水仙の闘争
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時刻は午後5時15分。帰ってきた賭郎の事務室は、案の定死屍累々だった。コーヒーを見つめて微動だにしない目蒲さん、口元を押さえて座り込んでいる亜面さん、泡を噴いて床に転がるヰ近さん。その中心でにこやかにコーヒーカップを二客用意している夜行さん。おっとこれはやばい。
「私は結構ですよ、夜行さん。まだやるべき事が終わってませんので」
にこやかに微笑んでそう言えば、彼も微笑みを返してくれる。
「いえ、勝負の最中にこそ休息が必要というもの」
「結構です」
視界の端で目蒲さんが顔を上げた。助けを乞うその瞳が腹立たしい。そんなん、要らないものなら貰うなと。貰ったなら自分で処理しろと。
「では、弥鱈立会人」
夜行さんは与し易いと判断した弥鱈君に矛先を変えた。もちろん助け舟は出さない。言った通り。あんたらが増長させたから悪い。
弥鱈君は額に脂汗を浮かべて私を盗み見る。本人にはさっき言った。だから助け舟が望めないことはようく知っているはず。ごくりと生唾を呑んで、彼は夜行さんに「私も結構です」と言った。
夜行さんが目をくわっと見開いて、その行為を非難する。成る程確かにこれは怖い。
まあでも、矢面に立ってやろうじゃないか。この部屋に於いて安全基地は私なんだから。
「その目で睨むんですか?」
夜行さんはその目でそのまま私を睨みつけた。うん怖い。これむっちゃ怖い。でもここで引けない。
「それはダメです、夜行さん。この人たちは疲れて帰ってきているのに、そんな風にプレッシャーを与えたら可哀想」
「プレッシャー?はて、何のことやら」
私は小首を傾げて暫く黙る。自覚がある人にはこれで十分なのだ。
特に、私が人の嘘なんてお見通しだって分かってる人に対しては。
「コホン…しかし晴乃さん、彼らは全員自分の意思で飲んでいますよ」
「ええ。了解をとるのはいいことです。だから目蒲さんも貰ったものはちゃんと飲むべきですよ」
「え」
「え?」
突然退路を絶たれた目蒲さんが目をまん丸にしてこっちを見る。相変わらずかわいいな、この人。敢えて無視するけど。
「私が言いたいのは、この部屋でこの人たちを脅さないで下さいって、ただそれだけです。夜行さんがコーヒーにこだわりがあって、それを認めて欲しくて活動するのは夜行さんの自由です。でもね、この部屋はダメ。この部屋は立会人さん達が帰ってくるところです。平穏でなきゃいけない。心を落ち着けて貰う場所なんです。だから、その怖い顔でこの人たちの平穏を脅かすって仰るなら、今すぐ叱り飛ばして追い出します」
足が震えないよう細心の注意を払いつつ、私は一歩前に出る。
「さ、決着をつけましょうね。さっさと終わらせて、お夕飯の支度をしなくっちゃ」
「私は結構ですよ、夜行さん。まだやるべき事が終わってませんので」
にこやかに微笑んでそう言えば、彼も微笑みを返してくれる。
「いえ、勝負の最中にこそ休息が必要というもの」
「結構です」
視界の端で目蒲さんが顔を上げた。助けを乞うその瞳が腹立たしい。そんなん、要らないものなら貰うなと。貰ったなら自分で処理しろと。
「では、弥鱈立会人」
夜行さんは与し易いと判断した弥鱈君に矛先を変えた。もちろん助け舟は出さない。言った通り。あんたらが増長させたから悪い。
弥鱈君は額に脂汗を浮かべて私を盗み見る。本人にはさっき言った。だから助け舟が望めないことはようく知っているはず。ごくりと生唾を呑んで、彼は夜行さんに「私も結構です」と言った。
夜行さんが目をくわっと見開いて、その行為を非難する。成る程確かにこれは怖い。
まあでも、矢面に立ってやろうじゃないか。この部屋に於いて安全基地は私なんだから。
「その目で睨むんですか?」
夜行さんはその目でそのまま私を睨みつけた。うん怖い。これむっちゃ怖い。でもここで引けない。
「それはダメです、夜行さん。この人たちは疲れて帰ってきているのに、そんな風にプレッシャーを与えたら可哀想」
「プレッシャー?はて、何のことやら」
私は小首を傾げて暫く黙る。自覚がある人にはこれで十分なのだ。
特に、私が人の嘘なんてお見通しだって分かってる人に対しては。
「コホン…しかし晴乃さん、彼らは全員自分の意思で飲んでいますよ」
「ええ。了解をとるのはいいことです。だから目蒲さんも貰ったものはちゃんと飲むべきですよ」
「え」
「え?」
突然退路を絶たれた目蒲さんが目をまん丸にしてこっちを見る。相変わらずかわいいな、この人。敢えて無視するけど。
「私が言いたいのは、この部屋でこの人たちを脅さないで下さいって、ただそれだけです。夜行さんがコーヒーにこだわりがあって、それを認めて欲しくて活動するのは夜行さんの自由です。でもね、この部屋はダメ。この部屋は立会人さん達が帰ってくるところです。平穏でなきゃいけない。心を落ち着けて貰う場所なんです。だから、その怖い顔でこの人たちの平穏を脅かすって仰るなら、今すぐ叱り飛ばして追い出します」
足が震えないよう細心の注意を払いつつ、私は一歩前に出る。
「さ、決着をつけましょうね。さっさと終わらせて、お夕飯の支度をしなくっちゃ」