「マジでくたばれやあの変眉ジジイ！」と思わず叫べば、晴乃が大慌てで口を押さえようと飛びかかってくる。その額を掴み、遠ざけつつまた叫ぶ。

「テメエ事の重大さが全く分かってねーだろまとわりつくんじゃねえ！」
「ひ、ひどい！酷いや目蒲さんなんでそんな乱暴な言葉を！」
「何でかわかんねーなら尚更まとわりつくんじゃねえ邪魔だ！」
「あんまりだ！」

いつもまとわりついてんのは目蒲なのにな。と滝さんがボソッと呟く。ここにも何も事態が分かっていない奴がいやがったか。睨もうとして、晴乃に「滝さんに何のつもりですか！」と叱られる。だが、それで堪忍袋の尾が切れた。

「うるせえ馬鹿女！いいかテメエ、この有給一つで昨日の努力がぜんっぶパァになってんだぞ！」
「へ？！なんで？」
「なんでってなあ…あーもういい。泉江外務卿呼べ。お前がいてもなんともならん」
「酷い！」
「いいから呼べ！」

「覚えてろってんです！」と間抜けな捨て台詞を吐き、彼女は内線を取り上げた。ぶうぶう文句を言いつつも泉江外務卿に繋ぐと、「なんかー、夜行さんが有給取ったら目蒲さんが怒ってる」と全く不本意な報告をしやがった。いい加減にしろ。頬をつねってやると、彼女は必死で抵抗してくる。

「え？うん、立会人の方だよ？…うお？！」

彼女は素っ頓狂な声と共に、慌てて受話器を耳から離した。

「なに夕湖、大声出さないでよ」

再び受話器を耳に当てながら彼女は抗議の声を上げ、直後、首を傾げつつ受話器を置いた。

「切れたのか？」
「はい…え、もしかして、相当マズいんですか？」
「賭郎が転覆する」
「…冗談でなく？」
「俺は冗談は嫌いだ。お前と違ってな」
「いや私だってこんな悪質な冗談嫌いですけど…じゃなくて、うん。まじか」

彼女は遅ればせながらも事態を理解してくれたらしく、やっと頭を抱えた。