水仙の闘争
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「晴乃君のいいところは、ちゃんとオチがつくところだと思うんだよね」
「仰る通りですねえ~。お二方ともあんなエラソーな啖呵を切っておきながらこの票数ですからね~」
開票の噂を聞きつけて事務室にやってきたお屋形様が、その結果を知ってそう仰る。俺は同意しつつ、二人並んで立っている伏龍とジジイに目を向ける。両者の表情は正反対で、伏龍は拗ねたような顔を、ジジイは怒りに燃えた顔をしている。
「32対27。あれ弥鱈、足しても101に遠く届かないけど、これって好きな方に投票するシステムだっけ?」
「いえ~。信任投票ですので、任せられるか任せられないかを聞いております~」
「あらー。どっちも信用ないねえ」
「もう、ほっといて下さいよう。いいじゃないですか、勝ちは勝ちです」
「5点差な」
「ぐっ…!」
言葉に詰まった伏龍は、「ねえ、夜行さんも何とか言ってくださいよう!」とジジイに振るが、当の本人は「この私の珈琲の味がわからんとは笑止千万…!この恨み晴さでおくべきか!」とぶつぶつ煩い。
「まあまあ夜行。ここで弥鱈によるお便り紹介コーナーがあるから、ちょっと聞きなよ」
「はいお屋形様」
「…ほらね晴乃君、普通はこうやって二つ返事で引き受けるものなんだよ」
「すごい」
「君に辛抱が足りないんだよ」
「まあまあお屋形様。さ、お便り聞きましょ」
強引に話を引き戻した伏龍。埒があかないのでその言葉に乗ってやる。
「東京都在住の銅寺晴明さんからで、'この一件でパーフェクト死神は立会人として、賭郎のワイルドカードは事務としてでないと力を発揮できないと思いました'だそうです。的を射てます。こちらも東京都在住の最上妙子さんから、'夜行立会人は立会人の憧れ。事務室にいるのでは勿体ありませんわ'と。しかも代打がコイツですからね。また、東京都在住の櫛灘鉄馬さんからは'女神が事務室にいないと本来の力が発揮できません!女神を返してください!'との熱いメッセージが届いております。きめえな」
「色々あったの。ほっといて」
「とにかく、他にも沢山のメッセージを頂きましたが、今回立会人たちの争点となったのは'紅茶か珈琲か'ではなく'どちらに何が向いているか'だったようです」
「味覚の好み以前の問題だった訳だね。どちらも絶望的に向いてなかったんだよ。ま、勝負は勝負。弥鱈、さっさと終わらせてよね」
お屋形様が切れ長の目を向ける。そうだ、これで長い一日が終わる。俺は一つため息をついた。
「伏龍晴乃様32票獲得、夜行妃古壱様27票獲得。勝者は伏龍晴乃様です」
「…納得いきませんな」
「ちょっと夜行、物言いかい?」
「立会人たるもの、ゲーム選びのセンスも問われます。果たして弥鱈立会人の設定したゲームは我々の力量を試すに相応しいものだったでしょうか?」
カチンとくることを言ってくれる。俺はお屋形様と伏龍をちらりと見る。試すような彼の瞳とウインクを飛ばしてくる彼女に後押しされ、口を開く。
「お言葉ですが、夜行立会人。伏龍のインタビュー記事はご覧になりましたか?'立会人さんたちが話を聞いて欲しがってる時に、私の手元がガチャガチャ動いていたらどう思います?聞く気が無いように見えちゃうじゃないですか。えい、やあ、とう、じゃないといけないんです。それ以上かけたら話す気が失せちゃう'とありました。つまり伏龍は敢えて手順を省略しているといえます。今回争点となるのはどちらの味が優れているかではありません。どちらの手法が優れているかということです」
夜行立会人は一度くわっと目を見開き、暫しの後、ため息と共にその銀の髪をなで付ける。
「成る程、表面にある紅茶対珈琲という問題でなく、内側にある事務員としてのプライドまで考慮に入れたということですか。若いのによく練られたものです。貴方は自分のプライドを掛けて立会いをしている。それに免じ、私も潔く負けを認めましょう」
くす、と笑う伏龍。矛盾があるということ。内心滅茶苦茶悔しいのだろう。負けず嫌いは立会人の性か。
「さて晴乃さん、本日は勝負をお引き受け頂き有難うございました。お陰で楽しい一日が過ごせましたよ」
「いえ、私こそ。お陰様で久しぶりに遊べました。ね、弥鱈君」
肩を竦めて見せれば、伏龍と夜行立会人は共に表情を緩めた。
「仰る通りですねえ~。お二方ともあんなエラソーな啖呵を切っておきながらこの票数ですからね~」
開票の噂を聞きつけて事務室にやってきたお屋形様が、その結果を知ってそう仰る。俺は同意しつつ、二人並んで立っている伏龍とジジイに目を向ける。両者の表情は正反対で、伏龍は拗ねたような顔を、ジジイは怒りに燃えた顔をしている。
「32対27。あれ弥鱈、足しても101に遠く届かないけど、これって好きな方に投票するシステムだっけ?」
「いえ~。信任投票ですので、任せられるか任せられないかを聞いております~」
「あらー。どっちも信用ないねえ」
「もう、ほっといて下さいよう。いいじゃないですか、勝ちは勝ちです」
「5点差な」
「ぐっ…!」
言葉に詰まった伏龍は、「ねえ、夜行さんも何とか言ってくださいよう!」とジジイに振るが、当の本人は「この私の珈琲の味がわからんとは笑止千万…!この恨み晴さでおくべきか!」とぶつぶつ煩い。
「まあまあ夜行。ここで弥鱈によるお便り紹介コーナーがあるから、ちょっと聞きなよ」
「はいお屋形様」
「…ほらね晴乃君、普通はこうやって二つ返事で引き受けるものなんだよ」
「すごい」
「君に辛抱が足りないんだよ」
「まあまあお屋形様。さ、お便り聞きましょ」
強引に話を引き戻した伏龍。埒があかないのでその言葉に乗ってやる。
「東京都在住の銅寺晴明さんからで、'この一件でパーフェクト死神は立会人として、賭郎のワイルドカードは事務としてでないと力を発揮できないと思いました'だそうです。的を射てます。こちらも東京都在住の最上妙子さんから、'夜行立会人は立会人の憧れ。事務室にいるのでは勿体ありませんわ'と。しかも代打がコイツですからね。また、東京都在住の櫛灘鉄馬さんからは'女神が事務室にいないと本来の力が発揮できません!女神を返してください!'との熱いメッセージが届いております。きめえな」
「色々あったの。ほっといて」
「とにかく、他にも沢山のメッセージを頂きましたが、今回立会人たちの争点となったのは'紅茶か珈琲か'ではなく'どちらに何が向いているか'だったようです」
「味覚の好み以前の問題だった訳だね。どちらも絶望的に向いてなかったんだよ。ま、勝負は勝負。弥鱈、さっさと終わらせてよね」
お屋形様が切れ長の目を向ける。そうだ、これで長い一日が終わる。俺は一つため息をついた。
「伏龍晴乃様32票獲得、夜行妃古壱様27票獲得。勝者は伏龍晴乃様です」
「…納得いきませんな」
「ちょっと夜行、物言いかい?」
「立会人たるもの、ゲーム選びのセンスも問われます。果たして弥鱈立会人の設定したゲームは我々の力量を試すに相応しいものだったでしょうか?」
カチンとくることを言ってくれる。俺はお屋形様と伏龍をちらりと見る。試すような彼の瞳とウインクを飛ばしてくる彼女に後押しされ、口を開く。
「お言葉ですが、夜行立会人。伏龍のインタビュー記事はご覧になりましたか?'立会人さんたちが話を聞いて欲しがってる時に、私の手元がガチャガチャ動いていたらどう思います?聞く気が無いように見えちゃうじゃないですか。えい、やあ、とう、じゃないといけないんです。それ以上かけたら話す気が失せちゃう'とありました。つまり伏龍は敢えて手順を省略しているといえます。今回争点となるのはどちらの味が優れているかではありません。どちらの手法が優れているかということです」
夜行立会人は一度くわっと目を見開き、暫しの後、ため息と共にその銀の髪をなで付ける。
「成る程、表面にある紅茶対珈琲という問題でなく、内側にある事務員としてのプライドまで考慮に入れたということですか。若いのによく練られたものです。貴方は自分のプライドを掛けて立会いをしている。それに免じ、私も潔く負けを認めましょう」
くす、と笑う伏龍。矛盾があるということ。内心滅茶苦茶悔しいのだろう。負けず嫌いは立会人の性か。
「さて晴乃さん、本日は勝負をお引き受け頂き有難うございました。お陰で楽しい一日が過ごせましたよ」
「いえ、私こそ。お陰様で久しぶりに遊べました。ね、弥鱈君」
肩を竦めて見せれば、伏龍と夜行立会人は共に表情を緩めた。