沈丁花の約束
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「要するにババ抜きですね?得意ですよ私」
銅寺さんの顔に効果音をつけるとするなら、ぬーん、といった感じ。凄く長くルール説明をしてくれたのにこれじゃ、確かに可哀想かもしれない。私は慌てて、「大丈夫です、11溜まったらアウトなんですよね」と分かってるアピールをしてみたが、銅寺さんの表情は変わらず。どうにか機嫌を直してもらえる言葉を探してうんうん唸っていると、それを遮って金髪の立会人さんが喋り出す。
「申し遅れましたが、私拾號立会人、目蒲鬼郎と申します。以後御見知りおきを」
「あ、名乗りもせず失礼しました。伏龍晴乃です。よろしくお願いします」
「……フン」
名乗る気は無い、とでも言いたげに、短髪の男性が鼻で笑った。それを見て、意地悪な気持ちが込み上げる。
「大丈夫ですよ、名乗らなくて。喋るとボロが出ちゃいますもんね」
くわ、と見開かれた瞳。いいじゃない?表情豊かで。
「おにいさん、もともとギャンブルは得意じゃないんですねぇ。腹の探り合いは柄じゃない。正面突破がお好きですか。ならいっそ銀行強盗でもなんでもすればいいのに。あ、それは怖いんですか。そうですよね。このゲームも目蒲さんが助けてくれるからやっとなんとかなってる。じゃなきゃ怖くて立ってられない」
とんだ臆病者ですよね。私は笑ってやった。直後怒号が飛んだ。その必死さが予想通りすぎて、私は笑いを止められなかった。
「先生はなんでもお見通しなんです。ふふ。さ、始めましょ。さっさと平田親子を取り戻して帰りたいので」
ーーーーーーーーーー
「で、勝ったら攫われました」
「え、雑」
「え、ダメですか?」
「もっと何かあるじゃろ。ほら、どうやって勝ったんじゃ?」
「私ほら、対面でやるゲーム基本得意なんです。表情で分かるんですよ。だからこう、指を添えたときに佐田国さんが一番しかめっ面したカードを引いてたら勝ちました」
「そんな簡単に…」
「あとほら、目が見えないから絶対何か別の手段で見てたのも分かってたので、カード伏せてました。」
「それにはいつ気がついたんじゃ?」
「え、もう顔見たらこの人目が見えないんだなーってなりましたけど。盲目の人見るの、初めてじゃなかったし」
とんだギャンブラー殺しじゃなあ。おじいちゃんはそう呟いて車のドアを開けた。車の外には、懐かしい、そして忌々しい廃坑の扉が待っていた。
ーーーーーーーーーー
「お前はただの、大嘘つき、だ!」
佐田国様が、負けた。嘘喰いが吐き捨てるように言う。その様が彼女と重なり、不意にあの魔法のような夜を思い出す。鮮やかに勝利を手にした彼女の姿。呆然とする佐田国様。拍手喝采の銅寺。喜ぶ平田親子を前に、穏やかに微笑んだ彼女。その中で、自分はどんな顔をしていたのだろうか。
とんだ臆病者ですよね。
うるさい。佐田国様は勇敢な方だ。
あなたはそのままで、引き合うんですか。
俺は佐田国様の理想のお側にいるだけで十分だ。そう、それがどんな終末を迎えようと。
よく自分の立場を思い出してください。目蒲さん
知っているさ。危ない橋だということ位。それでも俺は佐田国様の力になりたかった。例えそれがどんなに苦しい道でも構わなかった。足に纏わりつく白泥が重くなっていくのは気付いていた。体が沈んでいく恐怖は抜けなかった。それでも、俺は。
辛くなったら尻尾巻いて帰っておいで。
無責任な事を言いやがって。どこにも逃げられやしないんだよ、今更。
俺は立会人の象徴であるハンカチを両手に掴み、掲げる。あとは死ぬだけの泥沼だ。
なあ、なら、お前が助けてくれよ。俺を、この沈み込んでいく泥の中から。
銅寺さんの顔に効果音をつけるとするなら、ぬーん、といった感じ。凄く長くルール説明をしてくれたのにこれじゃ、確かに可哀想かもしれない。私は慌てて、「大丈夫です、11溜まったらアウトなんですよね」と分かってるアピールをしてみたが、銅寺さんの表情は変わらず。どうにか機嫌を直してもらえる言葉を探してうんうん唸っていると、それを遮って金髪の立会人さんが喋り出す。
「申し遅れましたが、私拾號立会人、目蒲鬼郎と申します。以後御見知りおきを」
「あ、名乗りもせず失礼しました。伏龍晴乃です。よろしくお願いします」
「……フン」
名乗る気は無い、とでも言いたげに、短髪の男性が鼻で笑った。それを見て、意地悪な気持ちが込み上げる。
「大丈夫ですよ、名乗らなくて。喋るとボロが出ちゃいますもんね」
くわ、と見開かれた瞳。いいじゃない?表情豊かで。
「おにいさん、もともとギャンブルは得意じゃないんですねぇ。腹の探り合いは柄じゃない。正面突破がお好きですか。ならいっそ銀行強盗でもなんでもすればいいのに。あ、それは怖いんですか。そうですよね。このゲームも目蒲さんが助けてくれるからやっとなんとかなってる。じゃなきゃ怖くて立ってられない」
とんだ臆病者ですよね。私は笑ってやった。直後怒号が飛んだ。その必死さが予想通りすぎて、私は笑いを止められなかった。
「先生はなんでもお見通しなんです。ふふ。さ、始めましょ。さっさと平田親子を取り戻して帰りたいので」
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「で、勝ったら攫われました」
「え、雑」
「え、ダメですか?」
「もっと何かあるじゃろ。ほら、どうやって勝ったんじゃ?」
「私ほら、対面でやるゲーム基本得意なんです。表情で分かるんですよ。だからこう、指を添えたときに佐田国さんが一番しかめっ面したカードを引いてたら勝ちました」
「そんな簡単に…」
「あとほら、目が見えないから絶対何か別の手段で見てたのも分かってたので、カード伏せてました。」
「それにはいつ気がついたんじゃ?」
「え、もう顔見たらこの人目が見えないんだなーってなりましたけど。盲目の人見るの、初めてじゃなかったし」
とんだギャンブラー殺しじゃなあ。おじいちゃんはそう呟いて車のドアを開けた。車の外には、懐かしい、そして忌々しい廃坑の扉が待っていた。
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「お前はただの、大嘘つき、だ!」
佐田国様が、負けた。嘘喰いが吐き捨てるように言う。その様が彼女と重なり、不意にあの魔法のような夜を思い出す。鮮やかに勝利を手にした彼女の姿。呆然とする佐田国様。拍手喝采の銅寺。喜ぶ平田親子を前に、穏やかに微笑んだ彼女。その中で、自分はどんな顔をしていたのだろうか。
とんだ臆病者ですよね。
うるさい。佐田国様は勇敢な方だ。
あなたはそのままで、引き合うんですか。
俺は佐田国様の理想のお側にいるだけで十分だ。そう、それがどんな終末を迎えようと。
よく自分の立場を思い出してください。目蒲さん
知っているさ。危ない橋だということ位。それでも俺は佐田国様の力になりたかった。例えそれがどんなに苦しい道でも構わなかった。足に纏わりつく白泥が重くなっていくのは気付いていた。体が沈んでいく恐怖は抜けなかった。それでも、俺は。
辛くなったら尻尾巻いて帰っておいで。
無責任な事を言いやがって。どこにも逃げられやしないんだよ、今更。
俺は立会人の象徴であるハンカチを両手に掴み、掲げる。あとは死ぬだけの泥沼だ。
なあ、なら、お前が助けてくれよ。俺を、この沈み込んでいく泥の中から。