水仙の闘争
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「謹啓 沈丁花の香り麗しい春暖の候、お健やかにお過ごしのことと存じ上げます」
伏龍が聴きやすいゆったりとした声で読み上げ始める。
「先日の広報誌に掲載されておりましたインタビューを拝見致しました。貴女の事務員としての温かな心遣いに一立会人として感謝に堪えません」
「なんだ、感謝状じゃねえか」
「ううん、でも封筒には果たし状って、ホラ、こんなに力強い字で」
そう言って封筒を見せてくる伏龍に肩を竦めて先を促す。
「しかし、一点どうしても承服できず、それが私の中で燻るのを止められないのです。貴女はえい、やあ、とう!で紅茶を淹れるとインタビューにて仰っておられましたが、務めを果たし、癒しを求めて貴女の元を訪れた立会人たちへの報いが果たしてそれで良いのでしょうか。…えい、やあ、とう?」
「'えい(ティーポットに湯を注ぐ動作)、やあ(ティーバッグを放り込む動作動作)、とう(カップに紅茶を注ぐ動作)'って書いてあったよ」
「うわあなんて雑なんでしょう。ドン引きですね」
「他ならぬ君の発言だけどね」
「てめえの発言に責任をもて伏龍」
「今後気をつけたいと思っています」
「思っちゃいねえな」
「まあまあ、続けますね」
「あ、話逸らしやがった」
「いいえ逸れた話を戻したんです。ええと、ここか。…例えば豆を選ぶ処から始め、その挽き方、湯の温度等、繊細な技術が要求される珈琲のように、紅茶にも相応の技術が求められて然るべきです。それを極める事でこそ、立会人達に真の愛情が伝わるというもの。それを怠る貴女の行為は他ならぬ怠慢であり、立会人の癒し手には相応しくないと判断致します。…ちょっと待って、そもそもそんな職業に就いた覚えはないですよ」
「そもそも誰が君に癒されるっていうんだろうね」
「酷いですお屋形様」
「さ、続きを読みなよ」
「もう!…対して、私は既に珈琲を極め、その芳香で命懸けの務めを果たし、疲れ果て帰還した立会人を癒すことができます。つきましてはどちらが真に立会人の癒し手に相応しいか、その腕を競い合いたい。どうぞお受け頂きたく思います。返事は後程、直接伺いに参ります」
謹言、と結語を読み上げると伏龍は顔を上げ、「夜行さんは事務になりたいんですか?」と聞いてきた。ぜってえ違うだろうが、夜行が何をとち狂ったのか分からん。彼女にはとりあえず、「夜行は立会人に珈琲を振る舞うのが好きでな。存分に振る舞える立場が羨ましいんだろ。知らねえが」と伝えておいた。「でも、夜行さんの珈琲って有名ですよね?いいんですか?」と、彼女は不服そうに首をかしげる。そこに関しては何も言えねえ。
「別に、紅茶で癒すのが本懐じゃないんですけど、困るなあ」
独り言ちた彼女の肩をお屋形様が叩いた。
伏龍が聴きやすいゆったりとした声で読み上げ始める。
「先日の広報誌に掲載されておりましたインタビューを拝見致しました。貴女の事務員としての温かな心遣いに一立会人として感謝に堪えません」
「なんだ、感謝状じゃねえか」
「ううん、でも封筒には果たし状って、ホラ、こんなに力強い字で」
そう言って封筒を見せてくる伏龍に肩を竦めて先を促す。
「しかし、一点どうしても承服できず、それが私の中で燻るのを止められないのです。貴女はえい、やあ、とう!で紅茶を淹れるとインタビューにて仰っておられましたが、務めを果たし、癒しを求めて貴女の元を訪れた立会人たちへの報いが果たしてそれで良いのでしょうか。…えい、やあ、とう?」
「'えい(ティーポットに湯を注ぐ動作)、やあ(ティーバッグを放り込む動作動作)、とう(カップに紅茶を注ぐ動作)'って書いてあったよ」
「うわあなんて雑なんでしょう。ドン引きですね」
「他ならぬ君の発言だけどね」
「てめえの発言に責任をもて伏龍」
「今後気をつけたいと思っています」
「思っちゃいねえな」
「まあまあ、続けますね」
「あ、話逸らしやがった」
「いいえ逸れた話を戻したんです。ええと、ここか。…例えば豆を選ぶ処から始め、その挽き方、湯の温度等、繊細な技術が要求される珈琲のように、紅茶にも相応の技術が求められて然るべきです。それを極める事でこそ、立会人達に真の愛情が伝わるというもの。それを怠る貴女の行為は他ならぬ怠慢であり、立会人の癒し手には相応しくないと判断致します。…ちょっと待って、そもそもそんな職業に就いた覚えはないですよ」
「そもそも誰が君に癒されるっていうんだろうね」
「酷いですお屋形様」
「さ、続きを読みなよ」
「もう!…対して、私は既に珈琲を極め、その芳香で命懸けの務めを果たし、疲れ果て帰還した立会人を癒すことができます。つきましてはどちらが真に立会人の癒し手に相応しいか、その腕を競い合いたい。どうぞお受け頂きたく思います。返事は後程、直接伺いに参ります」
謹言、と結語を読み上げると伏龍は顔を上げ、「夜行さんは事務になりたいんですか?」と聞いてきた。ぜってえ違うだろうが、夜行が何をとち狂ったのか分からん。彼女にはとりあえず、「夜行は立会人に珈琲を振る舞うのが好きでな。存分に振る舞える立場が羨ましいんだろ。知らねえが」と伝えておいた。「でも、夜行さんの珈琲って有名ですよね?いいんですか?」と、彼女は不服そうに首をかしげる。そこに関しては何も言えねえ。
「別に、紅茶で癒すのが本懐じゃないんですけど、困るなあ」
独り言ちた彼女の肩をお屋形様が叩いた。