アセビよ、貴方の手を引いて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
誰も分かってくれないけど、私の頭は貴方達が思う数倍悪い。貴方達が何がしたいのかは分かるけど、何故、どういう風に、といった具体的な部分が分かった試しがない。下手したら、目の前で見てても分からない。今だってそうだ。直器君は、先に手の内を見せてきた私の為に、自分の手の内を見せようとしてくれている。彼なりの信頼の情の表れなのだ。だが、果たして私に彼のやる事がどこまで理解できるだろうか。
『城道さん、今、相当な額に膨れ上がっているよ』
『まいったね。こんな所にまで来るか?普通。俺がここでよく飯食ってるって調べたのか…まあいい。俺の負け分はいくらだっけ?』
『とぼけないでよ。忘れるような金額じゃないでしょ?』
相変わらず、直器君…いや、お屋形様は上手だ。相手の出方によって何にでも変わる言葉を選び、いつの間にか懐に潜り込む。いつも正面突破の私は学ぶ必要がありそうだ。尤も、この世界で生きていくならの話だが。
『わざわざ来てもらって悪いんだが、今金はないんだ。もうすぐまとまった金が入るから待ってくれないかな』
『くれない!今持ってるだけでも払ってよ』
『そんなに意気込むなよっ!あんたらカジノ側だって俺みたいな客がいるから成り立ってるんじゃないか。大体こんな所まで来るのはルール違反だろ』
少しの沈黙。城道さんは彼を追い払う呪文は無いかと考えているのだろう。声の張りから取り立て屋がどこで取り立てようとルール違反ではないのは分かっている様だから、彼はより強い呪文を捻り出すしかない。
『どうだ?ここは一つ賭けでケリをつけないか?』
そう。自分が得意とする戦いの土俵に上げてしまおうと、そういう事。上げられたのはどちらかも気付かずに。
「おおー」
「いや…なんだこの奇天烈な流れ」
「お家芸なんですよこの流れ」
「暗謀って何なんだ」
「今後暗謀のメンバーと組む度にそのツッコミが要りますよ」
「なら今回を最初で最後にしたいな」
「釣れない事言わないでくださいよう」
さて、盗聴器の向こうではコインの幅寄せゲームなるものが始まった様だ。一所懸命城道の説明から図を書き起こして理解しようと頑張るガクトさんに、「そんな真面目に聞かなくても、これ前座ですよ」と声を掛ける。
「前座?」
「だってまだ、何も重要なもの賭けてないじゃないですか」
ガクトさんの手が止まる。気づいたようだ。そう。カジノの取り立て人に扮して城道さんの財布から幾らかちょろまかしたとして、どうなるというのか。
「そうか…」
「定石だと一旦負けるかなあ?そっちの方が相手も油断するし、物言いも付けやすくなりますからね。コーヒーフレッシュを使う流れにも持ち込みやすくなる筈です」
「成る程…しかし、正体を明かせば城道は二戦目を受ける必要が無くなる…どう港の場所を吐かせる?蜂名…」
一緒になって考えてみるけど、名案は浮かばない。私なら…と考えてみたが、一番に浮かんだのは城道さんの前でガクトさんが持つ港のリストを読み上げることだった。だが、これでは港が分かっても城道さんと喧嘩になる事必至だし、下手をすれば増援を呼ばれてしまうだろう。自分がこの一年間、如何に立会人さんに依存した戦い方をしてきたかよく分かる。これは、私、やばいぞ。立会人さんに会った瞬間何の抵抗もできず粛清されてしまう。それはまずい。私はお屋形様の記憶を取り戻すまでは、何としてでも生き延びなきゃいけないのだ。そう、何とか自力で。タワーの時から考えてはいたが、やっぱり私には私だけの知と暴が必要だ。どこかに都合よく転がっていればいいのに。
ついため息が漏れる。ガクトさんがどう解釈したのか、「大丈夫」と励ましてくれた。
『城道さん、今、相当な額に膨れ上がっているよ』
『まいったね。こんな所にまで来るか?普通。俺がここでよく飯食ってるって調べたのか…まあいい。俺の負け分はいくらだっけ?』
『とぼけないでよ。忘れるような金額じゃないでしょ?』
相変わらず、直器君…いや、お屋形様は上手だ。相手の出方によって何にでも変わる言葉を選び、いつの間にか懐に潜り込む。いつも正面突破の私は学ぶ必要がありそうだ。尤も、この世界で生きていくならの話だが。
『わざわざ来てもらって悪いんだが、今金はないんだ。もうすぐまとまった金が入るから待ってくれないかな』
『くれない!今持ってるだけでも払ってよ』
『そんなに意気込むなよっ!あんたらカジノ側だって俺みたいな客がいるから成り立ってるんじゃないか。大体こんな所まで来るのはルール違反だろ』
少しの沈黙。城道さんは彼を追い払う呪文は無いかと考えているのだろう。声の張りから取り立て屋がどこで取り立てようとルール違反ではないのは分かっている様だから、彼はより強い呪文を捻り出すしかない。
『どうだ?ここは一つ賭けでケリをつけないか?』
そう。自分が得意とする戦いの土俵に上げてしまおうと、そういう事。上げられたのはどちらかも気付かずに。
「おおー」
「いや…なんだこの奇天烈な流れ」
「お家芸なんですよこの流れ」
「暗謀って何なんだ」
「今後暗謀のメンバーと組む度にそのツッコミが要りますよ」
「なら今回を最初で最後にしたいな」
「釣れない事言わないでくださいよう」
さて、盗聴器の向こうではコインの幅寄せゲームなるものが始まった様だ。一所懸命城道の説明から図を書き起こして理解しようと頑張るガクトさんに、「そんな真面目に聞かなくても、これ前座ですよ」と声を掛ける。
「前座?」
「だってまだ、何も重要なもの賭けてないじゃないですか」
ガクトさんの手が止まる。気づいたようだ。そう。カジノの取り立て人に扮して城道さんの財布から幾らかちょろまかしたとして、どうなるというのか。
「そうか…」
「定石だと一旦負けるかなあ?そっちの方が相手も油断するし、物言いも付けやすくなりますからね。コーヒーフレッシュを使う流れにも持ち込みやすくなる筈です」
「成る程…しかし、正体を明かせば城道は二戦目を受ける必要が無くなる…どう港の場所を吐かせる?蜂名…」
一緒になって考えてみるけど、名案は浮かばない。私なら…と考えてみたが、一番に浮かんだのは城道さんの前でガクトさんが持つ港のリストを読み上げることだった。だが、これでは港が分かっても城道さんと喧嘩になる事必至だし、下手をすれば増援を呼ばれてしまうだろう。自分がこの一年間、如何に立会人さんに依存した戦い方をしてきたかよく分かる。これは、私、やばいぞ。立会人さんに会った瞬間何の抵抗もできず粛清されてしまう。それはまずい。私はお屋形様の記憶を取り戻すまでは、何としてでも生き延びなきゃいけないのだ。そう、何とか自力で。タワーの時から考えてはいたが、やっぱり私には私だけの知と暴が必要だ。どこかに都合よく転がっていればいいのに。
ついため息が漏れる。ガクトさんがどう解釈したのか、「大丈夫」と励ましてくれた。