見守る瞳のオキザリス
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「よかったのですか?」
南方去りし後の事務室で、権田が問う。伏龍はちらと彼を見て、「あれで正解だと思うんですよねえ」と髪を撫でる。
「ま、私が世話をする前提で拾ってくる方が悪いです。どちらにせよ」
「そりゃ、確かにな」
俺は頷いた。彼女が言ったように、同種の展開には腐るほど出会ってきた。立会人で在りたいのならば、業を背負い、その上で剛で、強であらねばならぬのだ。それを理解していたのは新米立会人の南方ではなく、立会人に寄り添い続けた事務の伏龍だったということ。
奴もまだ新米。周りに育てられていけばいいさ。
権田だけがまだ釈然としない顔で、それでも黙って電卓を叩く。
ーーーーーーーーーー
事務室の扉が開いたのは、それからしばらく経ってのこと。
「女史!女史!」
「うわびっくりするなあもう!」
「つかまだ縊ってなかったのかよ」
「とりあえず、その泣き声を止めて下さい」
リアクションは上から伏龍、俺、権田の順。南方は事務方のドライな対応に慌て、赤ん坊を宥め始める。すかさず伏龍が「多分ミルクです」と言い、南方は慌ただしくカバンから粉ミルクやら魔法瓶やらを取り出してミルクを作り、赤ん坊に咥えさせた。
さっきの大泣きが嘘のようにミルクを飲みはじめたそれを揺らす南方に、思わず「それ、どうするつもりだ」と聞いてしまう。
「遺棄児童として警察で保護します」
「おい、そりゃ賭けの対価だろう、そうはいかねえよ」
「私が二百万で買い取りましたので手続き上の問題はありません。しかし、孤児院が手一杯とのことで、数日こちらで預かることになりました」
南方はまっすぐ伏龍を見て喋り続ける。
「女史、この子の月齢は三ヶ月なので大体三、四時間に一度授乳が必要だ。もちろんオムツや睡眠のサポートも必要な時期。手が離せん」
「…そうなんですか?」
「そこで、年休を取得したい」
「ええと」
伏龍が視線を送ると、権田が「まだ取得できません。欠勤扱いです」と代わりに答えた。南方は「ふむ」と唇を指でなぞり、続けて「子連れでの勤務の前例は?」と問いかける。次は俺に視線が送られてきたので、「ねえよ」と代わって答えてやる。
「しかし、それを規制するルールも存在しません」
唐突に、権田が声を上げた。
「南方立会人は搦手枠ですので、表の仕事に就いている時も賭郎の構成員として給与が発生しています。警察の方で年休を取り、賭郎には警察にいるという事にすればいい。これで時間の問題は解決します。用事があって賭郎に来る時は、子連れで問題ありません」
「うわ、権田さん悪ーい!」
呆気にとられる南方。対照的に、けらけらと伏龍が笑う。
「それ、バレたら」
「大目玉ですよう」
「君らは」
「え、私たちのこと売るんですか?つか、バレないで下さいよ。言ったでしょ?立会人は何でも出来なきゃ」
彼女は人の悪い笑顔で南方を見つめる。
負けず嫌いに火の付いた彼は、余裕綽々であるかのように頷いた。
「では、済まないが女史、私は今週表の仕事が忙しい。立会い以外は出来ないと思ってくれたまえ」
「さくらんぼで手を打ちましょう。高いやつ」
「では、私は鰻を」
示し合わせたように伏龍と権田が俺を見るので、「じゃ、メロンを」と言っておく。南方はしぶしぶ頷いた。
南方去りし後の事務室で、権田が問う。伏龍はちらと彼を見て、「あれで正解だと思うんですよねえ」と髪を撫でる。
「ま、私が世話をする前提で拾ってくる方が悪いです。どちらにせよ」
「そりゃ、確かにな」
俺は頷いた。彼女が言ったように、同種の展開には腐るほど出会ってきた。立会人で在りたいのならば、業を背負い、その上で剛で、強であらねばならぬのだ。それを理解していたのは新米立会人の南方ではなく、立会人に寄り添い続けた事務の伏龍だったということ。
奴もまだ新米。周りに育てられていけばいいさ。
権田だけがまだ釈然としない顔で、それでも黙って電卓を叩く。
ーーーーーーーーーー
事務室の扉が開いたのは、それからしばらく経ってのこと。
「女史!女史!」
「うわびっくりするなあもう!」
「つかまだ縊ってなかったのかよ」
「とりあえず、その泣き声を止めて下さい」
リアクションは上から伏龍、俺、権田の順。南方は事務方のドライな対応に慌て、赤ん坊を宥め始める。すかさず伏龍が「多分ミルクです」と言い、南方は慌ただしくカバンから粉ミルクやら魔法瓶やらを取り出してミルクを作り、赤ん坊に咥えさせた。
さっきの大泣きが嘘のようにミルクを飲みはじめたそれを揺らす南方に、思わず「それ、どうするつもりだ」と聞いてしまう。
「遺棄児童として警察で保護します」
「おい、そりゃ賭けの対価だろう、そうはいかねえよ」
「私が二百万で買い取りましたので手続き上の問題はありません。しかし、孤児院が手一杯とのことで、数日こちらで預かることになりました」
南方はまっすぐ伏龍を見て喋り続ける。
「女史、この子の月齢は三ヶ月なので大体三、四時間に一度授乳が必要だ。もちろんオムツや睡眠のサポートも必要な時期。手が離せん」
「…そうなんですか?」
「そこで、年休を取得したい」
「ええと」
伏龍が視線を送ると、権田が「まだ取得できません。欠勤扱いです」と代わりに答えた。南方は「ふむ」と唇を指でなぞり、続けて「子連れでの勤務の前例は?」と問いかける。次は俺に視線が送られてきたので、「ねえよ」と代わって答えてやる。
「しかし、それを規制するルールも存在しません」
唐突に、権田が声を上げた。
「南方立会人は搦手枠ですので、表の仕事に就いている時も賭郎の構成員として給与が発生しています。警察の方で年休を取り、賭郎には警察にいるという事にすればいい。これで時間の問題は解決します。用事があって賭郎に来る時は、子連れで問題ありません」
「うわ、権田さん悪ーい!」
呆気にとられる南方。対照的に、けらけらと伏龍が笑う。
「それ、バレたら」
「大目玉ですよう」
「君らは」
「え、私たちのこと売るんですか?つか、バレないで下さいよ。言ったでしょ?立会人は何でも出来なきゃ」
彼女は人の悪い笑顔で南方を見つめる。
負けず嫌いに火の付いた彼は、余裕綽々であるかのように頷いた。
「では、済まないが女史、私は今週表の仕事が忙しい。立会い以外は出来ないと思ってくれたまえ」
「さくらんぼで手を打ちましょう。高いやつ」
「では、私は鰻を」
示し合わせたように伏龍と権田が俺を見るので、「じゃ、メロンを」と言っておく。南方はしぶしぶ頷いた。