見守る瞳のオキザリス
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「頭痛い」
「あれだけ飲めばね」
見事に二日酔いになったらしい。眉間にしわを寄せた先生は、それでも事務室の自分の席に座って真面目に赤ん坊を揺さぶっている。
「断ればいいのに」
「だーって、仕方がないじゃないですか、任務に連れて行かせるわけにはいかないです」
「大丈夫だよ、立会人だし」
「立会人って…」
複雑そうな顔を浮かべる彼女を余所に「そうですよね、滝さん」と振ってみるが、勿論答えは「んな訳ねえだろ」という真面目くさったもの。この部屋のメンバーは常識人揃いである。
南方立会人は賭郎には勤務している状態であるため、立会いからは逃れられない。これまでは先生を始めとした事務メンバーが上手くやりくりして南方立会人に立会いが回らない様にしていたらしいが、どうやらそれにも限界が来たらしく、ついに今日数日ぶりの立会いに出て行った。
「あ、漏らしそう」
彼女はそう言うと立ち上がり、すぐにオムツを取りに行く。直後、赤ん坊が泣き出した。
「待って待って、今替えるから」
慌て気味の彼女の声が泣き声に重なる。彼女は事務室の奥に誂えられた簡易すぎるベビーベッドの方に駆けていくと、子供を寝かせ、早速オムツ交換に取り掛かる。
果たしてそれをやり終えた彼女は、余韻でぐずるその子を腕にまた戻ってきた。
「あーよしよし、いい子いい子」
苦笑いの彼女に「大変だね」と声をかければ、「ホント、困りますよね」と返ってきた。それでも楽しそうな声は、昨日の苦悩を別人のものの様に感じさせる。
その時、「よお」と右手を上げながら能輪立会人が入って来た。
「あ、能輪さん。待ってましたよー」
「すまねえな、ゆっくり作りすぎちまった」
「またまたー」
彼は片手で報告書を差し出す。そして先生は笑顔でそれを受け取った。
「はい、確かに」
「どーも。なあ、今晩暇か?」
「なーに言ってるんですか。口説かれませんよ?」
「つまんねー」
けらけら笑いながら能輪立会人は事務室を後にする。能輪立会人はまだ口説くのを諦めていないらしい。
次に来たのは間紙立会人。気配を悟らせず入って来たのに気付いたのは僕と滝さんの二人で、能輪立会人の報告書のチェックに集中していた先生は見事に気付かず、背後を取られる。
チャキ、と鞘を抜いて柄を首筋に当てられ、やっと気付いた先生は「ひゃああ!」と大きな悲鳴を上げた。当然、赤ん坊も泣く。
「うわ、え、間紙さん、もう、ちょっと待ってください!あーうんびっくりしたね、私もびっくりした!あ、で、間紙さんには今から立会いを頼みたくて!」
驚きを隠しきれないまま、わたわた交互に話しかけるのがちょっと可愛くて笑う。同じ思いらしい間紙立会人が「晴乃嬢はからかいやすくて良い」と低い声で笑った。
「というか、からかわないで下さいよもう!泣いちゃったし!」
「済まんかったの。早目に退散するわい」
もう、とわざとらしく腹立たし気な仕草をしつつ立会いの説明を始める先生を見て、間紙立会人はまた笑った。
次に来たのは目蒲立会人。彼はドアをくぐるといつもの無表情で「立会いか」と聞いた。対する先生は「立会いですよー。獏様ですよー」と歌う様に言いながら立ち上がる。そのまま赤ん坊を揺すりながら目蒲立会人に近づくものだから、踊っている様にも見える。
「またか。多いな」
「資金集め、みたいな?」
「資金集めねえ」
「ええ…なーんか、きな臭え、とでもいうんでしょうかね?そんな雰囲気」
「お前は何でも知っているな」
「参りました?」
「何故俺が参らなきゃいけないんだ」
「いいじゃないですかー、って、うわ、やばい」
突然先生が慌て始め、二、三歩後ずさる。みんなの頭にクエスチョンマークが浮かんだところで、赤ん坊が火がついた様に泣き始める。
「あーもう、眠いなら寝たらいいじゃない!何で泣くのよ!」
「おい伏龍、赤ん坊相手に癇癪起こしてんじゃねえよ」
「だーってこの子眠いって泣いてるんですよ!?私にどうしろと!」
「寝かせろ」
「無茶苦茶だ!」
ああもう!とキレ気味に赤ん坊の背を叩き始める先生を、目蒲立会人が挙動不審気味に見つめる。
「どうしたんですか?」
「…いつの間に産んだ?」
「待って!?何で?!私のお腹が大きかった事なんてなかったでしょ?!」
「何だ目蒲立会人、今更ですね。ずっと抱いてたじゃないですか」
「…いや、言われてみればそうなんだが…似合いすぎて…」
「ええ…」
引き気味の先生。その横顔を見ながらふと気になる事ができてしまい、僕は問い掛ける。
「ねえ、その子の事知ってるのって、僕と誰?」
「へ?誰も知りませんよう。誰も…えっ」
ええー、と先生は本格的にドン引きしたが、それがおかし過ぎて笑ってしまう。みんな景色の一部として処理してたとか、先生、赤ん坊似合いすぎでしょ。
「あれだけ飲めばね」
見事に二日酔いになったらしい。眉間にしわを寄せた先生は、それでも事務室の自分の席に座って真面目に赤ん坊を揺さぶっている。
「断ればいいのに」
「だーって、仕方がないじゃないですか、任務に連れて行かせるわけにはいかないです」
「大丈夫だよ、立会人だし」
「立会人って…」
複雑そうな顔を浮かべる彼女を余所に「そうですよね、滝さん」と振ってみるが、勿論答えは「んな訳ねえだろ」という真面目くさったもの。この部屋のメンバーは常識人揃いである。
南方立会人は賭郎には勤務している状態であるため、立会いからは逃れられない。これまでは先生を始めとした事務メンバーが上手くやりくりして南方立会人に立会いが回らない様にしていたらしいが、どうやらそれにも限界が来たらしく、ついに今日数日ぶりの立会いに出て行った。
「あ、漏らしそう」
彼女はそう言うと立ち上がり、すぐにオムツを取りに行く。直後、赤ん坊が泣き出した。
「待って待って、今替えるから」
慌て気味の彼女の声が泣き声に重なる。彼女は事務室の奥に誂えられた簡易すぎるベビーベッドの方に駆けていくと、子供を寝かせ、早速オムツ交換に取り掛かる。
果たしてそれをやり終えた彼女は、余韻でぐずるその子を腕にまた戻ってきた。
「あーよしよし、いい子いい子」
苦笑いの彼女に「大変だね」と声をかければ、「ホント、困りますよね」と返ってきた。それでも楽しそうな声は、昨日の苦悩を別人のものの様に感じさせる。
その時、「よお」と右手を上げながら能輪立会人が入って来た。
「あ、能輪さん。待ってましたよー」
「すまねえな、ゆっくり作りすぎちまった」
「またまたー」
彼は片手で報告書を差し出す。そして先生は笑顔でそれを受け取った。
「はい、確かに」
「どーも。なあ、今晩暇か?」
「なーに言ってるんですか。口説かれませんよ?」
「つまんねー」
けらけら笑いながら能輪立会人は事務室を後にする。能輪立会人はまだ口説くのを諦めていないらしい。
次に来たのは間紙立会人。気配を悟らせず入って来たのに気付いたのは僕と滝さんの二人で、能輪立会人の報告書のチェックに集中していた先生は見事に気付かず、背後を取られる。
チャキ、と鞘を抜いて柄を首筋に当てられ、やっと気付いた先生は「ひゃああ!」と大きな悲鳴を上げた。当然、赤ん坊も泣く。
「うわ、え、間紙さん、もう、ちょっと待ってください!あーうんびっくりしたね、私もびっくりした!あ、で、間紙さんには今から立会いを頼みたくて!」
驚きを隠しきれないまま、わたわた交互に話しかけるのがちょっと可愛くて笑う。同じ思いらしい間紙立会人が「晴乃嬢はからかいやすくて良い」と低い声で笑った。
「というか、からかわないで下さいよもう!泣いちゃったし!」
「済まんかったの。早目に退散するわい」
もう、とわざとらしく腹立たし気な仕草をしつつ立会いの説明を始める先生を見て、間紙立会人はまた笑った。
次に来たのは目蒲立会人。彼はドアをくぐるといつもの無表情で「立会いか」と聞いた。対する先生は「立会いですよー。獏様ですよー」と歌う様に言いながら立ち上がる。そのまま赤ん坊を揺すりながら目蒲立会人に近づくものだから、踊っている様にも見える。
「またか。多いな」
「資金集め、みたいな?」
「資金集めねえ」
「ええ…なーんか、きな臭え、とでもいうんでしょうかね?そんな雰囲気」
「お前は何でも知っているな」
「参りました?」
「何故俺が参らなきゃいけないんだ」
「いいじゃないですかー、って、うわ、やばい」
突然先生が慌て始め、二、三歩後ずさる。みんなの頭にクエスチョンマークが浮かんだところで、赤ん坊が火がついた様に泣き始める。
「あーもう、眠いなら寝たらいいじゃない!何で泣くのよ!」
「おい伏龍、赤ん坊相手に癇癪起こしてんじゃねえよ」
「だーってこの子眠いって泣いてるんですよ!?私にどうしろと!」
「寝かせろ」
「無茶苦茶だ!」
ああもう!とキレ気味に赤ん坊の背を叩き始める先生を、目蒲立会人が挙動不審気味に見つめる。
「どうしたんですか?」
「…いつの間に産んだ?」
「待って!?何で?!私のお腹が大きかった事なんてなかったでしょ?!」
「何だ目蒲立会人、今更ですね。ずっと抱いてたじゃないですか」
「…いや、言われてみればそうなんだが…似合いすぎて…」
「ええ…」
引き気味の先生。その横顔を見ながらふと気になる事ができてしまい、僕は問い掛ける。
「ねえ、その子の事知ってるのって、僕と誰?」
「へ?誰も知りませんよう。誰も…えっ」
ええー、と先生は本格的にドン引きしたが、それがおかし過ぎて笑ってしまう。みんな景色の一部として処理してたとか、先生、赤ん坊似合いすぎでしょ。