水仙の闘争
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「ちょ」
伏龍がスマホを見て噴き出す。何、と問えば、彼女は画面をこちらに向けてくる。夜行立会人が門倉立会人を雪井出様の立会いに付けたとの、滝さんからのメールだった。
「だから何?」
「えー、雪井出薫って知らない?」
「ラビリンスの奴だろ?警視庁の…あっ」
「そうなの!」
「やべえ、出頭しちまったじゃん」
「どうしよう」
「迎えに行ってやんねーと」
「えー、私?」
「あ~、安心しろ伏龍、迎えは夜行立会人だぜ」
「ほんとだラッキー!」
「まあそもそも、罪状何だよって話だよな~」
「盗んだバイクで走り出しちゃったんじゃない?」
「もしくは夜の校舎窓ガラス壊して回ったか」
「この支配から卒業しちゃったかー」
あちゃー、とわざとらしく目を覆う彼女の額をテーブル越しに小突き、笑い合う。花見、ゲーセンと来て腹拵えにレストランに入る頃には、ノリが学生に戻っていた。
「ていうか、なんでああいう人達っていざ自分が学生って時は散々逃げ回るくせにずーっと学生時代引きずるのさ」
「それこそ門倉立会人に訊きゃいーじゃねーか」
「えー晴乃むりーこわーい」
「うっぜー」
「酷い」
「目蒲立会人に聞かせてやりてえ今の」
「ちょ、絶対やだ」
「アンタ目蒲立会人の前だけマトモぶるよなー」
「いやだって、なんか凄い敬愛してくれてるのよ、私のこと。申し訳なくなるじゃん」
「つーか、アンタ目蒲立会人のことどう思ってんの?」
「何、嫉妬?」
「ばーか」
「酷い。いや別になんとも思わないよ?思いようがないじゃん」
「普通の奴は思うんだよばーか。監禁と虐待についてコメントねーの?」
「ああ、あれ?水に流すって言っちゃったから水に流すしかないよね。確かにむっちゃ痛かったけどね」
「割り切り良すぎだろ」
「うんにゃ、良くないよ?良くないから今日だって夜行ヒーの餌食になるの分かってて置いてきたじゃん」
「あ~」
「常に優しくはしてないよ。そこまでの義理もなし」
グラスに付いた水滴をなぞって取り払いつつ、彼女は言う。
「でも、私あの人の事憎めないんだよね。むしろ結構好き」
「なんで?」
「健気じゃん。そりゃ、一緒に生きようって誘ったのは私だよ?でもそれって一緒にいろって意味じゃ無いのにさ、あの人何故かいるんだよね。絶対賑やかとか団欒とか、あの人の辞書には無かったと思うんだけど、どっちかというとそんな言葉とは無縁の静かな落ち着いた人生を目指してたんだろうけど、何故か毎晩伏龍会の一員として賑やかに食卓を囲んでいる訳よ。別に誰が強要する訳でもないんだから、無理のない範囲で付き合えばいいのにね。でも、頑張ってる。あの人なりに約束を守ろうとしている。私と弥鱈君とか、私とお屋形様の掛け合い聞いてる時いつも'こいつらは何をやっているんだろう?'みたいな顔してるような人なのに。こういうボケにボケ重ねる、全く無意味な掛け合いとは縁がなかったんだろうなあ」
「まあ、鉄面皮と呼ばれたくらいだからな」
「そうそう。なのに凄く頑張るから、なんとなく憎めない」
「ふうん」
それだけ深く惚れているんだろう。とは口に出さない。全て、いや、俺が見えるより深いところまで知っていて、敢えて無視しているのだろう。俺が藪を突く必要はない。
「ま、安心してよ。懐に入れる気は無いよ。これ以上、誰のことも」
そう。彼女の世界に個別に存在するのは、俺と親だけ。その理さえ崩れなければあとは彼女の自由。
伏龍がスマホを見て噴き出す。何、と問えば、彼女は画面をこちらに向けてくる。夜行立会人が門倉立会人を雪井出様の立会いに付けたとの、滝さんからのメールだった。
「だから何?」
「えー、雪井出薫って知らない?」
「ラビリンスの奴だろ?警視庁の…あっ」
「そうなの!」
「やべえ、出頭しちまったじゃん」
「どうしよう」
「迎えに行ってやんねーと」
「えー、私?」
「あ~、安心しろ伏龍、迎えは夜行立会人だぜ」
「ほんとだラッキー!」
「まあそもそも、罪状何だよって話だよな~」
「盗んだバイクで走り出しちゃったんじゃない?」
「もしくは夜の校舎窓ガラス壊して回ったか」
「この支配から卒業しちゃったかー」
あちゃー、とわざとらしく目を覆う彼女の額をテーブル越しに小突き、笑い合う。花見、ゲーセンと来て腹拵えにレストランに入る頃には、ノリが学生に戻っていた。
「ていうか、なんでああいう人達っていざ自分が学生って時は散々逃げ回るくせにずーっと学生時代引きずるのさ」
「それこそ門倉立会人に訊きゃいーじゃねーか」
「えー晴乃むりーこわーい」
「うっぜー」
「酷い」
「目蒲立会人に聞かせてやりてえ今の」
「ちょ、絶対やだ」
「アンタ目蒲立会人の前だけマトモぶるよなー」
「いやだって、なんか凄い敬愛してくれてるのよ、私のこと。申し訳なくなるじゃん」
「つーか、アンタ目蒲立会人のことどう思ってんの?」
「何、嫉妬?」
「ばーか」
「酷い。いや別になんとも思わないよ?思いようがないじゃん」
「普通の奴は思うんだよばーか。監禁と虐待についてコメントねーの?」
「ああ、あれ?水に流すって言っちゃったから水に流すしかないよね。確かにむっちゃ痛かったけどね」
「割り切り良すぎだろ」
「うんにゃ、良くないよ?良くないから今日だって夜行ヒーの餌食になるの分かってて置いてきたじゃん」
「あ~」
「常に優しくはしてないよ。そこまでの義理もなし」
グラスに付いた水滴をなぞって取り払いつつ、彼女は言う。
「でも、私あの人の事憎めないんだよね。むしろ結構好き」
「なんで?」
「健気じゃん。そりゃ、一緒に生きようって誘ったのは私だよ?でもそれって一緒にいろって意味じゃ無いのにさ、あの人何故かいるんだよね。絶対賑やかとか団欒とか、あの人の辞書には無かったと思うんだけど、どっちかというとそんな言葉とは無縁の静かな落ち着いた人生を目指してたんだろうけど、何故か毎晩伏龍会の一員として賑やかに食卓を囲んでいる訳よ。別に誰が強要する訳でもないんだから、無理のない範囲で付き合えばいいのにね。でも、頑張ってる。あの人なりに約束を守ろうとしている。私と弥鱈君とか、私とお屋形様の掛け合い聞いてる時いつも'こいつらは何をやっているんだろう?'みたいな顔してるような人なのに。こういうボケにボケ重ねる、全く無意味な掛け合いとは縁がなかったんだろうなあ」
「まあ、鉄面皮と呼ばれたくらいだからな」
「そうそう。なのに凄く頑張るから、なんとなく憎めない」
「ふうん」
それだけ深く惚れているんだろう。とは口に出さない。全て、いや、俺が見えるより深いところまで知っていて、敢えて無視しているのだろう。俺が藪を突く必要はない。
「ま、安心してよ。懐に入れる気は無いよ。これ以上、誰のことも」
そう。彼女の世界に個別に存在するのは、俺と親だけ。その理さえ崩れなければあとは彼女の自由。