ダフネの本心
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「くしゅん!」
馬鹿みたいに啖呵を切って飛び出した最初の代償は、風邪かもしれない。いや、その程度で済むならいくらでも引いてやるんだけどさ。私は目蒲さんか貸してくれたマフラーを口元まで引き上げる。慣れ親しんだ匂いがして、また寂しくなった。
「よお馬鹿女」と目蒲さんが声を掛けてきて驚いたのは、30分程前になるだろうか。
エントランスで銅寺さんの黒服さん達と別れ、暫く歩いた所に目蒲さんはいた。驚いて「どうしてここに?」と声を掛ければ、彼は「最後に顔位見ておこうと思ってな」と微笑んだ。
「行くのか」
「はい」
「寂しくなる」
「また会えますよ」
「何だ、それ」
「秘密。…あ、会議、大丈夫ですか?」
「やばいに決まってんだろ」
あまりにもさらっと言ったので、ちょっと笑ってしまった。
「酷な事、言いますけど…殺せって言われたら、殺して下さいね」
「そうさせて貰う」
そう言いながら彼は巻いていたマフラーを外し、私の首に巻く。
「早めに服は替えろ。趣味で買うなよ。これに合わせるつもりで買っとけ」
「はい」
「現金でな。持ってるか?」
「大丈夫。財布と携帯だけはある」
「携帯はどこかに捨てていけ」
「じゃ、ここに入れとこ」
「俺のポケットに入れる馬鹿がいるかよ…道中で壊しとけ」
「はい」
話す事が無くなってしまって、私達は黙る。
「…行ってきます」
「辛くなったら尻尾巻いて帰って来い」
「ふふ…何ですか、それ」
「覚えてないなら別にいい。死ぬなよ」
目蒲さんが踵を返したのを見て、私は走り出す。寂しくてたまらないけど、決めたなら、やらないと。
ーーーーーーーーーー
晴乃がいないにも関わらず、この部屋は賑やかだ。いかれてると思う。
「目蒲立会人!醤油どこですか」と声を掛けてきた亜面立会人に、「コンロ下の棚。右の方」と答えてやる。すぐに「ありました!ありがとうございます!」という快活な声が返ってきた。
「メカお前、詳し過ぎて笑えてくるのう」
「俺、ここ半年は自分の家で夕飯食べてなかったから」
「やべえな。晴乃ロスで死ぬんやないかお前」
「ねえよ」
結局俺達は、決起集会を晴乃の家の冷蔵庫内を片付けつつ行い、その最中に弥鱈立会人の相談を受け付ける事で落ち着いた。
「南方立会人、次この皿持っていって下さい!」
「ちょっと、何で私だけに任せるの。門倉も動きなさい」
「五月蝿いのう、お前一番後輩じゃろ。働かんかい」
「その理屈なら私が包丁を持つのはおかしいんだがな?代われ銅寺」
「泉江外務卿…僕が包丁持つとズタズタになりますよ。弥鱈立会人、やったら?」
弥鱈立会人はため息混じりに立ち上がると、「調理実習の成果をお見せしましょう」と不安になる一言を残し、キッチンへ消えていく。
直後、女性達の黄色い悲鳴が響く。
「何や何や?!」
「弥鱈立会人が大根空中で切りました!」
「調理実習では伏龍とこればっかりやっていました」
「馬鹿じゃねえの?」
「そう仰るなら目蒲立会人もやってみては如何でしょうか」
「生憎馬鹿に混ざる気はありませんでなぁ」
「OK?僕がやってみてOK?」
銅寺立会人の参戦により始まった野菜の空中切り大会は、冷蔵庫の野菜を切り尽くすまで続いた。その後、これを全て消費するには鍋しかないと泉江外務卿が土鍋を引っ張り出す。するとここまでいい所無しだった南方立会人が大根おろしでリラックマを作り、鍋に浮かべた。全体的にいかれてやがる。俺は全てを諦めて酒を取りに行った。
鍋の温度が上がるにつれて崩れていくリラックマを囲みつつ、決起集会は始まった。
「よっしゃ、乾杯やな。任しとき」
「門倉立会人は挨拶が長そうなのでチェンジで」
「弥鱈立会人、辛辣過ぎませんか」
「私ヤンキー嫌いなので」
「じゃあ誰にするんだよ」
「僕、泉江外務卿を推薦するよ」
「一番まともそうですね!」
「亜面立会人…さらっと毒を…」
軽く引いている南方立会人を他所に、泉江外務卿は正座に直り、ビール片手に話し出す。
「賭郎スタッフは、事務室に入るとIQが百下がるらしい」
「突然どうしました」
「いいや、部下が賭郎七不思議だと話してくれたのだがな。私が思うに、単に素が出ているだけなんだ。南方だって、IQが下がったからリラックマを作った訳じゃない。元々こういう奴なんだ」
泉江は、今や大根おろしに戻ったリラックマを一瞥し、話を続ける。
「それを引きずり出させられたのは晴乃のせいだし、お前たちのそれを見る事ができたのは晴乃のお陰だ。私は…感謝してるよ。自分の素を見せられる相手がこんなにも増えた事に。だから、私は今、あいつの助けになりたい。皆も同じ気持ちだと信じている。普段は助け合いなど真平御免だが、今だけは協力し合おう。同じ食卓を囲む仲間として、伏龍晴乃を取り戻そう。私達なら出来るはずだ」
乾杯。その音頭に合わせ、俺達はビールを高々と掲げた。
馬鹿みたいに啖呵を切って飛び出した最初の代償は、風邪かもしれない。いや、その程度で済むならいくらでも引いてやるんだけどさ。私は目蒲さんか貸してくれたマフラーを口元まで引き上げる。慣れ親しんだ匂いがして、また寂しくなった。
「よお馬鹿女」と目蒲さんが声を掛けてきて驚いたのは、30分程前になるだろうか。
エントランスで銅寺さんの黒服さん達と別れ、暫く歩いた所に目蒲さんはいた。驚いて「どうしてここに?」と声を掛ければ、彼は「最後に顔位見ておこうと思ってな」と微笑んだ。
「行くのか」
「はい」
「寂しくなる」
「また会えますよ」
「何だ、それ」
「秘密。…あ、会議、大丈夫ですか?」
「やばいに決まってんだろ」
あまりにもさらっと言ったので、ちょっと笑ってしまった。
「酷な事、言いますけど…殺せって言われたら、殺して下さいね」
「そうさせて貰う」
そう言いながら彼は巻いていたマフラーを外し、私の首に巻く。
「早めに服は替えろ。趣味で買うなよ。これに合わせるつもりで買っとけ」
「はい」
「現金でな。持ってるか?」
「大丈夫。財布と携帯だけはある」
「携帯はどこかに捨てていけ」
「じゃ、ここに入れとこ」
「俺のポケットに入れる馬鹿がいるかよ…道中で壊しとけ」
「はい」
話す事が無くなってしまって、私達は黙る。
「…行ってきます」
「辛くなったら尻尾巻いて帰って来い」
「ふふ…何ですか、それ」
「覚えてないなら別にいい。死ぬなよ」
目蒲さんが踵を返したのを見て、私は走り出す。寂しくてたまらないけど、決めたなら、やらないと。
ーーーーーーーーーー
晴乃がいないにも関わらず、この部屋は賑やかだ。いかれてると思う。
「目蒲立会人!醤油どこですか」と声を掛けてきた亜面立会人に、「コンロ下の棚。右の方」と答えてやる。すぐに「ありました!ありがとうございます!」という快活な声が返ってきた。
「メカお前、詳し過ぎて笑えてくるのう」
「俺、ここ半年は自分の家で夕飯食べてなかったから」
「やべえな。晴乃ロスで死ぬんやないかお前」
「ねえよ」
結局俺達は、決起集会を晴乃の家の冷蔵庫内を片付けつつ行い、その最中に弥鱈立会人の相談を受け付ける事で落ち着いた。
「南方立会人、次この皿持っていって下さい!」
「ちょっと、何で私だけに任せるの。門倉も動きなさい」
「五月蝿いのう、お前一番後輩じゃろ。働かんかい」
「その理屈なら私が包丁を持つのはおかしいんだがな?代われ銅寺」
「泉江外務卿…僕が包丁持つとズタズタになりますよ。弥鱈立会人、やったら?」
弥鱈立会人はため息混じりに立ち上がると、「調理実習の成果をお見せしましょう」と不安になる一言を残し、キッチンへ消えていく。
直後、女性達の黄色い悲鳴が響く。
「何や何や?!」
「弥鱈立会人が大根空中で切りました!」
「調理実習では伏龍とこればっかりやっていました」
「馬鹿じゃねえの?」
「そう仰るなら目蒲立会人もやってみては如何でしょうか」
「生憎馬鹿に混ざる気はありませんでなぁ」
「OK?僕がやってみてOK?」
銅寺立会人の参戦により始まった野菜の空中切り大会は、冷蔵庫の野菜を切り尽くすまで続いた。その後、これを全て消費するには鍋しかないと泉江外務卿が土鍋を引っ張り出す。するとここまでいい所無しだった南方立会人が大根おろしでリラックマを作り、鍋に浮かべた。全体的にいかれてやがる。俺は全てを諦めて酒を取りに行った。
鍋の温度が上がるにつれて崩れていくリラックマを囲みつつ、決起集会は始まった。
「よっしゃ、乾杯やな。任しとき」
「門倉立会人は挨拶が長そうなのでチェンジで」
「弥鱈立会人、辛辣過ぎませんか」
「私ヤンキー嫌いなので」
「じゃあ誰にするんだよ」
「僕、泉江外務卿を推薦するよ」
「一番まともそうですね!」
「亜面立会人…さらっと毒を…」
軽く引いている南方立会人を他所に、泉江外務卿は正座に直り、ビール片手に話し出す。
「賭郎スタッフは、事務室に入るとIQが百下がるらしい」
「突然どうしました」
「いいや、部下が賭郎七不思議だと話してくれたのだがな。私が思うに、単に素が出ているだけなんだ。南方だって、IQが下がったからリラックマを作った訳じゃない。元々こういう奴なんだ」
泉江は、今や大根おろしに戻ったリラックマを一瞥し、話を続ける。
「それを引きずり出させられたのは晴乃のせいだし、お前たちのそれを見る事ができたのは晴乃のお陰だ。私は…感謝してるよ。自分の素を見せられる相手がこんなにも増えた事に。だから、私は今、あいつの助けになりたい。皆も同じ気持ちだと信じている。普段は助け合いなど真平御免だが、今だけは協力し合おう。同じ食卓を囲む仲間として、伏龍晴乃を取り戻そう。私達なら出来るはずだ」
乾杯。その音頭に合わせ、俺達はビールを高々と掲げた。