からむ宿木
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「晴れてお役御免、かな」
窓から下を覗き込み、マルコ様達の戦いを見ながら彼女は言った。
「まだ序盤も序盤なんだが」
「ああ…そっちはちゃんとやりますよ。貴方との話です」
「俺?」
「そう目蒲さん。もう、私が側に居なくても大丈夫でしょ?」
「は?何お前、逃げんの?」
「それはまあ…迷ってます」
「やめろ!何でお前はそうなんだ…!お前が必要だって言えば満足なのか…?」
「それはグッと来るものがありますけど…それは置いといて、ホラ、昔言った、一緒に生きましょって話。あれ、終わりにしましょ」
もしや俺はフラれたのか?告白してもないのに?
「…あ!別に目蒲さんのこと嫌いで言ってるんじゃないですよ?!ただ…あの時のあれは‘一人で死ぬなよ’って意味でしたから…もう、そんな約束いらないかなって」
「ああ…そういうことかよ」
「目蒲さん、もう私に義理立てしようとしなくていいですから、好きに生きて下さいね。私もそうしますから」
「義理立てしてたか?」
「んー、例えば、伏龍会で謎の盛り上がりを見せているときに無理して合わせてたりとか」
「それは…そうか」
「でしょ?やりたくないことしなくていいですよって、それだけです!」
彼女が笑顔を作る。少しだけ、笑ってしまった。俺は自覚無しにこの女に大分気を遣っていたようだ。
この俺が。
愛してるというのはつまり、こういうことなんだろう。
「なあ?」
「はい?」
「やりたくないことはしなくていいっていうのはつまり、やりたいことはやっていいんだな?」
「へ?…ええ、そうですね?」
「そうかよ…」
身を翻し、晴乃を窓の手摺りと自分の間に追い詰める。一年ぶり二度目の壁ドンである。
「逃げると言ったな?どこからだ?いずれにせよ…逃がさん」
「えっあっ…あの、あのね、目蒲さん、ち、近い、かなって」
「今更何を仰いますかねえ…」
真っ赤になって恥じらう姿が愛おしくて、耳元に口を寄せる。吐息をくすぐったがって耳を背ける仕草がどうしようもなく嗜虐心を唆った。
「賭郎から逃げる気か?」
「あえっと…あの、忘れて、くれません?」
「無理な相談だな…口八丁で逃げれると思うなよ?」
壁についたのとは逆の手で、彼女の腰を撫でる。晴乃は俺の胸を両手で押して距離を取ろうとするが、出来る訳がない。暫くの後、彼女は断念して口を開いた。
「だって…人質のままでどうなるんですか」
「逃げたところで、状況は変わらん。俺たちが敵になるだけだ」
「目蒲さんだって」
「お前がいるなら俺はこのままでいい。なあ…逃げたいんだな?何故だ?会いたい奴でもいるのか?」
「いやあの…あのね…」
「なら会いに行きゃいいじゃねえか…お前もう外出可なんだろ?…つか、賭郎に正式に入ればいいじゃねえか。立会人クラスだろお前…誰も損しねえぞ」
「それだけは嫌で…うーん…」
「はぁ…何なんだよ…」
「あの…絶対殺さない?」
「……は?」
謎の確認に驚き、俺は晴乃の顔を覗き込んだ。気まずそうに目を逸らすその姿に、ヤバい予感をひしひしと感じる。
「私…賭郎大嫌いなんですよね…」
「は?……は??はああああ???」
「あああ言っちゃった…!目蒲さんが聞いてきたんですからね!」
「そんなライトな感じの告白じゃねえだろうがお前…!お前、どのツラ下げて今タワーの守護してんだよ怖ええな!」
「それはそれ!」
「通るかそんな理屈!このっ…馬鹿女!」
「酷い!」
ぎゃあぎゃあ煩え晴乃だったが、突然イヤホンを押さえて停止した。
「うん夕湖?どしたのそんな…え、へぇえ?!負けた?!なんっ…ええ?!雹吾さんが落ちてきた?そんなことある?…え?テレビで?何で?…カールさんが放送してる?!馬鹿なのあの人?…うん…うん…あ、お屋形様お疲れ様です…えー、はい、やっぱりですか?はい、はい。うええ了解。二戦目頑張って下さい…」
通話が終わったらしい晴乃が、涙目で俺を見る。
「負けたのか?」
「はい…」
「一人、投入されるんだな?」
「はい…来ます、密葬課…」
「はあ…とりあえず、さっきの話は後だ…下のジジイ共に連絡取れ」
「ジジイって…もう」
彼女は切間立会人に電話をして、状況を話す。そして、阿修羅のような顔で電話を切った。
「號奪戦するんですって!」
「だろうな」
「切間さんったら笑って言うなってんですよもう!あーもう…あーもう!みんな好き勝手!だから嫌!」
彼女は「下行きますよ!」と大股で歩いて行く。やる事はやるらしい。こいつはどういうつもりなんだ?
窓から下を覗き込み、マルコ様達の戦いを見ながら彼女は言った。
「まだ序盤も序盤なんだが」
「ああ…そっちはちゃんとやりますよ。貴方との話です」
「俺?」
「そう目蒲さん。もう、私が側に居なくても大丈夫でしょ?」
「は?何お前、逃げんの?」
「それはまあ…迷ってます」
「やめろ!何でお前はそうなんだ…!お前が必要だって言えば満足なのか…?」
「それはグッと来るものがありますけど…それは置いといて、ホラ、昔言った、一緒に生きましょって話。あれ、終わりにしましょ」
もしや俺はフラれたのか?告白してもないのに?
「…あ!別に目蒲さんのこと嫌いで言ってるんじゃないですよ?!ただ…あの時のあれは‘一人で死ぬなよ’って意味でしたから…もう、そんな約束いらないかなって」
「ああ…そういうことかよ」
「目蒲さん、もう私に義理立てしようとしなくていいですから、好きに生きて下さいね。私もそうしますから」
「義理立てしてたか?」
「んー、例えば、伏龍会で謎の盛り上がりを見せているときに無理して合わせてたりとか」
「それは…そうか」
「でしょ?やりたくないことしなくていいですよって、それだけです!」
彼女が笑顔を作る。少しだけ、笑ってしまった。俺は自覚無しにこの女に大分気を遣っていたようだ。
この俺が。
愛してるというのはつまり、こういうことなんだろう。
「なあ?」
「はい?」
「やりたくないことはしなくていいっていうのはつまり、やりたいことはやっていいんだな?」
「へ?…ええ、そうですね?」
「そうかよ…」
身を翻し、晴乃を窓の手摺りと自分の間に追い詰める。一年ぶり二度目の壁ドンである。
「逃げると言ったな?どこからだ?いずれにせよ…逃がさん」
「えっあっ…あの、あのね、目蒲さん、ち、近い、かなって」
「今更何を仰いますかねえ…」
真っ赤になって恥じらう姿が愛おしくて、耳元に口を寄せる。吐息をくすぐったがって耳を背ける仕草がどうしようもなく嗜虐心を唆った。
「賭郎から逃げる気か?」
「あえっと…あの、忘れて、くれません?」
「無理な相談だな…口八丁で逃げれると思うなよ?」
壁についたのとは逆の手で、彼女の腰を撫でる。晴乃は俺の胸を両手で押して距離を取ろうとするが、出来る訳がない。暫くの後、彼女は断念して口を開いた。
「だって…人質のままでどうなるんですか」
「逃げたところで、状況は変わらん。俺たちが敵になるだけだ」
「目蒲さんだって」
「お前がいるなら俺はこのままでいい。なあ…逃げたいんだな?何故だ?会いたい奴でもいるのか?」
「いやあの…あのね…」
「なら会いに行きゃいいじゃねえか…お前もう外出可なんだろ?…つか、賭郎に正式に入ればいいじゃねえか。立会人クラスだろお前…誰も損しねえぞ」
「それだけは嫌で…うーん…」
「はぁ…何なんだよ…」
「あの…絶対殺さない?」
「……は?」
謎の確認に驚き、俺は晴乃の顔を覗き込んだ。気まずそうに目を逸らすその姿に、ヤバい予感をひしひしと感じる。
「私…賭郎大嫌いなんですよね…」
「は?……は??はああああ???」
「あああ言っちゃった…!目蒲さんが聞いてきたんですからね!」
「そんなライトな感じの告白じゃねえだろうがお前…!お前、どのツラ下げて今タワーの守護してんだよ怖ええな!」
「それはそれ!」
「通るかそんな理屈!このっ…馬鹿女!」
「酷い!」
ぎゃあぎゃあ煩え晴乃だったが、突然イヤホンを押さえて停止した。
「うん夕湖?どしたのそんな…え、へぇえ?!負けた?!なんっ…ええ?!雹吾さんが落ちてきた?そんなことある?…え?テレビで?何で?…カールさんが放送してる?!馬鹿なのあの人?…うん…うん…あ、お屋形様お疲れ様です…えー、はい、やっぱりですか?はい、はい。うええ了解。二戦目頑張って下さい…」
通話が終わったらしい晴乃が、涙目で俺を見る。
「負けたのか?」
「はい…」
「一人、投入されるんだな?」
「はい…来ます、密葬課…」
「はあ…とりあえず、さっきの話は後だ…下のジジイ共に連絡取れ」
「ジジイって…もう」
彼女は切間立会人に電話をして、状況を話す。そして、阿修羅のような顔で電話を切った。
「號奪戦するんですって!」
「だろうな」
「切間さんったら笑って言うなってんですよもう!あーもう…あーもう!みんな好き勝手!だから嫌!」
彼女は「下行きますよ!」と大股で歩いて行く。やる事はやるらしい。こいつはどういうつもりなんだ?