からむ宿木
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「おや目蒲立会人、晴乃さんは?」
「あのヘタレは降りてこられませんでした」
「ぐはあ!帝国タワーは高すぎたか!」
切間立会人が豪快に、夜行立会人が唇の端で、それぞれ笑う。
「嘘喰い達は…」
「登っていきましたよ、貴方と逆の階段から」
「成る程。天晴な事です」
「嘘喰いが何階まで到達できるか見ものだなあ!目蒲立会人!」
「晴乃より頑張れる事を願うばかりですなあ」
軽口に軽口で返せば切間立会人は満足したようで、鼻唄を歌い出す。
「密葬課が乱入してくるとの事です」
「晴乃さんから連絡を受けましたよ。我々は暴力禁止フロアにおります故、そちらにお任せしても?」
「元よりそのつもりで降りて参りました」
「晴乃が来なかったのは正解だったな!ぐはあ!」
「本人は門倉立会人の敵討ちと怒り立っていましたがね。階段の途中まで」
「傑作だな!」
切間立会人の爆笑の陰で黒服達も笑っている。あれは本当に、締まらないというか何というか。彼女らしいんだが。
ーーーーーーーーーー
「目蒲さんおんぶ」
「手前で歩け。でなきゃ残ってろ」
「やだー!」
「そもそもお前が来て何になるんだよ…」
「隅で応援してます」
「残ってろ頼むから」
「でも、絶対来るのは箕輪さんだと思うんですよ。門倉さんの仇ですよ?」
「門っちの仇は取ってやる。残れ」
「嫌だい!」
「だい!じゃねえんだよ…良いじゃねえか、賭郎の人間が死のうが生きようがだろ?」
「人聞き悪いなあ。私皆さんのこと大好きですよ?」
「そこが分からん」
「賭郎無くなれとは思ってるけど、誰の事も死ねとは思ってません、って言ったらちょっと分かります?」
「微妙」
「じゃ、例えばですよ?私が賭郎をこう…跡形もなく潰すじゃないですか。そしたら目蒲さん何します?」
「突然何だよ…さあな…会社勤めでもするんじゃねえの?」
「でしょ?一個人ならそんなもんなんですよ。悪い事をする場所があるからいけないんです。そこから追い出せば大体の人はお日様の下に帰って行くんだから、躍起になって一個人を糾弾するのは違いますよね?」
「罪を憎んで人を憎まずの精神だな」
「そんなカッコいい話じゃないですよ」
「いや、そういう話だと思うぞ」
「そうかな…じゃあそれでいいです。おんぶ」
「だから残れって…つか、何で賭郎大嫌いなんだよ」
「賭郎っていうか、裏社会なるものが大嫌いです」
「そんなに嫌だったか?ここでの生活は?」
「へ?あー、別に、昔から思ってたことですよ?だから弥鱈君が知ってるんじゃないですか」
「じゃないですかって…あいつ知ってたのかよ」
「昔はもうちょっとだけオープンだったもので」
「高校だっけか?」
「そうそう」
「…なあ」
「…ねえ」
同時に声が出て、お互い顔を見合わせる。
「アイスクリーム」
「は?何それ」
「なんか、発言が重なっちゃった時に先に言うとアイスクリームを買ってもらえるって、ありませんでした?」
「知らね。帰りにな」
「わ、言ってみるもんですね。じゃあせめて発言権はお譲りしますよ」
「そりゃどーも。…なあ、何で正義に目覚めたんだ?」
「ああそれ…うーん…突然ですけど、目蒲さんは心を読めたら何します?」
「少なくとも、賭郎に喧嘩は売らない」
「…ま、そっか。じゃあ、心を読めない目蒲さんは、心を読みたい時どうします?」
「お前に聞く、だろうな」
「やだって言ったら?」
「交渉するか…脅すか。なあ、お前過去に何かあったのか?」
「‘私’には何もありませんでしたよ」
私にはない、他にはあった。同じ能力を持つ人間がいる?
「なあ、お前の親は…」
「親は…そうですね。でも秘密」
「は?」
「私の問題なので」
「聞きたい」
「あはは、ですよねえ。でも…巻き込むみたいで抵抗あるんですよねえ」
「俺はお前の役に立ちたいと、前に言った筈だが」
「…でも、役に立つって、賭郎に反抗するってことかもですよ?やめた方がいいですよ。私は佐田国さんじゃないし、貴方も昔と違う。役に立つ為に知るならやめときましょ」
だからおんぶ、と続けた馬鹿女の後頭部を引っ叩き、俺は「で、お前は何だったんだ?」と聞いた。
「へ?…あーそうだ、何で目蒲さんそんな平然としてるんですか?」
「お前が予想の範疇にいないのはいつものことだろ?」
「え、それだけ?」
「それだけだ」
「嘘つき」
厄介な能力だな、本当に。
「…お前に…大嫌いなものがあって安心した」
「えー、なんですかそれ?」
「スーパーヒーロー的な底の知れなさがあったからな」
「ありましたー?」
「泉江も同じ事を言うだろうよ。…裏切るのも逃げ出すのも結構だが、先に教えてくれ」
「他の人達に秘密にしてくれるなら」
「いいだろう。さあ、お前はここで留守番だ」
「えー、ヤです!」
「そろそろお前に合わせてチンタラ歩いたら間に合わん。メインデッキのカフェで遊んでろ」
「酷い。特盛パフェ作って遊んでやる」
「乗り気じゃねえか…」
「まだメインデッキかって思ったら辛くなった」
「そうかよ。まあ、しっかり隠れてろよ」
「あのヘタレは降りてこられませんでした」
「ぐはあ!帝国タワーは高すぎたか!」
切間立会人が豪快に、夜行立会人が唇の端で、それぞれ笑う。
「嘘喰い達は…」
「登っていきましたよ、貴方と逆の階段から」
「成る程。天晴な事です」
「嘘喰いが何階まで到達できるか見ものだなあ!目蒲立会人!」
「晴乃より頑張れる事を願うばかりですなあ」
軽口に軽口で返せば切間立会人は満足したようで、鼻唄を歌い出す。
「密葬課が乱入してくるとの事です」
「晴乃さんから連絡を受けましたよ。我々は暴力禁止フロアにおります故、そちらにお任せしても?」
「元よりそのつもりで降りて参りました」
「晴乃が来なかったのは正解だったな!ぐはあ!」
「本人は門倉立会人の敵討ちと怒り立っていましたがね。階段の途中まで」
「傑作だな!」
切間立会人の爆笑の陰で黒服達も笑っている。あれは本当に、締まらないというか何というか。彼女らしいんだが。
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「目蒲さんおんぶ」
「手前で歩け。でなきゃ残ってろ」
「やだー!」
「そもそもお前が来て何になるんだよ…」
「隅で応援してます」
「残ってろ頼むから」
「でも、絶対来るのは箕輪さんだと思うんですよ。門倉さんの仇ですよ?」
「門っちの仇は取ってやる。残れ」
「嫌だい!」
「だい!じゃねえんだよ…良いじゃねえか、賭郎の人間が死のうが生きようがだろ?」
「人聞き悪いなあ。私皆さんのこと大好きですよ?」
「そこが分からん」
「賭郎無くなれとは思ってるけど、誰の事も死ねとは思ってません、って言ったらちょっと分かります?」
「微妙」
「じゃ、例えばですよ?私が賭郎をこう…跡形もなく潰すじゃないですか。そしたら目蒲さん何します?」
「突然何だよ…さあな…会社勤めでもするんじゃねえの?」
「でしょ?一個人ならそんなもんなんですよ。悪い事をする場所があるからいけないんです。そこから追い出せば大体の人はお日様の下に帰って行くんだから、躍起になって一個人を糾弾するのは違いますよね?」
「罪を憎んで人を憎まずの精神だな」
「そんなカッコいい話じゃないですよ」
「いや、そういう話だと思うぞ」
「そうかな…じゃあそれでいいです。おんぶ」
「だから残れって…つか、何で賭郎大嫌いなんだよ」
「賭郎っていうか、裏社会なるものが大嫌いです」
「そんなに嫌だったか?ここでの生活は?」
「へ?あー、別に、昔から思ってたことですよ?だから弥鱈君が知ってるんじゃないですか」
「じゃないですかって…あいつ知ってたのかよ」
「昔はもうちょっとだけオープンだったもので」
「高校だっけか?」
「そうそう」
「…なあ」
「…ねえ」
同時に声が出て、お互い顔を見合わせる。
「アイスクリーム」
「は?何それ」
「なんか、発言が重なっちゃった時に先に言うとアイスクリームを買ってもらえるって、ありませんでした?」
「知らね。帰りにな」
「わ、言ってみるもんですね。じゃあせめて発言権はお譲りしますよ」
「そりゃどーも。…なあ、何で正義に目覚めたんだ?」
「ああそれ…うーん…突然ですけど、目蒲さんは心を読めたら何します?」
「少なくとも、賭郎に喧嘩は売らない」
「…ま、そっか。じゃあ、心を読めない目蒲さんは、心を読みたい時どうします?」
「お前に聞く、だろうな」
「やだって言ったら?」
「交渉するか…脅すか。なあ、お前過去に何かあったのか?」
「‘私’には何もありませんでしたよ」
私にはない、他にはあった。同じ能力を持つ人間がいる?
「なあ、お前の親は…」
「親は…そうですね。でも秘密」
「は?」
「私の問題なので」
「聞きたい」
「あはは、ですよねえ。でも…巻き込むみたいで抵抗あるんですよねえ」
「俺はお前の役に立ちたいと、前に言った筈だが」
「…でも、役に立つって、賭郎に反抗するってことかもですよ?やめた方がいいですよ。私は佐田国さんじゃないし、貴方も昔と違う。役に立つ為に知るならやめときましょ」
だからおんぶ、と続けた馬鹿女の後頭部を引っ叩き、俺は「で、お前は何だったんだ?」と聞いた。
「へ?…あーそうだ、何で目蒲さんそんな平然としてるんですか?」
「お前が予想の範疇にいないのはいつものことだろ?」
「え、それだけ?」
「それだけだ」
「嘘つき」
厄介な能力だな、本当に。
「…お前に…大嫌いなものがあって安心した」
「えー、なんですかそれ?」
「スーパーヒーロー的な底の知れなさがあったからな」
「ありましたー?」
「泉江も同じ事を言うだろうよ。…裏切るのも逃げ出すのも結構だが、先に教えてくれ」
「他の人達に秘密にしてくれるなら」
「いいだろう。さあ、お前はここで留守番だ」
「えー、ヤです!」
「そろそろお前に合わせてチンタラ歩いたら間に合わん。メインデッキのカフェで遊んでろ」
「酷い。特盛パフェ作って遊んでやる」
「乗り気じゃねえか…」
「まだメインデッキかって思ったら辛くなった」
「そうかよ。まあ、しっかり隠れてろよ」