水仙の闘争
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さて、まとわりつくチンピラをマーティンと名乗る男性が追い払ったところで、ビリー・クレイグとオジサンが話を始める。割と興味がない。私は神経を尖らせる弥鱈君の横顔を見ながら運ばれてきたシフォンケーキにフォークを入れる。
「さあ、本題に入ろうじゃないか、クレイグ君。CIA籍の三等書記官…日本に赴任してから君は随分とチョコマカ忙しそうじゃないか…君が何者かは知らんが、日本には触り三百という諺があってね…あまりナメた真似をすると、大使館員といえども死ぬこととなる…」
チラと弥鱈君が私を見るので、仕方がなく'本当だよ'とモールスを打つ。
「今すぐ返せば大目に見てやろう…君が盗んだLファイルを…」
「OH!誤解…それは誤解デース!アマコさん。あれは…拾った…そう!偶然拾っただけなんデース!」
'嘘だよ'と打ったら睨まれた。それくらい分かるわ、ということらしい。
「スパイ映画さながら…私の端末から機密コードに侵入して手にしたものを…拾った…だと?クレイグ君…」
ぬ、と件の二人の隣のテーブルに座っていたオジサンが立ち上がり、ビリー・クレイグの肩を叩く。ビリー・クレイグは態とらしく肩を揺らし、弥鱈君は目を見開いた。きっと強いのだろう。私は半分まで減ってしまったシフォンケーキに更にフォークを入れる。これを食べ終わったら、次は弥鱈君の目の前のシフォンケーキを貰ってやるんだ。
「あまり笑えんな」
アマコさん、と呼ばれた男性が唇の端を歪める。畳み掛ける気だろう。でも、ダメだ。彼我の力量差を決定的に見誤っている。ビリー・クレイグの動揺はフェイク。その事をこっそりと弥鱈君に伝えると、彼は小さくため息をついた。
戦闘になったらアマコにつく。お前は逃げろ。
了解。夜行掃除人と合流するね。
目くばせして、またテーブルの成り行きに注意を向ける。
「彼は警視庁密葬課の箕輪君だ。彼にかかればどんな人間も人知れず葬られることになるだろう…」
「葬る…?」
「そうっ!」
ビリー・クレイグは後ろの気配を慎重に読み取り、改めてその実力の程を探る。その態度に気を良くした箕輪という男性は、にやにや笑いながらビリー・クレイグの肩を両手で押し下げて身動きが取れないようにする。
ビリー・クレイグから余裕が消えた。
つまり、彼も私も箕輪さんを見誤っていた。恐らく、実力は同程度なのだ。
「火葬、土葬、水葬、鳥葬、なんでも来いだ。何がいい?白いアメ公」
箕輪さんがヤニのこびりついた黄色い歯を見せて笑う。対照的に、ビリー・クレイグは深く思案した。
暫しの後、彼はにっこりと笑ってUSBをテーブルに置いた。
「ハイッ!どうぞ。だから誤解と言ってるじゃないですか。私はただきっかけが欲しかっただけです。あなたと仲良くなるきっかけが…最初からこれはお返しするつもりだったんですよ」
アマコさんは鼻で笑うと、USBを手に取り、立ち上がる。それで終わらせる気なら大きな間違いだ。そいつはとんでもない嘘つきなのに。いや、全部嘘ではない。きっかけが欲しかったのは本当。嘘は'仲良くなるための'という部分。後'返すつもりだった'という言葉にもなんだか微妙な企みの気配。
ううん、なんなんだろ。まあ、私は警視庁とは縁が深くないので何も助太刀はしないけど。
アマコさんと箕輪さんは一言二言交わし合って、その場を後にした。その背を見送ったビリー・クレイグも、窓の向こうになにかを見つけ、立ち去っていく。
嵐が過ぎ去っていった。
「動いてるみたいだな~、アイデアル」
ずるっとお尻を滑らせて、彼はだらしなく腰で座る。ふう、と唾で風船を作って飛ばすので、仕方がなくそれを突いて潰す。
「ね。全く、こんな辺鄙な国まで来て何がしたいのか」
「温泉でも掘るのかねぇ~」
「そんな事の為に屋形越えとかやめてー!」
二人で一頻り笑った後、弥鱈君が「で~、どーすんの?」と聞いてきた。私は肩を竦める。
「夕湖に話して、それで終わりでいいかなって」
「何もしねえの?」
「えー、私が?出来ることないでしょ」
「久々に組んで暴れようぜ~」
「えー、何する気なのさ」
「アマコ調べようぜ」
「夕湖の職分じゃない、それ」
「俺と外務卿には職分があるケド、アンタには職分ねえだろ」
「事務なんです、実は」
「いいや、アンタはワイルドカードっていう謎職についてる」
「ついてないし」
ため息をついて、弥鱈君の前にあるシフォンケーキを引き寄せる。ぺち、と手の甲を叩かれた。
「さあ、本題に入ろうじゃないか、クレイグ君。CIA籍の三等書記官…日本に赴任してから君は随分とチョコマカ忙しそうじゃないか…君が何者かは知らんが、日本には触り三百という諺があってね…あまりナメた真似をすると、大使館員といえども死ぬこととなる…」
チラと弥鱈君が私を見るので、仕方がなく'本当だよ'とモールスを打つ。
「今すぐ返せば大目に見てやろう…君が盗んだLファイルを…」
「OH!誤解…それは誤解デース!アマコさん。あれは…拾った…そう!偶然拾っただけなんデース!」
'嘘だよ'と打ったら睨まれた。それくらい分かるわ、ということらしい。
「スパイ映画さながら…私の端末から機密コードに侵入して手にしたものを…拾った…だと?クレイグ君…」
ぬ、と件の二人の隣のテーブルに座っていたオジサンが立ち上がり、ビリー・クレイグの肩を叩く。ビリー・クレイグは態とらしく肩を揺らし、弥鱈君は目を見開いた。きっと強いのだろう。私は半分まで減ってしまったシフォンケーキに更にフォークを入れる。これを食べ終わったら、次は弥鱈君の目の前のシフォンケーキを貰ってやるんだ。
「あまり笑えんな」
アマコさん、と呼ばれた男性が唇の端を歪める。畳み掛ける気だろう。でも、ダメだ。彼我の力量差を決定的に見誤っている。ビリー・クレイグの動揺はフェイク。その事をこっそりと弥鱈君に伝えると、彼は小さくため息をついた。
戦闘になったらアマコにつく。お前は逃げろ。
了解。夜行掃除人と合流するね。
目くばせして、またテーブルの成り行きに注意を向ける。
「彼は警視庁密葬課の箕輪君だ。彼にかかればどんな人間も人知れず葬られることになるだろう…」
「葬る…?」
「そうっ!」
ビリー・クレイグは後ろの気配を慎重に読み取り、改めてその実力の程を探る。その態度に気を良くした箕輪という男性は、にやにや笑いながらビリー・クレイグの肩を両手で押し下げて身動きが取れないようにする。
ビリー・クレイグから余裕が消えた。
つまり、彼も私も箕輪さんを見誤っていた。恐らく、実力は同程度なのだ。
「火葬、土葬、水葬、鳥葬、なんでも来いだ。何がいい?白いアメ公」
箕輪さんがヤニのこびりついた黄色い歯を見せて笑う。対照的に、ビリー・クレイグは深く思案した。
暫しの後、彼はにっこりと笑ってUSBをテーブルに置いた。
「ハイッ!どうぞ。だから誤解と言ってるじゃないですか。私はただきっかけが欲しかっただけです。あなたと仲良くなるきっかけが…最初からこれはお返しするつもりだったんですよ」
アマコさんは鼻で笑うと、USBを手に取り、立ち上がる。それで終わらせる気なら大きな間違いだ。そいつはとんでもない嘘つきなのに。いや、全部嘘ではない。きっかけが欲しかったのは本当。嘘は'仲良くなるための'という部分。後'返すつもりだった'という言葉にもなんだか微妙な企みの気配。
ううん、なんなんだろ。まあ、私は警視庁とは縁が深くないので何も助太刀はしないけど。
アマコさんと箕輪さんは一言二言交わし合って、その場を後にした。その背を見送ったビリー・クレイグも、窓の向こうになにかを見つけ、立ち去っていく。
嵐が過ぎ去っていった。
「動いてるみたいだな~、アイデアル」
ずるっとお尻を滑らせて、彼はだらしなく腰で座る。ふう、と唾で風船を作って飛ばすので、仕方がなくそれを突いて潰す。
「ね。全く、こんな辺鄙な国まで来て何がしたいのか」
「温泉でも掘るのかねぇ~」
「そんな事の為に屋形越えとかやめてー!」
二人で一頻り笑った後、弥鱈君が「で~、どーすんの?」と聞いてきた。私は肩を竦める。
「夕湖に話して、それで終わりでいいかなって」
「何もしねえの?」
「えー、私が?出来ることないでしょ」
「久々に組んで暴れようぜ~」
「えー、何する気なのさ」
「アマコ調べようぜ」
「夕湖の職分じゃない、それ」
「俺と外務卿には職分があるケド、アンタには職分ねえだろ」
「事務なんです、実は」
「いいや、アンタはワイルドカードっていう謎職についてる」
「ついてないし」
ため息をついて、弥鱈君の前にあるシフォンケーキを引き寄せる。ぺち、と手の甲を叩かれた。