アセビよ、貴方の手を引いて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「おい…俺を睨むんじゃねえ。俺のせいじゃねえ。俺は船の名と場所しか知らねえ。嘘は言ってねえぞ」
「そんな事より…どうして付いて来る?金が目的か?」
「違うと言ったら嘘になるが…金を奪うつもりは毛頭ねえ…そんなつもりはねえよ。だが俺もまだ大事なネタを持っている。協力できる事だってあるはずだ。俺はただ…」
「ただ、私達を殺したいだけ?」
私達はまとわりついてくる城道さんを適当にあしらいつつ、ブリッジに向かう階段を上る。
「いや…そんなこたぁねえよ。俺はお前らに協力してえだけなんだよ…」
大嘘である。今ので分かったが、やっぱりこの人は私達の敵だ。そして、どうやら私達を殺す事を命じられているのだが…この人にそんな度胸はない、といったところだろう。
「ふうん。まあ、お好きなように」
「甘い期待は捨てるんだな。俺は情報と引き換えに金を払ったり絶対にしない。お前を放置しているのは今お前に構ってる暇がないからだ」
階段を登り切るところで、私はガクトさんに「応援、来ないつもりで行動してね。あくまでブラフ…ハッタリとして使って。実際の戦力は私達と横井さんの四人だけ」と念を押す。彼は苦々しく頷いた。
「そこまで…腐っていないと信じている」
「…貴方みたいな人、きっともっと沢山いるよ。埋もれてるだけで」
「…そうだな」
階段を登り切り、デッキに降り立つ。見上げれば横井さんが囚われているであろうブリッジが見えた。
「あそこかあ」
「あそこだな」
案の定というか何というか、迎えは来ない。勝手に上がってこいという事か。良くないシナリオで動いている。私は諦めて歩き出す。
「ガクトさん、例えばよ?ガクトさんのお家に機密書類が置いてあるとするじゃない?」
「ん?…ああ」
「彼女、お家に上げれる?」
「…上げないな」
「ね。じゃ、どうしても上げることになったら?」
「機密書類を完全に隠した上で…彼女からは目を離さない」
「ねえ?うん、普通そうなのよ。証拠だらけの密輸船、しっかり隠した自信があってもお客さんからは目を離さないもんなのよ。でも、勝手に上がってこいって言うってことは?」
「情報が俺達からは漏れないという自信がある。つまり…確実に口を封じるつもりか」
「多分ね。ガクトさん、相手は私達を殺す気だ。絶対気を抜いちゃダメだからね。それに…城道さん、貴方早く降りるべきだ。これが最後のチャンスだよ」
最終勧告にだんまりを決め込む彼のことは放置して、私達は進む。しかし、もうすぐブリッジというところで、ガクトさんは振り向いて、私の肩に手を置く。
「君は、ここに隠れていてくれ」
「へ?今更だよ、そんなん」
「確かに今更かもしれない…だが、これ以上本来任務と関係のない君を命の危険に晒すわけにはいかない!」
ぐい、と肩を押され、私はどんどん後退する。立会人ほどではなくとも、ガクトさんも結構鍛えているらしい。私は勝てるはずもなくトイレに押し込められる。
「お前もだ、城道!彼女を頼んだぞ!」
「へ?ダメだよガクトさん、一人じゃ良いようにされちゃうって!」
ドアを閉められ、彼は勝手に歩いて行く。私は頭を掻いた。
「まあ…やりようはあるけどさあ?」
そう言いながら盗聴用のイヤホンを右耳に挿す。ガクトさんに付けた盗聴器のものだ。離れた時用の備えはバッチリ…と言いたいところだが、私だけ通信機器が無い。
「ねえ城道さん、携帯ある?」
「は?ああ…。か、貸さねえぞ!」
「うん、まだいい。こっちも味方の電話番号を晒さずに終わるならそれに越した事ないからさ」
しまった!という顔の城道さん。これは…荒事に慣れてる分私の方が頭がいいのか?
「しかし…トイレかあ。あんまり長くは隠れられないね」
「あ?お、おお」
「どうしようかな。どこなら安全だと思う?」
城道さんは真面目に考え始める。所謂、根はいい人なのだろう。枝葉は最悪だが。
「おっ!船員の服を奪うってのはどうだ?!」
「アリだね。私は着ても紛れらんないから、城道さんはやるといい」
「あっそうか…」
急速に萎んだ城道さんに、噴き出してしまう。
「やだ城道さんたら、私と脱出しようとしてどうするの!うけるー!」
「あっうっうるせえ!」
「はーもう…貴方マジで足洗った方がいいよ。良いように使われて殺されちゃうよ?いい?戻れないとかじゃなくて、死ぬよりマシって考えなきゃ。もう悪い事はしちゃダメ…って、ちょっとごめん」
私は話を辞め、イヤホンの会話に集中する。嫌な声が聞こえたのだ。多分、この声は、話し方は、考え方は…
「梶様だ…最悪。ごめんやっぱ携帯貸して」
「は?お、おい!」
私は城道さんから携帯をむしり取り、直器君に連絡する。無視もあり得るかと思ったが、意外な事に彼はすぐに出た。
「晴乃君?」
「凄い、よく分かったね。で、早速だけど、ガクトさんのとこ、賭郎会員がいる」
「やっぱり。君は今どこ?」
「ブリッジ近くのトイレ。城道さんと押し込められてる」
「すぐに行く」
「ありがとう。一応…会員の名前は梶隆臣。専属は夜行妃古壱立会人だけど…多分、横浜海運局で絡手をしてくれてる、九拾壱號、最上妙子立会人が来る」
「成る程ね…クイーンか。記憶にある」
「良かった。けど…ガクトさんには不利かもしれないね」
「ガクトだけならね」
「そんな事より…どうして付いて来る?金が目的か?」
「違うと言ったら嘘になるが…金を奪うつもりは毛頭ねえ…そんなつもりはねえよ。だが俺もまだ大事なネタを持っている。協力できる事だってあるはずだ。俺はただ…」
「ただ、私達を殺したいだけ?」
私達はまとわりついてくる城道さんを適当にあしらいつつ、ブリッジに向かう階段を上る。
「いや…そんなこたぁねえよ。俺はお前らに協力してえだけなんだよ…」
大嘘である。今ので分かったが、やっぱりこの人は私達の敵だ。そして、どうやら私達を殺す事を命じられているのだが…この人にそんな度胸はない、といったところだろう。
「ふうん。まあ、お好きなように」
「甘い期待は捨てるんだな。俺は情報と引き換えに金を払ったり絶対にしない。お前を放置しているのは今お前に構ってる暇がないからだ」
階段を登り切るところで、私はガクトさんに「応援、来ないつもりで行動してね。あくまでブラフ…ハッタリとして使って。実際の戦力は私達と横井さんの四人だけ」と念を押す。彼は苦々しく頷いた。
「そこまで…腐っていないと信じている」
「…貴方みたいな人、きっともっと沢山いるよ。埋もれてるだけで」
「…そうだな」
階段を登り切り、デッキに降り立つ。見上げれば横井さんが囚われているであろうブリッジが見えた。
「あそこかあ」
「あそこだな」
案の定というか何というか、迎えは来ない。勝手に上がってこいという事か。良くないシナリオで動いている。私は諦めて歩き出す。
「ガクトさん、例えばよ?ガクトさんのお家に機密書類が置いてあるとするじゃない?」
「ん?…ああ」
「彼女、お家に上げれる?」
「…上げないな」
「ね。じゃ、どうしても上げることになったら?」
「機密書類を完全に隠した上で…彼女からは目を離さない」
「ねえ?うん、普通そうなのよ。証拠だらけの密輸船、しっかり隠した自信があってもお客さんからは目を離さないもんなのよ。でも、勝手に上がってこいって言うってことは?」
「情報が俺達からは漏れないという自信がある。つまり…確実に口を封じるつもりか」
「多分ね。ガクトさん、相手は私達を殺す気だ。絶対気を抜いちゃダメだからね。それに…城道さん、貴方早く降りるべきだ。これが最後のチャンスだよ」
最終勧告にだんまりを決め込む彼のことは放置して、私達は進む。しかし、もうすぐブリッジというところで、ガクトさんは振り向いて、私の肩に手を置く。
「君は、ここに隠れていてくれ」
「へ?今更だよ、そんなん」
「確かに今更かもしれない…だが、これ以上本来任務と関係のない君を命の危険に晒すわけにはいかない!」
ぐい、と肩を押され、私はどんどん後退する。立会人ほどではなくとも、ガクトさんも結構鍛えているらしい。私は勝てるはずもなくトイレに押し込められる。
「お前もだ、城道!彼女を頼んだぞ!」
「へ?ダメだよガクトさん、一人じゃ良いようにされちゃうって!」
ドアを閉められ、彼は勝手に歩いて行く。私は頭を掻いた。
「まあ…やりようはあるけどさあ?」
そう言いながら盗聴用のイヤホンを右耳に挿す。ガクトさんに付けた盗聴器のものだ。離れた時用の備えはバッチリ…と言いたいところだが、私だけ通信機器が無い。
「ねえ城道さん、携帯ある?」
「は?ああ…。か、貸さねえぞ!」
「うん、まだいい。こっちも味方の電話番号を晒さずに終わるならそれに越した事ないからさ」
しまった!という顔の城道さん。これは…荒事に慣れてる分私の方が頭がいいのか?
「しかし…トイレかあ。あんまり長くは隠れられないね」
「あ?お、おお」
「どうしようかな。どこなら安全だと思う?」
城道さんは真面目に考え始める。所謂、根はいい人なのだろう。枝葉は最悪だが。
「おっ!船員の服を奪うってのはどうだ?!」
「アリだね。私は着ても紛れらんないから、城道さんはやるといい」
「あっそうか…」
急速に萎んだ城道さんに、噴き出してしまう。
「やだ城道さんたら、私と脱出しようとしてどうするの!うけるー!」
「あっうっうるせえ!」
「はーもう…貴方マジで足洗った方がいいよ。良いように使われて殺されちゃうよ?いい?戻れないとかじゃなくて、死ぬよりマシって考えなきゃ。もう悪い事はしちゃダメ…って、ちょっとごめん」
私は話を辞め、イヤホンの会話に集中する。嫌な声が聞こえたのだ。多分、この声は、話し方は、考え方は…
「梶様だ…最悪。ごめんやっぱ携帯貸して」
「は?お、おい!」
私は城道さんから携帯をむしり取り、直器君に連絡する。無視もあり得るかと思ったが、意外な事に彼はすぐに出た。
「晴乃君?」
「凄い、よく分かったね。で、早速だけど、ガクトさんのとこ、賭郎会員がいる」
「やっぱり。君は今どこ?」
「ブリッジ近くのトイレ。城道さんと押し込められてる」
「すぐに行く」
「ありがとう。一応…会員の名前は梶隆臣。専属は夜行妃古壱立会人だけど…多分、横浜海運局で絡手をしてくれてる、九拾壱號、最上妙子立会人が来る」
「成る程ね…クイーンか。記憶にある」
「良かった。けど…ガクトさんには不利かもしれないね」
「ガクトだけならね」