からむ宿木
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哀れ伏龍は、タワーに再入場した途端貘様に捕まった。「弥鱈君代わって!」と助けを求められたが、俺はアンタが一生捨隈様に辿り着かないでいてくれた方が都合が良い。
「ねえー晴乃チャン、君が落ちた後の事知ってる?」
「いえすみません貘様。興味がなくて」
「そう!それよ!みーんな勝負の行方なんて興味なかったみたいでさ、晴乃チャンの後を追って降りてっちゃったんだよ。捨隈もだよ?!」
「捨隈様はウケますね」
「笑い事じゃないよ!君が落ちた瞬間階段の方にダッシュしていってさあ。鞍馬組も三人支え合いながら降りていく訳」
「まあ…仕方がないんじゃないですか?今更ひっくり返しようも無かったし」
「しかもだよ?!釣られてマー君まで降りて行こうとするから、それは流石に止めて入力端末に戻ってきて貰った訳。マー君操作するよーって話してたらさ、次はさ」
「分かった。ヘリコプターが降下したんですね」
「そうなのよ!‘血塗れの貘様はもう堪能しました’って言って降下していく訳!こっちは入力見届けたかったのに!」
「貘様皆からそこはかとなく嫌われてますもん。仕方がないですよ」
「辛辣!!こっちはもう、地上でマー君を信じて入力したんだよ?!」
「カールさんに騙されてロケットぶっ放したマルコ様に?それは大変でしたね」
「ちょっとー、なんでそんなに辛辣なの?」
「そりゃ、大っ嫌いですもん」
吹きさらすブリザード。めげずに突き進む貘様とドン引きの梶様の対比が非常に面白い。
「酷いなあ晴乃チャン、俺は君の事大好きなのに」
「どうもです」
「君はどうしたら俺の事好きになってくれるの?そうだ、珠の数の正解教えてあげよっか?」
「両方9で、18でしょ?」
「え、何で知ってるの?」
「二人して綺麗に‘九割八分’に反応してたじゃないですか。あんな暑苦しくバトんなくても、聞いてくれたら良かったのに」
「嘘ぉ」
「私、嘘はつかない主義なんですよ。貴方と違って」
彼女はそこで会話を打ち切り、「ねえ、よく見たら捨隈さんいないよ?」と口を尖らせながら俺の方へ歩いてくる。
「階段だろ」
「あ、そっか」
「待ちだな」
「號奪戦の準備してよっと」
彼女はてけてけ歩いていくと、ベルトパーテションを並べ始める。観覧禁止エリアを作る気らしい。入り口から號奪戦エリアまでを繋ぐ通路にポールを並べた所で、目蒲立会人、泉江外務卿、夜行掃除人が入場してくる。
「何だこのポールは」
「救急隊が通る道です!こう…號奪戦が終わったら、びゅっ!と」
「ご苦労なこった」
夜行掃除人はそう言うと奥へと歩いて行き、柱にもたれかかる。残る二人は伏龍の周りに屯する事にしたようだ。
「そうだ…三人には捨隈さんより先に話しとかないとなと思ってたんですよ」
彼女はふと顔を上げると、俺に手招きしながら言った。
「何で裏社会なるものが大嫌いか。…ごめん、弥鱈君にもちゃんと話してなかったよね」
「お袋さんの事じゃねえの?」
「もうちょっと闇が深いのよ伏龍さん家」
「…聞いていいのか?」
「うん…巻き込む為に話すんじゃなくて、知っててもらう為に話すってのもアリなのかなあって思ったんですよね」
「…そうか」
彼女はそう言うと、俯いて頭を掻く。やがて意を決して顔を上げた。
「この目って、遺伝性なんですよ。発現するか、どのくらいの強度かはランダムですけど。私と母は読心術レベルですけど、勘が鋭い程度の人も、全く普通の人も沢山います。例えば叔父は勘が鋭い人なんですけど…叔父はそれに驕ってヤクザに入り、母も引き入れようとしました。父が…恐らく、密葬課と組んだんでしょうね…ヤクザを解体してくれた時には、母はそのトラウマで外に出られなくなっていました」
「大変だったんだな」
「そうなの。でも、家はマシな方なんです。曽祖父はカメラマンでしたが失踪していますし、大叔母はバスガイドでしたが殺されています。親族を掘ると失踪、殺人、自殺が妙に多い。私が失踪したとなって、父は相当焦ったのでしょうね。だからああやって強引に賭郎に接触しに来てくれたんです」
彼女の静かな語りに、俺達は言わずもがな、タワー内の全員が耳をそばたてている。
「この目はね、知られたくない事を暴いちゃうんです。だから私達は…知ってる事を知られないように、ひっそり生きてきました。それに失敗した人から居なくなっていきます。私も…この能力がバレたから失踪した。語弊のある言い方ですけど、側から見たらそういう事ですもんね。勿論私は皆が大好きで、皆の為に能力を使いたいと思ってますよ。これは私の嘘偽りない気持ちです。でも…私達はね、好き勝手捕まえて好き勝手甚振れる小動物じゃねえんですよ。それが罷り通る場所は壊れてしまえばいいんです」
彼女は一瞬だけ真っ青に燃え盛る炎をその目に宿らせ、またすぐにそれを仕舞い込んだ。けろっとした顔で「という訳で、私裏社会大嫌いです。なんかごめんなさいね」と笑う。仕方がないので俺も「想像以上にねじ曲がってたんだなぁアンタ」と笑ってやった。
「ねえー晴乃チャン、君が落ちた後の事知ってる?」
「いえすみません貘様。興味がなくて」
「そう!それよ!みーんな勝負の行方なんて興味なかったみたいでさ、晴乃チャンの後を追って降りてっちゃったんだよ。捨隈もだよ?!」
「捨隈様はウケますね」
「笑い事じゃないよ!君が落ちた瞬間階段の方にダッシュしていってさあ。鞍馬組も三人支え合いながら降りていく訳」
「まあ…仕方がないんじゃないですか?今更ひっくり返しようも無かったし」
「しかもだよ?!釣られてマー君まで降りて行こうとするから、それは流石に止めて入力端末に戻ってきて貰った訳。マー君操作するよーって話してたらさ、次はさ」
「分かった。ヘリコプターが降下したんですね」
「そうなのよ!‘血塗れの貘様はもう堪能しました’って言って降下していく訳!こっちは入力見届けたかったのに!」
「貘様皆からそこはかとなく嫌われてますもん。仕方がないですよ」
「辛辣!!こっちはもう、地上でマー君を信じて入力したんだよ?!」
「カールさんに騙されてロケットぶっ放したマルコ様に?それは大変でしたね」
「ちょっとー、なんでそんなに辛辣なの?」
「そりゃ、大っ嫌いですもん」
吹きさらすブリザード。めげずに突き進む貘様とドン引きの梶様の対比が非常に面白い。
「酷いなあ晴乃チャン、俺は君の事大好きなのに」
「どうもです」
「君はどうしたら俺の事好きになってくれるの?そうだ、珠の数の正解教えてあげよっか?」
「両方9で、18でしょ?」
「え、何で知ってるの?」
「二人して綺麗に‘九割八分’に反応してたじゃないですか。あんな暑苦しくバトんなくても、聞いてくれたら良かったのに」
「嘘ぉ」
「私、嘘はつかない主義なんですよ。貴方と違って」
彼女はそこで会話を打ち切り、「ねえ、よく見たら捨隈さんいないよ?」と口を尖らせながら俺の方へ歩いてくる。
「階段だろ」
「あ、そっか」
「待ちだな」
「號奪戦の準備してよっと」
彼女はてけてけ歩いていくと、ベルトパーテションを並べ始める。観覧禁止エリアを作る気らしい。入り口から號奪戦エリアまでを繋ぐ通路にポールを並べた所で、目蒲立会人、泉江外務卿、夜行掃除人が入場してくる。
「何だこのポールは」
「救急隊が通る道です!こう…號奪戦が終わったら、びゅっ!と」
「ご苦労なこった」
夜行掃除人はそう言うと奥へと歩いて行き、柱にもたれかかる。残る二人は伏龍の周りに屯する事にしたようだ。
「そうだ…三人には捨隈さんより先に話しとかないとなと思ってたんですよ」
彼女はふと顔を上げると、俺に手招きしながら言った。
「何で裏社会なるものが大嫌いか。…ごめん、弥鱈君にもちゃんと話してなかったよね」
「お袋さんの事じゃねえの?」
「もうちょっと闇が深いのよ伏龍さん家」
「…聞いていいのか?」
「うん…巻き込む為に話すんじゃなくて、知っててもらう為に話すってのもアリなのかなあって思ったんですよね」
「…そうか」
彼女はそう言うと、俯いて頭を掻く。やがて意を決して顔を上げた。
「この目って、遺伝性なんですよ。発現するか、どのくらいの強度かはランダムですけど。私と母は読心術レベルですけど、勘が鋭い程度の人も、全く普通の人も沢山います。例えば叔父は勘が鋭い人なんですけど…叔父はそれに驕ってヤクザに入り、母も引き入れようとしました。父が…恐らく、密葬課と組んだんでしょうね…ヤクザを解体してくれた時には、母はそのトラウマで外に出られなくなっていました」
「大変だったんだな」
「そうなの。でも、家はマシな方なんです。曽祖父はカメラマンでしたが失踪していますし、大叔母はバスガイドでしたが殺されています。親族を掘ると失踪、殺人、自殺が妙に多い。私が失踪したとなって、父は相当焦ったのでしょうね。だからああやって強引に賭郎に接触しに来てくれたんです」
彼女の静かな語りに、俺達は言わずもがな、タワー内の全員が耳をそばたてている。
「この目はね、知られたくない事を暴いちゃうんです。だから私達は…知ってる事を知られないように、ひっそり生きてきました。それに失敗した人から居なくなっていきます。私も…この能力がバレたから失踪した。語弊のある言い方ですけど、側から見たらそういう事ですもんね。勿論私は皆が大好きで、皆の為に能力を使いたいと思ってますよ。これは私の嘘偽りない気持ちです。でも…私達はね、好き勝手捕まえて好き勝手甚振れる小動物じゃねえんですよ。それが罷り通る場所は壊れてしまえばいいんです」
彼女は一瞬だけ真っ青に燃え盛る炎をその目に宿らせ、またすぐにそれを仕舞い込んだ。けろっとした顔で「という訳で、私裏社会大嫌いです。なんかごめんなさいね」と笑う。仕方がないので俺も「想像以上にねじ曲がってたんだなぁアンタ」と笑ってやった。