からむ宿木
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「本当は俺、負けが濃厚だったんだ。お前が鞍馬組だったなら」
その言葉と共に、鞍馬組の二人が立ち上がる。すると、捨隈さんが諦めて話し出す。
「空砲か…何となくそんな気もしていた…」
「そう…こっちの残り2発は抜いてないけどね」
「謎の男…お前は謎の男だった。ここで実際見るまで。梟対捨隈、散々見続けた。それこそ穴が空くんじゃないかってほどね。あれを気の遠くなる時間見続けて、ようやくホン…の少し、俺だから気付くと言っていい、本当に僅かな違和感だけ。これはイカサマではなく、ただの八百長だと」
弥鱈君がこっちを指さしたので、Vサインを作る。それに気付いた貘様が「え、何晴乃チャン」と言ったのでみんなの視線に晒された。自慢する気もないので無視しておくけど、勿論私は初見で気付いたさ。
「まあ…いいさ。捨隈に屋形越えを狙わせる私らにとってはやっと実現したあの梟戦は会員権、さらに零號をセカンドにできるチャンスであり、私らに捨隈の強さを….信用を植え付ける意味があった」
「つまりあの勝負はお前と梟…いや、梟の背後にいたアイデアルとの間で仕組まれた二重の工作」
「捨隈を矢面に立たせて屋形越えを狙い、私らはその背後に立っていたつもりでいた。間抜けな話さ。背後で動いていた私のその背後にもう一人いたわけだ。あんたを送り込み私に屋形越えをさせる事で鞍馬組そのものを隠れ蓑にし静かに笑う…背に立つ存在が。8入力の疑惑を裏付ける証拠、階段であった出来事の全容、流れていた梟の戦の勝負内容…嘘喰いのメッセージにはその全てが記されていた。私はあの時押せなかった。あんたが2ターン前に雹吾に流した自身の珠の数、5。嘘喰いのメッセージを読んだ後に、あんたの5を私は信じられなかった。そして捨隈、あれもあんたの仕業だろ?あらかじめ決めていたボイスレコーダーの隠し場所を事前にカラカルに伝えたのは。あれでカラカルはこの勝負内容を知り、更に私達が捨隈を切った事により、私達が既に隠れ蓑としての役割を担わないと悟った。そして…雹吾は今死にかけている」
本当に間抜けだよ。鞍馬さんはそう苦しげに言った。
貘様は言いたい事を言い終わったのだろう、マルコ君に「マルコ無事?聞こえる?聞こえてたら首を縦に振って」と問い掛ける。勿論マルコ君は元気いっぱい頷いた。
「俺との約束は守った?」
「うん!」
「OK、じゃあ網膜認証の準備をして」
「うん!」
マルコ君が捨隈さんから場所を奪うのを、捨隈さんは呆然と受け入れる。それに鞍馬さんが「13は、入力してない」と補足した。捨隈さんが目を丸くする。そして、それを聞き咎めたのは彼だけではなかった。
「何をしているのです…モンキー!」
突然上がった声に驚く。目蒲さんが私を庇って前に出た。その背越しに何があったと前を見る。カラカルさんだ。ぼろぼろの身体を何とか起こし、マルコ君を睨みつける。彼の体を覆っていた濡れタオルがぼとぼと落ちていく。
「入力権を奪います!お前は今度こそ正解パスワードを入力しなさい!」
ターゲットにされたマルコ君が、勝負への乱入者に警戒する目蒲さんが、じり、と前に出る。その中でひっそりと、捨隈さんが怯えを顔に出した。
そうか、可哀想に。ホントのアイデアルじゃなかったのね、貴方は。
私は目蒲さんの腕に手を掛け、前に出る。迷った様子の彼だったが、「私の敵だから」という一言で場所を譲ってくれた。
「死んじゃいますよ?」
「何を…メス猿ごときが!お前らなど!全員蹂躙して差し上げます!」
「貴方なら出来るでしょうけど、その後貴方がどうなるかの話をしてるんです。ねえ、全身やけどなんですよ?」
私は前に出る。するとカラカルさんは一歩下がった。分かっている、貴方は私が恐ろしくて仕方がない。貴方の魂の尻尾を握る、私が。
「目が覚めたなら早く治療を受けに行くべきなんです、貴方は。もういいから」
「何が、いいと言うのです」
「情報も何も置いていかなくていいから。私はお屋形様に、わざと逃したって報告する。幹部の人たちから拳骨のニ、三もらいますけど、それで済む、私は」
カラカルさんの瞳が戸惑いに揺れる。畳み掛けよう。
「私の周りの人達は、私の決断を尊重してくれる。貴方は違うんですか?貴方がそんなに苦しんで帰ってきて、作戦失敗を責めるボスなら、そんな奴に貴方は勿体ないですよ」
近寄り、逃げられ。その繰り返しで縮まらない距離に、橋をかけんと手を伸ばす。
「手を取って。ボスが嫌なら、賭郎に連れて行ってあげる。ボスが怖いなら、私を連れて行けばいい」
彼は押し黙る。言葉の真意を量っている。そういう世界に生きてきた人だから仕方がない。勿論私の言葉に裏なんてない。でも、手を取るのなら救ってあげるけど、拒否するのなら地獄を見せてやる。これは、そういう問いだ。貴方が私を受け入れられないのを知っていてやっている。
「興が…削がれました」
カラカルさんは、更に一歩下がる。いいよ、好きにしな。
「あらそう。じゃあ今回は負け越しですね」
私がそう肩を竦めると、彼は神妙な面持ちで、割れた窓から去っていった。
「だから、もっと全身やけどの自覚を持ってさぁ…まあいいや。ねえ捨隈さん、今の、貴方にも言いましたからね」
「…何逃してんだよ」
黙って何も言わない捨隈さんに代わって、目蒲さんが私を責める。私はにやっと笑いながら、種明かし。
「いいんですよあれで。見下してる日本人に、日に二回も縋りつける程なりふり構わない人じゃないって、分かってましたしね」
「は?」
「もうあの人は普段通りにはいられませんよ。そういう楔を打ってやったんです。嫌な事とか疑問とか、ネガティブな事がある度に私を思い出して苦しめばいいんですよ」
自分も似たような楔を打ち込まれた自覚があるからこそ、目蒲さんは顔を顰める。
「こっちは散々煮湯を飲まされたんです。いい歳こいて恋に悩め、ばーか」
「お前はさぁ…」
その言葉と共に、鞍馬組の二人が立ち上がる。すると、捨隈さんが諦めて話し出す。
「空砲か…何となくそんな気もしていた…」
「そう…こっちの残り2発は抜いてないけどね」
「謎の男…お前は謎の男だった。ここで実際見るまで。梟対捨隈、散々見続けた。それこそ穴が空くんじゃないかってほどね。あれを気の遠くなる時間見続けて、ようやくホン…の少し、俺だから気付くと言っていい、本当に僅かな違和感だけ。これはイカサマではなく、ただの八百長だと」
弥鱈君がこっちを指さしたので、Vサインを作る。それに気付いた貘様が「え、何晴乃チャン」と言ったのでみんなの視線に晒された。自慢する気もないので無視しておくけど、勿論私は初見で気付いたさ。
「まあ…いいさ。捨隈に屋形越えを狙わせる私らにとってはやっと実現したあの梟戦は会員権、さらに零號をセカンドにできるチャンスであり、私らに捨隈の強さを….信用を植え付ける意味があった」
「つまりあの勝負はお前と梟…いや、梟の背後にいたアイデアルとの間で仕組まれた二重の工作」
「捨隈を矢面に立たせて屋形越えを狙い、私らはその背後に立っていたつもりでいた。間抜けな話さ。背後で動いていた私のその背後にもう一人いたわけだ。あんたを送り込み私に屋形越えをさせる事で鞍馬組そのものを隠れ蓑にし静かに笑う…背に立つ存在が。8入力の疑惑を裏付ける証拠、階段であった出来事の全容、流れていた梟の戦の勝負内容…嘘喰いのメッセージにはその全てが記されていた。私はあの時押せなかった。あんたが2ターン前に雹吾に流した自身の珠の数、5。嘘喰いのメッセージを読んだ後に、あんたの5を私は信じられなかった。そして捨隈、あれもあんたの仕業だろ?あらかじめ決めていたボイスレコーダーの隠し場所を事前にカラカルに伝えたのは。あれでカラカルはこの勝負内容を知り、更に私達が捨隈を切った事により、私達が既に隠れ蓑としての役割を担わないと悟った。そして…雹吾は今死にかけている」
本当に間抜けだよ。鞍馬さんはそう苦しげに言った。
貘様は言いたい事を言い終わったのだろう、マルコ君に「マルコ無事?聞こえる?聞こえてたら首を縦に振って」と問い掛ける。勿論マルコ君は元気いっぱい頷いた。
「俺との約束は守った?」
「うん!」
「OK、じゃあ網膜認証の準備をして」
「うん!」
マルコ君が捨隈さんから場所を奪うのを、捨隈さんは呆然と受け入れる。それに鞍馬さんが「13は、入力してない」と補足した。捨隈さんが目を丸くする。そして、それを聞き咎めたのは彼だけではなかった。
「何をしているのです…モンキー!」
突然上がった声に驚く。目蒲さんが私を庇って前に出た。その背越しに何があったと前を見る。カラカルさんだ。ぼろぼろの身体を何とか起こし、マルコ君を睨みつける。彼の体を覆っていた濡れタオルがぼとぼと落ちていく。
「入力権を奪います!お前は今度こそ正解パスワードを入力しなさい!」
ターゲットにされたマルコ君が、勝負への乱入者に警戒する目蒲さんが、じり、と前に出る。その中でひっそりと、捨隈さんが怯えを顔に出した。
そうか、可哀想に。ホントのアイデアルじゃなかったのね、貴方は。
私は目蒲さんの腕に手を掛け、前に出る。迷った様子の彼だったが、「私の敵だから」という一言で場所を譲ってくれた。
「死んじゃいますよ?」
「何を…メス猿ごときが!お前らなど!全員蹂躙して差し上げます!」
「貴方なら出来るでしょうけど、その後貴方がどうなるかの話をしてるんです。ねえ、全身やけどなんですよ?」
私は前に出る。するとカラカルさんは一歩下がった。分かっている、貴方は私が恐ろしくて仕方がない。貴方の魂の尻尾を握る、私が。
「目が覚めたなら早く治療を受けに行くべきなんです、貴方は。もういいから」
「何が、いいと言うのです」
「情報も何も置いていかなくていいから。私はお屋形様に、わざと逃したって報告する。幹部の人たちから拳骨のニ、三もらいますけど、それで済む、私は」
カラカルさんの瞳が戸惑いに揺れる。畳み掛けよう。
「私の周りの人達は、私の決断を尊重してくれる。貴方は違うんですか?貴方がそんなに苦しんで帰ってきて、作戦失敗を責めるボスなら、そんな奴に貴方は勿体ないですよ」
近寄り、逃げられ。その繰り返しで縮まらない距離に、橋をかけんと手を伸ばす。
「手を取って。ボスが嫌なら、賭郎に連れて行ってあげる。ボスが怖いなら、私を連れて行けばいい」
彼は押し黙る。言葉の真意を量っている。そういう世界に生きてきた人だから仕方がない。勿論私の言葉に裏なんてない。でも、手を取るのなら救ってあげるけど、拒否するのなら地獄を見せてやる。これは、そういう問いだ。貴方が私を受け入れられないのを知っていてやっている。
「興が…削がれました」
カラカルさんは、更に一歩下がる。いいよ、好きにしな。
「あらそう。じゃあ今回は負け越しですね」
私がそう肩を竦めると、彼は神妙な面持ちで、割れた窓から去っていった。
「だから、もっと全身やけどの自覚を持ってさぁ…まあいいや。ねえ捨隈さん、今の、貴方にも言いましたからね」
「…何逃してんだよ」
黙って何も言わない捨隈さんに代わって、目蒲さんが私を責める。私はにやっと笑いながら、種明かし。
「いいんですよあれで。見下してる日本人に、日に二回も縋りつける程なりふり構わない人じゃないって、分かってましたしね」
「は?」
「もうあの人は普段通りにはいられませんよ。そういう楔を打ってやったんです。嫌な事とか疑問とか、ネガティブな事がある度に私を思い出して苦しめばいいんですよ」
自分も似たような楔を打ち込まれた自覚があるからこそ、目蒲さんは顔を顰める。
「こっちは散々煮湯を飲まされたんです。いい歳こいて恋に悩め、ばーか」
「お前はさぁ…」