ダフネの本心
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ーー十五分前の出来事だ。
僕はにょっこり上から生えてきた足を、慌てて掴む。こんな破天荒で鈍臭い事をするのは賭郎に一人しかいない。
「銅寺さんなんとかしてくださーい!」
案の定の声がしたので、僕は苦笑い。
「先生、手を離して。引っ張り込むから」
「はい!いきます!」
迷わず手を離した彼女の足を引っ張り、室内へ入れる。お姫様抱っこの形になったのは不可抗力だ。
「無茶するね」
「さっき帝国タワーから落ちたばっかりなんです私!もうちょっとやそっとじゃビビりませんよ!」
「え、それ本当?」
目蒲立会人が護衛についてたって噂を聞いていたけど、あの人仕事したのかな?先生に聞いたら「してましたよ!」って言うに決まってるから聞かないけど。そもそも先生が僕らに期待する適度と僕らが僕らに期待する適度は段違いなのだ。
けらけら笑う彼女に、「どうしたの?」と聞いた。すると彼女は途端に困り顔になって、「ううん…言ったら銅寺さんもただじゃ済まないと思いますので部分的ですけど」と前置きして話し出す。
「私、賭郎から逃げます。多分すぐに捕獲命令が出ると思います」
「何したの?」
「意見が合わず…っと、すみません」
彼女は鳴り出した携帯を取り出し、画面を確認する。そして少し眉間に皺を寄せて、電話を取った。
「もしもし…もうっ!5分遅い!ついさっき賭郎裏切った!…あーもう…ごめんなさいそんなにしょげないで…とりあえず会いに行くから…今どこ?…分かった。頑張ってそこまで行くよ。…うーん、一時間後に着けると思う…自信ないよそりゃ。追われる身だもん…うん、そうして。じゃ、後でね」
通話を終えた彼女は、携帯を握りしめて深いため息をついた。どういう感情かは僕には分からない。
「誰?」
「言えません…でも、ホントすみません。誰かと電話してた事だけ、判事に上手く話してくださいませんか。無理そうだったら全然いいので」
「…分かった」
ねえ先生、それって本当の裏切り?喉元まで出掛かった問いを飲み込む。裏切ったって言うしかない状況なんだろうね。館内放送が幹部の緊急会議を知らせる。僕の情報源は目の前の彼女じゃない。この会議だ。
「ねえ君達…この人を下まで送って行って」
どよめきが起こる室内を、一睨みして黙らせる。
「さっきの騒動を耳にして、違和感を持った者は?」
沈黙が場を占めたことに、少なからず失望する。僕の黒服達は、まだ立会人には遠そうだ。
「少なくとも夜行掃除人と能輪壱號があの場にいて、この人が逃げ切れていることに違和感を持つべきだよ。この人は、わざと逃がされてる」
「…ん?古株さん達、私の事捕まえる気なかったんですか?」
「え?出来レースじゃなかったの?」
「え?!」
「僕、たまに先生が不憫になるよ。階段で来て良かったのに」
「だって普通に走ったら捕まると思ったから…!」
「夜行掃除人が本気なら零號立会人室の窓を経由してもバレてるよ。良かったじゃない、思惑が一致してて」
「そうかなあ」と首を傾げる先生に「深く考えたら悲しくなるよ」と言って、肩を叩いた。
「じゃあね、先生」
「銅寺さん、ありがとうございました。お手柔らかに」
僕は先に部屋を出ると、大会議室に向かう。どんな話になっているか楽しみだ。
僕はにょっこり上から生えてきた足を、慌てて掴む。こんな破天荒で鈍臭い事をするのは賭郎に一人しかいない。
「銅寺さんなんとかしてくださーい!」
案の定の声がしたので、僕は苦笑い。
「先生、手を離して。引っ張り込むから」
「はい!いきます!」
迷わず手を離した彼女の足を引っ張り、室内へ入れる。お姫様抱っこの形になったのは不可抗力だ。
「無茶するね」
「さっき帝国タワーから落ちたばっかりなんです私!もうちょっとやそっとじゃビビりませんよ!」
「え、それ本当?」
目蒲立会人が護衛についてたって噂を聞いていたけど、あの人仕事したのかな?先生に聞いたら「してましたよ!」って言うに決まってるから聞かないけど。そもそも先生が僕らに期待する適度と僕らが僕らに期待する適度は段違いなのだ。
けらけら笑う彼女に、「どうしたの?」と聞いた。すると彼女は途端に困り顔になって、「ううん…言ったら銅寺さんもただじゃ済まないと思いますので部分的ですけど」と前置きして話し出す。
「私、賭郎から逃げます。多分すぐに捕獲命令が出ると思います」
「何したの?」
「意見が合わず…っと、すみません」
彼女は鳴り出した携帯を取り出し、画面を確認する。そして少し眉間に皺を寄せて、電話を取った。
「もしもし…もうっ!5分遅い!ついさっき賭郎裏切った!…あーもう…ごめんなさいそんなにしょげないで…とりあえず会いに行くから…今どこ?…分かった。頑張ってそこまで行くよ。…うーん、一時間後に着けると思う…自信ないよそりゃ。追われる身だもん…うん、そうして。じゃ、後でね」
通話を終えた彼女は、携帯を握りしめて深いため息をついた。どういう感情かは僕には分からない。
「誰?」
「言えません…でも、ホントすみません。誰かと電話してた事だけ、判事に上手く話してくださいませんか。無理そうだったら全然いいので」
「…分かった」
ねえ先生、それって本当の裏切り?喉元まで出掛かった問いを飲み込む。裏切ったって言うしかない状況なんだろうね。館内放送が幹部の緊急会議を知らせる。僕の情報源は目の前の彼女じゃない。この会議だ。
「ねえ君達…この人を下まで送って行って」
どよめきが起こる室内を、一睨みして黙らせる。
「さっきの騒動を耳にして、違和感を持った者は?」
沈黙が場を占めたことに、少なからず失望する。僕の黒服達は、まだ立会人には遠そうだ。
「少なくとも夜行掃除人と能輪壱號があの場にいて、この人が逃げ切れていることに違和感を持つべきだよ。この人は、わざと逃がされてる」
「…ん?古株さん達、私の事捕まえる気なかったんですか?」
「え?出来レースじゃなかったの?」
「え?!」
「僕、たまに先生が不憫になるよ。階段で来て良かったのに」
「だって普通に走ったら捕まると思ったから…!」
「夜行掃除人が本気なら零號立会人室の窓を経由してもバレてるよ。良かったじゃない、思惑が一致してて」
「そうかなあ」と首を傾げる先生に「深く考えたら悲しくなるよ」と言って、肩を叩いた。
「じゃあね、先生」
「銅寺さん、ありがとうございました。お手柔らかに」
僕は先に部屋を出ると、大会議室に向かう。どんな話になっているか楽しみだ。