からむ宿木
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「怒るよはこっちの台詞だよ、晴乃」
静かな、懐かしい声。
「こっちへ来なさい」
「あ…お父さん…」
四人が居住まいを正す中、私は懐かしさ半分、恐怖半分でお父さんに寄っていく。何せ無茶苦茶怒っている。当たり前なのだが。
「お、お父さんあのね、訳が」
「五月蝿いよ」
目の前に火花が散った。所謂、拳骨をされた。
「地面に落ちてたらもっと痛かったからね。反省したらもうやめなさい」
「っ!…うっぐぅ…ごめんなさい…」
生理的に出てきた涙を押さえつつ、私はお父さんを見上げた。心配しているのが目に見えて分かって、私はもう一度心配させた事を謝った。
「皆さん、娘を救っていただきありがとうございました」
お父さんは私に何か返す代わりに、四人に深々と頭を下げる。夜行さんが「彼女は有能な人材です。助けるのは当たり前の事」と返した。シンプルに嬉しくて、私はにやける頬を抑えられなくなる。
「そう言って頂けると幸いです。必死で育ててきた娘ですが…どうにも悪いところが私に似てしまったようで、向こう見ずで手を焼いています」
「なあに…慎重派が多い職場です。釣り合いが取れて丁度いいというもの。何より、彼女にはファンが多い…」
夜行さんが若手三人を見遣る。私がいい歳こいて拳骨を貰う姿にニヤついていた弥鱈君が、「親父さん、ファンの一号と二号ですよ」と目蒲さんと夕湖を指差した。
「やだそんな、ファンとかでは全然ないよお父さん。友達友達」
「お父さんはお前達二人の話が食い違った時は弥鱈君を信じることにしているよ」
「あんまりじゃない?」
「いやしかし、弥鱈君は立派になったね。やっぱり賭郎に入ったのか」
「ええ〜入りました〜」
「楽しいかい?」
「とても」
「あっはっは。そうだと思っていたよ。良かったね。しかし…そうか。弥鱈君がいたなら無理矢理接触する事もなかったな。焦って先走ったようだ」
「いえ〜…守りきれませんでした。すみません」
「守ってくれなんて、最初から思ってないよ。なにより…晴乃の居場所は、もうここだ」
「っ… 伏龍さん」
私と、私の後ろにいるみんなを感慨深く見るお父さんに、目蒲さんが溜まりかねて声を上げる。
「晴乃さんは…私の失態を庇う為に賭郎に軟禁されました…彼女は…ここにくる事を…決して望んでいた訳ではないのに…」
‘目蒲立会人’からは発せられる筈もない後悔の言葉に、私達は少なからず驚く。そして、彼の本来の姿を知らないお父さんだけがその言葉をすんなり受け止めた。
「そうか。ええと…」
「目蒲、鬼郎です」
「目蒲君。何があったかは知らないけど、娘が君を救ったのなら、私は誇りに思う。教えてくれてありがとう」
目蒲さんは泣きそうになるのを隠すように、深々と頭を下げた。
「とにかく直情的で話を聞かない子だから、これからも君達に迷惑を掛けると思うんだ。どうか懲りずに付き合ってやっておくれね」
お父さんはそう笑うと、「さて」と私に向き合った。
「軟禁されてるのか」
「うん。連絡できなかったのはそのせい。ごめん」
「いいさ。お前がどんな酷い目に遭っているかと心配したけど…いい人達に巡り合ったみたいだね。天下の賭郎に軟禁されてそんなに生き生きしてるならもうお前の大勝利だよ」
「うん。でももうちょい頑張るよ。その内会いに行けると思う」
「無茶はするなよ」
「分かった」
「何かあったら弥鱈君達を頼りなさい。その人達はきっとお前の…困り事を解決してくれる」
「………そうだね」
「じゃあ、母さんにも伝えておくから」
わしゃわしゃ私の頭を撫でて、そのまま頭を鷲掴み。
「では皆さん、娘をどうぞ宜しくお願いします」
自分が頭を下げるのに合わせて私の頭もぐいと下げさせると、お父さんは満足して踵を返す。皆が口々に「お気をつけて」と声を掛ける中、私は何となくそれが違う気がして、ただ手を振った。
「そっか…そうだよねぇ」
「おい伏龍?」
「なあに弥鱈君」
「嫌な予感がする」
「うん。いい事思い付いたの」
「やめとけ」
「まずは捨隈さんを口説かなきゃ!」
「やめとけやめとけ。おい走るな強情女!」
静かな、懐かしい声。
「こっちへ来なさい」
「あ…お父さん…」
四人が居住まいを正す中、私は懐かしさ半分、恐怖半分でお父さんに寄っていく。何せ無茶苦茶怒っている。当たり前なのだが。
「お、お父さんあのね、訳が」
「五月蝿いよ」
目の前に火花が散った。所謂、拳骨をされた。
「地面に落ちてたらもっと痛かったからね。反省したらもうやめなさい」
「っ!…うっぐぅ…ごめんなさい…」
生理的に出てきた涙を押さえつつ、私はお父さんを見上げた。心配しているのが目に見えて分かって、私はもう一度心配させた事を謝った。
「皆さん、娘を救っていただきありがとうございました」
お父さんは私に何か返す代わりに、四人に深々と頭を下げる。夜行さんが「彼女は有能な人材です。助けるのは当たり前の事」と返した。シンプルに嬉しくて、私はにやける頬を抑えられなくなる。
「そう言って頂けると幸いです。必死で育ててきた娘ですが…どうにも悪いところが私に似てしまったようで、向こう見ずで手を焼いています」
「なあに…慎重派が多い職場です。釣り合いが取れて丁度いいというもの。何より、彼女にはファンが多い…」
夜行さんが若手三人を見遣る。私がいい歳こいて拳骨を貰う姿にニヤついていた弥鱈君が、「親父さん、ファンの一号と二号ですよ」と目蒲さんと夕湖を指差した。
「やだそんな、ファンとかでは全然ないよお父さん。友達友達」
「お父さんはお前達二人の話が食い違った時は弥鱈君を信じることにしているよ」
「あんまりじゃない?」
「いやしかし、弥鱈君は立派になったね。やっぱり賭郎に入ったのか」
「ええ〜入りました〜」
「楽しいかい?」
「とても」
「あっはっは。そうだと思っていたよ。良かったね。しかし…そうか。弥鱈君がいたなら無理矢理接触する事もなかったな。焦って先走ったようだ」
「いえ〜…守りきれませんでした。すみません」
「守ってくれなんて、最初から思ってないよ。なにより…晴乃の居場所は、もうここだ」
「っ… 伏龍さん」
私と、私の後ろにいるみんなを感慨深く見るお父さんに、目蒲さんが溜まりかねて声を上げる。
「晴乃さんは…私の失態を庇う為に賭郎に軟禁されました…彼女は…ここにくる事を…決して望んでいた訳ではないのに…」
‘目蒲立会人’からは発せられる筈もない後悔の言葉に、私達は少なからず驚く。そして、彼の本来の姿を知らないお父さんだけがその言葉をすんなり受け止めた。
「そうか。ええと…」
「目蒲、鬼郎です」
「目蒲君。何があったかは知らないけど、娘が君を救ったのなら、私は誇りに思う。教えてくれてありがとう」
目蒲さんは泣きそうになるのを隠すように、深々と頭を下げた。
「とにかく直情的で話を聞かない子だから、これからも君達に迷惑を掛けると思うんだ。どうか懲りずに付き合ってやっておくれね」
お父さんはそう笑うと、「さて」と私に向き合った。
「軟禁されてるのか」
「うん。連絡できなかったのはそのせい。ごめん」
「いいさ。お前がどんな酷い目に遭っているかと心配したけど…いい人達に巡り合ったみたいだね。天下の賭郎に軟禁されてそんなに生き生きしてるならもうお前の大勝利だよ」
「うん。でももうちょい頑張るよ。その内会いに行けると思う」
「無茶はするなよ」
「分かった」
「何かあったら弥鱈君達を頼りなさい。その人達はきっとお前の…困り事を解決してくれる」
「………そうだね」
「じゃあ、母さんにも伝えておくから」
わしゃわしゃ私の頭を撫でて、そのまま頭を鷲掴み。
「では皆さん、娘をどうぞ宜しくお願いします」
自分が頭を下げるのに合わせて私の頭もぐいと下げさせると、お父さんは満足して踵を返す。皆が口々に「お気をつけて」と声を掛ける中、私は何となくそれが違う気がして、ただ手を振った。
「そっか…そうだよねぇ」
「おい伏龍?」
「なあに弥鱈君」
「嫌な予感がする」
「うん。いい事思い付いたの」
「やめとけ」
「まずは捨隈さんを口説かなきゃ!」
「やめとけやめとけ。おい走るな強情女!」