ミスミソウの駆け引き
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「おい、おい!今何が起こってる?!」
泉江外務卿が慌ただしく亜面立会人の横に現れて、そう聞いた。聞かれた方は首をかしげるしかない。
「すみません外務卿、私も何故こんな事になったのか…」
「クソッ…あの席じゃ二人の話も断片的にしか聞こえなかったんだ!とりあえず初めから話せ!」
詰め寄る外務卿。仕方がない。何せ彼女の席は立会人の向こう側なのだ。俺は亜面立会人が喋るのを意識の端で捉えつつ、二人の勝負に目を向けた。
立会いを任されたのは判事。彼は二人の間に立つと、口上を述べ始める。二人は相手から目を離したら負けとでもでも言うように、判事には一瞥もせず睨み合う。
「ゲームは、どうする?」
「戦争しましょ。あれなら完全に運任せです」
「私が勝ったら、私に忠誠を誓うこと」
「じゃ、私が勝ったら二度と業務以外で目蒲さんを使わないこと」
晴乃の言葉の意味が一瞬わからなかった。戦う、と言われたら納得できてしまうような、それほどの気迫だったからだ。それがトランプゲーム の戦争だと気付いたのは、判事がトランプを取り出したから。
「それでは、ゲームは戦争。ただし、カードは全て使わず、ジョーカーを除く52枚のカードを裏返して各々が選んだ5枚を使用して行うものとします。立会いを務めますのは私参號立会人、棟椰将輝。公平な立会いを約束いたしましょう」
「お願いします」
「悪いね判事」
判事はカードを床に並べ、「お選び下さい」と短く声を掛ける。お屋形様が適当にカードを選び取るのを見届けたあと、晴乃も自分から一番近い所から5枚選んだ。
「やっぱチビ、見るのは顔なんじゃな」
「門っちも来たのか」
「伏龍はそこでしか見抜けませんからね」
「弥鱈立会人まで」
「折角自分よりも號の若い友人がいますので、利用しない手はありません」
弥鱈立会人は銅寺立会人に酌をし、返杯を貰う。
「弥鱈立会人は親友が粛正の瀬戸際にあっても余裕ですねえ」
「はぁ~…まあ、アイツですので死にはしないでしょう~」
「相手はお屋形様ですが」
「アイツの真髄は誰にでも攻め込む豪胆さではありません、攻め込めるギリギリを見極めるバランス感覚です。アイツが攻め込むのなら、勝算はあるのでしょう」
たとえ、お屋形様が相手だったとしても。弥鱈立会人はビールに口をつけた。
雛壇では二人が5枚のカードをシャッフルし終わり、自分の横に置いた。
「さあこい!」
「あれ、いいの?」
お屋形様の問いに彼女はキョトンとするが、すぐにハッとした顔になって判事の方を見た。
「そうでした棟椰さんいつもの!」
「'発覚しないイカサマに関しては、賭郎は関知しないものとします'」
「ふうセーフ」
冗談じみたやり取り。笑い混じりの口元。それを一緒に笑えないのは、向き合う二人の目には青い炎が灯っているのがわかるからだ。
せー、
んー、
そっ!
二人は勢いよくカードを表返し、床に叩きつける。ここからはカードは見えないが、ぱちんと胸の前で手を合わせた晴乃の表情が、勝者はどちらだったのかを知らせた。
「よっしゃ、幸先いい!」
「ふうん…まあ、強運の私なら問題ないでしょ」
「うふふ、そうは言っても毎回五分五分じゃないですかー」
せー、んー、そっ!
「仕方がないでしょ、運任せなんだから」
「あー!負けた!悔しい!」
お屋形様は淡々とカードを回収し、晴乃は憂さ晴らしとばかりに刺身をつつく。彼女が咀嚼を終わらせ、お屋形様がカードを揃えたところで判事が再開の合図を告げる。
待ったをかけたのは晴乃。
「ズルはダメですよう」
「なんの話?」
「今、一番上が11のカードなのかな?とにかく、手札を操作しましたね?」
「ふうん」
お屋形様はカードに手を掛け、「間違ってたら?」と問い掛ける。
「合ってたら私が一勝、間違ってたらあなたが一勝」
「自信有り気じゃない。まあーー」
カードが捲られる。判事が観客に気を使ってか、「11です」と宣言した。
「ーーよくぞ見抜いた」
「どうもです」
おお、というどよめきが上がる。亜面立会人が「晴乃さん、見抜けちゃいましたね」と呟いた。
「まあ、私たちが散々イカサマを仕込んだからな」
「そんな事をしていたんですか、外務卿」
「折角いい目を持っているんだ、活かさない手はない」
そう、彼女には様々なイカサマを見せ、教え込んでいる。お屋形様のそれも見抜ける程に。
手札を増やし、減らし。一見ほのぼのしたゲームは、奥に青い炎を燃え滾らせ進んでいく。
泉江外務卿が慌ただしく亜面立会人の横に現れて、そう聞いた。聞かれた方は首をかしげるしかない。
「すみません外務卿、私も何故こんな事になったのか…」
「クソッ…あの席じゃ二人の話も断片的にしか聞こえなかったんだ!とりあえず初めから話せ!」
詰め寄る外務卿。仕方がない。何せ彼女の席は立会人の向こう側なのだ。俺は亜面立会人が喋るのを意識の端で捉えつつ、二人の勝負に目を向けた。
立会いを任されたのは判事。彼は二人の間に立つと、口上を述べ始める。二人は相手から目を離したら負けとでもでも言うように、判事には一瞥もせず睨み合う。
「ゲームは、どうする?」
「戦争しましょ。あれなら完全に運任せです」
「私が勝ったら、私に忠誠を誓うこと」
「じゃ、私が勝ったら二度と業務以外で目蒲さんを使わないこと」
晴乃の言葉の意味が一瞬わからなかった。戦う、と言われたら納得できてしまうような、それほどの気迫だったからだ。それがトランプゲーム の戦争だと気付いたのは、判事がトランプを取り出したから。
「それでは、ゲームは戦争。ただし、カードは全て使わず、ジョーカーを除く52枚のカードを裏返して各々が選んだ5枚を使用して行うものとします。立会いを務めますのは私参號立会人、棟椰将輝。公平な立会いを約束いたしましょう」
「お願いします」
「悪いね判事」
判事はカードを床に並べ、「お選び下さい」と短く声を掛ける。お屋形様が適当にカードを選び取るのを見届けたあと、晴乃も自分から一番近い所から5枚選んだ。
「やっぱチビ、見るのは顔なんじゃな」
「門っちも来たのか」
「伏龍はそこでしか見抜けませんからね」
「弥鱈立会人まで」
「折角自分よりも號の若い友人がいますので、利用しない手はありません」
弥鱈立会人は銅寺立会人に酌をし、返杯を貰う。
「弥鱈立会人は親友が粛正の瀬戸際にあっても余裕ですねえ」
「はぁ~…まあ、アイツですので死にはしないでしょう~」
「相手はお屋形様ですが」
「アイツの真髄は誰にでも攻め込む豪胆さではありません、攻め込めるギリギリを見極めるバランス感覚です。アイツが攻め込むのなら、勝算はあるのでしょう」
たとえ、お屋形様が相手だったとしても。弥鱈立会人はビールに口をつけた。
雛壇では二人が5枚のカードをシャッフルし終わり、自分の横に置いた。
「さあこい!」
「あれ、いいの?」
お屋形様の問いに彼女はキョトンとするが、すぐにハッとした顔になって判事の方を見た。
「そうでした棟椰さんいつもの!」
「'発覚しないイカサマに関しては、賭郎は関知しないものとします'」
「ふうセーフ」
冗談じみたやり取り。笑い混じりの口元。それを一緒に笑えないのは、向き合う二人の目には青い炎が灯っているのがわかるからだ。
せー、
んー、
そっ!
二人は勢いよくカードを表返し、床に叩きつける。ここからはカードは見えないが、ぱちんと胸の前で手を合わせた晴乃の表情が、勝者はどちらだったのかを知らせた。
「よっしゃ、幸先いい!」
「ふうん…まあ、強運の私なら問題ないでしょ」
「うふふ、そうは言っても毎回五分五分じゃないですかー」
せー、んー、そっ!
「仕方がないでしょ、運任せなんだから」
「あー!負けた!悔しい!」
お屋形様は淡々とカードを回収し、晴乃は憂さ晴らしとばかりに刺身をつつく。彼女が咀嚼を終わらせ、お屋形様がカードを揃えたところで判事が再開の合図を告げる。
待ったをかけたのは晴乃。
「ズルはダメですよう」
「なんの話?」
「今、一番上が11のカードなのかな?とにかく、手札を操作しましたね?」
「ふうん」
お屋形様はカードに手を掛け、「間違ってたら?」と問い掛ける。
「合ってたら私が一勝、間違ってたらあなたが一勝」
「自信有り気じゃない。まあーー」
カードが捲られる。判事が観客に気を使ってか、「11です」と宣言した。
「ーーよくぞ見抜いた」
「どうもです」
おお、というどよめきが上がる。亜面立会人が「晴乃さん、見抜けちゃいましたね」と呟いた。
「まあ、私たちが散々イカサマを仕込んだからな」
「そんな事をしていたんですか、外務卿」
「折角いい目を持っているんだ、活かさない手はない」
そう、彼女には様々なイカサマを見せ、教え込んでいる。お屋形様のそれも見抜ける程に。
手札を増やし、減らし。一見ほのぼのしたゲームは、奥に青い炎を燃え滾らせ進んでいく。