ハシバミの小旅行
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「目蒲さん!メジャーと書くもの下さいな!」
「なんで?」
立会人室に飛び込んで来た彼女に、俺はそう問いかける。問題なく動けるようになったからと今日退院した彼女だが、まだ健康的とは言えない身体つきにギプスを嵌めた姿は痛々しい。
それはともかく、退院して家に戻った筈の彼女がここでメジャーと書くものをねだっている姿には疑問符しかない。俺は立ち上がり自分が掛けていた椅子を勧め、再度どうしてそれらが必要なのか問うた。
「それが私、ここに住まなきゃいけなくなったんです。だから家具を買いに行かないと」
「は?!」
「なんか、人質だからここから出ちゃダメなんですって」
「うわ」
思わず声を漏らす。何と言ったものか分からず、俺は自分の頬を撫でた。
「その、ごめん」
「ぜーんぜん。気にしてませんよ。とりあえずメジャーと書くもの下さいな!」
ギブスのはまっていない右手をすっと差し出し、彼女は言った。俺が机の中を探ろうとしたところで、山口が「お持ちしました」とメジャーやらを差し出してきた。
「あ、山口さん!ありがとうございます」
「礼には及びませんよ。退院おめでとうございます」
山口の声に続き、他の黒服達が「おめでとうございます」と声を掛ける。言うタイミングを逃したな、と思いつつ俺は口をつぐんだ。
「じゃ、私行きますね!お迎えが来る前にたくさん測らないと!」
「あー…待て。その身体じゃ測り辛いだろ。俺も行く」
「へ?でも、お仕事あるじゃないですか」
「大丈夫ですよ!俺がやります!」
「俺も手伝いますよ!立会人は採寸を!」
「そうです!俺らに任せて行って下さい立会人!」
「お…おお。助かる」
予想外にぐいぐい来る黒服達にたじろぎつつも、折角の助け舟に乗せてもらう。
「じゃ、行くか」
「いいんですか?ありがとうございます!」
ーーーーーーーーーー
目蒲立会人と伏龍さんが部屋を出て行ったのを確認して、俺は隣にいた拾號メンバーの石井とハイタッチを決めた。周りの皆も近くの相手とハイタッチやら握手やらをして健闘を讃え合う。
「山口お前、ナイスサポート!」
「ありがとう!ありがとう!」
「みんな良く自分の役割を果たしてくれた!」
「いやあ、流れるようだったな」
「ああ。また一歩前進だな」
思い思いの言葉の後、近藤が「おい会長、なんか言えよ!」と俺を立たせる。「わかったわかった」と促されるまま、俺は目蒲立会人の机の前に立った。
「えー、皆さん!我々’目蒲立会人の鉄面皮を温かく見守る会'は、伏龍さんの出現により大きく躍進を遂げました。今後は目蒲立会人と伏龍さんをどんどん絡ませ、立会人の鉄面皮崩壊を狙っていきましょう!目指すは今年の黒服アワード獲得!力を合わせ、今年こそ3年連続受賞の'弥鱈立会人と目を合わせる会'を下してやろうじゃあありませんか!」
オオー!
俺たちは拳を突き上げた。大きな拍手と歓声。
賭郎非公認団体、'立会人を愛でる会' 会員は三千にのぼる。その中の分会である我が会は長らく空気と化していたが、今回の一件での目蒲立会人の表情の変わりっぷりに勝ちを確信していた。今年こそ悲願である受賞を達成し、とっつきにくいと定評がある目蒲立会人のイメージを変えるのである。
これは立会人達の知らないところで行われる、黒服達の涙ぐましい努力の話。
「なんで?」
立会人室に飛び込んで来た彼女に、俺はそう問いかける。問題なく動けるようになったからと今日退院した彼女だが、まだ健康的とは言えない身体つきにギプスを嵌めた姿は痛々しい。
それはともかく、退院して家に戻った筈の彼女がここでメジャーと書くものをねだっている姿には疑問符しかない。俺は立ち上がり自分が掛けていた椅子を勧め、再度どうしてそれらが必要なのか問うた。
「それが私、ここに住まなきゃいけなくなったんです。だから家具を買いに行かないと」
「は?!」
「なんか、人質だからここから出ちゃダメなんですって」
「うわ」
思わず声を漏らす。何と言ったものか分からず、俺は自分の頬を撫でた。
「その、ごめん」
「ぜーんぜん。気にしてませんよ。とりあえずメジャーと書くもの下さいな!」
ギブスのはまっていない右手をすっと差し出し、彼女は言った。俺が机の中を探ろうとしたところで、山口が「お持ちしました」とメジャーやらを差し出してきた。
「あ、山口さん!ありがとうございます」
「礼には及びませんよ。退院おめでとうございます」
山口の声に続き、他の黒服達が「おめでとうございます」と声を掛ける。言うタイミングを逃したな、と思いつつ俺は口をつぐんだ。
「じゃ、私行きますね!お迎えが来る前にたくさん測らないと!」
「あー…待て。その身体じゃ測り辛いだろ。俺も行く」
「へ?でも、お仕事あるじゃないですか」
「大丈夫ですよ!俺がやります!」
「俺も手伝いますよ!立会人は採寸を!」
「そうです!俺らに任せて行って下さい立会人!」
「お…おお。助かる」
予想外にぐいぐい来る黒服達にたじろぎつつも、折角の助け舟に乗せてもらう。
「じゃ、行くか」
「いいんですか?ありがとうございます!」
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目蒲立会人と伏龍さんが部屋を出て行ったのを確認して、俺は隣にいた拾號メンバーの石井とハイタッチを決めた。周りの皆も近くの相手とハイタッチやら握手やらをして健闘を讃え合う。
「山口お前、ナイスサポート!」
「ありがとう!ありがとう!」
「みんな良く自分の役割を果たしてくれた!」
「いやあ、流れるようだったな」
「ああ。また一歩前進だな」
思い思いの言葉の後、近藤が「おい会長、なんか言えよ!」と俺を立たせる。「わかったわかった」と促されるまま、俺は目蒲立会人の机の前に立った。
「えー、皆さん!我々’目蒲立会人の鉄面皮を温かく見守る会'は、伏龍さんの出現により大きく躍進を遂げました。今後は目蒲立会人と伏龍さんをどんどん絡ませ、立会人の鉄面皮崩壊を狙っていきましょう!目指すは今年の黒服アワード獲得!力を合わせ、今年こそ3年連続受賞の'弥鱈立会人と目を合わせる会'を下してやろうじゃあありませんか!」
オオー!
俺たちは拳を突き上げた。大きな拍手と歓声。
賭郎非公認団体、'立会人を愛でる会' 会員は三千にのぼる。その中の分会である我が会は長らく空気と化していたが、今回の一件での目蒲立会人の表情の変わりっぷりに勝ちを確信していた。今年こそ悲願である受賞を達成し、とっつきにくいと定評がある目蒲立会人のイメージを変えるのである。
これは立会人達の知らないところで行われる、黒服達の涙ぐましい努力の話。