からむ宿木
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『晴乃生きてるか?今密葬課が二名タワーに侵入した!気を付けろ!』
「了解。あと生きてるよ夕湖」
『ああ晴乃!無事だったか!』
違和感が残る体でえっちらおっちらマーティンをふん縛っている最中に、連絡が入る。応答すれば夕湖が安堵の声を上げた。
「あはは、何とかね!こちらはマーティン・ブルース・ホワイトを倒しました。生きてますので賭郎に戻ったら存分に尋問してやって下さい」
『やるね、流石晴乃君』
「やだお屋形様、照れる」
『後は何がいるんだ?』
「ええと…後は鞍馬蘭子、レオ、ビリー・クレイグの三名、かな。でも、ビリー・クレイグは鞍馬組によって倒された筈です。まだ確認はしていませんが…最悪、私が抑えます」
『大きく出たね』
「マーティンは鞍馬様々でしたけど…ビリー・クレイグは‘話し合い’で下せると思います」
鞍馬組が倒しているなら今更何もする気はないが、出来るならニコラを何とかしてあげたいではある。李さんと龍さんを始め、賭郎に絶大な被害を与えた人だから、あまり優しくしたいとも思えないのだが…複雑だ。
「とにかく、先程ドティ三戦目が終わり、マルコ様が入力に向かったとの報告を受けています。残りの密葬課は下のお二人が抑えるでしょうし…タワー内はもう間もなく決着が着くでしょう」
『分かった。こちらもそれまでなら十分持ち堪えられそうだ』
『そっちはまだ泉江も夜行も残ってるでしょ』
「やだー、それを言ったらお屋形様なんて副総監リンチにしてるだけじゃないですかー!皆さん一人ずつタワーに寄越すべきでしたよ」
『残念ながら夜行掃除人は手放せん。私は司令官だから、本来私が出るわけにはいかないんだ』
『私は確実に生きて帰らないといけないし、そっちは君まで出番がまわるようにする必要があったからね』
「夕湖は分かった。お屋形様は分からない」
『勉強不足だね』
「腹立つわぁ」
通話を切った私は、次に目蒲さんに電話を掛ける。「…よお馬鹿女、デートは終わったか?」と、空気が凍り付きそうな声が聞こえてきて泣きそうになる。どうしよう予想以上に怒ってた!
「お、終わりました…というかデートじゃないです…」
「あーそうでしたかそうでしたかぁ。流石引く手数多の晴乃さんです。男と仲睦まじく手を取り合って歩くのは日常茶飯事でしたかぁ」
「そんな事ないですもん…お願い言い訳聞いて下さい!」
「はあ…つまらない言い訳だったらどうなるか分かってますかぁ?とにかく居場所を教えなさい、すぐに向かいます」
「四か」
ブッ、と無遠慮に通話が切られ、私は居ても立っても居られなくなる。どうしたもんか、一年振りの目蒲さん怒髪天だ。そりゃそうだよな。隠れてろって言われたのに言いつけを守らないで戦闘に参加してたら嫌だよな。勝ったから結果オーライにはならないよな。私だって、もし自分がその立場だったらやっぱり怒るもんな。私は不誠実だった。うん。その辺を正直に話して許してもらおう。えいえいおー!
「何を意気込んでおいでですか」
「ひっ?!えっ、目蒲さん早い」
「貴女がのろいんです。ランニング位したらいかがですか?その無駄な脂肪に使い道があるなら無理にとは言いませんが。ああそうでした、貴女は色仕掛けの方がお得意でしたねえ。でしたらその体でも仕方がありますまい。どうぞ…」
「目蒲さんっ、あのっ、すみませんでした!」
私は勢いよく頭を下げる。目蒲さんの「は?」と言う声が降ってきたが、心から謝ろうって時に人の顔色伺うんじゃあ違う。私は頭を低くしたまままた謝る。
「ホントすみませんでした…ちゃんと言う事聞いて隠れてなくて…ガチャガチャパフェ作ってたら見事見つかってしまって…結果こんな事に…」
息を呑む音。私がスパッと謝るとは思っていなかったのだろう。
喧嘩腰に丸めた背筋を伸ばす、布ずれの音。自分も矛を収める事にしたのだろう。
「チッ…貴女が予想の範疇にいないのはいつものことでしょうが…」
目蒲さんはそう言うと、踵を返してマーティンの方へ歩き出す。私は慌てて頭を上げると、彼に並んだ。
「先程は言い過ぎました」
「い、いえいえ、私が悪かったです」
やっと目蒲さんの横顔を見る。本当はまだ言いたいけど、飲み込んでくれている。申し訳ないのに、嬉しい。
「目蒲さん、お怪我大丈夫ですか?」
「日常茶飯事だ。お前こそ…何があったんだ」
目蒲さんはマーティンの髪を鷲掴み、ぐっと持ち上げる。可哀想に、まだぐったりと伸びている。私のせいだが。
「その人はAEDを3回喰らって伸びてます」
「地獄かよ…」
「大変だったんです。あの、言い訳聞いて頂けませんか?」
目蒲さんが一瞬目線を送ってきたのを了承と捉え、私は話し始める。マーティンの性癖のこと、それに敢えて乗る事で情報を引き出したかったこと、そしてマーティンとカラカルさんの関係を。
「流石に素で仲良くなった訳ではなかったか」
「そこまでクレイジーじゃないですよう…」
「お前なら分からん」
「酷い」
「で、どうするんだ、カラカルは」
「あ、そうでした。状況を確認しに行かなきゃいけないんですけど…一人で行くのは怖くて」
「何で?」
「生きてても死んでても嫌です」
「お前、変な所でビビるな」
マーティンを廊下の端に捨てると、目蒲さんは歩き出す。私はカラカルさんの恐らくの場所を伝え、背を追った。
「了解。あと生きてるよ夕湖」
『ああ晴乃!無事だったか!』
違和感が残る体でえっちらおっちらマーティンをふん縛っている最中に、連絡が入る。応答すれば夕湖が安堵の声を上げた。
「あはは、何とかね!こちらはマーティン・ブルース・ホワイトを倒しました。生きてますので賭郎に戻ったら存分に尋問してやって下さい」
『やるね、流石晴乃君』
「やだお屋形様、照れる」
『後は何がいるんだ?』
「ええと…後は鞍馬蘭子、レオ、ビリー・クレイグの三名、かな。でも、ビリー・クレイグは鞍馬組によって倒された筈です。まだ確認はしていませんが…最悪、私が抑えます」
『大きく出たね』
「マーティンは鞍馬様々でしたけど…ビリー・クレイグは‘話し合い’で下せると思います」
鞍馬組が倒しているなら今更何もする気はないが、出来るならニコラを何とかしてあげたいではある。李さんと龍さんを始め、賭郎に絶大な被害を与えた人だから、あまり優しくしたいとも思えないのだが…複雑だ。
「とにかく、先程ドティ三戦目が終わり、マルコ様が入力に向かったとの報告を受けています。残りの密葬課は下のお二人が抑えるでしょうし…タワー内はもう間もなく決着が着くでしょう」
『分かった。こちらもそれまでなら十分持ち堪えられそうだ』
『そっちはまだ泉江も夜行も残ってるでしょ』
「やだー、それを言ったらお屋形様なんて副総監リンチにしてるだけじゃないですかー!皆さん一人ずつタワーに寄越すべきでしたよ」
『残念ながら夜行掃除人は手放せん。私は司令官だから、本来私が出るわけにはいかないんだ』
『私は確実に生きて帰らないといけないし、そっちは君まで出番がまわるようにする必要があったからね』
「夕湖は分かった。お屋形様は分からない」
『勉強不足だね』
「腹立つわぁ」
通話を切った私は、次に目蒲さんに電話を掛ける。「…よお馬鹿女、デートは終わったか?」と、空気が凍り付きそうな声が聞こえてきて泣きそうになる。どうしよう予想以上に怒ってた!
「お、終わりました…というかデートじゃないです…」
「あーそうでしたかそうでしたかぁ。流石引く手数多の晴乃さんです。男と仲睦まじく手を取り合って歩くのは日常茶飯事でしたかぁ」
「そんな事ないですもん…お願い言い訳聞いて下さい!」
「はあ…つまらない言い訳だったらどうなるか分かってますかぁ?とにかく居場所を教えなさい、すぐに向かいます」
「四か」
ブッ、と無遠慮に通話が切られ、私は居ても立っても居られなくなる。どうしたもんか、一年振りの目蒲さん怒髪天だ。そりゃそうだよな。隠れてろって言われたのに言いつけを守らないで戦闘に参加してたら嫌だよな。勝ったから結果オーライにはならないよな。私だって、もし自分がその立場だったらやっぱり怒るもんな。私は不誠実だった。うん。その辺を正直に話して許してもらおう。えいえいおー!
「何を意気込んでおいでですか」
「ひっ?!えっ、目蒲さん早い」
「貴女がのろいんです。ランニング位したらいかがですか?その無駄な脂肪に使い道があるなら無理にとは言いませんが。ああそうでした、貴女は色仕掛けの方がお得意でしたねえ。でしたらその体でも仕方がありますまい。どうぞ…」
「目蒲さんっ、あのっ、すみませんでした!」
私は勢いよく頭を下げる。目蒲さんの「は?」と言う声が降ってきたが、心から謝ろうって時に人の顔色伺うんじゃあ違う。私は頭を低くしたまままた謝る。
「ホントすみませんでした…ちゃんと言う事聞いて隠れてなくて…ガチャガチャパフェ作ってたら見事見つかってしまって…結果こんな事に…」
息を呑む音。私がスパッと謝るとは思っていなかったのだろう。
喧嘩腰に丸めた背筋を伸ばす、布ずれの音。自分も矛を収める事にしたのだろう。
「チッ…貴女が予想の範疇にいないのはいつものことでしょうが…」
目蒲さんはそう言うと、踵を返してマーティンの方へ歩き出す。私は慌てて頭を上げると、彼に並んだ。
「先程は言い過ぎました」
「い、いえいえ、私が悪かったです」
やっと目蒲さんの横顔を見る。本当はまだ言いたいけど、飲み込んでくれている。申し訳ないのに、嬉しい。
「目蒲さん、お怪我大丈夫ですか?」
「日常茶飯事だ。お前こそ…何があったんだ」
目蒲さんはマーティンの髪を鷲掴み、ぐっと持ち上げる。可哀想に、まだぐったりと伸びている。私のせいだが。
「その人はAEDを3回喰らって伸びてます」
「地獄かよ…」
「大変だったんです。あの、言い訳聞いて頂けませんか?」
目蒲さんが一瞬目線を送ってきたのを了承と捉え、私は話し始める。マーティンの性癖のこと、それに敢えて乗る事で情報を引き出したかったこと、そしてマーティンとカラカルさんの関係を。
「流石に素で仲良くなった訳ではなかったか」
「そこまでクレイジーじゃないですよう…」
「お前なら分からん」
「酷い」
「で、どうするんだ、カラカルは」
「あ、そうでした。状況を確認しに行かなきゃいけないんですけど…一人で行くのは怖くて」
「何で?」
「生きてても死んでても嫌です」
「お前、変な所でビビるな」
マーティンを廊下の端に捨てると、目蒲さんは歩き出す。私はカラカルさんの恐らくの場所を伝え、背を追った。