アイリス・アポロは野に咲いて
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「よし、まず一個」
鴉山さんのサインが入った書類を鞄に戻しながら、私は呟いた。さて、この後どうしようか。ぼんやりと考えていたところ、黒服さんが「お疲れ様です」と誰かに声をかけたのに気づく。
顔を上げれば、ゆるいウェーブのかかった白髪と、丸みを帯びたサングラスと、肩にかけたシャツ。なんとか失脚させてやろうと躍起になっていた相手が目の前にいた。
「こんにちは、晴乃チャン」
「…獏様」
胡散臭え。目の当たりにした印象は、立会人さんを通して接して感じていた通り。しかも、計算高い。服装が相手に与える印象を熟知している。こいつは厄介だぞ。
「何か?」
「んーん?何しに来たのかなー?ってね」
「はあ…」
あなたに興味がない、会話する気はない。そんなオーラを全身から発して応えるが、獏様にはどこ吹く風。
「Lファイルには気付いたんだ?」
「ええ、まあ」
「流石だねー。残念だよ。慌てふためく立会人が見れるかと思ったのに」
「そうですか」
「そうなの」
でも、あんたが守ってるんだね。彼は肩を竦めた。
「うん、あんたには策を弄する意味はあんまなさそーだ。単刀直入に聞くよ。あんた、何しに来た?」
「何を…私は、鴉山様にコレを書いていただきに来ただけですよ」
「あー、そうじゃなくて、もっと根本の話。ずっと考えていたんだよね、あの日の意味をさ」
あの日。彼のその言葉をきっかけに、私の頭は仄暗い炭鉱跡へとワープする。あの日の意味、か。奇遇だ。私もあの日の意味をずっと考えていた。
「あんたが何故あの場所にいたか」
あなたがなぜあの場所にいたか。
「何を求めていたのか」
何を求めていたのか。
「何を成し遂げたいのか」
何を成し遂げたいのか。
ああ、奇遇じゃないか。全く同じことを考えていたなんて。
「もしあんたの望みが俺の予想通りなら、あんたは俺の、不倶戴天の敵だ」
ついつい口元が緩む。
「ありがとうございます」
「ん?」
「今の言葉でパズルのピースが全部ハマりました。そうですね。私達、不倶戴天の敵みたいです」
賭郎は渡さない。す、と息を吸って、私は宣言する。獏様はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。
鴉山さんのサインが入った書類を鞄に戻しながら、私は呟いた。さて、この後どうしようか。ぼんやりと考えていたところ、黒服さんが「お疲れ様です」と誰かに声をかけたのに気づく。
顔を上げれば、ゆるいウェーブのかかった白髪と、丸みを帯びたサングラスと、肩にかけたシャツ。なんとか失脚させてやろうと躍起になっていた相手が目の前にいた。
「こんにちは、晴乃チャン」
「…獏様」
胡散臭え。目の当たりにした印象は、立会人さんを通して接して感じていた通り。しかも、計算高い。服装が相手に与える印象を熟知している。こいつは厄介だぞ。
「何か?」
「んーん?何しに来たのかなー?ってね」
「はあ…」
あなたに興味がない、会話する気はない。そんなオーラを全身から発して応えるが、獏様にはどこ吹く風。
「Lファイルには気付いたんだ?」
「ええ、まあ」
「流石だねー。残念だよ。慌てふためく立会人が見れるかと思ったのに」
「そうですか」
「そうなの」
でも、あんたが守ってるんだね。彼は肩を竦めた。
「うん、あんたには策を弄する意味はあんまなさそーだ。単刀直入に聞くよ。あんた、何しに来た?」
「何を…私は、鴉山様にコレを書いていただきに来ただけですよ」
「あー、そうじゃなくて、もっと根本の話。ずっと考えていたんだよね、あの日の意味をさ」
あの日。彼のその言葉をきっかけに、私の頭は仄暗い炭鉱跡へとワープする。あの日の意味、か。奇遇だ。私もあの日の意味をずっと考えていた。
「あんたが何故あの場所にいたか」
あなたがなぜあの場所にいたか。
「何を求めていたのか」
何を求めていたのか。
「何を成し遂げたいのか」
何を成し遂げたいのか。
ああ、奇遇じゃないか。全く同じことを考えていたなんて。
「もしあんたの望みが俺の予想通りなら、あんたは俺の、不倶戴天の敵だ」
ついつい口元が緩む。
「ありがとうございます」
「ん?」
「今の言葉でパズルのピースが全部ハマりました。そうですね。私達、不倶戴天の敵みたいです」
賭郎は渡さない。す、と息を吸って、私は宣言する。獏様はにやりと人の悪い笑みを浮かべた。