水仙の闘争
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かん、と軽い音。一拍遅れて女性特有の甲高い悲鳴。直後に窓を割って事務室に飛び込んで来るお屋形様。一際大きくなった悲鳴を聞きながら、俺は成すすべもなく割れた窓から見える空を眺めた。
ーーああくそ、またなんか始まったぞ。
「今時矢文だなんて珍しい。晴乃君、次は誰の恨みを買ったの?」
「さも前科があるみたいな言い方やめて下さいよう。買ってませんって」
お屋形様が壁に突き刺さった矢文をまじまじとお眺めになりながら、そう仰る。対する伏龍はそう口を尖らせながら彼の横に歩み寄り、手紙を外しにかかった。
「うわ、果たし状って書いてある。どうしましょ」
「誰からだい?」
「ええと…夜行立会人ですね」
「死んだね」
「ちょ、不穏なこと言わないで下さいよ!」
「夜行だもん。どうするの、頼みの綱の目蒲は過去に瞬殺されてるじゃない」
「…策はある」
「ほう」
「お屋形様が」
「却下」
「あんまりだ!せめて聞いて下さいよ!」
「ヤだよ。君人遣い荒いんだもん」
「あんたよかマシです!てか、あなたを遣ったことなんてないでしょうに!」
「リモコン取れとかジュース欲しいとか」
「そのレベルじゃないですか!」
「普通はそのレベルで私を遣わないの」
「部屋に呼んだ時点でホストはあなたですー!」
「どこにいようが私の方が偉い」
「忘年会で好きに反抗しろって言われましたもーん」
「その度負かすって言ったじゃない」
じゃあ頑張ってね、とお屋形様は割れた窓に足を掛ける。もしかしてお屋形様は窓からお帰りになるおつもりなのだろうか、と疑問に思ったが考えるのをやめた。とにかく、伏龍は不遜にも彼のスーツの背中を両手で引っ掴み、それを阻止した。
「やだやだお願いお屋形様!私死んじゃいます!」
「えー、ヤダ」
「そんな!わざわざ悲鳴聞いて窓から飛び込んできてくれたじゃないですか!その優しさもっと発揮して下さい!」
「面白くなりそうな気配がしたから来ただけだよ」
「ひどい!」
「私が介入しない方が面白くなりそうな気がするんだよね」
「気のせいです!」
お屋形様は大きなため息をおつきになり、足を下ろす。
「君さ、私に楯突くみたいに夜行にもやってみたらいいじゃない」
腰に手を当てる彼を真似る様に伏龍も同じポーズを取ると、首をかしげる。
「大好きな立会人さんに楯突くわけがないじゃないですか」
「私は大好きじゃないって訳ね」
「ばれました?」
「よし、私やっぱり部屋に戻る」
伏龍はきゃあきゃあ騒ぎながら踵を返すお屋形様のスーツの背中をまた掴む。もーやだ。誰かツッコミはいねえのか。同じ思いなのであろう権田がこちらを見つめている。
「伏龍、いい加減手紙を読んでやれ」
権田からのプレッシャーに負けてそう言えば、お屋形様と伏龍は目を見合わせた。
この部屋に入るとI.Qが百近く下がるのは、どうやら立会人だけではなかったらしい。漏れ出すため息を必死で堪えた。
ーーああくそ、またなんか始まったぞ。
「今時矢文だなんて珍しい。晴乃君、次は誰の恨みを買ったの?」
「さも前科があるみたいな言い方やめて下さいよう。買ってませんって」
お屋形様が壁に突き刺さった矢文をまじまじとお眺めになりながら、そう仰る。対する伏龍はそう口を尖らせながら彼の横に歩み寄り、手紙を外しにかかった。
「うわ、果たし状って書いてある。どうしましょ」
「誰からだい?」
「ええと…夜行立会人ですね」
「死んだね」
「ちょ、不穏なこと言わないで下さいよ!」
「夜行だもん。どうするの、頼みの綱の目蒲は過去に瞬殺されてるじゃない」
「…策はある」
「ほう」
「お屋形様が」
「却下」
「あんまりだ!せめて聞いて下さいよ!」
「ヤだよ。君人遣い荒いんだもん」
「あんたよかマシです!てか、あなたを遣ったことなんてないでしょうに!」
「リモコン取れとかジュース欲しいとか」
「そのレベルじゃないですか!」
「普通はそのレベルで私を遣わないの」
「部屋に呼んだ時点でホストはあなたですー!」
「どこにいようが私の方が偉い」
「忘年会で好きに反抗しろって言われましたもーん」
「その度負かすって言ったじゃない」
じゃあ頑張ってね、とお屋形様は割れた窓に足を掛ける。もしかしてお屋形様は窓からお帰りになるおつもりなのだろうか、と疑問に思ったが考えるのをやめた。とにかく、伏龍は不遜にも彼のスーツの背中を両手で引っ掴み、それを阻止した。
「やだやだお願いお屋形様!私死んじゃいます!」
「えー、ヤダ」
「そんな!わざわざ悲鳴聞いて窓から飛び込んできてくれたじゃないですか!その優しさもっと発揮して下さい!」
「面白くなりそうな気配がしたから来ただけだよ」
「ひどい!」
「私が介入しない方が面白くなりそうな気がするんだよね」
「気のせいです!」
お屋形様は大きなため息をおつきになり、足を下ろす。
「君さ、私に楯突くみたいに夜行にもやってみたらいいじゃない」
腰に手を当てる彼を真似る様に伏龍も同じポーズを取ると、首をかしげる。
「大好きな立会人さんに楯突くわけがないじゃないですか」
「私は大好きじゃないって訳ね」
「ばれました?」
「よし、私やっぱり部屋に戻る」
伏龍はきゃあきゃあ騒ぎながら踵を返すお屋形様のスーツの背中をまた掴む。もーやだ。誰かツッコミはいねえのか。同じ思いなのであろう権田がこちらを見つめている。
「伏龍、いい加減手紙を読んでやれ」
権田からのプレッシャーに負けてそう言えば、お屋形様と伏龍は目を見合わせた。
この部屋に入るとI.Qが百近く下がるのは、どうやら立会人だけではなかったらしい。漏れ出すため息を必死で堪えた。