが僕の命綱になるだろう。ヴォジャは…恐らくヴェルダーをわざわざ受け止める不自然さに気付いている筈だ。それを理解した上で、彼女は二蹴目に入る。巻き込まれて海に落ちては敵わない。ジュルル!というヴェルダーがジェルの上を滑走する音が聞こえると同時に僕は飛び上がる。
しかし、それが誤断だった。
「くっ!」
僕は足に持ったナイフを突き出す。しかし、ヴェルダー発射と同時に飛び掛かってきていたヴォジャは、咥えていたナイフで易々とそれを弾き、ツルハシを僕の右足に深く突き刺した。
ーー貫通。最悪だ。
僕とヴォジャは共に海に落ちていく。だが、負けるわけにはいかない。僕はヴェルダーに繋げたワイヤーのフックを握り直す。