ミスミソウの駆け引き
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門っちの「チビ助を勘違いさせて忘年会に来させよう作戦」は当然不発に終わった。そもそも上手くいくと思って始めた作戦ではないから仕方がないが、それでも残念感はある。何せ暇なのだ。
お屋形様が座る雛壇があり、そこから向かって左から號の若い順に四人ずつ並べられていく。目の前に亜面立会人と銅寺立会人が並んだ俺はまだラッキーだが、例えば櫛灘立会人は同年代が周りに居ない上正面がクイーンなので毎年不憫だ。どちらにせよ、お屋形様の目と鼻の先でどんちゃん騒ぎをする馬鹿はいない。静かで退屈な食事の会だ。
「退屈そうですね、目蒲立会人」
左斜め前から、亜面立会人が声を掛けてくる。
「おや、亜面立会人はこの会が楽しみでしたか。これは水を差してしまいましたね」
「イヤミですか」
「まあな」
「やっぱり、本腰入れて先生を連れてくるべきでしたね」
「晴乃にこの空気を壊せるとも思いませんがね」
「そもそも先生、食事中は静かですよね」
「先生ですからね…っと、いらっしゃいましたよ」
亜面立会人の声を合図に、俺たちは居住まいを正す。緊張はすぐに伝播し、部屋中がその空気の色を変えた。定刻通り、お屋形様のご登場だ。
例年通りならばお屋形様が我々には一瞥もせず真っ直ぐ雛壇に突き進み、着席。すると能輪翁が乾杯の音頭を取り、開始となる。しかし、今年は少し様子が違った。まず後ろを見ながら入場してきた。おや、と思ったらまた退場していった。奥に誰かいるのか。初めての展開に俺たちは目を見合わせる。
「そういえばさ、今お屋形様付きって誰でしたっけ」
銅寺立会人がはたと気づいて言う。そうだ。古株たちは既に出揃い、御膳を前にお屋形様を待っている。じゃあお屋形様の隣の御膳は誰のだ。ああなんだ、嫌な予感。
「君何してるの、そんなタマじゃないでしょ」
「そんなタマですよう…」
聞き慣れた声、アップにした髪、真っ白いワンピース。耳まで真っ赤に染まった横顔を片手で隠す、珍しい表情。お屋形様が晴乃の手首を引っ張って入場してくる。
「もう、立会人さんたちに何と言い訳したらいいか…」
いや別に何も言い訳は要らないが、とりあえずその、頼むから予想の範囲内に居てくれ。
とんでもないゲストを迎えての忘年会は、例年通り能輪翁の掛け声でスタートを切った。
お屋形様が座る雛壇があり、そこから向かって左から號の若い順に四人ずつ並べられていく。目の前に亜面立会人と銅寺立会人が並んだ俺はまだラッキーだが、例えば櫛灘立会人は同年代が周りに居ない上正面がクイーンなので毎年不憫だ。どちらにせよ、お屋形様の目と鼻の先でどんちゃん騒ぎをする馬鹿はいない。静かで退屈な食事の会だ。
「退屈そうですね、目蒲立会人」
左斜め前から、亜面立会人が声を掛けてくる。
「おや、亜面立会人はこの会が楽しみでしたか。これは水を差してしまいましたね」
「イヤミですか」
「まあな」
「やっぱり、本腰入れて先生を連れてくるべきでしたね」
「晴乃にこの空気を壊せるとも思いませんがね」
「そもそも先生、食事中は静かですよね」
「先生ですからね…っと、いらっしゃいましたよ」
亜面立会人の声を合図に、俺たちは居住まいを正す。緊張はすぐに伝播し、部屋中がその空気の色を変えた。定刻通り、お屋形様のご登場だ。
例年通りならばお屋形様が我々には一瞥もせず真っ直ぐ雛壇に突き進み、着席。すると能輪翁が乾杯の音頭を取り、開始となる。しかし、今年は少し様子が違った。まず後ろを見ながら入場してきた。おや、と思ったらまた退場していった。奥に誰かいるのか。初めての展開に俺たちは目を見合わせる。
「そういえばさ、今お屋形様付きって誰でしたっけ」
銅寺立会人がはたと気づいて言う。そうだ。古株たちは既に出揃い、御膳を前にお屋形様を待っている。じゃあお屋形様の隣の御膳は誰のだ。ああなんだ、嫌な予感。
「君何してるの、そんなタマじゃないでしょ」
「そんなタマですよう…」
聞き慣れた声、アップにした髪、真っ白いワンピース。耳まで真っ赤に染まった横顔を片手で隠す、珍しい表情。お屋形様が晴乃の手首を引っ張って入場してくる。
「もう、立会人さんたちに何と言い訳したらいいか…」
いや別に何も言い訳は要らないが、とりあえずその、頼むから予想の範囲内に居てくれ。
とんでもないゲストを迎えての忘年会は、例年通り能輪翁の掛け声でスタートを切った。