ダフネの本心
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「処罰は甘んじて受けます。その代わり、こちらの質問にも答えていただきたい」と言った銅寺立会人の目は澄んでいる。歳を取り、判事と呼ばれるようになって久しいが、若者の力には未だに驚かされる。
「銅寺君…君を罰する事はしない。むしろ…よく判断してくれたと感謝せざるを得ない。そう、我々はわざと彼女を逃した」
「やはりですか」と、銅寺立会人は肩の力を抜いた。
「伏龍さんは、ここを出る前、誰かと電話で話していました」
「…詳しく話してくれ」
「はい。相手の声は聞こえませんでしたが…彼女の言葉は正確に記憶しています。‘もしもし…もうっ!5分遅い!ついさっき賭郎裏切った!…あーもう…ごめんなさいそんなにしょげないで…とりあえず会いに行くから…今どこ?…分かった。頑張ってそこまで行くよ。…うーん、一時間後に着けると思う…自信ないよそりゃ。追われる身だもん…うん、そうして。じゃ、後でね。’と、相手に話していました」
「そうか…!」
夜行掃除人が椅子に座り、手の甲で目を押さえた。私も安堵に涙腺が緩みそうになる自分を律する。無事に繋がった。お屋形様と賭郎を結ぶ、鎖の一方が。
「判事、あれは…」
「質問は後で受け付ける。君達を集めたのは…疑っていたからではない。正確に伝えなければならないと感じたからだ」
私は若者達に手近な席に着くよう促し、自分も座った。彼らの神妙な顔を見回しながら、「問題はかなりデリケートだ…この話は、必ずここに今いる者の中で留めておいてくれ」と前置きした。
「お屋形様の記憶は今恐らく、自身がまだお屋形様である以前の状態まで遡っていると思われる。平たく言えば記憶喪失…これは以前から時たま起きていた事だ。我々お屋形様付きは、護衛に加え、その対処の為にお側に控えていたのだ。そして、その内の一回に伏龍が居合せたことから、彼女もまたお屋形様の秘密を共有する事となった」
ここまで話せば、若者達はもう朧げながら全体像を掴んだ様だった。私は早速質問を待つ。最初に声を出したのは泉江君だった。
「何故、お屋形様は伏龍に電話を?」
「お屋形様の胸ポケットには… 伏龍との写真が入っている。初めて彼女がお屋形様の記憶喪失に出くわした時に、お屋形様の手のひらに自分の名前と電話番号を書いたのを撮った写真がな」
「馬鹿女…何故そんな所に書いた…」
「私も知りたい所だ。答えがわかったら教えてくれ、目蒲君」
「一生分かりたくありませんがねぇ…。お屋形様は、それを見て電話を掛けてきたのですか」
「ああ…私を見て逃げたという事は、記憶喪失の事を知っているのは父親である撻器様と…今は亡き傅役、栄羽元立会人のみだと思われている筈。あの写真を見て、伏龍も自分の記憶喪失の秘密を知る一人であると気付く事。それが一つ目の賭けだった。そして、我々はその賭けに勝った」
「では、伏龍が居場所を知らせて話は終わりでは?」
「そのとおりだ、門倉君。それが二つ目の賭けだった。そして…どうやらその賭けに我々は負けている」
「…どういう事でしょうか」
「ああ…その前に、伏龍との話し合いで何があったかを話す必要があるな」
「銅寺君…君を罰する事はしない。むしろ…よく判断してくれたと感謝せざるを得ない。そう、我々はわざと彼女を逃した」
「やはりですか」と、銅寺立会人は肩の力を抜いた。
「伏龍さんは、ここを出る前、誰かと電話で話していました」
「…詳しく話してくれ」
「はい。相手の声は聞こえませんでしたが…彼女の言葉は正確に記憶しています。‘もしもし…もうっ!5分遅い!ついさっき賭郎裏切った!…あーもう…ごめんなさいそんなにしょげないで…とりあえず会いに行くから…今どこ?…分かった。頑張ってそこまで行くよ。…うーん、一時間後に着けると思う…自信ないよそりゃ。追われる身だもん…うん、そうして。じゃ、後でね。’と、相手に話していました」
「そうか…!」
夜行掃除人が椅子に座り、手の甲で目を押さえた。私も安堵に涙腺が緩みそうになる自分を律する。無事に繋がった。お屋形様と賭郎を結ぶ、鎖の一方が。
「判事、あれは…」
「質問は後で受け付ける。君達を集めたのは…疑っていたからではない。正確に伝えなければならないと感じたからだ」
私は若者達に手近な席に着くよう促し、自分も座った。彼らの神妙な顔を見回しながら、「問題はかなりデリケートだ…この話は、必ずここに今いる者の中で留めておいてくれ」と前置きした。
「お屋形様の記憶は今恐らく、自身がまだお屋形様である以前の状態まで遡っていると思われる。平たく言えば記憶喪失…これは以前から時たま起きていた事だ。我々お屋形様付きは、護衛に加え、その対処の為にお側に控えていたのだ。そして、その内の一回に伏龍が居合せたことから、彼女もまたお屋形様の秘密を共有する事となった」
ここまで話せば、若者達はもう朧げながら全体像を掴んだ様だった。私は早速質問を待つ。最初に声を出したのは泉江君だった。
「何故、お屋形様は伏龍に電話を?」
「お屋形様の胸ポケットには… 伏龍との写真が入っている。初めて彼女がお屋形様の記憶喪失に出くわした時に、お屋形様の手のひらに自分の名前と電話番号を書いたのを撮った写真がな」
「馬鹿女…何故そんな所に書いた…」
「私も知りたい所だ。答えがわかったら教えてくれ、目蒲君」
「一生分かりたくありませんがねぇ…。お屋形様は、それを見て電話を掛けてきたのですか」
「ああ…私を見て逃げたという事は、記憶喪失の事を知っているのは父親である撻器様と…今は亡き傅役、栄羽元立会人のみだと思われている筈。あの写真を見て、伏龍も自分の記憶喪失の秘密を知る一人であると気付く事。それが一つ目の賭けだった。そして、我々はその賭けに勝った」
「では、伏龍が居場所を知らせて話は終わりでは?」
「そのとおりだ、門倉君。それが二つ目の賭けだった。そして…どうやらその賭けに我々は負けている」
「…どういう事でしょうか」
「ああ…その前に、伏龍との話し合いで何があったかを話す必要があるな」