アイリス・アポロは野に咲いて
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「ねえねえ岡村ぁ。この中で一番野心家なのって誰?」
ドアの前で仁王立ちしていた伏龍さんは、駆けてきた八號の黒服の一人ーー確か、本当に岡村だったと思う。あの黒服ーーに馴れ馴れしく声を掛ける。対する岡村(仮)は「え、はい、いやぁ…」とあからさまに狼狽し、チラと横の男を見た。その様子を見た彼女は一歩前に出て、「じゃ、佐藤さん。何で御宅の立会人が貴方にマスターを止めさせようとしたか知ってる?」と次はその男をターゲットに代えて問い掛けた。
「目的達成のためにはここを潰す必要が…」
「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」
大声。身体を竦ませる黒服達をニヤリと笑うと、伏龍さんは佐藤と呼ばれた男を見つめ、続ける。
「正解は…壱號の黒服を立会人にするため~!」
態とらしく両手を広げ、彼女は歌うように言い放った。
「可哀想に、花形はここじゃないですよ?弥鱈立会人を倒して箔をつけることができる、あっちが花形。だってそうでしょ?ここで弥鱈隊の黒服とやり合って勝ったとして、推薦状に何を書くんです?可哀想に。同じ野心家の能輪立会人に惹かれた?それが間違い。彼も野心家だから、貴方達より自分を選ぶ。そういう人よ。ま、でも貴方達にとっての幸いは、相手が弥鱈立会人だったってこと。あんな、壱號の黒服なんかに負けるわけがないものね」
さあ、どうします?彼女は笑顔で問いかけた。
ーーーーーーーーーー
俺の蹴り一つで倒れるのだから、コイツらもまだまだ立会人には届かないということ。相変わらず能輪のジジイの審美眼は当てにならない。
「さあ…あなたの番ですよ。さぞかしお強いんでしょうね」
「ほう。もう分かったのか。マスターは地下二階だな。弥鱈の兵とはやり合うな…今私が向かう…は?!」
余裕ぶって俺に背中を向けて電話をしていた能輪だが、相手の黒服に何事か言われ、バッと振り返り、俺を見た。
あーなんか、分かったぞ。
「ええ~、来てますよ。伏龍」
「なんっ…はああ?!」
「貴方には残念な話ですが~…全て対策済みです。獏様がLファイルを使ってくることは予測済みですので~」
「だ…だが、だからって何であいつが来る?!」
「アイツが物見遊山で来たと思うなら、大きな間違いですよ~。アイツも賭郎の化け物ですよ。お屋形様とさえ渡り合える」
忘年会を思い出したのだろう。能輪は顔をしかめた。その隙を捉え、距離を詰める。さあ開戦だ。マスターはアイツが守る。俺は安心してコイツで遊ぼうじゃないか。
見せてくれよ、崩れ落ち歪み這い蹲る、その顔を。
ーーーーーーーーーー
口八丁。この人は立会人とは違うけど、立会人と同じ化け物だ。何と言うか、口先の化け物。だってそうだろう。ほら、見てみなよ目の前を。
「俺は行く…!」
「いや待て、命令違反は粛清だ!」
「でもこのままじゃ壱號隊の奴らに!」
見事な仲間割れ。この状況を作り出した女性はいつもの麗らかささえ湛えながらそれを見守っている。
私はその横顔に、何と声をかけたらいい?
凄いですね?
賞賛して何になる。
なんて事を?
否定して何になる。
言葉が浮かんでは否定されていく中、彼女は遂にゆっくりと私を見つめ、見透かした。
何を言っても無駄じゃないか。上辺だけ取り繕ったって、この恐怖は隠せやしないのだから。
「そんな、取って食ったりなんてしませんよう」
彼女はそう言って笑った。どこまでバレていたのかは分からない。
ドアの前で仁王立ちしていた伏龍さんは、駆けてきた八號の黒服の一人ーー確か、本当に岡村だったと思う。あの黒服ーーに馴れ馴れしく声を掛ける。対する岡村(仮)は「え、はい、いやぁ…」とあからさまに狼狽し、チラと横の男を見た。その様子を見た彼女は一歩前に出て、「じゃ、佐藤さん。何で御宅の立会人が貴方にマスターを止めさせようとしたか知ってる?」と次はその男をターゲットに代えて問い掛けた。
「目的達成のためにはここを潰す必要が…」
「ぼーっと生きてんじゃねーよ!」
大声。身体を竦ませる黒服達をニヤリと笑うと、伏龍さんは佐藤と呼ばれた男を見つめ、続ける。
「正解は…壱號の黒服を立会人にするため~!」
態とらしく両手を広げ、彼女は歌うように言い放った。
「可哀想に、花形はここじゃないですよ?弥鱈立会人を倒して箔をつけることができる、あっちが花形。だってそうでしょ?ここで弥鱈隊の黒服とやり合って勝ったとして、推薦状に何を書くんです?可哀想に。同じ野心家の能輪立会人に惹かれた?それが間違い。彼も野心家だから、貴方達より自分を選ぶ。そういう人よ。ま、でも貴方達にとっての幸いは、相手が弥鱈立会人だったってこと。あんな、壱號の黒服なんかに負けるわけがないものね」
さあ、どうします?彼女は笑顔で問いかけた。
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俺の蹴り一つで倒れるのだから、コイツらもまだまだ立会人には届かないということ。相変わらず能輪のジジイの審美眼は当てにならない。
「さあ…あなたの番ですよ。さぞかしお強いんでしょうね」
「ほう。もう分かったのか。マスターは地下二階だな。弥鱈の兵とはやり合うな…今私が向かう…は?!」
余裕ぶって俺に背中を向けて電話をしていた能輪だが、相手の黒服に何事か言われ、バッと振り返り、俺を見た。
あーなんか、分かったぞ。
「ええ~、来てますよ。伏龍」
「なんっ…はああ?!」
「貴方には残念な話ですが~…全て対策済みです。獏様がLファイルを使ってくることは予測済みですので~」
「だ…だが、だからって何であいつが来る?!」
「アイツが物見遊山で来たと思うなら、大きな間違いですよ~。アイツも賭郎の化け物ですよ。お屋形様とさえ渡り合える」
忘年会を思い出したのだろう。能輪は顔をしかめた。その隙を捉え、距離を詰める。さあ開戦だ。マスターはアイツが守る。俺は安心してコイツで遊ぼうじゃないか。
見せてくれよ、崩れ落ち歪み這い蹲る、その顔を。
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口八丁。この人は立会人とは違うけど、立会人と同じ化け物だ。何と言うか、口先の化け物。だってそうだろう。ほら、見てみなよ目の前を。
「俺は行く…!」
「いや待て、命令違反は粛清だ!」
「でもこのままじゃ壱號隊の奴らに!」
見事な仲間割れ。この状況を作り出した女性はいつもの麗らかささえ湛えながらそれを見守っている。
私はその横顔に、何と声をかけたらいい?
凄いですね?
賞賛して何になる。
なんて事を?
否定して何になる。
言葉が浮かんでは否定されていく中、彼女は遂にゆっくりと私を見つめ、見透かした。
何を言っても無駄じゃないか。上辺だけ取り繕ったって、この恐怖は隠せやしないのだから。
「そんな、取って食ったりなんてしませんよう」
彼女はそう言って笑った。どこまでバレていたのかは分からない。