「で」
「うん」
「何でこんなことしたの」

じっとりとした目で睨む晴乃君に、何と答えるべきか悩む。正直、あの時の感情は自分でもよく分かっていない。

「さあ？」

だからこそ、正直に首を傾げる。ただ一つ言えるのは、あの時求めていたのは娯楽ではなかったということ。もしかしたら私も引き返すチャンスを探しているのかもしれない。何からかは知らないけど。

「そんなに目蒲が大事？」
「大事ですよ」

即答。

「でもね、勘違いしないで欲しいのは、あなたも同じくらい大切ってこと」

そしてその冷めたような表情を崩さず、何でもないことのように、言ってのけた。

「あんまりさ、自分を責めちゃダメですよ、お屋形様」
「君は時々訳の分からないことを言うよね」
「まあ、そうかもしれませんね」

あっさりとしたその言葉が彼女らしいと思えるのは、その不遜な言葉をすんなりと受け入れることができるのは、偏に彼女が彼女だから。

「そろそろ君を軟禁するの、やめようと思うんだよね」
「何ですか突然。ドッキリ？」
「君なら分かるでしょ？」
「まあ、そうですけど」

どういう風の吹きまわしなのよ、と驚いた様子の彼女にしてやったりと笑いつつ、私はその場を後にする。彼女が背を追ってくることも、質問を投げかけることもなかった。