アセビよ、貴方の手を引いて
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直器君はガクトさんに、応援が城道さんの妨害によって握り潰されてしまったことをメールして、携帯を閉じる。直ぐにメールを見たのであろうガクトさんが息を呑む音が、イヤホン越しに微かに聞こえた。心中お察しする。
ガクトさんは動揺を最小限に隠し、レーシィ船長と対峙する。
「代わってあげたい」
「気持ちは分かるけど、僕も君も立会人に見つかったらゲームオーバーじゃない」
「そうなのよねえ。梶様さえ余計な事してくれなければ…」
「本当にね」
私達は甲板に辿り着き、港を見下ろす。イヤホンの向こうではバトルシップの説明が行われている。こういう設備があるという事は、恐らく、今みたいに船に迷い込んできた人達を、賭けで希望をちらつかせながら痛ぶってきたという事だろう。生け好かねえとはこのことだ。
「さあ、三方準備が整った」
そう直器君が呟く、成る程、最上さんの兵が港に乗り入れてきた。
『さあ皆仕事よ、私語は禁止』
暫くして聞こえてきた最上さんの声に、私は口の端が弛む。
『皆…今日も可愛くて、美しくて、ワイルドで、妖艶よ…ふふ…全て私のもの』
「いやあ、相変わらずカッコいい」
「何、君。最上の女だったの?」
「立会人箱推しなんですわ」
「箱推し…?」
「みーんな大好きってことよ」
ふふと笑いながら最上さんや黒服の皆の声を聞く。懐かしいような、新鮮なような。
『…はい、船長のルール説明は100%反映されています』
『ルールは俺も録音している。ちょっと待ってくれ、もう一度ルールを確認させてもらう』
そう言ってガクトさんは沈黙する。真面目な人だわあと思っていたら、直器君の携帯が鳴ったので、私は驚いて直器君を見る。
「ガクトか。良い機転だ。このままの状態を維持しろ。僕の話を聞け」
『クク…さあ大船君、コンテナの隠し場所を喋って貰おうか』
『何だと?!ふざけるな、まだ勝負はついていない!』
『大船君、まずはコンテナを全て積み込ませてもらう。勝負をするのはその後だ…私が勝てばすぐに出航…スムーズだろ?』
『ご心配なく…大船様。コンテナを積んでも決着がつくまでこの船は出航出来ないようにさせます』
「ガクト、受け入れるな。ごねろ。引くんじゃない。レーシィはまだ応援の到着を恐れている…ああ言っても一刻も早く賭郎に仕切って欲しいはずだ。まずはこのゲーム機のシステムを否定しろ」
『コンテナの積み込みなど認めん。そしてこのバトルシップに使用される機器もやはり信用は出来ない。例えば特殊なソフトが組み込まれていて特定の操作で自軍の船の配置を途中で変更したり捏造したりできるんじゃないのか?』
『ウイルス的なプログラムの事ですね。それもチェック済みです』
『いや、信用できん』
「ガクト、船の配置に対する疑惑を晴らせる担保を求めろ」
『レーシィのシステムを採用するんだ…引くつもりはない。特に敵側の船の配置に対する疑惑を晴らすような確実な担保が欲しい』
『大船様、当然我らが責任を持ってお互いの船の配置を記録しておくのですよ?』
『ダメだ。俺はそもそもお前らの事も信じていない』
「ガクト、繰り返せ」
シャドーイングとでも言うんだろうか。ガクトさんは直器君が「ここで交わされる言葉など俺にとっては頼りない虚像。いいか、ブリッジから外を見てみろ…ここは敵の船、敵の城だ。俺はここでは無力な存在…せめて決して動かぬ確かな証拠が欲しい」と言うのとほぼ同時に、最上さんに彼の言葉を伝える。その後のほんの少しの沈黙は、最上さんがそれを受け入れた証。
『話にならんなぁ、立会人?』
『…レーシィ船長、兵器入りのコンテナは全部でいくつですか?』
『…20だが?』
『ではすぐに全てを船に積み込ませて頂きます…』
直器君の口元が緩む。上手く思い通りのレールに乗せられたらしい。具体的には全く分からないが、流石直器君。
『申し訳ありませんが、今からは私が仕切らせて頂きます。不満なら我ら今すぐ撤収させて頂きます。大船様、先程我らが信用できないとおっしゃっておりましたが、あなた様に信じてもらう必要はありません。貴方は否応なしに信じるしかなくなるのです。勝敗のついたその時に』
「ガクト、よくやった。後は勝負に集中しろ」
そう言うと直器君は私に携帯を持たせ、「君がこれに注意を払っておいてよ。くれぐれもスルーしちゃ駄目だよ」と笑った。「失礼な」と返しておく。デッキには黒服さん方がうろつき始めたので、私達は他の隠れ場所を探す事にした。
『使用機器・ルールは船長の説明が100%反映されます。我ら賭郎はそれを見守るのみになります。つまりこのシステムを使用する以外何の決まりもありません。我ら賭郎はここブリッジで行われる勝負以外は一切関知する義務を負いません』
「最上さん、何でもアリにするの好きよねえ。凄いなあ」
「そう?」
「だって、何が起きても対処できる自信がなきゃ、言えなくない?」
「別に、対処しなくていいでしょ。関知しないって最初に言ったんだから」
「いやあなんか、モヤモヤしちゃう。管理したい派」
「君、そもそも立会人じゃないでしょ」
「それ、言っちゃう?」
直器君は微笑んで、「君が欲しいなら、ハンカチをあげる」と言った。私は「向いてないよ」と肩を竦める。
「それで、最上さんを誘導してたのは何だったの?」
「今頃甲板では、レーシィの船の配置通りにコンテナが置かれている筈だよ」
「凄い」
「確認しに行こうか」
「はーい」
ガクトさんは動揺を最小限に隠し、レーシィ船長と対峙する。
「代わってあげたい」
「気持ちは分かるけど、僕も君も立会人に見つかったらゲームオーバーじゃない」
「そうなのよねえ。梶様さえ余計な事してくれなければ…」
「本当にね」
私達は甲板に辿り着き、港を見下ろす。イヤホンの向こうではバトルシップの説明が行われている。こういう設備があるという事は、恐らく、今みたいに船に迷い込んできた人達を、賭けで希望をちらつかせながら痛ぶってきたという事だろう。生け好かねえとはこのことだ。
「さあ、三方準備が整った」
そう直器君が呟く、成る程、最上さんの兵が港に乗り入れてきた。
『さあ皆仕事よ、私語は禁止』
暫くして聞こえてきた最上さんの声に、私は口の端が弛む。
『皆…今日も可愛くて、美しくて、ワイルドで、妖艶よ…ふふ…全て私のもの』
「いやあ、相変わらずカッコいい」
「何、君。最上の女だったの?」
「立会人箱推しなんですわ」
「箱推し…?」
「みーんな大好きってことよ」
ふふと笑いながら最上さんや黒服の皆の声を聞く。懐かしいような、新鮮なような。
『…はい、船長のルール説明は100%反映されています』
『ルールは俺も録音している。ちょっと待ってくれ、もう一度ルールを確認させてもらう』
そう言ってガクトさんは沈黙する。真面目な人だわあと思っていたら、直器君の携帯が鳴ったので、私は驚いて直器君を見る。
「ガクトか。良い機転だ。このままの状態を維持しろ。僕の話を聞け」
『クク…さあ大船君、コンテナの隠し場所を喋って貰おうか』
『何だと?!ふざけるな、まだ勝負はついていない!』
『大船君、まずはコンテナを全て積み込ませてもらう。勝負をするのはその後だ…私が勝てばすぐに出航…スムーズだろ?』
『ご心配なく…大船様。コンテナを積んでも決着がつくまでこの船は出航出来ないようにさせます』
「ガクト、受け入れるな。ごねろ。引くんじゃない。レーシィはまだ応援の到着を恐れている…ああ言っても一刻も早く賭郎に仕切って欲しいはずだ。まずはこのゲーム機のシステムを否定しろ」
『コンテナの積み込みなど認めん。そしてこのバトルシップに使用される機器もやはり信用は出来ない。例えば特殊なソフトが組み込まれていて特定の操作で自軍の船の配置を途中で変更したり捏造したりできるんじゃないのか?』
『ウイルス的なプログラムの事ですね。それもチェック済みです』
『いや、信用できん』
「ガクト、船の配置に対する疑惑を晴らせる担保を求めろ」
『レーシィのシステムを採用するんだ…引くつもりはない。特に敵側の船の配置に対する疑惑を晴らすような確実な担保が欲しい』
『大船様、当然我らが責任を持ってお互いの船の配置を記録しておくのですよ?』
『ダメだ。俺はそもそもお前らの事も信じていない』
「ガクト、繰り返せ」
シャドーイングとでも言うんだろうか。ガクトさんは直器君が「ここで交わされる言葉など俺にとっては頼りない虚像。いいか、ブリッジから外を見てみろ…ここは敵の船、敵の城だ。俺はここでは無力な存在…せめて決して動かぬ確かな証拠が欲しい」と言うのとほぼ同時に、最上さんに彼の言葉を伝える。その後のほんの少しの沈黙は、最上さんがそれを受け入れた証。
『話にならんなぁ、立会人?』
『…レーシィ船長、兵器入りのコンテナは全部でいくつですか?』
『…20だが?』
『ではすぐに全てを船に積み込ませて頂きます…』
直器君の口元が緩む。上手く思い通りのレールに乗せられたらしい。具体的には全く分からないが、流石直器君。
『申し訳ありませんが、今からは私が仕切らせて頂きます。不満なら我ら今すぐ撤収させて頂きます。大船様、先程我らが信用できないとおっしゃっておりましたが、あなた様に信じてもらう必要はありません。貴方は否応なしに信じるしかなくなるのです。勝敗のついたその時に』
「ガクト、よくやった。後は勝負に集中しろ」
そう言うと直器君は私に携帯を持たせ、「君がこれに注意を払っておいてよ。くれぐれもスルーしちゃ駄目だよ」と笑った。「失礼な」と返しておく。デッキには黒服さん方がうろつき始めたので、私達は他の隠れ場所を探す事にした。
『使用機器・ルールは船長の説明が100%反映されます。我ら賭郎はそれを見守るのみになります。つまりこのシステムを使用する以外何の決まりもありません。我ら賭郎はここブリッジで行われる勝負以外は一切関知する義務を負いません』
「最上さん、何でもアリにするの好きよねえ。凄いなあ」
「そう?」
「だって、何が起きても対処できる自信がなきゃ、言えなくない?」
「別に、対処しなくていいでしょ。関知しないって最初に言ったんだから」
「いやあなんか、モヤモヤしちゃう。管理したい派」
「君、そもそも立会人じゃないでしょ」
「それ、言っちゃう?」
直器君は微笑んで、「君が欲しいなら、ハンカチをあげる」と言った。私は「向いてないよ」と肩を竦める。
「それで、最上さんを誘導してたのは何だったの?」
「今頃甲板では、レーシィの船の配置通りにコンテナが置かれている筈だよ」
「凄い」
「確認しに行こうか」
「はーい」