意外や意外の千日紅
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
嫌ですもう絶対嫌ですー!と悲鳴を上げながら先生が事務室から飛び出してきて、横を歩いていた弥鱈立会人の足にぶつかる。いてっ、という短い悲鳴。
「ごめんなさい!…って、弥鱈君お帰り。銅寺さんも」
「よお」
「じゃ、私行くね」
足早に去ろうとする先生を追うのは、門倉立会人らしき「チビこら、待てゆうとるやろ」という声。焦りを見せる彼女を弥鱈立会人が抱き上げるのと、声の主が出てくるのはほぼ同時。
「チビ…って、なんやお前ら、帰ってきたんか。お疲れさん」
「お疲れ様です」
弥鱈立会人がそう返すので、僕もそれに続く。すると門倉立会人は僕らににじり寄ると、「おうお前ら、チビ置いて離れた方が身のためやぞ」と囁いた。物騒な台詞の割に脅すような響きが無いので疑問に思い、何故かと問い返した。そして、答えにギョッとする。
「お屋形様が来とる」
「へ?」
「マジで絶対に笑ってはいけない事務室状態じゃ、身が持たんぞ」
ワシも軽い気持ちで缶ぽっくり持ってきたらえらい目に会うとる。逃げえ。と真剣な眼差しで訴えてくる門倉立会人に、ぽそっと先生が「いや、まさにあなたの缶ぽっくりのせいなんですが」と突っ込んだ。弥鱈立会人が笑う。
「そんなお前にお土産あるぞ、伏龍」
「いやいらない。絶対それいらない」
「そー言うなって」
弥鱈立会人はそう言うと、先生を抱き抱えたまま事務室へと入っていった。おおまじか、という門倉立会人の声。
「ねえ、そんなに凄いんですか?」
「凄いなんてもんちゃうぞ。ワンダーランドじゃ。気になるなら来い。その代わりツッコミ入れんなよ?」
「はあ…」
そう言って門倉立会人は事務室に戻って行った。僕も怖いもの見たさに負け、その後を追った。
中はワンダーランドというか、カオスだった。
「えっと、」
「ちょうど良かった、銅寺立会人。そこのハンマーを取ってくれないか」
「ねー判事、それもっと下じゃない?」
「仰せのままに」
せっせと日曜大工をする判事と、淡々と指令を下すお屋形様。門倉立会人は恐らく自分の持ち場であったのだろう書類棚のところに戻るとハシゴ作りを再開した。
「え、これ、何」
「やあ銅寺。立会いだったんだってね。お疲れ様」
「いえ、お気遣い痛み入ります」
「まあ、楽にしてなよ。紅茶は今出すからさ」
「はあ、ありがとうございます。でも、肝心の先せ…伏龍さんは?」
「今弥鱈が持ってきた服に着替え中でね。だから紅茶は私が淹れるよ」
「へえ?!いえ、いやいや、大丈夫ですほら、大丈夫です!」
「遠慮しないでよ、さっき晴乃君に人の迷惑を考えろって怒られちゃって、私も反省したんだよね」
先生よりによってお屋形様に怒ったのかよとか、反省した結果が紅茶なのかよとか、この踏み台やら階段とか誰が作ったんだよとか、疑問が沸々湧いてくるのを必死で飲み込んで、何とか紅茶は自分で淹れますと言う。遠慮しなくていいのに、とお屋形様は首を傾げ、また判事と滑り台の建設に戻った。つか、滑り台って何で。
僕は話せる相手を求め、トイレの扉にもたれている弥鱈立会人のそばに寄った。
「どういうこと?」
「はあ~…一言で言えば、悪ノリが悪ノリを呼んでいる、という所らしいです」
「ううん、もう少し詳しく」
「伏龍が言うには、門倉立会人が缶ぽっくりを作って持ってきたのをお屋形様がご覧になり、伏龍はお二方の目の前で装着する事になったそうです。するとアイツは絨毯に蹴つまずいて転倒。お屋形様はこのままでは危ないと判事を呼び、伏龍が安心して缶ぽっくりで活動できる事務室を目指し改装をお始めになられたそうです」
「缶ぽっくりを止めるという選択肢は…」
「なかったそうです」
「可哀想」
「同感です」
「でも、弥鱈立会人はあんな服買ってきたじゃない」
「私もこうなっていると知っていたらプリキュアの方を買ってきました」
「うん反省してないね」
ねえ着替えたよ、開けて。という低い声が聞こえて、口元がひきつる。先生、無茶苦茶不機嫌じゃないか。びっくびくの僕とは違い、弥鱈立会人は普通にドアを開けて、「むっちゃ似合うな、伏龍」と笑った。
確かに出てきた先生は、無茶苦茶可愛かった。
「ちょっとさあ弥鱈君、何でこのチョイス」
「ぜってー似合うと思ったんだよ。ちょっと吠えてみろ」
「誰が!」
「ほら恐竜だ!」
そう、弥鱈立会人が買ってきたのは恐竜の着ぐるみだった。太い尻尾と背中のとげとげがやたらしっくりくる。
「んあー失礼な奴!いいもん弥鱈君なんて大嫌いだもん!」
「がおーってなってるぞ、伏龍ががおーってなってるぞ」
ひーひー笑う弥鱈立会人に先生が向かって行こうとするも、彼はしゃがむと彼女の額を押してそれを止めた。きーってなってる先生を見ていると、自分も絡みたい衝動にかられるが、どう出たものか。悩んでいると、シャッター音。
「とと棟椰さん!ひどいそれ消してください!」
「すまない伏龍、今日も撮影を任されていてな」
「参號立会人がそんな役でいいんですか?!」
「問題ない」
「知ってるかい晴乃君、実は判事ってカメラが趣味で、あれ自前のカメラなんだよ」
「ええ?!」
判事そうなんだ。知らなかった。
「えーじゃあ、パーティの時も、徹夜麻雀の時も」
「うん全部立候補」
「うそお」
「え、徹夜麻雀とかやってたの、先生」
「やらされるんです!」
がおー!と脳内で吠え声がした。やばい振り返る時ぶんってなるしっぽが可愛い。
「大変だったね先生、ほら、実は僕からもプレゼントがあるんだ」
「その手に持ってるマジックハンドだったら怒りますよ?!」
「そんなこと言わずにさ、ほら、そこのファイルとってごらんよ」
つい悪戯心に負けておちょくれば、先生はやりませんからね?!と吠えてくれた。
「ごめんなさい!…って、弥鱈君お帰り。銅寺さんも」
「よお」
「じゃ、私行くね」
足早に去ろうとする先生を追うのは、門倉立会人らしき「チビこら、待てゆうとるやろ」という声。焦りを見せる彼女を弥鱈立会人が抱き上げるのと、声の主が出てくるのはほぼ同時。
「チビ…って、なんやお前ら、帰ってきたんか。お疲れさん」
「お疲れ様です」
弥鱈立会人がそう返すので、僕もそれに続く。すると門倉立会人は僕らににじり寄ると、「おうお前ら、チビ置いて離れた方が身のためやぞ」と囁いた。物騒な台詞の割に脅すような響きが無いので疑問に思い、何故かと問い返した。そして、答えにギョッとする。
「お屋形様が来とる」
「へ?」
「マジで絶対に笑ってはいけない事務室状態じゃ、身が持たんぞ」
ワシも軽い気持ちで缶ぽっくり持ってきたらえらい目に会うとる。逃げえ。と真剣な眼差しで訴えてくる門倉立会人に、ぽそっと先生が「いや、まさにあなたの缶ぽっくりのせいなんですが」と突っ込んだ。弥鱈立会人が笑う。
「そんなお前にお土産あるぞ、伏龍」
「いやいらない。絶対それいらない」
「そー言うなって」
弥鱈立会人はそう言うと、先生を抱き抱えたまま事務室へと入っていった。おおまじか、という門倉立会人の声。
「ねえ、そんなに凄いんですか?」
「凄いなんてもんちゃうぞ。ワンダーランドじゃ。気になるなら来い。その代わりツッコミ入れんなよ?」
「はあ…」
そう言って門倉立会人は事務室に戻って行った。僕も怖いもの見たさに負け、その後を追った。
中はワンダーランドというか、カオスだった。
「えっと、」
「ちょうど良かった、銅寺立会人。そこのハンマーを取ってくれないか」
「ねー判事、それもっと下じゃない?」
「仰せのままに」
せっせと日曜大工をする判事と、淡々と指令を下すお屋形様。門倉立会人は恐らく自分の持ち場であったのだろう書類棚のところに戻るとハシゴ作りを再開した。
「え、これ、何」
「やあ銅寺。立会いだったんだってね。お疲れ様」
「いえ、お気遣い痛み入ります」
「まあ、楽にしてなよ。紅茶は今出すからさ」
「はあ、ありがとうございます。でも、肝心の先せ…伏龍さんは?」
「今弥鱈が持ってきた服に着替え中でね。だから紅茶は私が淹れるよ」
「へえ?!いえ、いやいや、大丈夫ですほら、大丈夫です!」
「遠慮しないでよ、さっき晴乃君に人の迷惑を考えろって怒られちゃって、私も反省したんだよね」
先生よりによってお屋形様に怒ったのかよとか、反省した結果が紅茶なのかよとか、この踏み台やら階段とか誰が作ったんだよとか、疑問が沸々湧いてくるのを必死で飲み込んで、何とか紅茶は自分で淹れますと言う。遠慮しなくていいのに、とお屋形様は首を傾げ、また判事と滑り台の建設に戻った。つか、滑り台って何で。
僕は話せる相手を求め、トイレの扉にもたれている弥鱈立会人のそばに寄った。
「どういうこと?」
「はあ~…一言で言えば、悪ノリが悪ノリを呼んでいる、という所らしいです」
「ううん、もう少し詳しく」
「伏龍が言うには、門倉立会人が缶ぽっくりを作って持ってきたのをお屋形様がご覧になり、伏龍はお二方の目の前で装着する事になったそうです。するとアイツは絨毯に蹴つまずいて転倒。お屋形様はこのままでは危ないと判事を呼び、伏龍が安心して缶ぽっくりで活動できる事務室を目指し改装をお始めになられたそうです」
「缶ぽっくりを止めるという選択肢は…」
「なかったそうです」
「可哀想」
「同感です」
「でも、弥鱈立会人はあんな服買ってきたじゃない」
「私もこうなっていると知っていたらプリキュアの方を買ってきました」
「うん反省してないね」
ねえ着替えたよ、開けて。という低い声が聞こえて、口元がひきつる。先生、無茶苦茶不機嫌じゃないか。びっくびくの僕とは違い、弥鱈立会人は普通にドアを開けて、「むっちゃ似合うな、伏龍」と笑った。
確かに出てきた先生は、無茶苦茶可愛かった。
「ちょっとさあ弥鱈君、何でこのチョイス」
「ぜってー似合うと思ったんだよ。ちょっと吠えてみろ」
「誰が!」
「ほら恐竜だ!」
そう、弥鱈立会人が買ってきたのは恐竜の着ぐるみだった。太い尻尾と背中のとげとげがやたらしっくりくる。
「んあー失礼な奴!いいもん弥鱈君なんて大嫌いだもん!」
「がおーってなってるぞ、伏龍ががおーってなってるぞ」
ひーひー笑う弥鱈立会人に先生が向かって行こうとするも、彼はしゃがむと彼女の額を押してそれを止めた。きーってなってる先生を見ていると、自分も絡みたい衝動にかられるが、どう出たものか。悩んでいると、シャッター音。
「とと棟椰さん!ひどいそれ消してください!」
「すまない伏龍、今日も撮影を任されていてな」
「参號立会人がそんな役でいいんですか?!」
「問題ない」
「知ってるかい晴乃君、実は判事ってカメラが趣味で、あれ自前のカメラなんだよ」
「ええ?!」
判事そうなんだ。知らなかった。
「えーじゃあ、パーティの時も、徹夜麻雀の時も」
「うん全部立候補」
「うそお」
「え、徹夜麻雀とかやってたの、先生」
「やらされるんです!」
がおー!と脳内で吠え声がした。やばい振り返る時ぶんってなるしっぽが可愛い。
「大変だったね先生、ほら、実は僕からもプレゼントがあるんだ」
「その手に持ってるマジックハンドだったら怒りますよ?!」
「そんなこと言わずにさ、ほら、そこのファイルとってごらんよ」
つい悪戯心に負けておちょくれば、先生はやりませんからね?!と吠えてくれた。