からむ宿木
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もうね、楽しすぎて泣きそう。私はマーティンの横顔を見てニヤニヤする。この人ったら本当に凄い。自分の言葉を信じ込んでる。こういうのを自己催眠というんだろう。初めて生で見られて本当に嬉しい。
「カラカルは私が戻るまで時間を稼ぎ、二人がかりであなた方を攻撃するつもりだったようです。いきなりの分断は彼にとってあまり好ましくない展開。そして、私達の行動もです」
スプリンクラーの水が降り注ぐ中、私達はカラカルさんを目指して走る。その間もマーティンは相変わらずペラペラ喋る。九割の真実と、一割の嘘を。見抜く事は私の目を持ってしても困難だ。だって、マーティン本人がそれを信じているから。
いやあ、好き。
「で?あんたは何をしてるんだい」
「へ?私ですか?」
マーティンにうっとりしていたのに、突然鞍馬さんに現実に引き戻される。
「私は…隠れてたらアイデアルに見つかっちゃって、なんか手伝ってます」
「なんかってあんた…なんでそんなあやふやなんだい」
「自分でもたまに適当さに不安になる」
「改めなよ」
「まあ、周りの人が何とかしますよ」
あははと笑って流して、またマーティンをチェック。何だか暗い顔をしていたので「大丈夫?」と声を掛けた。彼は頷く。
「蘭子組長…さっきの私の言葉は忘れて下さい。私の悪い癖なんです。この私が友達なんてあり得ません…ダメです」
「フ…諦めるんだね。そんなのは私のガラじゃない…それに私はもともと異性の友達は作らない性質なんでね。若い頃に痛い目を見た事があるのさ。…ねえっ、男女の間に友情が成立するって思ってる派?」
鞍馬さんがキセルで私を指すので、「思いますよう」と肩をすくめる。次に指されたマーティンも頷く。
「ふうん…フフ…私が男を見る時思うのは、犯りたい奴、殺りたい奴、支配したい奴の3つさ。友達だなんて…結局異性をそういう目で見るもんだろ?」
「あ…あの、私のことはどういう目で?」
「今の所犯り殺りって所だね…フフ…悪いね」
分からんでもない…じゃなくて、チャンスだわ。私は口を開く。
「ねえ?マーティンはどうしてそんなに友達に拘るの?」
「え…」
マーティンの目が遠くを見つめる。早く聞きたくて、「昔何かあったの?」と追撃。彼のスイッチが入る。
「私がこんなになったのは昔…先天性の心疾患に蝕まれた7歳の少年、ニコラとの出会いから始まります。もってあと数ヶ月、彼は治ることの無い病魔と戦い続け、身も心もボロボロになりながらも笑顔を絶やしませんでした…そんな彼を…尊い…そう感じる日々でした。私の親友でした。しかしあの日、私と彼は些細な事が原因で喧嘩をしてしまいました。口をきかなくなって…」
語り慣れた口調が、私の胸を騒つかせる。何度も語ってきたのだろう。自分が気持ちよく‘友達’を殺す為に。
その時、バツンと音を立てて、フロアの電気が落ちた。ブレーカーが落ちる?そんなトラップは無いはずだ。じゃあ、誰かが戦闘中に何かのケーブルでも切ったか?
こんなスプリンクラー全稼働中に?
「みんな逃げて!」
私は慌てて前に走り出す。両手を広げて、鞍馬さんがいた辺りを探ると、むに、と柔らかな体に手が当たった。
「なんて所触るんだい」
「なんかすみません!走って!漏電してますよきっと!」
「だろうねえ」
腕を引っ張る私を、鞍馬さんは引き寄せて頬に触れる。
そして、そのまま口で口を塞いだ。
「ん、んん?!」
「静かにしな…落ち着くんだよ。トラップだったらどうすんだい、あんたの声で居場所がバレちまうよ…」
唇を離すと、鞍馬さんは吐息がかかるくらい近くでそう囁いた。
「すみません…」
やっとの思いでそう返した私の耳に、AEDの音声が届く。
「げ、マーティンやりやがった」
「ああ、成程ね」
わざとらしい「蘭子組長!晴乃!どこですか!危険です!」という声。私は鞍馬さんと手と手を取り合い、静かに安全圏へと移動する。
「…‘体から離れて下さい’…3、2、1。よし、鞍馬さん戻りましょう」
「なんだあんた、覚えてんのかい」
「教員って結構真面目に救命講習受けさせられますからね」
「教員?」
「目蒲さんとの一件があるまでは教員だったんです。…そういえば、嘘喰い対佐田国見てましたよね?」
「ああ…あんたにも気付いたよ」
「うふふ、やっぱり」
「さて… 晴乃、マーティン照らしててくれるかい?」
「いいですよ」
私達はマーティンの元に戻る。私は勿論だが、鞍馬さんも用があったようだ。
「何探してるんですか?」
「対マルコ用の武器」
「カラカルさんが倒せるでしょうに…あーでも、そっか。肉弾戦じゃめんどくさいですよねえ」
「おや、知り合いかい?」
「直接会ったのはさっきが初めてですけどね」
「ふーん…ねえっ!あんた、どういうつもりなんだい?」
「へ?」
「あんたは私達とアイデアルが潰し合うのをただ見ていればいい…そうだろ?火中の栗を拾うメリットがないよ」
「ああ…うーん、秘密で」
「あらそう。残念ね」
武器の捜索は諦めたらしく、鞍馬さんは立ち上がる。そして私の明かりを持つ手を掴み、ぐいと引き寄せた。互いの体が密着する。
「言いたくなるまでお仕置きしてあげようか」
「うぇ?!」
何なんだろう今日はなんか、みんな性的な日なんだろうか!
「あっ、その、やめて下さいよもう…!」
「あらあんた、意外と初心なんだね」
「さっきの鞍馬さんがセカンドキスですよう!ホントやめて!」
「あんたそのレベルかい…!一番女としての食べ頃を…」
「だって苦手なんですもん人が欲情してるの見るの!もう…もう!分かりました!言います!離して!」
「分かった。可哀想なあんたに免じて許してやるよ」
「可哀想じゃないもん…」
鞍馬さんがやっと離れてくれたことに心から安堵しつつ、私は真っ赤な頬を手の甲で冷やした。
「いいですか…恐らく私ならマーティンもカラカルも‘話し合い’で下せます。そして、その為にはマーティンの過去を余す事なく知る必要があるんです」
「ふうん…?」
「恐らく…どんなに頑張っても確証は得られませんでしたが…マーティンの言うニコラ。これはカラカルさんです。そこの繋がりに確信が持てれば、カラカルさんを瞬殺できます。それに何より、メリットはあるんです。賭郎にとって、アイデアルは邪魔で仕方がない羽虫なんですから」
鞍馬さんが笑う気配がした。
「なるほどね。あんた…本当に立派になったよ。今後は信用し過ぎないようにしなきゃね」
「なんですかそれ、酷いなあ」
「カラカルは私が戻るまで時間を稼ぎ、二人がかりであなた方を攻撃するつもりだったようです。いきなりの分断は彼にとってあまり好ましくない展開。そして、私達の行動もです」
スプリンクラーの水が降り注ぐ中、私達はカラカルさんを目指して走る。その間もマーティンは相変わらずペラペラ喋る。九割の真実と、一割の嘘を。見抜く事は私の目を持ってしても困難だ。だって、マーティン本人がそれを信じているから。
いやあ、好き。
「で?あんたは何をしてるんだい」
「へ?私ですか?」
マーティンにうっとりしていたのに、突然鞍馬さんに現実に引き戻される。
「私は…隠れてたらアイデアルに見つかっちゃって、なんか手伝ってます」
「なんかってあんた…なんでそんなあやふやなんだい」
「自分でもたまに適当さに不安になる」
「改めなよ」
「まあ、周りの人が何とかしますよ」
あははと笑って流して、またマーティンをチェック。何だか暗い顔をしていたので「大丈夫?」と声を掛けた。彼は頷く。
「蘭子組長…さっきの私の言葉は忘れて下さい。私の悪い癖なんです。この私が友達なんてあり得ません…ダメです」
「フ…諦めるんだね。そんなのは私のガラじゃない…それに私はもともと異性の友達は作らない性質なんでね。若い頃に痛い目を見た事があるのさ。…ねえっ、男女の間に友情が成立するって思ってる派?」
鞍馬さんがキセルで私を指すので、「思いますよう」と肩をすくめる。次に指されたマーティンも頷く。
「ふうん…フフ…私が男を見る時思うのは、犯りたい奴、殺りたい奴、支配したい奴の3つさ。友達だなんて…結局異性をそういう目で見るもんだろ?」
「あ…あの、私のことはどういう目で?」
「今の所犯り殺りって所だね…フフ…悪いね」
分からんでもない…じゃなくて、チャンスだわ。私は口を開く。
「ねえ?マーティンはどうしてそんなに友達に拘るの?」
「え…」
マーティンの目が遠くを見つめる。早く聞きたくて、「昔何かあったの?」と追撃。彼のスイッチが入る。
「私がこんなになったのは昔…先天性の心疾患に蝕まれた7歳の少年、ニコラとの出会いから始まります。もってあと数ヶ月、彼は治ることの無い病魔と戦い続け、身も心もボロボロになりながらも笑顔を絶やしませんでした…そんな彼を…尊い…そう感じる日々でした。私の親友でした。しかしあの日、私と彼は些細な事が原因で喧嘩をしてしまいました。口をきかなくなって…」
語り慣れた口調が、私の胸を騒つかせる。何度も語ってきたのだろう。自分が気持ちよく‘友達’を殺す為に。
その時、バツンと音を立てて、フロアの電気が落ちた。ブレーカーが落ちる?そんなトラップは無いはずだ。じゃあ、誰かが戦闘中に何かのケーブルでも切ったか?
こんなスプリンクラー全稼働中に?
「みんな逃げて!」
私は慌てて前に走り出す。両手を広げて、鞍馬さんがいた辺りを探ると、むに、と柔らかな体に手が当たった。
「なんて所触るんだい」
「なんかすみません!走って!漏電してますよきっと!」
「だろうねえ」
腕を引っ張る私を、鞍馬さんは引き寄せて頬に触れる。
そして、そのまま口で口を塞いだ。
「ん、んん?!」
「静かにしな…落ち着くんだよ。トラップだったらどうすんだい、あんたの声で居場所がバレちまうよ…」
唇を離すと、鞍馬さんは吐息がかかるくらい近くでそう囁いた。
「すみません…」
やっとの思いでそう返した私の耳に、AEDの音声が届く。
「げ、マーティンやりやがった」
「ああ、成程ね」
わざとらしい「蘭子組長!晴乃!どこですか!危険です!」という声。私は鞍馬さんと手と手を取り合い、静かに安全圏へと移動する。
「…‘体から離れて下さい’…3、2、1。よし、鞍馬さん戻りましょう」
「なんだあんた、覚えてんのかい」
「教員って結構真面目に救命講習受けさせられますからね」
「教員?」
「目蒲さんとの一件があるまでは教員だったんです。…そういえば、嘘喰い対佐田国見てましたよね?」
「ああ…あんたにも気付いたよ」
「うふふ、やっぱり」
「さて… 晴乃、マーティン照らしててくれるかい?」
「いいですよ」
私達はマーティンの元に戻る。私は勿論だが、鞍馬さんも用があったようだ。
「何探してるんですか?」
「対マルコ用の武器」
「カラカルさんが倒せるでしょうに…あーでも、そっか。肉弾戦じゃめんどくさいですよねえ」
「おや、知り合いかい?」
「直接会ったのはさっきが初めてですけどね」
「ふーん…ねえっ!あんた、どういうつもりなんだい?」
「へ?」
「あんたは私達とアイデアルが潰し合うのをただ見ていればいい…そうだろ?火中の栗を拾うメリットがないよ」
「ああ…うーん、秘密で」
「あらそう。残念ね」
武器の捜索は諦めたらしく、鞍馬さんは立ち上がる。そして私の明かりを持つ手を掴み、ぐいと引き寄せた。互いの体が密着する。
「言いたくなるまでお仕置きしてあげようか」
「うぇ?!」
何なんだろう今日はなんか、みんな性的な日なんだろうか!
「あっ、その、やめて下さいよもう…!」
「あらあんた、意外と初心なんだね」
「さっきの鞍馬さんがセカンドキスですよう!ホントやめて!」
「あんたそのレベルかい…!一番女としての食べ頃を…」
「だって苦手なんですもん人が欲情してるの見るの!もう…もう!分かりました!言います!離して!」
「分かった。可哀想なあんたに免じて許してやるよ」
「可哀想じゃないもん…」
鞍馬さんがやっと離れてくれたことに心から安堵しつつ、私は真っ赤な頬を手の甲で冷やした。
「いいですか…恐らく私ならマーティンもカラカルも‘話し合い’で下せます。そして、その為にはマーティンの過去を余す事なく知る必要があるんです」
「ふうん…?」
「恐らく…どんなに頑張っても確証は得られませんでしたが…マーティンの言うニコラ。これはカラカルさんです。そこの繋がりに確信が持てれば、カラカルさんを瞬殺できます。それに何より、メリットはあるんです。賭郎にとって、アイデアルは邪魔で仕方がない羽虫なんですから」
鞍馬さんが笑う気配がした。
「なるほどね。あんた…本当に立派になったよ。今後は信用し過ぎないようにしなきゃね」
「なんですかそれ、酷いなあ」