アイリス・アポロは野に咲いて
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「ふざけんな、だって」
「…伏龍が、ですか?」
「他に誰がいるの」
電話を切ったお屋形様はこちらを見ると、肩を竦めてそう言った。その言葉と裏腹、彼は柔らかく微笑む。
「判事、彼女は凄いね」
鼻歌でも歌い出しそうな笑顔のお屋形様に、「左様ですか」とお声を掛ける。彼は楽しそうに「分からない、って顔だね」と笑った。肩をすくめる。
「無鉄砲だと思います」
「そうだね。私達にはできない」
お屋形様はキューを持つとそれをお眺めになる。そして、「愛を感じるよ」と呟きながら、つつ、と左手をその上部へと這わせた。
「何にもわかってないのにね、あの子。それでも私達に危機が迫っていると感じるから、必死になってくれる」
「だからこそ、意地悪したくなるんだよね」と微笑みながら、お屋形様はブリッジをおつくりになり、狙いを定める。カン、と軽い音と共に弾け飛んだ玉は、当然のようにポケットへと吸い込まれていった。
ーーーーーーーーーー
「お屋形様、私弥鱈立会人の立会いについていきます!」
「ああ、そうなの。何で?」
それはほんの10分前の出来事。人質であるにもかかわらず、入室するなり外出を宣言した彼女を、お屋形様は当然のように受け入れた。
目を丸くする私を差し置き、二人は話し始める。
「獏様が、雪井出様の取り立てたアリバイを使って搦手の候補を脅す気なんだそうで」
「あらー、Lファイル?」
「そうですそうです!何か大変らしいです!」
「'何か'、'らしい'って君ね。仮にも賭郎の一員がそんな言葉使わないでよね」
「私賭郎じゃないですもーん!」
「九割九分九厘賭郎だよ」
「いやいやご冗談を」
「うーん、まあ、君がそう思うならそうなんじゃない?」
「含みがあるなあ、その言い方」
「まあ、あるよね。で、君は何しに行くの?」
「獏様は多分、K Y宣言にアリバイ取り立てを使った方を呼んで、そのアリバイを盾に搦手を受け入れさせるつもりです。だから私、出演者の方々に自白を迫るつもりなんです。暴かれたら賭郎のアリバイ取り立ても一緒にバレるけど、自白するなら誰が何を取り立てたとか、関係なくなるでしょ?」
「ふうん」
お屋形様はキューをバトンのように振り回しながら暫し考える。「ビリヤードの棒で踊らないでください」と伏龍が突っ込み、お屋形様が「晴乃君には出来なさそうだね」と憎まれ口を返す。
「君にしては、中々なんじゃない?」
「どうもです」
「でも、自白じゃ駄目だ。暴露される前にできる保証がない」
「ありゃ。どうしたらいいでしょう?」
「番組が始まる前にアリバイ取り立てに関する権利を放棄させなよ。書類なら判事が作ってくれる。君はサインを貰ってこればいい」
「トカゲの尻尾切り?」
「それは組織内の人間を切る時の言葉でしょ?顧客の顧客を切るだけだよ。で、どうするの?やるの?」
「やりますよう」
「それでこそ私のワイルドカード」
お屋形様はこつ、とキューを床に突き立てられ、私に流し目を送った。それはつまり、作れということ。お安い御用。私は伏龍に後で部屋に来るように告げ、一礼し、己の立会人執務室へと歩き出す。
「…伏龍が、ですか?」
「他に誰がいるの」
電話を切ったお屋形様はこちらを見ると、肩を竦めてそう言った。その言葉と裏腹、彼は柔らかく微笑む。
「判事、彼女は凄いね」
鼻歌でも歌い出しそうな笑顔のお屋形様に、「左様ですか」とお声を掛ける。彼は楽しそうに「分からない、って顔だね」と笑った。肩をすくめる。
「無鉄砲だと思います」
「そうだね。私達にはできない」
お屋形様はキューを持つとそれをお眺めになる。そして、「愛を感じるよ」と呟きながら、つつ、と左手をその上部へと這わせた。
「何にもわかってないのにね、あの子。それでも私達に危機が迫っていると感じるから、必死になってくれる」
「だからこそ、意地悪したくなるんだよね」と微笑みながら、お屋形様はブリッジをおつくりになり、狙いを定める。カン、と軽い音と共に弾け飛んだ玉は、当然のようにポケットへと吸い込まれていった。
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「お屋形様、私弥鱈立会人の立会いについていきます!」
「ああ、そうなの。何で?」
それはほんの10分前の出来事。人質であるにもかかわらず、入室するなり外出を宣言した彼女を、お屋形様は当然のように受け入れた。
目を丸くする私を差し置き、二人は話し始める。
「獏様が、雪井出様の取り立てたアリバイを使って搦手の候補を脅す気なんだそうで」
「あらー、Lファイル?」
「そうですそうです!何か大変らしいです!」
「'何か'、'らしい'って君ね。仮にも賭郎の一員がそんな言葉使わないでよね」
「私賭郎じゃないですもーん!」
「九割九分九厘賭郎だよ」
「いやいやご冗談を」
「うーん、まあ、君がそう思うならそうなんじゃない?」
「含みがあるなあ、その言い方」
「まあ、あるよね。で、君は何しに行くの?」
「獏様は多分、K Y宣言にアリバイ取り立てを使った方を呼んで、そのアリバイを盾に搦手を受け入れさせるつもりです。だから私、出演者の方々に自白を迫るつもりなんです。暴かれたら賭郎のアリバイ取り立ても一緒にバレるけど、自白するなら誰が何を取り立てたとか、関係なくなるでしょ?」
「ふうん」
お屋形様はキューをバトンのように振り回しながら暫し考える。「ビリヤードの棒で踊らないでください」と伏龍が突っ込み、お屋形様が「晴乃君には出来なさそうだね」と憎まれ口を返す。
「君にしては、中々なんじゃない?」
「どうもです」
「でも、自白じゃ駄目だ。暴露される前にできる保証がない」
「ありゃ。どうしたらいいでしょう?」
「番組が始まる前にアリバイ取り立てに関する権利を放棄させなよ。書類なら判事が作ってくれる。君はサインを貰ってこればいい」
「トカゲの尻尾切り?」
「それは組織内の人間を切る時の言葉でしょ?顧客の顧客を切るだけだよ。で、どうするの?やるの?」
「やりますよう」
「それでこそ私のワイルドカード」
お屋形様はこつ、とキューを床に突き立てられ、私に流し目を送った。それはつまり、作れということ。お安い御用。私は伏龍に後で部屋に来るように告げ、一礼し、己の立会人執務室へと歩き出す。