二輪草の選択
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「なら、私も何となく思うことを言ってみようかね」
私。何気なく変えた一人称は、彼が仕事モードになった証。
「女史は秘密を抱えている」
「なんのことやら」
「大きい奴を、いくつか」
「南方さん、あのね」
私は作業をする二人の背中を見つめつつ、話を続ける。
「私、嘘はつかない主義なんです」
「なら、正直に吐けばいいじゃないの」
「そう、それ。正直でもないから問題ですね」
私は努めて笑顔を作って、彼に向ける。視界の端では二人が私達の会話に耳をそばだてている。早めに終わらせなければ。
「女史は誰かを守ろうとしているね?」
「否定はしません」
「フフ…女史らしくて好きだよ。でも、純粋な目的は違う…女史は守った先に何かを求めている…」
「ほう?」
凄いじゃないか。弥鱈君しか気付かなかったことを。私は敬意を表して、続きを促す。
「名誉?」
「んふ、残念」
「復讐?」
「やだ、誰にですか」
ちょっとした落胆を込めて、ため息をついた。なんだ、ここまでか。でも、本当によくもまあ、ここまで見抜いてくれたものだ。流石警察。私はその洞察力へのご褒美のつもりで、「平和ですよ。私達のね」と答えた。彼は分かってか分からずか、「何よ、それ」と笑った。
「ついでにもう一つ答えてはくれないかね?」
「ほう?何でしょう?」
「さっき、どうやって俺に勝ったのよ?」
思わず吹き出した。全くもう、知りたがりめ。少しテンションが上がっていた私は、求められるまま話してやる。
「大切なのは、肝心要のところから目を逸らさせるってことです。今回の場合は手が退いたら負けってこと」
「俺、ちゃんと意識してたと思うのよ」
「いーえ、あなたが意識したのは、Lファイルを守るってことですよ。そこには微妙に差があるんです。だから私は獏様を止めるにはLファイルが必要で、私はそれが欲しくてたまらないって強調したんです。そうしたら、最後、気迫に押されたあなたは何をした?」
「…手を退いたね」
「うんにゃ、惜しい。あなたはポケットを抑えようとしたんですよ。Lファイルを大事にしまっている、そのポケットをね」
謎は解けました?と笑うと、彼は肩を竦めた。
「女史はとんでもないね」
「どうもです」
ーーーーーーーーーー
守った、その先。私は伏龍晴乃という人物の本来の姿に思いを馳せる。恐らく隣の目蒲も同じなのだろう。目線は落とされ、完全にパソコンの画面から離れている。
晴乃は確かに、誰かを守る時、誰かに優しくする時に理由を必要としない。最初はそういう奴だと思っていたが、手当たり次第に守っている訳でもない。スーパーヒーローではないのだ。なら、何故。彼女を軟禁した目蒲と、彼女の教え子の命を奪おうとした佐田国の間には、どんな差があったというのか。生憎、私は晴乃ではないからそんな事は分からない。
だが。
私は今一度パソコンの画面を見つめる。
私は、彼女に救われた。それは覆りようもない事実なのだ。助けられる側と助けられない側にどんな差があったのかは分からない。無鉄砲に走り続ける彼女の向かう先に何があるのかも知らない。だが、その側に居たいと思う。それが、友達だと思うから。
お前の望みは叶えてやる。私達にはその力がある。
私。何気なく変えた一人称は、彼が仕事モードになった証。
「女史は秘密を抱えている」
「なんのことやら」
「大きい奴を、いくつか」
「南方さん、あのね」
私は作業をする二人の背中を見つめつつ、話を続ける。
「私、嘘はつかない主義なんです」
「なら、正直に吐けばいいじゃないの」
「そう、それ。正直でもないから問題ですね」
私は努めて笑顔を作って、彼に向ける。視界の端では二人が私達の会話に耳をそばだてている。早めに終わらせなければ。
「女史は誰かを守ろうとしているね?」
「否定はしません」
「フフ…女史らしくて好きだよ。でも、純粋な目的は違う…女史は守った先に何かを求めている…」
「ほう?」
凄いじゃないか。弥鱈君しか気付かなかったことを。私は敬意を表して、続きを促す。
「名誉?」
「んふ、残念」
「復讐?」
「やだ、誰にですか」
ちょっとした落胆を込めて、ため息をついた。なんだ、ここまでか。でも、本当によくもまあ、ここまで見抜いてくれたものだ。流石警察。私はその洞察力へのご褒美のつもりで、「平和ですよ。私達のね」と答えた。彼は分かってか分からずか、「何よ、それ」と笑った。
「ついでにもう一つ答えてはくれないかね?」
「ほう?何でしょう?」
「さっき、どうやって俺に勝ったのよ?」
思わず吹き出した。全くもう、知りたがりめ。少しテンションが上がっていた私は、求められるまま話してやる。
「大切なのは、肝心要のところから目を逸らさせるってことです。今回の場合は手が退いたら負けってこと」
「俺、ちゃんと意識してたと思うのよ」
「いーえ、あなたが意識したのは、Lファイルを守るってことですよ。そこには微妙に差があるんです。だから私は獏様を止めるにはLファイルが必要で、私はそれが欲しくてたまらないって強調したんです。そうしたら、最後、気迫に押されたあなたは何をした?」
「…手を退いたね」
「うんにゃ、惜しい。あなたはポケットを抑えようとしたんですよ。Lファイルを大事にしまっている、そのポケットをね」
謎は解けました?と笑うと、彼は肩を竦めた。
「女史はとんでもないね」
「どうもです」
ーーーーーーーーーー
守った、その先。私は伏龍晴乃という人物の本来の姿に思いを馳せる。恐らく隣の目蒲も同じなのだろう。目線は落とされ、完全にパソコンの画面から離れている。
晴乃は確かに、誰かを守る時、誰かに優しくする時に理由を必要としない。最初はそういう奴だと思っていたが、手当たり次第に守っている訳でもない。スーパーヒーローではないのだ。なら、何故。彼女を軟禁した目蒲と、彼女の教え子の命を奪おうとした佐田国の間には、どんな差があったというのか。生憎、私は晴乃ではないからそんな事は分からない。
だが。
私は今一度パソコンの画面を見つめる。
私は、彼女に救われた。それは覆りようもない事実なのだ。助けられる側と助けられない側にどんな差があったのかは分からない。無鉄砲に走り続ける彼女の向かう先に何があるのかも知らない。だが、その側に居たいと思う。それが、友達だと思うから。
お前の望みは叶えてやる。私達にはその力がある。