からむ宿木
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「痛ぁ…痛た…」
私は哀れな女の子っぽく痛がるフリをしながら、ゆっくり机の下じきになった体を起こす。勿論、マーティンさんがオロオロしながら私を見ているのをバッチリ承知の上でやっている。
「あーもう…信じらんないよ…こんなに痛めつける必要ってある?…パフェだってひっくり返っちゃったし…ああなんて可哀想な私…」
「ああ…あの…」
「ひっ…あっ…やめて!来ないで!」
「ああそんな…怖がらないで…」
必要以上に怖がってやれば、マーティンさんのスイッチが入る。先に情報さえ持っていればこんなにも動かしやすい男はいない。
「やめてやめて!手足折らないで!きゃー怖いー!」
「お、落ち着いてください!私も無理矢理やらされているんです!」
嘘やんお前。今までもこれからもノリノリで殺す顔しとるやん。
「へ?…無理矢理?そんな…あなたも?」
「なんて事だ…私たち、同じ境遇なのかも…」
私は自分の身の上を話してやった。目蒲さんに三ヶ月もの間監禁され暴力を受け、お屋形様に軟禁されてやったこともない事務で働く事を強いられ、遂に外に出る事が叶ったと思えばカラカルさんに四肢を折られそうになっている哀れなこの私の身の上を!
「ああ…なんて不憫な人なんだ!それでもこうやって強く生きてこられたんですね…!貴女は強い人だ!強くて美しい!」
「そんな…嬉しい!今までそんな優しい言葉を掛けてくれる人はいませんでした!敬語なんて使わないで!私もそうする!さあ、一緒にケーキを食べましょう!今日から私たちは友達よ!」
「ああそんな…いいのかい…?なら…なら応えよう!友達として!」
すんなり動き過ぎて高笑いしそうだが、もういいや。今度こそケーキonパフェを成功させるのだ。
ーーーーーーーーーー
ぎゅいい、と銀色のセダンがSATの壁を越えて乱入してくる。「泉江外務卿」と配下の黒服が呼び掛けるのに対し「何もするな」と答える。
SATの壁のすぐ側で車は止まり、フロントガラスが少しだけ開いた。そこからにゅっと手が伸び、卵の殻を捨てた。警察の癖にマナーの悪いことだ。
その手が手招きするのに応え、嵐堂が歩み寄る。
「ほ…報告します。…も、「もうお終いか?」そ…そう言った後、お、男…男は、おど、お、踊りました…」
「分かった嵐堂。良くやったな…お前は正しい。お前の報告を聞く度に俺はいつも思う。間違っていない、お前は正しかったと…タワー制圧の任務はおまえにかかっている。そして…」
リアドアが開き、男が二人降りてくる。歳の頃は四十代と五十代。
「箕輪、お前にも」
「分かってますよ。全くもぉ…病み上がりなんですけどねェ」
「あっはっは。密葬課は大変だね。早く正式な課として認めてもらいなよー」
「親父さん、密葬課が表に出るなんてこの世の終わりだよォ?」
「でも、君たちちゃんといるのにねえ」
「そんな逝かれたこと言ってるから次長止まりなのよ、親父さんは」
「そうかもねえ。あっはっは。じゃあ真鍋君、送ってくれてありがとう!箕輪君は怪我のないようにね!そして嵐堂君…次の戦い、代わって?」
へらっと笑って宣う五十代に、密葬課がどよめく。
「いやいや親父さん!危ないって!」
慌てふためいて、緩いウェーブの男が車から飛び出てくる。男が笑顔のままその男の肩を叩く。
「大丈夫大丈夫!君達には遠く及ばないけど私も強いよ!」
「遠く及ばないから問題なんですよ!もう車内に戻ってください!」
「私密葬課じゃないから、あんまり車内にいるのもねえ」
「親父さんSATでもないでしょ!所属で言うならどこにも居場所ないから帰りなさい!」
「えー、じゃあ密葬課でいいや」
「なんで仕方がなく選んであげた感出すの?!もう、鷹さんも何とか言ってくれ!」
「Boy…分かるかい?娘を失う辛さ…これはね、親父さんの弔い合戦なのさ…行かせてやりな…」
「おっ!鷹さん話が分かるねえ。でも娘は消息不明なだけだからね?」
「大丈夫…大丈夫さ、親父さん….」
「もう嫌だ!」
嘆く真鍋と呼ばれた男の背を、四十代短髪がポンと叩いた。
「じゃ、俺は適宜葬りながら中の状況調べてくるよ。親父さん、無理しちゃ駄目よ?」
「ああ、ありがとう、箕輪君。娘がいたらよろしくね」
「流石にいないと思うけどねェ…」
男がぷらぷら歩いてこっちへ…もとい、帝国タワーへ近づいてくる。
「警察から一名、入場させてもらうよォ」
「ああ…通れ」
男を通し、一応晴乃に連絡を入れる。セダンの側ではまだオッサン達のコントが繰り広げられている。
「親父さん、俺達は親父さんに感謝しているんです…だからこんなところで死んでほしくない」
「まあまあ、そこまで思い詰めなくても。流石の賭郎も全国放送で警察殺さないよ。…ねえ嵐堂君、代わってくれるかな」
「お、おや、親父さんのためなら…」
「ありがとう嵐堂君!おーい美人さん!次は二名の入場を賭けて戦うよー!」
「あ、親父さん!走って行かないで下さい!誰かあの人止めてくれ!」
私はどうすればいいんだろうか?やる気満々の‘親父さん’を前に、私は眉間を指で押さえる。
私は哀れな女の子っぽく痛がるフリをしながら、ゆっくり机の下じきになった体を起こす。勿論、マーティンさんがオロオロしながら私を見ているのをバッチリ承知の上でやっている。
「あーもう…信じらんないよ…こんなに痛めつける必要ってある?…パフェだってひっくり返っちゃったし…ああなんて可哀想な私…」
「ああ…あの…」
「ひっ…あっ…やめて!来ないで!」
「ああそんな…怖がらないで…」
必要以上に怖がってやれば、マーティンさんのスイッチが入る。先に情報さえ持っていればこんなにも動かしやすい男はいない。
「やめてやめて!手足折らないで!きゃー怖いー!」
「お、落ち着いてください!私も無理矢理やらされているんです!」
嘘やんお前。今までもこれからもノリノリで殺す顔しとるやん。
「へ?…無理矢理?そんな…あなたも?」
「なんて事だ…私たち、同じ境遇なのかも…」
私は自分の身の上を話してやった。目蒲さんに三ヶ月もの間監禁され暴力を受け、お屋形様に軟禁されてやったこともない事務で働く事を強いられ、遂に外に出る事が叶ったと思えばカラカルさんに四肢を折られそうになっている哀れなこの私の身の上を!
「ああ…なんて不憫な人なんだ!それでもこうやって強く生きてこられたんですね…!貴女は強い人だ!強くて美しい!」
「そんな…嬉しい!今までそんな優しい言葉を掛けてくれる人はいませんでした!敬語なんて使わないで!私もそうする!さあ、一緒にケーキを食べましょう!今日から私たちは友達よ!」
「ああそんな…いいのかい…?なら…なら応えよう!友達として!」
すんなり動き過ぎて高笑いしそうだが、もういいや。今度こそケーキonパフェを成功させるのだ。
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ぎゅいい、と銀色のセダンがSATの壁を越えて乱入してくる。「泉江外務卿」と配下の黒服が呼び掛けるのに対し「何もするな」と答える。
SATの壁のすぐ側で車は止まり、フロントガラスが少しだけ開いた。そこからにゅっと手が伸び、卵の殻を捨てた。警察の癖にマナーの悪いことだ。
その手が手招きするのに応え、嵐堂が歩み寄る。
「ほ…報告します。…も、「もうお終いか?」そ…そう言った後、お、男…男は、おど、お、踊りました…」
「分かった嵐堂。良くやったな…お前は正しい。お前の報告を聞く度に俺はいつも思う。間違っていない、お前は正しかったと…タワー制圧の任務はおまえにかかっている。そして…」
リアドアが開き、男が二人降りてくる。歳の頃は四十代と五十代。
「箕輪、お前にも」
「分かってますよ。全くもぉ…病み上がりなんですけどねェ」
「あっはっは。密葬課は大変だね。早く正式な課として認めてもらいなよー」
「親父さん、密葬課が表に出るなんてこの世の終わりだよォ?」
「でも、君たちちゃんといるのにねえ」
「そんな逝かれたこと言ってるから次長止まりなのよ、親父さんは」
「そうかもねえ。あっはっは。じゃあ真鍋君、送ってくれてありがとう!箕輪君は怪我のないようにね!そして嵐堂君…次の戦い、代わって?」
へらっと笑って宣う五十代に、密葬課がどよめく。
「いやいや親父さん!危ないって!」
慌てふためいて、緩いウェーブの男が車から飛び出てくる。男が笑顔のままその男の肩を叩く。
「大丈夫大丈夫!君達には遠く及ばないけど私も強いよ!」
「遠く及ばないから問題なんですよ!もう車内に戻ってください!」
「私密葬課じゃないから、あんまり車内にいるのもねえ」
「親父さんSATでもないでしょ!所属で言うならどこにも居場所ないから帰りなさい!」
「えー、じゃあ密葬課でいいや」
「なんで仕方がなく選んであげた感出すの?!もう、鷹さんも何とか言ってくれ!」
「Boy…分かるかい?娘を失う辛さ…これはね、親父さんの弔い合戦なのさ…行かせてやりな…」
「おっ!鷹さん話が分かるねえ。でも娘は消息不明なだけだからね?」
「大丈夫…大丈夫さ、親父さん….」
「もう嫌だ!」
嘆く真鍋と呼ばれた男の背を、四十代短髪がポンと叩いた。
「じゃ、俺は適宜葬りながら中の状況調べてくるよ。親父さん、無理しちゃ駄目よ?」
「ああ、ありがとう、箕輪君。娘がいたらよろしくね」
「流石にいないと思うけどねェ…」
男がぷらぷら歩いてこっちへ…もとい、帝国タワーへ近づいてくる。
「警察から一名、入場させてもらうよォ」
「ああ…通れ」
男を通し、一応晴乃に連絡を入れる。セダンの側ではまだオッサン達のコントが繰り広げられている。
「親父さん、俺達は親父さんに感謝しているんです…だからこんなところで死んでほしくない」
「まあまあ、そこまで思い詰めなくても。流石の賭郎も全国放送で警察殺さないよ。…ねえ嵐堂君、代わってくれるかな」
「お、おや、親父さんのためなら…」
「ありがとう嵐堂君!おーい美人さん!次は二名の入場を賭けて戦うよー!」
「あ、親父さん!走って行かないで下さい!誰かあの人止めてくれ!」
私はどうすればいいんだろうか?やる気満々の‘親父さん’を前に、私は眉間を指で押さえる。