二輪草の選択
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「さて」と息をつき、俺はさっきまで晴乃が座っていた椅子に腰掛ける。必然的にまだ呆然としている南方立会人が隣になるが、特に興味もないので放置することにした。
ハブにUSBを挿し、ファイルを開く。出てきた顔触れの豪華さと量に感心する。流石、親子二代でアリバイを奪い続けただけの事はある。これは長丁場になりそうだ。
「目蒲立会人」
不意に南方立会人が口を開いた。俺はデータを年代順に並べ、依頼者が既に亡くなっているもの、搦手に足るポジションから追いやられているものを消去しつつ、「何か」と返す。
「女史は何がしたいのでしょうか?」
「存じ上げませんなあ」
「そんな事はないでしょう。こうして手伝っているんです」
「だからといって全てを知っている訳ではありませんのでねえ」
疑いの眼差しを向ける南方立会人を無視しつつ、俺は作業を続ける。
「それでいいのですか?」
「何故」
問い返せば彼は「貴方程の方が」と付け加える。思わずそれを鼻で笑う。
「俺程の」
「ええ…有能な立会人だと聞いております」
「おや、あれとの関係をご存知ないので?」
泳ぐ目に、彼が事情を知っていることを確信した俺は、返答を待たず「俺の命はあれのものです」と続ける。
「あれが必要と思うなら必要で、あれが邪魔だと思うなら邪魔なのですよ」
「心酔しているんですねえ、目蒲立会人」
俺はなんとなくそれに返事ができず、無言で流すことに決める。ふと昔「チビ助だけがお前を優しくしてくれる」と言われたことを思い出した。同時にその時「絶対手放すな」と言われたことも。今まさに、俺は彼女に執着しているのかもしれない。マウスを握る右手の甲を見れば、柔らかな彼女の手の感触が思い出される。今当然の様に彼女に優しくすることは、彼女の役に立とうとすることは、俺の執着の現れ。彼女が必要とするものになりたがっているのだ、俺は、きっと。
「さて」
ぼんやりとした思考を追い出す為、敢えて声に出す。
「蔵野健一。コイツだ」
「蔵野健一?」
「オシケンですよ、毒舌タレントの」
「ああ、オシケン。しかし、何故また」
「嘘喰いが立会いを依頼してきた日時がコイツの新番組のスタートと重なります」
「…テレビ、見るんですね」
「ええ、晴乃の部屋で」
「あっ…はい」
何か言いたげな南方立会人の視線をまたもや見なかったことにして、俺は内線を掛ける。
ここからはバトンタッチだ。一枚噛ませてやらないと煩い女がいる。
ハブにUSBを挿し、ファイルを開く。出てきた顔触れの豪華さと量に感心する。流石、親子二代でアリバイを奪い続けただけの事はある。これは長丁場になりそうだ。
「目蒲立会人」
不意に南方立会人が口を開いた。俺はデータを年代順に並べ、依頼者が既に亡くなっているもの、搦手に足るポジションから追いやられているものを消去しつつ、「何か」と返す。
「女史は何がしたいのでしょうか?」
「存じ上げませんなあ」
「そんな事はないでしょう。こうして手伝っているんです」
「だからといって全てを知っている訳ではありませんのでねえ」
疑いの眼差しを向ける南方立会人を無視しつつ、俺は作業を続ける。
「それでいいのですか?」
「何故」
問い返せば彼は「貴方程の方が」と付け加える。思わずそれを鼻で笑う。
「俺程の」
「ええ…有能な立会人だと聞いております」
「おや、あれとの関係をご存知ないので?」
泳ぐ目に、彼が事情を知っていることを確信した俺は、返答を待たず「俺の命はあれのものです」と続ける。
「あれが必要と思うなら必要で、あれが邪魔だと思うなら邪魔なのですよ」
「心酔しているんですねえ、目蒲立会人」
俺はなんとなくそれに返事ができず、無言で流すことに決める。ふと昔「チビ助だけがお前を優しくしてくれる」と言われたことを思い出した。同時にその時「絶対手放すな」と言われたことも。今まさに、俺は彼女に執着しているのかもしれない。マウスを握る右手の甲を見れば、柔らかな彼女の手の感触が思い出される。今当然の様に彼女に優しくすることは、彼女の役に立とうとすることは、俺の執着の現れ。彼女が必要とするものになりたがっているのだ、俺は、きっと。
「さて」
ぼんやりとした思考を追い出す為、敢えて声に出す。
「蔵野健一。コイツだ」
「蔵野健一?」
「オシケンですよ、毒舌タレントの」
「ああ、オシケン。しかし、何故また」
「嘘喰いが立会いを依頼してきた日時がコイツの新番組のスタートと重なります」
「…テレビ、見るんですね」
「ええ、晴乃の部屋で」
「あっ…はい」
何か言いたげな南方立会人の視線をまたもや見なかったことにして、俺は内線を掛ける。
ここからはバトンタッチだ。一枚噛ませてやらないと煩い女がいる。